鉄の門 サンズ警部 |
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作家 | マーガレット・ミラー |
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出版日 | 1953年11月 |
平均点 | 6.17点 |
書評数 | 6人 |
No.6 | 5点 | クリスティ再読 | |
(2024/02/18 12:36登録) 評者にだって、苦手作家というのは、ある。ミラーなんて本当に昔からそういう印象が強かったんだけど、改めて読み直して「苦手感」を再確認。いや女性作者好きだし、ロマサス好きだし...でもミラーはダメ。 まあミラーって「意識の流れ」とかね、確かに本作はそんなテイストの技法を多用しているんだけど、エンタメだからねえ、部分的な効果として使う程度のものだ。要するにホラー映画の意味不明で思わせぶりなインサートショットみたいなものである。そういうのに「カッコイイでしょう?」風な気取りが見えるのが、どうも印象が悪い。どうもこういう自意識過剰でそれを客観視しないあたりに評者の苦手感があるようだ。いや「気取る」のはいいんだよ、セイヤーズなんて気取った文章だけど、自己省察的なユーモアがあるからね。 まあ本作、そういう主観性が強い作品で、その中に謎を仕込んであるんだけど、おおよそ予測が付くレベルの謎。あと言うと、ダーシー巡査部長とかバスオム警部とか、ジャネット・グリーンとか端役まで心理を深掘りして、何か「イヤな奴..」風の印象が付いてしまうのに、やり過ぎを感じて印象が悪い。 考えてみれば「レベッカ」の焼き直しみたいなものなんだがなあ。 うん、評者はミラーは敬遠したい。 |
No.5 | 6点 | ボナンザ | |
(2022/04/24 19:21登録) 確かに乱歩が好みそうな一作。淡々としているようでドロドロしており、それでいて読了感は意外とさっぱりしている。 |
No.4 | 7点 | 蟷螂の斧 | |
(2020/03/17 14:14登録) 裏表紙より~『十六年前に死亡した親友ミルドレッドの夫である医師アンドルー・モローと再婚したルシールは、一見平穏なその生活の裏側で継子や義妹との関係に悩み続けていた。ある冬の日、謎の小箱を受け取ったルシールは何も言い残さず姿を消した。日常の微かなひびの向こうに広がる荒涼とした心理の内奥を描いて、ミステリに新風を吹き込んだ巧手ミラーの初期を代表する傑作、新訳で復活。』~ しばらく入手困難でしたが復刊され喜ばしく思います。心理描写については、乱歩氏が「心理的純探偵小説の曙光」と感嘆しただけのことはあり巧いですね。第三部(最終章)の最初のページは予想外でかなりのインパクトがありました。本当のラストは、うーん証拠がないんだよねー。 |
No.3 | 5点 | ことは | |
(2020/03/07 01:50登録) 冒頭数ページは、描写が印象的だったが、全体的には、たぶん「好みではない」ということなのだと思う。 登場人物が、みんな少し歪んでいる感じで、あまり魅力を感じなかった。(好きな人はその歪み方が面白いと思うのか?) ストーリーも淡々とすすむ感じがして、終幕の狂気が見えてくる部分も、迫真性が感じられなかった。(好きな人は身につまされるのか?) 退屈はしなかったので、否定的な評価はしないが。 ロス・マクと共通する家庭の悲劇という評をみて、つらつら考えていたら、ラスト数行が「さむけ」と重なる気がして興味深かった。 |
No.2 | 7点 | 空 | |
(2014/01/19 22:38登録) なぜだかわかりませんが、この作品は以前に読んだことがあるはずなのに、内容を全く覚えていないのです。『殺す風』に比べるとシンプルな構成で明らかに覚えやすいにもかかわらず。この記憶の喪失はミラー的な不安を感じさせるほどに… 忘れてはいたのですが、読み始めてすぐ、フェイクなのか真相なのか明確にはならないにしても、ともかく一つの仮説は思いつきました。実際、これはほとんどの人が考えるのではないでしょうか。そして結局それが真相の一部ではあるのです。しかし、大きく3部に分かれたこの小説の第2部に入ってタイトルの意味がわかるあたりからの展開には驚かされます。奇をてらった意外性ではなく、人間関係の歪みや思い込みから自然に発生してくることが納得できるけれども、型にはまった小説とは異なる展開になるところが意外なのです。 サンズ警部による事件の締めくくり方にも、驚かされました。 |
No.1 | 7点 | mini | |
(2009/01/22 09:52登録) ロス・マクドナルド夫人がマーガレット・ミラーで、たしかにロスマクの神経症的な作風はミラーを思わせるものがある 実はロスマクの本名はケネス・ミラーと言い、妻のマーガレットの方が夫の姓を筆名にしているわけだ 「鉄の門」はミラー初期の代表作で、長らく絶版で入手が難しいのが惜しい 早川ってこういうのを頑固に?復刊しない出版社なんだよなぁ 謎解き的に見たらそう大した真相ではないが、これをサスペンス小説として書くとこうも興味深く描く事が出来るのだという良い見本である |