四人の女 |
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作家 | パット・マガー |
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出版日 | 1985年01月 |
平均点 | 6.20点 |
書評数 | 5人 |
No.5 | 6点 | ROM大臣 | |
(2021/07/29 13:36登録) 冒頭からいきなり身元の分からない人物がビルから落下する場面で始まるこの作品は、殺される予定の人物を探すという非常にユニークな設定が使われている。 辛口で知られる人気コラムニストを巡り、その前妻、現夫人、婚約者、愛人が一堂に介する。元夫が四人の女たちの誰かを殺そうとしていることを知った前妻は、なんとか彼の犯行を未然に食い止めようと、必死に過去を思い出しながら彼の狙いを推理しようとする。コラムニストは虚栄心ばかりが高く、人の真心を平気で踏みにじるような「女の敵」ではあるのだが、前妻の口から語られるその人物像はひどく人間的でなぜか憎めない。卓越した人物描写が楽しめるる作品。 |
No.4 | 7点 | zuso | |
(2020/04/09 20:19登録) 人気コラムニストが、前妻、現夫人、愛人、フィアンセの四人の女のうちの誰かを殺そうとする。読者はだれがいつ殺されるのかを考えながら読みます。 本格ミステリという評価軸から離れれば、ロマンス・ミステリとしてほぼ完璧。 |
No.3 | 5点 | E-BANKER | |
(2016/12/31 14:03登録) 1950年発表。 「被害者を搜せ」や「七人のおば」など、一風変わったミステリーで知られる作者の長編作品。 原題は“Follows,as the night” ~前妻、現夫人、愛人、そしてフィアンセ・・・。人気絶頂のコラムニスト・ラリーを取り巻く四人の女性。彼は密かに自宅バルコニーの手摺に細工をしたうえで、四人を揃って招待し、ディナーパーティーを開いた。彼にはその中のひとりを殺さねばならない切実な理由があった。その夜遅く、NYはイーストリバー近くの路上に落下したのは誰か? 才人マガーがものにした傑作恋愛小説にして、「被害者探し」の新手に挑んだ傑作ミステリー~ これは・・・ミステリーじゃないな。 紹介文のとおりで、「被害者は一体誰なのか?」という魅力的な謎は存在する。 これまでも「被害者」や「目撃者」など、単純な「犯人探し」ではない趣向を凝らしてきた作者だから、本作も一筋縄ではいかないプロットなのかと身構えたのだが・・・ そういう方向性とは違ったわけだ。 ストーリーテリングはさすが。 シャノン、クレア、マギー、ディー・・・四人の女性もそれぞれが強い個性を持ち、ラリーと絡む中で、人間臭さを魅せ続ける。 中でも最初の妻であるシャノンとのパートが一番ボリュームがあり、そこにプロットの鍵があることに・・・(ネタバレっぽいが) 本作の白眉はもちろんラストの展開なんだろうけど、因果応報っていうか何というか、「人間ってやっぱりそうなんだよねぇ」っていう感想になった。 ついつい華やかなものに目を奪われがちだけど、幸せってそういうところにはないんだと言いたいんだろうか? きっとそうなんだろうな。 何だか全然ミステリー書評じゃなくなっているから、本作はやっぱり普通のミステリーとは違うんだろう。 でも「恋愛小説」っていうのも違うしなア・・・ とにかく独特の雰囲気を持つ作品ということ。 (あまり好みの方向性ではないのだが・・・) |
No.2 | 7点 | nukkam | |
(2014/10/17 11:43登録) (ネタバレなしです) 誤解を恐れずに書きますがマガーは緻密な謎解きとか読者を欺くテクニックは決して上手くないと思います。ミスディレクションなんか不自然なまでに強引なことがあり、却って真相が見破られやすい時もあります。しかしその弱点を補って余りあるのが、卓越したストーリーテリングと多彩な人物描写です。1950年発表の第5長編の本書は「被害者探し」の本格派推理小説ですが、主要登場人物をわずか5人に絞ったためか人間ドラマとして一段と深彫りされたような感じがします。本書以降のマガー作品は犯人探しになったためか翻訳が止まってしまったようですがこれは非常にもったいないですね。マガーの本質は謎解きの形式とは別の次元だと思うのですが。 |
No.1 | 6点 | kanamori | |
(2010/08/31 18:09登録) パット・マガーの第5作は、「被害者を捜せ!」「七人のおば」同様に”被害者当て”のミステリではありますが、明確な探偵役は置かずサスペンス風の物語になっています。 プロローグでクライマックスのバルコニーからの墜落死のシーンを見せておき、カットバック手法で、殺人を企てる人気コラムニストと”被害者候補”の4人の女性の関係が描かれていきます。 ミスディレクションが充分な効果をあげていないように思いますが、主人公ラリーの上昇志向で自己中心的な性格と心情の描写は卓越したものがあり、その点は満足できる内容でした。 |