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ミステリの祭典

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わが目の悪魔

作家 ルース・レンデル
出版日1982年06月
平均点6.33点
書評数3人

No.3 7点 HORNET
(2019/07/21 16:00登録)
 やや内向的でありながらも平凡に暮らす一住民のようでいて、実は内に狂気を宿し、昏い感情を燃やしている隣人―こうしたテーマの作品は後年、また最近になっても多くみられるようになったが、1970年代という時代に書かれた本作品はその嚆矢とも言えるだろうし、今読んでも十分に面白かった。
 異常者アーサーの、保身のための小手先の悪事がどんどん泥沼にはまっていく様子、それにより人生が狂わされていながらそのことを知らないアントニー、このストーリーがどこに向かいどう着地するのか、ハラハラしながら展開を追うことができた。
 結末はややあっけなく、氏の他作品も知っている方々には物足りなさもあったようだが、初めて氏の作品を読む私には期待以上の面白さだった。

No.2 6点 mini
(2015/08/11 09:58登録)
発売中の早川ミステリマガジン9月号の特集は、”幻想と怪奇 乱歩輪舞ふたたび”
昨年に続く怪奇ホラーと乱歩との関係特集だが、昨年に便乗企画やっちゃったからなぁ、当サイトでの私の書評、アンソロジー(国内編集者)「乱歩の選んだベストホラー」を参照してくださいませ
もう1つの小特集が”追悼ルース・レンデル”
先日には同じ早川からポケミスで「街への鍵」も刊行されている

「ロウフィールド館」を読むまでは、私はレンデルのノンシリーズ代表作は「わが目の悪魔」だとずっと思っていた
しかしレンデル逝去のニュースに今年になって「ロウフィールド館」を読んでみたら気が変った
「ロウフィールド館」って館もの嫌いな私としては題名が気に入らず、長年積読だったんだよな
しかし読んでみると「ロウフィールド館」って内容的に全然いわゆる”館もの”じゃないんだよね、やはりノンシリーズの代表作は「ロウフィールド館」だと思う
そんなわけで「わが目の悪魔」相対的に評価が下がってしまったが、しかしである、やはり「わが目の悪魔」はなかなか良作である
「ロウフィールド館」が現代版カントリーハウスが舞台なのに対して、「わが目の悪魔」は大都市ロンドンの普通の集合住宅での日常が舞台になっている
互いに何の面識も無いような住人同士のすれ違い、こんな些細な出来事から話を大きく膨らませるテクニック、そして日常の中に潜む狂気
異常な狂人が都会に潜んでいるのではなく、ちょっとした嗜好を持つに過ぎない見掛けは普通の小心な男
そこからの展開は見事で、サスペンス小説らしさでは「ロウフィールド館」を上回っている面も有る
ただやはりちょっと地味かなぁ、「ロウフィールド館」に比べてケレンが足りない
私は地味さを弱点とは思わない読者だが、レンデルという作家に関しては「ロウフィールド館」くらいいやらしいネチこさが有った方が似合うのかも

No.1 6点 Tetchy
(2009/09/17 23:13登録)
もっとストーリーに起伏があるのかと思っていたが期待していたほどではなかった。アーサー・ジョンソンが己の基盤から逸脱し、途轍もない恐怖を纏うのかと思えば、そうでもなく、終始劣等感を抱いた小心者だった。
結末も読者を突き放すように唐突に終わり、カタルシスを得ることがなかった。
そう、題名の“わが目の悪魔”が誰の心にも巣食っているというのは判るのだが、それが暴走しなかったのが物足りなさの根源か。

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