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ミステリの祭典

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ことはさんの登録情報
平均点:6.21点 書評数:284件

プロフィール| 書評

No.64 8点 甦った女
レジナルド・ヒル
(2020/03/14 17:19登録)
ダルジール、アメリカに渡り大活躍の巻。
シリーズとしては異色作だろう。
いやあ、でもやっぱりダルジールが活躍する話は面白い。
プロットも(ヒルにしては)直線的にすすみ、一気に読める。ヒル作の中では世評は低く感じているが、個人的にはベスト5に入る。


No.63 7点 骨と沈黙
レジナルド・ヒル
(2020/03/14 17:06登録)
ゴールド・ダガー受賞で、世評的には代表作です。
ヒル作品としては、ミステリとしてしっかりしているので、そこが評価されたのかな?
でも、ヒルの面白さは、個々のキャラクターの心理/台詞だなぁと思う。
この後の作品のほうがますます面白くなるのでが、個人的には上位の評価ではないです。
発売時は「厚っ!」と思ったけど、これもこの後の作品のほうがますます厚くなるので、いま見ると普通に感じるようになってしまった。


No.62 5点 闇の淵
レジナルド・ヒル
(2020/03/14 16:41登録)
エリーに焦点があたった作。
エリーはいまひとつ好きになれないんだよなぁ。常に喧嘩腰という感じで、他キャラクターは深みがある感じがするのに、エリーだけは表層的なフェミニストという感じ。ヒステリックな感じも好きになれない。(作者は愛着がありそうだけど)
全体的には、ダルジール、パスコーはいつもの味でいいのだが、シリーズでは「薔薇は死を夢見る」以降では一番下。
(でも「薔薇は死を夢見る」以前よりは面白い)


No.61 7点 子供の悪戯
レジナルド・ヒル
(2020/03/14 16:27登録)
ウィールドの同性愛に着目された部分が面白い。
ダルジールの台詞が懐が深い。「それはべつに昇進の理由にならんぜ」etc。ヒル、この辺の台詞はうまいなぁ。
プロットとしては、遺産相続、新警察長任命などの、いくつかの話が並行してすすみ、重層的になってきた。かわりにミステリ興味は薄め。


No.60 8点 死にぎわの台詞
レジナルド・ヒル
(2020/03/14 15:54登録)
三つの事件が同時進行していく。最後には、それぞれの話が見事にからんできて、プロット構成としてはヒル作品では一番だと思う。
ヘクター、シーモアも登場し、群像劇の味わいが増加してきた。この作品から「ダルジール・シリーズ」の味が固まってきたと思う。
最初に読むダルジール物としてお勧め。


No.59 9点 薔薇は死を夢見る
レジナルド・ヒル
(2020/03/14 15:37登録)
ヒルの既読では最も好きな作品。
「ひとりの男の過去に、いくつもの”疑惑の死”が……」という話。
この手の話、普通は後半にすすむにつれ、少しずつ事件の輪郭が見えてくるものだが、この話はどっちにすすむのか(作者の思惑すら)よめない。
後半に入ってもよめない。ラスト近くになってもよめない。
その綱渡りみたいな感覚に、独特のハラハラ感があって、とても好き。
傑作というよりは、個性的な味わい(珍味?)というのがあう。
ヒルの代表作(典型的な作)ではないし、ひろく好かれる作でもないと思うけど、わたしは大好き。


No.58 4点 点と線
松本清張
(2020/03/07 02:42登録)
最初に……。「文春文庫」版がおすすめ。
挿絵付きだが、この絵が味があるんだよね。
また、解説の有栖川有栖の文章が的確(共感できる部分多々あり)。かなり否定してるんだよね。よく解説にこんな否定的な部分の多い文章をのせたなと思う。
作品は……。
社会派の先駆けという位置づけだが、読んでみると社会派の味わいはそれぼどない。
文体は簡潔できびきびしていて心地よい。無駄な描写はあまりなく、仮説と調査だけで物語がすすむ。これは社会派というより、本格の味わいだよね。
全体の流れでいうと、まず「なんでみんな心中って決めつけてるんだろう?」と思いながら読みすすめました。その結果……。えー、うそー、それだけー!? ここは全面否定。ありえない。
そして、いわゆる「4分間のトリック」。
これは評価します。「4分間のトリック」という言葉のせいで、犯人がしかけたトリックのように語られていることが多いように思うけど、「トリック」というより「手がかり」だよね。
対比されるべきなのは、例えば「エジプト十字架の謎」のあれとかでしょ!
「意外で魅力的な手がかり」として高評価します。
最後の問題は、やっぱりメイン・トリック。愕然としました。そんなの最初に気づけよ!って話です。
歴史的価値のような点でも、「点と線」をリスペクトしてるなぁと評価する作品が無いので、加点は無し。
5点にしようかとも思ったけど、心中の件がやっぱり腹立たしいので4点だ。


No.57 5点 まるで天使のような
マーガレット・ミラー
(2020/03/07 02:17登録)
形式は私立探偵小説である。
私立探偵小説は、やっぱり「主人公に共感できるか」にかかっていると再認識した。主人公に共感できないのだ。ちょっと風変わりな主人公を眺めながら物語をおっていく感じ。微妙に物語にのれない。
ラストのサプライズは、どうかなぁ。狙いは嫌いじゃないけど、ガツンとこなかった。


No.56 7点 殺す風
マーガレット・ミラー
(2020/03/07 02:10登録)
ミステリ的「解決」があるので、ミステリにジャンル分けするのは妥当だと思うが、最終盤まで、ほぼ普通小説。
失踪人がいて、どことなく不安感が漂うけれど、サスペンスというほど強烈でない。(佐藤正午の「ジャンプ」を思い出した。ちなみに「ジャンプ」はミステリではないと思う)
世界観としては、心地よいとも感じられる部分もあり、そのバランスがとても独特。
ミラーは代表作といわれることがある4作しか読んでいないが、中では1番好き。多くの人に勧められるとは思わないが、(細々とでも)評価されつづける作品だと思う。
なんとなく、チャンドラーのある作品を思い出した。


No.55 7点 狙った獣
マーガレット・ミラー
(2020/03/07 01:56登録)
最初に誰がつけたのか、タイトルがいい。「狙った」という言葉の選択がよい。
ミステリをたくさん読んでから読むと、「このパターンか」と思う部分があるが、それは逆に先駆者として評価すべきと思う。
「どこが……」と指摘しづらいけれど、不安がかきたてられる描写もよし。
サスペンスの定番の良策だと思います。


No.54 5点 鉄の門
マーガレット・ミラー
(2020/03/07 01:50登録)
冒頭数ページは、描写が印象的だったが、全体的には、たぶん「好みではない」ということなのだと思う。
登場人物が、みんな少し歪んでいる感じで、あまり魅力を感じなかった。(好きな人はその歪み方が面白いと思うのか?)
ストーリーも淡々とすすむ感じがして、終幕の狂気が見えてくる部分も、迫真性が感じられなかった。(好きな人は身につまされるのか?)
退屈はしなかったので、否定的な評価はしないが。
ロス・マクと共通する家庭の悲劇という評をみて、つらつら考えていたら、ラスト数行が「さむけ」と重なる気がして興味深かった。


No.53 5点 囚人の友
アンドリュウ・ガーヴ
(2020/03/01 18:16登録)
今回は舞台設定に凝った要素がないのが残念。
社会派の要素を入れようとしているのか、保護観察師が主人公。でもストーリーは型通りのサスペンスで、保護観察師の設定は物語の入り口なだけで、社会派風味はあまりなしです。
全編にわたりひとつひとつの段取りが丁寧で、しっかりガーヴ風味です。終盤はもうすっかりクロフツ!(それもガーヴの味だけどね)
でも展開の意外性はあまりない(それもガーヴ)
ガーヴの中では下の方かな。


No.52 5点 兵士の館
アンドリュウ・ガーヴ
(2020/03/01 18:08登録)
意識して読むと、これも3部構成。ちょうど転換点の事象が1/3,2/3で起きる。
今回の舞台設定はアイルランドの遺跡で、他の作品と比べると、ちょっと魅力が薄い。
他に今まで読んだ作品と少し違うのは、心理サスペンスというより社会派サスペンスといったほうがあう作風ということ。社会派風の部分が、ガーヴはつくりものめいてるなぁ。
主人公が戦うモチベーションが正義感だけなのも弱い。
ガーヴの中では、下の方だなぁ。


No.51 6点 カーテン ポアロ最後の事件
アガサ・クリスティー
(2020/02/22 17:57登録)
ん十年ぶりの再読。
これも「攻略作戦」にそそられての再読。「攻略作戦」で指摘されているノワールの味わいは「なるほど」とは思うけど、評価したいとは感じられませんでした。
思いついたのは、クイーンの「悪の起源」との類似。真似した/しないではなくて、たまたま同じテーマに対して物語をつくって、出来上がりがこうなるかという興味。とくに物語の収束のさせ方に、両巨匠の違いがあらわれていて面白いです。


No.50 4点 高い城の男
フィリップ・K・ディック
(2020/02/22 17:46登録)
虫暮部さんの意見にとても共感。付け加えることなし。
これ、世評が高いけど、なんでかなぁ。
「なるほど、好きな人はそういうところを楽しんでるんだ!」と腑に落ちたいんですよね。


No.49 6点 ユービック
フィリップ・K・ディック
(2020/02/22 17:42登録)
後半、読んでいてジョジョを思い出した。こんな敵、ジョジョにいたような? 荒木飛呂彦、ディック好きだったんだなぁ。
実に個性的で、あ、これ好きな人いるのわかる、と思うけど、私の好みと少しちがった。


No.48 3点 死の猟犬
アガサ・クリスティー
(2019/12/12 01:10登録)
これは駄目でした。
「検察側の証人」は、無駄なくよくできた好作だと思いますが、後半のホラーテイストの作品は全く駄目。「最後の降霊会」にいたっては、「どこを楽しめというのか?」と思ったほどです。超常現象をありという設定で、「はい、超常現象が起こりました!」といわれて、どうすればよいのか……。
「検察側の証人」がなければ2点にしていたところです。
「謎のクィン氏」は大好きなのですが、同一人物の作品とは思えない程です。翻訳によるところもあるのかなぁ。


No.47 7点 針の誘い
土屋隆夫
(2019/12/01 21:35登録)
再読。(ほとんど忘れていた)
無駄なく、ミステリのプロットだけという感じで清々しい。謎解きミステリファンならば、楽しめる作品だと思う。
ただ、もうちょっと試行錯誤があったほうがよい気がする。簡単に真相にたどりついている感はある。
また、土屋隆夫といえば、「一人の芭蕉の問題」の文学論争があるが、この作品の文学味は、ほぼ皆無。土屋隆夫の文学味は好みでないから好感。本作も千草検事の日常風景(特に冒頭数ページ)はまったく無意味に感じられる。
最後の犯人の独白は、現代でも通用する気がする。
気になるのは、真相を知って読むと(ネタバレ)あまりにも偶然が過ぎる目撃者はどうなの、と思う。


No.46 5点 群衆の悪魔
笠井潔
(2019/11/17 13:38登録)
当時のパリを描くことが主で、ミステリはほぼ付け足しの感じがした。
かなり昔の記憶なので、いま読んでどう思うかは疑問だけど、再読するのは気合がいるなぁ。
それにしても、今まで投稿無しとは!?


No.45 5点 熾天使の夏
笠井潔
(2019/11/17 13:35登録)
うん、ミステリではない。
矢吹駆ファンのための、キャラクター出自小説。
それも笠井潔なので、思想的出自。
ま、プロット的なものがなにもないのに読ませるのは流石。

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