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ミステリの祭典

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ことはさんの登録情報
平均点:6.19点 書評数:298件

プロフィール| 書評

No.78 7点 死は万病を癒す薬
レジナルド・ヒル
(2020/04/14 00:34登録)
ダルジール・シリーズで、クリスティ的なクローズド・サークルをやるとこうなるのか。
前半は、シリーズ・キャラでない人物視点がかなり長く(退屈ではないけど)いつもの楽しみとちがって、ちょっと戸惑った。
ダルジールは、まだ調子がいまひとつで、まるでパスコーが上司のよう。
ルートの件やら、ダルジールの暗躍(?)など、飽かずに楽しめたけど、長さの割にはインパクトはないかな。これは、(厚さのため)シリーズ・ファンでないと途中で飽きてしまうかも。


No.77 6点 ダルジールの死
レジナルド・ヒル
(2020/04/14 00:28登録)
謎解きミステリではないと思います。
ルエル名義の作の冒険スパイ物のプロットに、ダルジール・シリーズのキャラをぶちこんだ感じとでもいうのでしょうか。
ハスコーがとうとう独り立ち。以降の作でも、まるでダルジールの上司みたい。
シリーズ・ファンとしては、キャラ物としては楽しめますが、冒険スパイ物が好みではないので、後期作では、下から二番目かな。


No.76 6点 真夜中への挨拶
レジナルド・ヒル
(2020/04/14 00:19登録)
久しぶりに「謎」の興味でひっぱる話。
(後期作は、いろいろな話が並行してすすみ、「謎」はメインでなかったりするので……。ま、それがいいのだけど)
とはいえ、この話は「解決」はしりすぼみな感じ。ヒルは「謎と解決」でみせる作家ではないのだなぁと、あらためて認識。
ダルジールとノヴェロの関係性が、(当人同士の感覚はともかく)よんでいるといいコンビな感じがする。
作者としては、「ダルジール/パスコーでやっていたことを、パスコーが優秀になりすぎたためできなくなったので、かわりにノヴェロでやっている」のだと思う。
後期作では下の方。でも他ヒル作品が楽しめるならば、これも楽しめるはず。


No.75 7点 死の笑話集
レジナルド・ヒル
(2020/04/11 22:05登録)
「死者との対話」の続編です。「死者との対話」を読んでいない人は前作からどうそ。
「死者との対話」が楽しめた人は楽しめるはず。
前作につづいて、ボウラーもメインのひとり。複数の話が重層的にすすむ。
いやー、それにしても厚い。もうヒル、書きたいこと全部書いてるだろ。
飽きずに読ませるんだけと、パスコー/ルートのパートは、どうもあまりのれなかったなぁ。それが最後にああ絡んでくることはよかったけど、途中は冗長に思った。その分「死者との対話」よりは落ちる印象。


No.74 8点 死者との対話
レジナルド・ヒル
(2020/04/11 21:59登録)
(厚すぎてヒル初読には勧められませんが)ヒルの代表作だと思う。
複数の話が絡みながら重層的にすすんでいく構成は、この作品が最もよくできている。新人ハット・ボウラーも加わり、さらにチームの群像劇の風味が増してきた。
今回はここ数作の中では最も「事件」にフォーカスされ、謎解きミステリとしては充実している。
ある点は、結末がついていないので(続編「死の笑話集」につづく)、人によっては不満があるかもしれないが、個人的には気にならず、全体的に大満足。


No.73 7点 ただ一度の挑戦
パトリック・ルエル
(2020/04/11 21:41登録)
主人公が警官で、警察小説の趣が強いが、IRAなども絡んできて本筋はスパイ小説。とはいっても、他ルエル作品より、日常的設定なためか、迫真性を感じられた。
展開が読めずに、だいぶ楽しい読書だった。
最終5部で、こんなほうにいくとはという感じで、ルエル名義作では、これが一番好きですね。


No.72 6点 眠りネズミは死んだ
パトリック・ルエル
(2020/04/11 21:32登録)
(タイトルで象徴させた)主人公の女性が、少しずつ世界を自覚(世界から自立)していく様子がここちよい。
スパイ小説らしく、人物像の反転がいくつか仕込まれていて、ついていくのが大変だった。
ラストは腑に落ちず、意味を読み取れていないかも。


No.71 5点 長く孤独な狙撃
パトリック・ルエル
(2020/04/11 21:28登録)
情景描写は雰囲気はいい。
でもどこか、まとまりに欠ける。
主人公の設定、背負っている過去は重く、物語の本筋は、重いスパイ小説だ。しかし、本筋の脇で流れる、恋人と、その家族の話は、非常に家庭的。対象の妙を狙ったのかもしれないが、逆にちぐはぐに感じる。
ラストから考えても、全体をもっと重い感じにしたほうが、よかったような気がするなぁ。


No.70 3点 ミザリー
スティーヴン・キング
(2020/04/06 00:06登録)
これは、「世評」と「自分の評価」に乖離がある作品のひとつ。
最初は、ねっとりした描写が楽しめたが、同じような描写の繰り返しで、物語は進行しないし、ページ数は多いしで、最後には退屈してしまった。
好きな人は、ねっとりした描写を飽きずに最後まで楽しめた人なのかなぁ。
100ページくらいの中編にしてくれたら、切れ味がよくて面白かったのではないかと妄想するが、長すぎる気がするんだよなぁ。好みの問題なのでしょう。


No.69 5点 いま見てはいけない
ダフネ・デュ・モーリア
(2020/04/06 00:00登録)
どの話も不穏な空気が流れているが、どうも焦点が定まらない感じがする。
「レベッカ」では、「レベッカの存在感」、「過去に何があったのかという謎」などが、物語を牽引していたのだなと、あらためて感じる。
比喩、暗喩、皮肉などいろいろ入っていそうで、それらを拾えているかとなると、全然だめだと思うが、好みにあわなかったということか。


No.68 6点 武器と女たち
レジナルド・ヒル
(2020/03/14 18:14登録)
タイトル通り、女性陣が主人公。特にエリーは、エリーの小説まで挿入される。作者はエリーをいい女として描いているのだろうか? 鼻につくキャラに感じるのだが。
それでも語りの面白さは安定しているが、本作は長さが気になる。シリーズ後期作では、一番下かな。


No.67 7点 ベウラの頂
レジナルド・ヒル
(2020/03/14 18:06登録)
少女失踪事件とパスコーの家庭の問題が、「親子問題」という切り口で繋がり、重層的に語られていく(出版時はシリーズ最長の)大作。
冒頭に地図があり、謎解きファン心理をくすぐるが、その部分はなあんだという感じ。
パスコーの娘の話が他から浮いている感じはするが、それ以外は安定した語りの面白さ。
内容、作風とも、代表作といっていいと思う。


No.66 7点 幻の森
レジナルド・ヒル
(2020/03/14 17:51登録)
ノヴェロ初登場作。ノヴェロも好きなキャラだなぁ。
ダルジール、パスコー、ウィールドの三人にチーム感ができて、キャラが安定しすぎたため、三人を外からみる視点をいれる必要を作者が感じたのだろう。ノヴェロ視点での三人の描写が、評価も悪口も、読んでいてじつに楽しいのだ。
本作ではノヴェロの出番は少ないが、この後、3人に並ぶ4人目のキャラとなる。
マーヴェル初登場作。これによって、ダルジールに人間的弱みが垣間見えるようになる。
「骨と沈黙」以上に「厚っ!」となったが、この後さらに厚くなっていくとは。この作以降は、厚さと中身(シリーズ・キャラの人生を描く方向性)で、一見さんお断りのような気がする。
本作は、安定の描写の面白さはあるが、他の点では特筆すべきところはないかなぁ。製薬会社の描写は精彩がないかも。


No.65 7点 完璧な絵画
レジナルド・ヒル
(2020/03/14 17:32登録)
ウィールドの出番が最も多い作。ウィールド・ファン必読。
ダルジール、パスコー、ウィールドがほぼ当分の重み付けで、それぞれの話があり、ミステリより「群像劇」の趣がつよい。
「群像劇」の味わいはこの後もつづき、後期ダルジール・シリーズの型の始まりといっていいと思う。
本作では、「プロットを語る」よりも「(エンスクームという)世界を描く」ことに比重がおかれているようで、この世界に対する好みにより評価が分かれそうだ。
この作品が楽しめれば、この後のシリーズは全部楽しめるだろう。


No.64 8点 甦った女
レジナルド・ヒル
(2020/03/14 17:19登録)
ダルジール、アメリカに渡り大活躍の巻。
シリーズとしては異色作だろう。
いやあ、でもやっぱりダルジールが活躍する話は面白い。
プロットも(ヒルにしては)直線的にすすみ、一気に読める。ヒル作の中では世評は低く感じているが、個人的にはベスト5に入る。


No.63 7点 骨と沈黙
レジナルド・ヒル
(2020/03/14 17:06登録)
ゴールド・ダガー受賞で、世評的には代表作です。
ヒル作品としては、ミステリとしてしっかりしているので、そこが評価されたのかな?
でも、ヒルの面白さは、個々のキャラクターの心理/台詞だなぁと思う。
この後の作品のほうがますます面白くなるのでが、個人的には上位の評価ではないです。
発売時は「厚っ!」と思ったけど、これもこの後の作品のほうがますます厚くなるので、いま見ると普通に感じるようになってしまった。


No.62 5点 闇の淵
レジナルド・ヒル
(2020/03/14 16:41登録)
エリーに焦点があたった作。
エリーはいまひとつ好きになれないんだよなぁ。常に喧嘩腰という感じで、他キャラクターは深みがある感じがするのに、エリーだけは表層的なフェミニストという感じ。ヒステリックな感じも好きになれない。(作者は愛着がありそうだけど)
全体的には、ダルジール、パスコーはいつもの味でいいのだが、シリーズでは「薔薇は死を夢見る」以降では一番下。
(でも「薔薇は死を夢見る」以前よりは面白い)


No.61 7点 子供の悪戯
レジナルド・ヒル
(2020/03/14 16:27登録)
ウィールドの同性愛に着目された部分が面白い。
ダルジールの台詞が懐が深い。「それはべつに昇進の理由にならんぜ」etc。ヒル、この辺の台詞はうまいなぁ。
プロットとしては、遺産相続、新警察長任命などの、いくつかの話が並行してすすみ、重層的になってきた。かわりにミステリ興味は薄め。


No.60 8点 死にぎわの台詞
レジナルド・ヒル
(2020/03/14 15:54登録)
三つの事件が同時進行していく。最後には、それぞれの話が見事にからんできて、プロット構成としてはヒル作品では一番だと思う。
ヘクター、シーモアも登場し、群像劇の味わいが増加してきた。この作品から「ダルジール・シリーズ」の味が固まってきたと思う。
最初に読むダルジール物としてお勧め。


No.59 9点 薔薇は死を夢見る
レジナルド・ヒル
(2020/03/14 15:37登録)
ヒルの既読では最も好きな作品。
「ひとりの男の過去に、いくつもの”疑惑の死”が……」という話。
この手の話、普通は後半にすすむにつれ、少しずつ事件の輪郭が見えてくるものだが、この話はどっちにすすむのか(作者の思惑すら)よめない。
後半に入ってもよめない。ラスト近くになってもよめない。
その綱渡りみたいな感覚に、独特のハラハラ感があって、とても好き。
傑作というよりは、個性的な味わい(珍味?)というのがあう。
ヒルの代表作(典型的な作)ではないし、ひろく好かれる作でもないと思うけど、わたしは大好き。

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