寝台車の殺人者 |
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作家 | セバスチアン・ジャプリゾ |
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出版日 | 1966年10月 |
平均点 | 5.40点 |
書評数 | 5人 |
No.5 | 5点 | ROM大臣 | |
(2021/08/23 16:41登録) 寝台列車で女性の絞殺体が発見されるたのを皮切りに、同じコンパートメントに居合わせた乗客たちが一人また一人殺されていくという作品だが、乗客たちをつなぐ「環」の解明がユニークである。被害者だけでなく捜査側の刑事たちも含めて大人たちの醜悪さに比べ、乗客の一人である若い娘バンビと六歳年下の高校生のカップルはひたすら健気で、初々しささえ感じられ。どこか青春小説の書き手である名残がうかがえる。 |
No.4 | 5点 | 人並由真 | |
(2020/07/01 05:52登録) (ネタバレなし) その年の10月の土曜日。マルセーユ発パリ行きの寝台列車のコンパートメントの中から、まだ若い女性の殺害死体が発見される。死体の素性は、化粧品会社の営業部長で30歳のジョルジェット・トーマと判明した。パリ警視庁のグラジアーノ(グラジ)警部を筆頭とする捜査陣が被害者の身元を探り、同じ車内に乗り合わせた乗客たちを捜索する。一方で、新聞記事から殺人事件を知った、当日にジョルジェットと同じ車室にいた38歳の台所用品製作会社の社員ルネ・カプールは、証人として自ら警視庁に連絡。だがそれと前後して。ジョルジェットと同じ車室にいた乗客たちは、何物かによって一人また一人と殺されていく。 1962年のフランス作品。作者の初めての長編ミステリ。 連続殺人事件にからむ(中略)ダニットの真相は豪快ではあるものの、いかんせん(中略)という弱点がある。個人的にはむしろもう一つのミステリ的なサプライズの(中略)という趣向の方が印象に残った(一瞬、え? この作品でそういう大技を!? と目が点になった)。 ただしミステリ小説としての仕上げの面で、その衝撃の効果を存分に活かしているとはとてもいいにくく、最後のドンデン返しを盛り上げる演出のため、前半~中盤のうちにもう少しやっておく仕込みの余地はあったんじゃないか、と思う(まあ、あんまり丁寧に伏線を張ると、読者に見破られる危うさはあるんだけれど)。 もしかしたら読みやすい新訳版でも出たら、だいぶ印象は変わるかな? ちなみに読後にTwitterで本書の感想を探ってみると、2013年10月頃の「週刊現代」の読書人向けのページで、連城三紀彦が「わが人生最高の10冊」を掲げて、その中の一冊にこれを選んでいたらしい(ミステリジャンルの中からは、この一冊だけ……だったのかな? Twitterの噂ではそのようにも読める)。 なるほどやや生臭いそして切ないロマンスの交錯と、技巧派トリックのアンサンブルと書くと、たしかに連城作品に通じるものがあるかも。 自分の現在の評点は、若書きゆえのファール感を見逃せず、ちょっと辛めに。 つまんないとか、出来が悪いとかいうより、まだミステリ執筆のコツを学びきる前にこれを書いちゃったのが惜しい、そんな思いが強い一作です。 |
No.3 | 4点 | 蟷螂の斧 | |
(2019/05/02 22:24登録) フランス、リヨン駅に着いた寝台急行列車のコンパートメント内で、女性乗客の死体が発見された。金は盗まれていない。怨恨か?。相客は女性三人、男性二人。捜査を尻目に次々と殺されていく同室の客たち。「シンデレラの罠」の鬼才S・ジャプリゾのデビュー作。 当時、謎めいた文体が新鮮であったらしい。しかし、訳文のせいか非常に読みにくい。一人称と三人称がごったくたになっている文章がある。ストーリー展開は有名な前例があり、今一つの感。本格ものとも言えないし、サスペンスフルとも言えなかった。 |
No.2 | 6点 | 空 | |
(2018/12/13 18:27登録) 訳者あとがきで、本作が原作の映画が傑作であったと書かれていたので、気になって調べてみたら、『Z』等社会派映画で有名なコスタ=ガヴラス監督のデビュー作で、『七人目に賭ける男』の邦題で公開されたそうです。 邦題は直訳ですが、原題は実は多少のネタバレになっています。フランス語の知識がなくても、よく見れば気づくはず。ただし作中でも2/3あたりで、そのことはほのめかされます。 久しぶりの再読なのですが、内容は全く覚えていませんでした。基本的なアイディアはある英国有名作のヴァリエーションなので、そのことは初読の時も気づいたはずなのですが。原案に加えたひねりはいいのですが、真相解明部分で効果的に説明されていないのが残念です。しかしそれよりも、途中に入れた「時間の交錯」(カットバック)の扱いが中途半端な点、会話が気取りすぎで説明不足な部分がある点の方が不満でした。 |
No.1 | 7点 | 斎藤警部 | |
(2015/05/25 16:09登録) 昔の創元さんでは猫のマークでしたが、この本のスタイルはむしろ(新?)本格推理じゃないですかね。南仏を走る寝台急行コンパートメント内で若い女性の絞殺屍体が発見されます。警察は同乗者五人(男二女三)を目撃者ないし容疑者として追いますが、追った先から何者かに殺害されて行きます。さすれば、まだ生き残っている同乗者の中に犯人が。。と考えるのが人の常ですが、、となればまたその裏を突きたくなるのがミステリ読みの常ですが、、果たして。。 強力なサスペンスに目くらましされた真相はちょっとした驚き。 |