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ミステリの祭典

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囚人の友

作家 アンドリュウ・ガーヴ
出版日1964年01月
平均点5.50点
書評数2人

No.2 6点 クリスティ再読
(2024/12/01 22:36登録)
ガーヴといえば毎回毎回「違う世界」を見せてくれて、舞台設定だけでも楽しさがある作家のわけだが、今回の主人公は保護観察司。刑余者の更生をサポートする役割の仕事。日本だと楠田匡介が保護観察司の兼業作家として「塀の中」の人々をテーマにした作品をたくさん書いたわけだが、イギリスの保護司も兼業が普通のようで、今回の主人公も獣医との兼業。

若い囚人テリーの出所が近づく。保護司のアッシュは初めて申込みのあった自動車修理工場に、テリーの就職をお願いした。しかし、工場主のウィンター夫妻の金庫がこじ開けられそうになり、その疑惑は刑余者のテリーにかかる。証拠がないまま疑いの目で孤立するテリー。さらに工場主の家が荒らされてウィンター夫人の絞殺体が見つかった。容疑はテリーにかかる....アッシュはどうする?

という話。あまり「社会派」という感覚でもなくて、アリバイ崩しを中心にした日本では「本格」に入るタイプの作品。いやガーヴって「罠」とか「モスコー殺人事件」とか本格枠に入る作品がいろいろあるし、「ギャラウェイ事件」だってアクション味はあるにせよ、面白味は「本格」要素だとも感じる。
というか、日本の「本格」概念がヘンに歪んでいて、イギリスだと本来「スリラー」に入る作品が日本では「本格」扱いされている、という面があると思うんだ。クロフツなんて事実上「スリラー」作家だ、と捉えるのならば、ガーヴがその後継者的な立場にある、と見ておかしいわけではないのだ。

いや「トリックがある=本格」という乱歩が始めた「トリック至上主義」が日本特有なジャンル観なのであって、海外作品はそういうジャンル観で書かれているわけではない、という単純な事実が顕れている作品。

No.1 5点 ことは
(2020/03/01 18:16登録)
今回は舞台設定に凝った要素がないのが残念。
社会派の要素を入れようとしているのか、保護観察師が主人公。でもストーリーは型通りのサスペンスで、保護観察師の設定は物語の入り口なだけで、社会派風味はあまりなしです。
全編にわたりひとつひとつの段取りが丁寧で、しっかりガーヴ風味です。終盤はもうすっかりクロフツ!(それもガーヴの味だけどね)
でも展開の意外性はあまりない(それもガーヴ)
ガーヴの中では下の方かな。

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