| ◇・・さんの登録情報 | |
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| 平均点:6.05点 | 書評数:212件 |
| No.212 | 6点 | 悪魔の収穫祭 トマス・トライオン |
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(2025/10/29 21:46登録) 余所者に対して排他的な閉じられた空間、愛憎渦巻く密な人間関係、そして土俗的信仰といった田舎社会の特徴がホラーを語る上で格好な舞台と状況を提供してくれる。 本書は、そうした田舎に都会から移住してきた家族に向かられる。一見したところ善良で人の良さそうな村人たちのファナティックな言動の脅威が描かれている。 |
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| No.211 | 7点 | 地獄の家 リチャード・マシスン |
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(2025/10/29 21:41登録) ある富豪から幽霊屋敷の調査を通して死後の世界を証明するように依頼された科学者とその妻、心霊主義者と自称超能力者の四人が悪意に満ちた超常現象に挑む。 性的倒錯とモラルの崩壊、合理的精神と超自然的精神との闘いといった問題を提起しながら、憎悪という情念について遺憾なく語り、古典的幽霊屋敷ものに新境地を拓いた作品として名高い。 |
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| No.210 | 9点 | オランダ靴の秘密 エラリイ・クイーン |
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(2025/10/13 19:57登録) 国名シリーズ中、最もエレガントな論理を展開する 些細な物証から真相が導き出される過程には知的ショックを覚える。 |
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| No.209 | 7点 | 海野十三集 三人の双生児 海野十三 |
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(2025/10/13 19:55登録) 初期の探偵小説、ショートショート、故郷を舞台にした幻想小説など、どれも科学とエログロナンセンスが交錯する作品が揃っている。 |
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| No.208 | 5点 | 聖アンセルム923号室 コーネル・ウールリッチ |
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(2025/09/20 19:22登録) あるホテルのある一室を舞台として、そこで起こった人間ドラマ。七つの話からできている連作短編集で、最初が一八九六年のホテル開業日、最後が一九五七年のホテル閉鎖日となっている。 作者はホテルの部屋そのものを主人公としたかったらしいが、七つの話それぞれが平面的で、話そのものもありふれているので、部屋の性格などが立体的に浮き彫りになるはずはない。良くも悪くも作者らしいセンチメンタルな作品である。 |
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| No.207 | 4点 | 殺人混成曲 マリオン・マナリング |
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(2025/09/20 19:17登録) 登場人物にクイーンやメイスンやポアロなどが飛び出し大騒ぎする。 パロディといえば、推理小説の神髄を把握してこそのパロディだが、この場合はそういうものがない。いたずらにゴタゴタした混乱が続き、何が何だかわからにうちに幕となる始末。 |
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| No.206 | 6点 | 理想的な容疑者 カトリーヌ・アルレー |
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(2025/08/16 21:52登録) 夫婦喧嘩の挙句に妻を自動車から放り出した男が、その後妻がひき逃げされたのではないかと案じられる立場に立たたされ、遂には妻殺しの容疑者として逮捕される。 いかにもフランス心理小説の伝統を踏まえた繊細で皮肉で哀しいミステリとなっており、男と女の間に横たわる永遠の暗黒が、くっきりと姿を現わしてくるのがいい。 |
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| No.205 | 7点 | わが目の悪魔 ルース・レンデル |
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(2025/08/16 21:45登録) ロンドン市西北の一画の独身下宿に住む同性の二人の男。同性ながら似ても似つかぬ二人。 この二人が同姓ゆえの郵便物の取り違えをきっかけとするトラブルに巻き込まれる過程を交互に描く着想がうまい。しかも、一方が相手に抱く疑心暗鬼を片方は知らず、その些細な日常生活の行き違いが恐ろしい破局へと徐々に発展する面白さ。これぞサスペンスの醍醐味。この原タイトルの邦訳は予告では「わが目には悪魔と見えて」だったらしいが、この方がいいのになぜ変更されたのかが疑問。 |
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| No.204 | 7点 | 死の泉 皆川博子 |
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(2025/07/30 19:33登録) ナチスの優生施設を舞台に、エリート医師クラウスの、なかば狂気ともいえる美への執着が引き起こした悲劇を中心に語られている。 ここには、プロットに始まり舞台設定、人物造形、心理描写にいたるまで、あらゆる点において、この二層構造の仕掛けが生きている。また単なる謎解きで終わらない人間ドラマとしての魅力も十分兼ね備えている。 |
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| No.203 | 4点 | 血ぬられた報酬 ニコラス・ブレイク |
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(2025/07/30 19:26登録) 犯罪計画そのものに緻密性を欠く上に、犯罪者の一人が超人的な底の浅い人物のため、心理描写が退屈になる個所が多いのが残念。 |
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| No.202 | 8点 | 九尾の猫 エラリイ・クイーン |
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(2025/07/11 21:14登録) 連続殺人鬼(猫)との戦いを描いた傑作。 メディア社会の中の名探偵の苦悩という問題をリアリズムに扱い、現在もなおその尖鋭性を失っていない衝撃作。 |
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| No.201 | 6点 | 時計の中の骸骨 カーター・ディクスン |
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(2025/07/11 21:12登録) 古い大時計を巡るオークションでのドタバタ騒ぎに始まるシリーズ中、最もスラップスティックな一作。 卿の暴れっぷりが楽しいながらも、どことなく不気味な作品。 |
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| No.200 | 7点 | 第二の銃声 アントニイ・バークリー |
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(2025/06/28 18:38登録) 余興で行われた「殺人ゲーム」の被害者役が本当に射殺されてしまう。容疑者だらけの状況下、シュリンガムは、7通りの解決に辿り着くのだが。 大胆かつ皮肉に満ちた構成はあまりにも印象的。 |
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| No.199 | 7点 | シャドー81 ルシアン・ネイハム |
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(2025/06/28 18:35登録) 米空軍パイロットがベトナム戦争中に戦闘爆撃機を見事に窃取し、それを使ってジャンボ旅客機をハイジャック、乗客と引き替えに巨額の金塊を要求する。 アイデアやストーリーが斬新で、その奇想天外さを納得いくリアルさで描いている。 |
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| No.198 | 7点 | 殺す風 マーガレット・ミラー |
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(2025/06/13 20:43登録) 平凡な日常性の中に、どこか明確には指摘しにくいような異常性をとらえている。ありふれたメロドラマでありながら、その影にミラーという気味の悪い女性の眼が陰々と光っているのが分かる。 男の行方不明に至るまでの展開が、達者な会話で運ばれつつ、徐々に不安が広がっていく効果が巧い。 |
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| No.197 | 4点 | 海の牙 水上勉 |
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(2025/06/13 20:39登録) 水俣病に材をとり、リアリスティックな描写で圧倒される。これがどこまで、実際の状況に則っているのかは分からないが、症状にはショックを与えられる。 ただ惜しむらくは、こういった社会悪の追求が、ありきたりのロマンチシズムに堕している。目を向けるべき対象をないがしろにしてセンチメンタルにすり替えてしまっているところが残念。このことは、犯行の動機にも言える。 |
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| No.196 | 6点 | スイート・ホーム殺人事件 クレイグ・ライス |
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(2025/05/25 20:23登録) 女流ミステリ作家マリアン・カーステアズには長男アーチ―十歳、長女ダイアナ十四歳、次女エイプリル十二歳の三人の子供がいる。隣家で殺人が起こると、子供たちはその犯人を捜し出し、ママの手柄にして著書が売れるようにと、警察を出し抜きあれこれデータを集めてまわる。この子供たちの活躍が、作品を愉快でほのぼのとしたものにしている。 |
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| No.195 | 8点 | 黄色い部屋の謎 ガストン・ルルー |
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(2025/05/25 20:18登録) 密室や犯人消失など古典的なミステリの構成をとりながら、本格推理ものにありがちな、分析哲学めいた謎解きのための謎解きではない推理を楽しめる。 事件を通して登場人物たちの隠された過去、とりわけ新聞記者である主人公ルールタビーユの抑圧された過去が見えてくるところは、優れた精神分析のテクストを読むような興奮がある。 |
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| No.194 | 5点 | 殺人をしてみますか? ハリイ・オルズカー |
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(2025/05/05 20:23登録) テレビクイズの製作部を背景としたミステリで、その点では目新しい。落ち目になったクイズプロの人気を挽回しようと、やり手のプロデューサーが大奮闘するところは面白いが、ミステリとしては独創的ではない。 死体の捨て場所が意表をついているほかは、動機、殺人方法など、みな陳腐である。 |
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| No.193 | 4点 | ギデオンの一日 J・J・マリック |
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(2025/05/05 20:19登録) ギデオンという鬼警視を中心に、数々の犯罪事件が並行して起こるのを描いた警察日記英国版で、その点に目新しさはあるものの、事件そのものが相も変らぬ強盗や殺人。それを描く作者の眼も通俗的なもので、主人公警視の性格にも魅力がない。 |
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