home

ミステリの祭典

login
白昼の死角

作家 高木彬光
出版日1960年01月
平均点7.67点
書評数21人

No.21 5点 レッドキング
(2024/10/14 22:57登録)
対米敗戦数年後、一人の天才東大生が起こし一世を風靡するも、官憲に弾圧され崩壊した、高利金融組織「光クラブ」。その実話を元にしたピカレスク浪漫で、大半は、創業者のカリスマ東大生亡きあと、後を継いだ「No.2」がダークヒーローとして、立て続けに引き起こす金融証券犯罪の物語。悲劇的な天才的創業者を、より豊かな創造的才能を持ったNo.2が乗り越えて進む展開・・BeatlesやR-Stonesもそうだったなぁ・・が見事。ミステリとしては、「利子のトリック」のHow(いかにカモるか)倒叙もので、フィクションとしては、「奪取」「白夜行」等の祖先筋。そして、事件としては、T商事、Hエモン・Mファンド等の他、霊感商法等の諸カルト教団事件の祖先筋かな。ニセ証券被害偽装、カラ売り、手形パクリ詐欺、手形裏書詐欺・・いろいろ、勉強になりました。

※資本主義とは、「悪」を前提とした繁栄の原理であり、そして、それ以外に「現世の幸福」を可能にする体制など有り得ない・・「天使に支配されるぐらいならば、悪魔を支配する方がマシだ」(アラブの格言だったか)

No.20 6点 ひとこと
(2023/06/02 21:23登録)
600ページ以上あるけどスラスラ文字が頭に入ってくるので読みやすいです。

No.19 9点 ROM大臣
(2021/07/08 14:07登録)
株券の偽造から始まって、手形の横領に見せかけた詐欺、導入詐欺、バッタ詐欺など、手を変え品を変え手形パクリの数々が登場。あげくの果てはたった一日、それも数時間だけ実在の会社を模様替えして、もう一つの会社と信じ込ませる騙しのテクニックや、治外法権の外国公使館を利用した完全犯罪が現れて魅惑する。
驚き、呆れ、ピカレスク小説の醍醐味を十分に堪能した。

No.18 7点 HORNET
(2021/06/12 17:04登録)
 こういう戦後間もない頃を舞台とした話は、なんか力がある。ましてや「光クラブ事件」という、実際にあった東大生による金融の事件がモデルとなっているとあっては…良くも悪くも、この時代にはパワーがあるなぁ。
 基本的には天才的知能犯・鶴岡七郎が犯罪を企て、警察の目をかいくぐりながら実行していく展開の繰り返しなのだが、その時代らしいバタ臭い犯罪の在り様が面白く、今読んでいても全く飽きない。ビル内にあるオフィスを密かに(かつ堂々と)利用してしまう手口や、銀行のロビーを拝借した手口など、何気ない風景の盲点を突いたトリックは感嘆に値する。
 著者の名作に数え上げられるのも納得した。

No.17 9点 猫サーカス
(2020/07/14 18:17登録)
戦後間もなくの頃、東大生による闇金融事件で社会問題となった光クラブ事件という事件をモデルとしている。この事件が与えた社会的影響は相当強く、三島由紀夫の「青の時代」田村泰次郎の「大学の門」といった小説のモデルにもなっている。いわゆるピカレスクロマンと言われる小説で、主人公が法の網を掻い潜りながら、天才的知恵と才能で、手形詐欺を皮切りに、導入金詐欺など、次々と大型の詐欺事件を、警察などの司法機関の追及をかわしながら、実に巧みに成功させていくストーリー。クライム小説の傑作中の傑作と言っていいでしょう。

No.16 7点 tider-tiger
(2020/01/04 02:06登録)
これだけの厚さでしかも同じようなことの繰り返し。それでも最後まで楽しく読めてしまいます。リーダビリティの高さでは高木彬光作品でもトップクラスではないでしょうか。
しようもない連中ではありますが、どこか憎めないところがあります。
特に鶴岡氏には一本筋が通っていて、不思議と嫌悪感は湧きません。
実話を基にした詐欺師の物語ということもあり、自分は今でもさほど違和感なく読めますが、手口の稚拙さを指摘されている方もいらっしゃるようで。まあ、この時代はまだまだ緩かったということでしょうか。
父親のお気に入り作品ですが、私はあまりの分厚さに腰が引けておりました。
なのに「絶対面白いから読め読め」と(当時中学生の)息子にこれを薦めてくる父親というのはいかがなものでしょうか。

追伸
>>時勢に合った悪事そのものより、悪事を時勢に沿わせる戦略がミソゆえに
そうそう! 急いで書いたので大切なことを書き忘れていました。
今もなお犯罪の歴史として興味深く読めてしまうのですよね!

No.15 8点 斎藤警部
(2018/09/29 03:16登録)
「何年かして、何度か生き還ってからまたおいで」

この小説には、ぶっとい一気通貫の味がある。 時勢に合った悪事そのものより、悪事を時勢に沿わせる戦略がミソゆえに、物語として古臭くならないのが素晴らしい工夫。

“たしかに、彼が悪の道に徹しようとする限り、これ以上の伴侶は見つからないかも知れない。ただ。。。”

まるでヴァギナとペニスのように裏表ぴたりと合った、二つの距離を置いた陳述にシビれた箇所があったな。。直近のトリックへのちょっとした隠喩を引き合いに。。

“「知りません。それだけはおぼえがありませんよ」 七郎は無限の感慨を押し殺して答えた。”

物語の引き際も遅すぎず早過ぎず(特に後者!)。 どういうわけだか爽やかな後味が引きずる、悪漢小説の黄金遺産です。

No.14 6点 ねここねこ男爵
(2018/02/20 12:48登録)
読みやすく、戦後の混乱期の雰囲気や社会情勢を上手く描いていて楽しめる。
それにしても、この時代は金と地位と名誉と色欲ばっかりww登場人物たちもいい感じに小物ぞろい。

詐欺の手口などについては実際の事件を下敷きにしたということでそれなりに説得力があるし、当時の法律の未整備っぷりなど勉強になる…のだが、マンガ「クロサギ」などを読んだあとだとどうしても手口の緻密さやカタルシスなどで物足りなさを感じてしまう。なので採点は低め。この時代にこれほどの、というのはあるのだが。

No.13 8点 あびびび
(2017/08/08 03:47登録)
主人公は天才ではあるが、相当な自信家で、悪人である。これが、福永検事から見た物語なら、憎くて憎くて仕方がない詐欺師だろう。

凡人なら、ある程度稼いだら諸刃の剣のような生活とはおさらばするだろうが、手形をパクッた瞬間の愉悦は麻薬のように深く脳を刻み、またその瞬間を求めてしまう。

第一、凡人なら最初からその発想はないか(笑)

No.12 9点 パメル
(2017/02/27 01:07登録)
戦後の混乱期で不安定な日本経済の中スケールの大きな手形詐欺を行った天才的悪党の物語
詐欺の手口は鮮やかで舞台設定もよく考えられている
経済事犯では首謀者だったとまでは推定されるが証拠を掴ませない
捜査を進めてもどんな法律を適用しようと思っても巧みに逃げ切る
法律の抜け道・盲点を発見する点は天才的で魅力的
結局は逮捕されてしまうのだが主人公が刑事に最後に言い放った言葉も負けん気が溢れていてカッコ良ささえ感じた
悪い奴だとは思いながらも読後は爽快感さえ残る

No.11 7点 風桜青紫
(2016/01/27 22:47登録)
一応実話を元にしてるんだから、手形詐欺は説得力に乏しいうんぬんとかいうチープな批判は的外れ。そもそもリスキーな犯罪じゃなきゃスリルがないから小説として面白くないだろうに。しかしまあ、このようなタイプの作品は「よくわかんないけど、世の中そんなに甘くないんじゃね?」的な曖昧な思考の持ち主から、安直な批判を受けてしまう運命にあるんだろう。

神津恭介もそうだけど、彬光作品の天才キャラって適度にマヌケなので、見ていてかわいい。光一くん、天才天才盛り上げられてるわりには失敗続きだし、むっつりスケベだから、なんだか応援したくなってしまう。七郎も「恐るべき天才」とか盛りたてられてるわりには、ところどころ抜けていて、妙な親近感あり。太陽クラブの連中も、「これは仕事だ」みたいに割り切ってるわりには、変な友情が芽生えてやがる。木島とか悪党のくせして七郎に身をささげてくれるし、いい奴じゃん(人殺してるけど)。てかゴンザロwwwww。うーん、主人公たちが力を合わせて悪いことをしていく姿がなんだか微笑ましくて楽しかったです。しかし因果応報の法則なのか知らんけども、太陽クラブのメンバーにはもう少し救いがあってほしかったなあ……。

No.10 6点 いいちこ
(2015/12/25 16:55登録)
天才的犯罪者との触れ込みにもかかわらず、手形詐欺の手口がチープでリスキーであり、説得力に乏しい。
力作であることは認めるものの、時間の経過とともに陳腐化した印象を禁じ得ない

No.9 9点
(2014/04/29 17:03登録)
ある意味困ったことに、最初に読んだ高木彬光作品が本作でした。名作であることは間違いないのですが、この作家としては特に例外的な作品ですので、しばらくは作風に対する誤解をしていたのです。
確かに様々なジャンルへの挑戦を続けた巨匠ではありますが、少なくとも有名な他の作品は社会派であれ歴史ものであれ、基本的には論理的な謎解き要素を持ち、真相を明らかにしていくという構図を保持していました。ところが本作は詐欺師の視点から描かれた戦後の経済状況変遷史とも言えるほどで、ほとんどドキュメンタリー的な迫力を持った大作です。その意味では犯罪者を主人公とはしていても、作中でも比較されるルパンなどの冒険小説系とは一味違います。松本清張の『眼の壁』をミステリとしては絶賛しながらも、はるかに巧妙な詐欺の手口をお見せしようと宣言するプロローグも、リアリティーを演出する手段でしょう。

No.8 8点 ボナンザ
(2014/04/26 21:03登録)
本格もの以外で高木の最高傑作というとやはりこれと誘拐ということになろうか。
本作の特徴は隅田ではなく鶴岡を主人公にしたことにあるだろう。近年のピカレスク小説では隅田のような天才を主人公にしたがるが、鶴岡はそれと比べると極めて人間らしい主人公である。
作者の努力の賜であり、これ以上のピカレスクものには以後お目にかかることはないだろう。

No.7 8点 蟷螂の斧
(2012/12/07 20:20登録)
(東西ベスト100・既読分)リーダビリティは抜群。実際の光クラブ事件が題材となっていた。金融機関に勤めていた目から見て、手形偽造場面では駄目出ししたくなる点もありました(笑)。映画では主演・夏木勲、主題歌の「欲望の街」(ダウン・タウン・ブギウギ・バンド)が流行りました。

No.6 8点 りゅう
(2011/08/01 19:17登録)
 戦後の混乱した経済情勢の中で、天才的な頭脳を持つ主人公鶴岡七郎が巧妙な手口で金融詐欺を繰り返していく話です。かなりの長編ですが、それに見合うだけの読み応えのある作品です。一般的にミステリを読むときは早くラストを知りたいと思うのですが、この作品は詐欺の手口やストーリー自体が面白く、途中の過程が楽しめる作品でした。主人公の視点で語られる倒叙形式で、大きな謎や不思議さ、ラストの意外性といったものがないので、ミステリ性はさほど感じられず、エンターテイメント性や文学性重視の作品だと感じました。
 主人公が詐欺行為を行うのは、前半で自殺する「もうひとりの天才」隅田光一の影響が大きく、既存の権力や体制に対する闘争、自分の能力を証明する「自己実現」という意味合いが強いと感じました。主人公やその他の登場人物の人物造形が優れており、主人公の物の見方や考え方は興味深いものでした。
 最終的に主人公は彼の忌み嫌う法の裁きを拒否しますが、この作品にふさわしいラストだと感じました。

No.5 8点 itokin
(2011/07/11 17:54登録)
数十年ぶりの再読、当時すごい小説だなあとワクワクしたのを覚えているが、今読み返しても色あせていない。戦後の混乱した社会情勢、未整備な法の死角を付いた天才的な犯罪をそれほど違和感なく描いている。特に、終盤のまとめ方が良く後味も悪くない。

No.4 8点 kanamori
(2010/07/30 20:57登録)
東大法学部の学生グループによる手形詐欺などを扱った悪漢・クライム小説の傑作。
実際にあった東大生の経済犯罪集団をモデルにしているだけに、とくに主犯の天才詐欺師・鶴岡の造形などリアルで迫真性がある。作中で、清張の「眼の壁」の手形パクリ詐欺の手法など児戯に類すると言わせている程です。
巨編ですが、あっというまに読み終えるリーダビリティ抜群のピカレスク・ロマンです。

No.3 8点 江守森江
(2009/05/22 09:41登録)
社会派嫌いの私も引き込まれたピカレスクロマンの傑作
全盛期の高木彬光は凄い!

No.2 9点 結奈
(2009/05/19 15:53登録)
読んでいる手が止まりませんでした。
ワクワク感、ドキドキ感、そして感嘆の溜め息。
大変おもしろかったです。

21中の書評を表示しています 1 - 20