home

ミステリの祭典

login
弾十六さんの登録情報
平均点:6.13点 書評数:459件

プロフィール| 書評

No.179 7点 用心ぶかい浮気女
E・S・ガードナー
(2019/08/17 16:27登録)
ペリーファン評価★★★★☆
ペリー メイスン第34話。1949年5月出版。ハヤカワ文庫で読了。(なお、以下はAmazon書評の転載です。いずれ再読したらあらためて書きます。)
ドレイクと朝食の待ち合わせから物語は始まります。届いたのは鍵付きの怪しい招待状。メイスンはもちろん誘いに乗り、込み入った偽装に翻弄されますが、慰謝料をたっぷりせしめます。新聞に載りたいホルコムは騙され、協力的なトラッグはメイスンの助言で成果をあげ、バーガーは自信たっぷりに予審に挑みますが結局へこまされます。解決は複雑すぎる感じ。
銃は「実用一点張りの」スミス・アンド・ウェッスン38口径リヴォルヴァ、握りの側面にシリアルS65088(Nフレームで1946-1947年製) Nフレームの38口径は.38/44か.357マグナム。三作続けてS&Wの同タイプの拳銃が登場。45口径オートマチックも登場しますが詳細不明(コルトM1911だと思います)
(2017年4月8日記載)


No.178 6点 怪しい花婿
E・S・ガードナー
(2019/08/17 16:20登録)
ペリーファン評価★★★☆☆
ペリー メイスン第33話。1949年2月出版。ハヤカワ文庫で読了。(なお、以下はAmazon書評の転載です。いずれ再読したらあらためて書きます。)
冒頭、美しい脚に目がくらむメイスン。雑誌のネタになったり、上手くいく夫婦のコツを聞かされたりで、国境を越える羽目になり、メキシコのきれいな夜空を眺めて癒されます。おなじみホルコムが乱暴なノックとともに登場。トラッグはメキシコに現れメイスンと法律論議。メイスンの危ない行動は無く、口先で切り抜けます。ドレイクの暗号ノックは1-3-2(前は違ったような気が…) 法廷ではズルそうなサンディエゴ郡地方検事コヴィントンが登場、陪審選択、冒頭陳述でもメイスンに圧倒され歯嚙みします。続々と不利な証拠が現れ、追い詰められたメイスンはレストランで大爆笑、デラとドレイクは苦笑い。解決は入り組んでいて胃もたれします。ポール ドレイクは犬が苦手らしい。
銃はスミス・アンド・ウェッソン.38「なかなか上等の拳銃」グリップに刻まれた番号はS64805(放浪処女のシリアルと同一番号、Nフレーム1946-1947年製) 当時のS&W製Nフレームで38口径の銃は.38/44か.357Magnumですね。
(2017年4月8日記載)


No.177 5点 放浪処女事件
E・S・ガードナー
(2019/08/17 16:11登録)
ペリーファン評価★★★☆☆
ペリー メイスン第32話。1948年7月出版。ハヤカワ文庫で読了。(なお、以下はAmazon書評の転載です。いずれ再読したらあらためて書きます。)
せっかちな依頼人と無邪気そうな娘。メイスンを呼び出したホルコムは尋問中のチンピラをバンバン殴ります。トラッグは相変わらず優秀、メイスンの危険な冒険はちょっぴり、デラの機転がメイスンを喜ばせます。法廷シーンは予備審問、検事はおなじみバーガー、ある証人には妙に優しいのが可笑しい。解決はあまり冴えない感じです。米国における18歳と20歳の差が印象的。
銃は38口径のリヴォルヴァ、スミス・アンド・ウェッスン社ダブル・アクション、銃身6インチ、シリアルS64805が登場。シリアルから判断するとNフレームの銃で1946-1947年製。 「.38口径とは言え本体は.44口径用ので重い銃」この記述からS&W .38/44(Heavy DutyやOutdoorsmanの愛称あり)だと思われます。(S&W .357マグナムの可能性もある?)弾丸はピーターズ社製(Peters Cartridge Co.)「.38口径」としか書かれていませんが38スペシャル弾でしょうね。
(2017年4月6日記載)


No.176 6点 怪盗と接吻と女たち
E・S・ガードナー
(2019/08/17 15:46登録)
日本オリジナルの中篇集。メイスンの中篇全2作とレスター リースもの2作(ハヤカワ文庫に収録されてるものと同内容)と女探偵もの1作を収録。(なお、以下はAmazon書評の転載です。いずれ再読したらあらためて書きます。)
メイスンものの長篇以外の作品は他に短篇1作(「腹を立てたゴミ屋」The Case of the Irate Witness, Collier's 1953-01-13)があるだけということになっています。(「消えた目撃者」(1949)と言う短篇が翻訳されてるんですが…)

「燕が鳴いた」The Case of the Crimson Kiss (American Magazine1947-8): 評価6点
ペリー メイスン第29.5話。シリーズ初の中篇。燕の巣、望楼からの眺め、トレーラー生活。ドーセットが登場、普段と違って案外まともな対応です。法廷シーンは無し。解決は慌ただしい。銃は20口径(20ゲージですね)のショットガンが登場。長編の梗概みたいな感じです。

「緋の接吻」The Case of the Crying Swallow (American Magazine1948-6): 評価7点
ペリー メイスン第31.5話。シリーズ2作目の中篇。冒頭にはメイスンが登場しません。メイスン事務所の夜間電話番号はウェストフィールド6-5943、デラの故郷からの知り合いがメイスンに事件を持ち込みます。法廷場面は予備審問。物語の構成が上手く解決も鮮やかです。

レスター リース2作(Detective Fiction Weekly 1941-3-29 & Flynn's Detective Fiction 1943-1)の評価は省略。

「宝石の蝶」The Jewelled Butterfly (Cosmopolitan 1950-10): 評価6点
珍しい女探偵ペギー カッスル、探偵が女性であることを意識した作品に仕上がっています。


No.175 6点 孤独な女相続人
E・S・ガードナー
(2019/08/17 15:21登録)
ペリーファン評価★★★★☆
ペリー メイスン第31話。1948年2月出版。ハヤカワ文庫で読了。(なお、以下はAmazon書評の転載です。いずれ再読したらあらためて書きます。)
大都会の孤独を利用した商売。インクをぶちまける女。珍しくメイスンが人を見くびり、してやられます。依頼人側から見たホルコムとトラッグの尋問のやり方が恐ろしい。メイスンとデラの危険な冒険あり。デラは何度も試練を受けている、と言いますが… 法廷場面は予審で決着、わかりやすい鮮やかな解決です。車はA型フォードが登場。今はあまりお金に余裕のない資産家の車です。
(2017年4月2日記載)


No.174 6点 ブラウン神父の秘密
G・K・チェスタトン
(2019/08/17 13:01登録)
1927年出版。ブラウン神父ものの連載は年代順に並べると『不信』と『秘密』の収録作品が交互に出てきます。何故、単行本の編纂がこのようになったのか、ちょっと謎ですね。(Cassell’s初出作品は『秘密』にまとまってるのですが、『不信』出版時の最新作Gideon WiseはCassell’s初出にもかかわらず『不信』に収録。) 1925年5月&6月は2誌に新作を同時発表してます。昔の創元文庫(1972年11月9版)で、作品発表順に読みました。本格探偵小説に寄せた感じの作品集。
初出はFictionMags Index調べ。●付き数字は単行本収録順です。収録時に順序をずいぶん変えてます。
献辞は
To father John O’Connor, of St. Cuthbert’s Bradford, whose truth is stranger than fiction, with a gratitude greater than the world
こんな大事なのを省略するのはどーなんでしょう。(後の新訳版では訳されてるかな?)

❷The Mirror of Death (Cassell’s Magazine of Fiction 1925-3 挿絵Stanley Lloyd): 評価6点
この時期のチェスタトンは本格物大好き。冒頭から楽しい探偵小説談義です。(シャーロックとレストレードも登場。) 手掛かりの出し方の描写もいかにもフェアプレイ風。いきなり裁判になっちゃう展開は疑問ですが… (いくらなんでもそこまで口下手?) まー「理由(p53)」を書きたかったのでしょうけど。挿絵がどんなだったか見たい作品ですね。
銃は大型の拳銃(a rather heavy revolver)、自動拳銃(automatic pistol)が登場。音を聴いただけでリボルバーだと判るとは… (一応、合理的な説明を試みると、当時38口径以上のオートマチック45口径コルトM1911は英国では珍しかったのでは?なので45口径クラスの音と判断しリボルバーと言った… 多分、英国Webley拳銃455口径だと思います。)
p30 聖ドミニコ教会の神父(the priest at St. Dominic’s Church): ブラウン神父全集で全文掲載したら該当なし。ここだけの設定でした。
(2019-8-17記載)

❸The Man with Two Beards (Cassell’s Magazine of Fiction 1925-4 挿絵Stanley Lloyd): 評価5点
学問の細分化への難癖はチェスタトンの好きなテーマ。さすがにこれは特殊なケース過ぎて分類に入らないのは仕方ない。本格として考えると手がかりが少なすぎかな。
p58 怪盗バッタのジャック(Spring-heeled Jack): Jumping Jackが正式名称だと思ってました… この訳語はなんか楽しい。
p58 やせた色黒のご婦人(a thin, dark lady): 上の隣にあったので目に入っちゃいました。「やせた黒髪のご婦人」ですね… 続く「やはりやせぎすで浅黒く(also thin and dark)」「やはり身なりのよい浅黒い青年(also dark and exquisitely dressed)」のdarkも同じです。(この表現の間にdark curly hairとあるのに… 保男さんは結構「浅黒い」好きです。)
p63 なにしろ≪サンダーボルト≫級の車でしてね。(You see if she isn’t better than a ‘Thunderbolt.’): サンダーボルトは調べつかず。チェスタトンがでっち上げた架空名か。
(2019-8-18記載)

❾The Chief Mourner of Marne (Harper’s Magazine 1925-5 挿絵Frederic Dorr Steele): 評価5点
この作品は本格ものというより普段のチェスタトンです。技巧的なやり口と神父の巻き込まれ方が趣味に合いません。挿絵は見てみたい。
p235 光ってから音がするまで1分半ほど(About a minute and half between the flash and the bang): 音速を340m/sと仮定して30キロ遠方の雷。
(2019-8-19記載)

※次の2作The Curse of the Golden Cross(1925-5)、The Doom of the Darnaways(1925-6)は『不信』に収録。

❹The Song of the Flying Fish (Harper’s Magazine 1925-6 挿絵Frederic Dorr Steele): 評価6点
本格もの仕立て。手がかりはちょっと後出し?最終行の洞察が何故か子供の頃からずっと心に残ってます。得意げに東洋の神秘を語る人に対して神父が「盗みは盗み」と喝破するのも良いですね。
p96 ピストル(a pistol): 原文リボルバー?と思ったら違いました。
(2019-9-1記載)

※次作The Arrow of Heaven(1925-7)は『不信』に収録。

❼The Worst Crime in the World (Harper’s Magazine 1925-10): 評価6点
神父の妹(a sister, 原文で上下不明。妹の根拠あり?)の娘Elizabeth Fane(愛称Betty)登場。神父の親戚初登場です。残念ながら他の作品には登場しません。(全文検索って本当に便利ですね。) ゴシック風味。『ユドルフォの秘密』が登場してちょっとビックリ。本格ものの基準だと手がかりの記述がアンフェア。現代美術ネタと笑いの意味が主眼。
(2019-9-18記載)

❺The Actor and the Alibi (Cassell’s Magazine 1926-3): 評価4点
本格もの、と見せかけて全然違ったのでガッカリ。なんか変てこ。(目的がめちゃくちゃです。) シェリダン『醜聞学校』(『悪口学校』が一般的。The School for Scandal by R.B. Sheridan. 初演はLondon, Drury Lane Theatre 1777-5-8)が作中で上演され、重要な手がかりになります。(先日観た映画『ある公爵夫人の生涯』(2008)にちょっと出てました。) 推理に必要な事柄を「その他の些細な問題」と片付けてるので、本格ものを書く気はなかったようです。GKCは何故かラストで怒りを爆発させます。「知識人なる手合いがどういうことをしたがるものか… 権力への意志、生きる権利、経験する権利(Will to Power and the Right to Live and the Right to Experience)… たわけたナンセンスどころか、世を滅ぼすナンセンスだ」最初のは明白にニーチェだけど、後のRight二つもそうなのか。調べてません。
p118 巻き毛の、浅黒い、鼻がユダヤ式の(a dark, curly-haired youth of somewhat Semitic profile):「いくぶんセム系の横顔」で「鼻がユダヤ式」とする分かりやすい翻訳。ポリコレの現在では使えない表現か?(なおここでもdark「黒っぽい髪の色」を誤訳。)
p119 角を曲がった教会: ブラウン神父の教会。地名は書かれてません。(ロンドンっぽい感じ)
p123 不平は世界の果てにこだましてわが身に戻ってくるばかり、沈黙はしっかりさせてくれる(Complaint always comes back in an echo from the ends of the world; but silence strengthens us): まー そーゆー考え方もありますね。でも、こう愚痴るのは普通の愚痴より悪い、とGKCは言う。理由は本篇参照。
(2019-9-22記載)

※次作The Ghost of Gideon Wise(1926-4)は『不信』に収録。

❻The Vanishing of Vaudrey (The Story-teller 1927-1): 評価5点
謎の失踪事件。本格ものというには手がかりが足りず。でも昔読んだ記憶が残ってたほど、印象深い物語。
p147 緑色のレモン水(green lemonade): Leprechaun lemonadeというものか。
(2019-10-4記載)

❽The Red Moon of Meru (Harper’s Magazine 1927-3): 評価5点
手がかりは撒いているものの無理がある感じ。しっくり来ません。
p205 慈善市(bazaar): 回転木馬(roundabouts)、ブランコ(swings)、余興(side-shows, 「怪力男」とかの見世物っぽいイメージか)があるというのだからかなり大掛かりな感じ。
p206 欧州大戦(Great War): 作中時間はWWI以前。
p211 ≪ヤシの実落とし≫(throw at coco-nuts): Coconut shyのこと。
(2019-10-6記載)

❶The Secret of Father Brown (単行本1927): 評価5点
ブラウン神父の方法は所謂「科学」ではない、と主張するGKC。科学否定は神秘主義に陥りやすい。でも科学の冷たさを至高のものと崇めるのも大間違い。アダム・スミスが「見えざる神の手」と「共感」の両方を尊んだ、ということを忘れがち。
p11 本名に返ってデュロックと(resumed his real family name of Duroc): Hercule Durocということですね。
p13 デュパン… ルコック… ホームズ… ニコラス・カーター(Dupin, Lecocq, Sherlock Holmes, Nicholas Carter): 最後でガクッとなりますが、当時の米国代表。(今、選ぶとしたら誰だろう。EQか?)
p14 ギャラップ殺人事件... (Gallup's murder, and Stein's murder, and then old man Merton's murder, and now Judge Gwynne's murder): GallupとSteinは『ギデオン・ワイズ』(1926-4)、Mertonは『天の矢』(1925-7)、Gwynneは『大法律家の鏡』(1925-3) 全文検索って、本当に便利です。最後にもう一つ挙げられているのですが書きません。
p17 レオ13世、若いころのわたしの英雄(Pope Leo XIII, who was always rather a hero of mine): ブラウン神父にここまで言わせる人物って気になりますよね。(まだ調べてません…)
(2019-10-6記載)

➓The Secret of Flambeau (単行本1927): 評価5点
上記のReprise。ブラウン神父の方法をネタバレも交えて語るところが面白い。ところで「彼」が探偵やってた時は問題無かったの?(そーゆー設定じゃ無かったような気が…)
(2019-10-6記載)


No.173 5点 曲線美にご用心
A・A・フェア
(2019/08/16 23:07登録)
クール&ラム第15話。1956年11月出版。翻訳は1958年(「いやもうむちゃくちゃでごさいまするよ」のような流行語は後で読むと目立ちます)、一人称は「わたし」HPBで読了。(なお、以下はAmazon書評の転載です。いずれ再読したらあらためて書きます。)
いつものように胡散臭い依頼から始まり、二転三転する筋立てです。今回は陪審裁判の法廷シーンが描かれますが、この解決では法律のプロが間抜け過ぎです… 銃は六連発の.38口径回転式コルト拳銃が登場。
(2017年7月8日記載)


No.172 7点 女は待たぬ
A・A・フェア
(2019/08/16 23:00登録)
クール&ラム第14話。1953年9月出版。HPBで読了。(なお、以下はAmazon書評の転載です。いずれ再読したらあらためて書きます。)
舞台がハワイなので水着率の高いお話。ホノルルでバーサが変わってゆく姿が可笑しい。展開は相変わらず起伏に富んでおり、ある意味意外な解決ぶりでちょっと驚きました。日系人が二人登場、ミツイとコリオト、後者は柔道を使います。ラム君は以前習った格闘技をすっかり忘れてしまったようですね。銃は38口径のピストル(多分リボルバー)が登場、詳細不明です。
(2017年7月8日記載)


No.171 6点 嘘から出た死体
A・A・フェア
(2019/08/16 22:55登録)
クール&ラム第13話。1952年2月出版。HPBで読了。(なお、以下はAmazon書評の転載です。いずれ再読したらあらためて書きます。)
いつもの通り複雑な展開ですが、ラム君の閃きと幸運で解決なので、筋立てが大雑把な感じです。今回は主な舞台がサンフランシスコ、セラーズ部長刑事は登場しません。
銃は38口径の(多分)リボルバーと口径不明の自動拳銃が登場、いずれも詳細不明です。
(2017年7月5日記載)


No.170 5点 もの憂げな恋人
E・S・ガードナー
(2019/08/16 20:08登録)
ペリーファン評価★★★☆☆
ペリー メイスン第30話。1947年10月出版。HPBで読了。(なお、以下はAmazon書評の転載です。いずれ再読したらあらためて書きます。)
株を買い戻す合法的な狡い手口。典型的な銀行家。聞き込みには昔の大統領の版画がものを言う。州法では自動車のハンドルの柄に登録証をつけるきまり。ガーティがちょっと活躍、やはり「大柄な目方の多すぎる」体つき。(眼鏡でカマキリのように痩せていたのは「ころがるダイス」の時だけ)メイスンの危ない冒険はなく、トラッグと協力します。法廷は予審で決着。
(2017年4月1日記載)


No.169 5点 ストリップ・ガールの馬
E・S・ガードナー
(2019/08/16 20:03登録)
ペリー ファン評価★★★☆☆
ペリー メイスン第29話。1947年6月出版。HPBで読了。(なお、以下はAmazon書評の転載です。いずれ再読したらあらためて書きます。)
裏表紙に「デラが自ら事件の渦中にとびこむ異色作」とあるけどそんなシーンは全くありません。色っぽい要素も無し。
LAが舞台のこのシリーズですが、メキシコ人が登場するのは意外にも初めて。車で暑いインピアリアル溪谷を走るメイスンとデラから物語はスタート。メイスンの無茶な行動はほとんどありません。刑事連はドーセットとホルコムで、トラッグは活躍なし。法廷ではバーガーと対決。細かいことにこだわりネチネチ反対尋問するメイスン。小ネタを積み上げて逆転する感じです。銃は.410口径の銃が登場。具体的な描写はありませんが、ショットガンでしょうか。米国事情で興味深かったのは、夜中に安ホテルが無人で部屋を貸すシステム。
(2017年3月31日記載)


No.168 7点 五人目のブルネット
E・S・ガードナー
(2019/08/16 19:53登録)
ペリーファン評価★★★★☆
ペリー メイスン第28話。1946年11月出版。ハヤカワ文庫で読了。(なお、以下はAmazon書評の転載です。ちょっと変えてます。いずれ再読したらあらためて書きます。)
第3シーズン(私見では41話まで)は戦後メイスンです。特徴はメイスンのネチネチ揚げ足を取るような反対尋問。バーガーが私怨に凝り固まり、事件の解決よりメイスンをやっつけるのが目的のダメD.A.に… (トラッグも呆れます。)
アダムス街よく似たブルネットがいっぱい、赤毛連盟風の冒頭です。運転免許証には親指の指紋が表示されている、銀行の窓口は担当が客の頭文字別になっている(「私はRからZの預金担当」)などの米国生活風景。バーガーの知恵袋ガリング地方検事補が新登場、法廷シーンは予審から珍しく大陪審へ、陪審長の計らいでメイスンは真相を掴みます。解決は鮮やか、メイスンがガリングを翻弄する手口も楽しい。文庫版の巻末には「があどなあ・ほうだん/2」夫婦間の証言についての解説あり。
銃は32口径コルト製レヴォルヴァが登場、シリアル14581(このナンバーは「埋められた時計」「寝ぼけた妻」に続き3度目、ただし前2回は38口径。) 検索すると32口径のColt New Police 1903年製が見つかりました。古い32コルト弾(32 Long Colt)と32ニューポリス弾(32 Colt New Police)の両方に対応。「弾丸はある古い形式の廃れたタイプのやつ」で新しい弾丸と区別出来る、というのは32コルト弾のことかも。
毎年2作のメイスンものを生産してきたガードナーですが、1946年だけこの1作きりです。
(2017年3月26日記載)


No.167 7点 寝ぼけた妻
E・S・ガードナー
(2019/08/15 20:40登録)
ペリーファン評価★★★★☆
ペリー メイスン第27話。1945年9月出版。HPBで読了。(なお、以下はAmazon書評の転載です。いずれ再読したらあらためて書きます。)
私見ではここまでが色々変化球を試してた第2シーズンの終わり。(次回作は「戦後」と言う区切りでもあります。)
メイスン事務所は第4章から、メイスンは第5章から登場。ジャクスンが久しぶりの活躍、徹底的前例主義者で、妻は5歳年上の後家。メイスンとデラは霧の立ちこめるなか豪華ヨットで一泊。頑固な警官役はドーセット巡査部長、パラフィンテストや指紋採取を拒否。13日の金曜日に打ちのめされるメイスン、トラッグに「あばよ! シャーロック」とからかわれ、裏目ばかりが続き疲れたメイスンは夕暮れのなかデラの膝枕で眠ります。圧倒的に不利な法廷ではバーガーとやりあい、同時に民事訴訟の口供調書作成で相手方弁護士と対決。解決は鮮やかですが、ちょっと誤魔化され感あり。銃は0.38口径 コルト警察用拳銃シリアル14581(Colt Police Positive revolver Number 14581)が登場、シリアルで検索すると1907年製(38S&W弾)か1909年製(38スペシャル弾)ですね。
(2017年3月26日記載)


No.166 6点 黒い金魚
E・S・ガードナー
(2019/08/15 20:27登録)
ペリーファン評価★★★★☆
ペリー メイスン第26話。1945年5月出版。文庫で読了。(なお、以下はAmazon書評の転載です。いずれ再読したらあらためて書きます。)
原題 Golddigger's Purse「金目当て女の財布」(なので動物タイトルではありません) 作者のまえがき(南アメリカの友人たちに感謝)付き。前話の続きでレストランから始まり、ヴェイルテイル・ムア種の出目金が発端。今回はツキのないメイスン、慎重に行動しても抜け目ないトラッグに追い込まれ、得意の強気なブラフにも失敗、理解ある予備審問の判事のおかげで何とか窮地を逃れます。解決はちょっと複雑、転写法の件は無理筋だと思います。次の事件の予告はありません。文庫版は、予備審問についてのわかりやすい解説(があとなあ・ほうだん/6)あり。銃は38口径 ダブル・アクション リヴォルヴァ、メーカー不明。
(2017年3月25日記載)


No.165 6点 殴られたブロンド
E・S・ガードナー
(2019/08/15 20:07登録)
ペリーファン評価★★★★☆
ペリー メイスン第25話。1944年11月出版。ハヤカワ文庫で読了。(なお、以下はAmazon書評の転載です。いずれ再読したらあらためて書きます。)
雨の日のデラとの冒険、トラッグ警部との騙し合いは相変わらず、メイスンは荒っぽいのはやらないと言いながら、結局危ない橋を渡り、お久しぶり(お前のせいで殺人課から出された)ホルコム部長刑事に出くわします。法廷場面は予審で、これまたお久しぶりドラム検事が登場。矢継ぎ早に指示されるドレイクは夕飯の代わりに「一本で二倍の栄養がある」チョコレート・バーを勧められます。次回予告はトリオが集まったレストランに金魚で気の狂いそうな男が登場。
銃は38口径リヴォルヴァ、メーカー不明。他にも終盤に派手な銃撃戦がありますが銃の具体的な描写はありません。
(2017年3月21日記載)


No.164 6点 傾いたローソク
E・S・ガードナー
(2019/08/15 20:00登録)
ペリーファン評価★★★★☆
ペリー メイスン第24話。1944年5月出版。(なお、以下はAmazon書評の転載です。いずれ再読したらあらためて書きます。)
ジャクスンが久しぶりに登場、やせていて少し猫背、鼻は長く薄い唇(眼鏡かけてないのかな)冒頭と最後の方で活躍。メイスンの行きつけは九番街のレストラン、店主はピエール54歳。事件はアストラカン羊の交通事故から始まり、深夜のヨットでの冒険で終わります。Lieutenantトラッグは今回も抜け目ない行動でメイスンやデラと丁々発止。メイスンが無難なのに比べ、依頼人父娘の行動はメイスン顔負けです。タクシー不足による相乗り、このごろはガソリンが買えない、弟が酪農業なのでバターがたっぷり手に入る、などは戦時中の制限を意味しているのでしょう。法廷シーンは予審裁判で、判事の応援もあり、バーガーが悔しい結果を迎えます。次の事件の予告が久しぶりに復活、目にアザをこしらえたブロンドが次の依頼人です。
(2017年3月21日記載)


No.163 6点 弱った蚊
E・S・ガードナー
(2019/08/15 19:41登録)
ペリーファン評価★★★★☆
ペリー メイスン第23話。1943年9月出版。HPBで読みました。(なお、以下はAmazon書評の転載です。いずれ再読したらあらためて書きます。)
砂漠は一番親切な母、と言う砂漠大好きガードナー。これも一種の動物タイトル? 事務所のビルの窓には「ペリイ メイスン法律事務所」の文字。ガーティは馬に乗れない。事件の舞台はサン・ロバート市(LAから100マイル程度) 鉱山師には騾馬がつきもの。星が綺麗なキャンプ生活でデラは熟睡。メイスンとデラが大変なことになり、ドレイクは呑んだくれの日々。法廷シーンは無いが、口供調書をとる場面あり。砂糖は配給、配給手帳の券、若い男は皆いなくなった、など戦時中の話題がそこかしこに。メイスンの大胆な行動、狸寝入りも上手い。トラッグは管轄外だが義弟の助っ人で登場。解決の後、メイスンがデラに…
銃は古い45口径と錆びついたコルトのリヴォルヴァ(グリップに手彫りで1882年)と38口径 自動拳銃の薬莢(38スペシャル弾?)が登場。アウトドア風味あふれた作品。入り組んだペテンのネタも西部っぽいですね。
なお、ここに出てくる金鉱本、架空の本かと思ったらトリビア本Perry Mason Book(2014)によるとThe Miner’s Guide, compiled by Horace J. West(3rd ed.? 1929)という実在本だそうです。
(2017年3月20日記載)


No.162 5点 埋められた時計
E・S・ガードナー
(2019/08/15 19:27登録)
ペリーファン評価★★★☆☆
ペリー メイスン第22話。1943年5月出版。グーテンベルク21の電子本で読了。(なお、以下はAmazon書評の転載です。ちょっと訂正しました。いずれ再読したらあらためて書きます。)
負傷した復員兵、タイヤの配給、戦時タイム(太陽時間より1時間早い)などの道具立てが時代を感じさせ、多少の法律違反はものともしない時期の行動派ペリーの活躍。でもペリー視点じゃ無い記載が途中にも混じっててちょっと興ざめ。銃は38口径コルト複動式(ダブルアクションのことですね)六連発リボルバー、シリアル14581が登場。約5年前に入手した、ということなので、シリアルで探したら1907年製ポリスポジティブ(38S&W弾)と1909年製ポリスポジティブスペシャル(38SP弾)が見つかりました。
(2017年2月25日記載; 2019-8-15訂正)


No.161 5点 そそっかしい小猫
E・S・ガードナー
(2019/08/15 19:15登録)
ペリーファン評価★★★☆☆
ペリー メイスン第21話。1942年9月出版。連載Sarurday Evening Post(1942-5-23〜1942-7-11) ハヤカワ文庫で読みました。(なお、以下はAmazon書評の転載です。いずれ再読したらあらためて書きます。)
この作品までの雑誌連載ものは動物タイトル(吠え犬、門番猫、びっこカナリヤ、例外: 奇妙花嫁)が多く、傑作揃い。(この作品以降の雑誌連載は逆に動物タイトルほとんど無し) メイスンは第4章 文庫p.49から登場。戦時中を思わせるものとして、陸軍で逞しくなった青年や、日本人を憎む朝鮮人の使用人コモ登場。「おじぎするように頭をさげて、顔にうす笑いを浮かべながら」日本人が書いたみたいな表現の手紙。
(A gentleman will call for me tonight. He is Perry Mason, lawyer. Please tell him I cannot keep appointment, but he is to come at once to place indicated. Circumstances have necessitated a change in plans. This is unfortunate. Tell him to drive, please, to reservoir near top of road back of Hollywood according to course traced on map enclosed here with. Once more excuse, please, change in plans. It is unavoidable. ここから日本人ぽさが読み取れるのか…)
ウォルサムの時計はヴァンガード23石と表示。ポール ドレイクは休暇から色仕掛けで引っ張り出されますが、仕掛けたデラが真っ赤になって可愛い。ジャクソン(久しぶり)、ガーティの登場は電話の向こう側だけ。今回も抜け目ない活躍のトラッグですが、バーガーとともにメイスンに挑んだ「重要被告人」の裁判で、大いに慌てさせられます。メイスンの綱渡りはほとんどありませんが、デラを非常に怯えさせたので失格ですね。銃は1932年1月以前購入の38口径ダブル・アクション六連発リヴォルヴァ スミス・アンド・ウェッスン製が登場。時代からミリタリー&ポリスでしょうか。
(2017年3月20日記載)


No.160 10点 詩人と狂人たち
G・K・チェスタトン
(2019/08/14 23:22登録)
単行本1929年。雑誌連載は断続的。創元文庫の新訳(2016)で読みました。
昔からずっと好きで、ブラウン神父ものより評価してた記憶があります。再読はとても楽しかった。(新訳非常に読みやすいです。) ただし1929年の2作はいささか理に落ちてる感じが不満。でも⑴⑹⑻が本当に素晴らしいので殿堂入り10点です。
雑誌発表順にGKCを読む試みで『知りすぎた男』と交互に発表されていることから、記録は飛び飛びになっていますが、発表順に読むと違った面が見えました。
以下、初出はFictionMags Indexで調べ。カッコ付き数字は単行本の収録順です。(結構、順番を変えていますね。) 献辞は無いようです。

⑴The Fantastic Friends (Harper’s Bazar 1920-11, 挿絵の有無不明) 評価8点
最悪の状況で実際家(practical men)は役に立たない!と叫ぶゲイル。逆立ちをしてこの世の秘密を伝えるゲイル。狂気成分満載でロマンチックなチェスタトンの復活宣言です。原題のFantasticは翻訳では伝えるのが難しいですね… (この作品を読んでいる途中、どうしても最近の狂気による大量殺人事件を思い出してしまいました。無意味な大量死はGKCや西洋人が体験したWWIと同様のものでしょう。実際家が解決出来ないことを解きほぐす可能性を感じられる作品になっていると思います。)
(2019-8-10記載)

⑸The Finger of Stone (Harper’s Bazar 1920-12) 評価6点
犯行現場を含む土地全体が一種の密室という壮大な設定。科学界と宗教界の間には、当時、化石化の年数に対する論争があったのでしょうね。(調査してません。) 科学性皆無な話なのですが、発見以上に素晴らしいもの、というテーマが心を打ちます。
(2019-8-10記載)

⑵The Yellow Bird (Harper’s Bazar Feb 1921-2) 評価5点。
全ての旅の終着駅としての家。(『マンアライヴ』を思わせます。) 自由の意味。小品です。探偵小説への言及あり。
(2019-8-10記載)

※⑵と⑶の間はホーン フィッシャーもの3作を発表。

⑶The Shadow of the Shark (Nash’s and Pall Mall Magazine 1921-12): 評価5点
魅力的な不可能犯罪の設定(JDCの大好物)なのですが、解決はなーんだ、となります。GKCの興味は現代人の冷たい心情なのでしょう。ゲイルの不安定な心は作者の投影か。
ところで冒頭の「今は亡きシャーロック ホームズ氏(the late Mr. Sherlock Holmes)」というのはHis Last Bow(ストランド誌1917年9月号)の後、しばらく新作が発表されてなかったからでしょうね。(『マザリンの宝石』が1921年10月号に発表されてますが、どう見ても過去話で三人称という変則作ですからね…) もしかしてNash’sの挿絵はSteeleだったのかも。
(2019-8-12記載; 2019-8-14追記)

⑹The House of the Peacock (Harper’s Bazar 1922-1): 評価9点
全てが噛み合った素晴らしい構成。作者の目は被害者にも加害者にも同様に注がれています。ある種の鎮魂歌になるような作品だと思います。(今日の嫌なことが一気に吹っ飛びました。) でも孔雀って不吉だったんですね… 英初出はNash's and Pall Mall Magazine 1922-7と思われますが挿絵Frederic Dorr Steeleなんですよ。Webで見つけてビックリ。
(2019-8-12記載; 2019-8-14追記)

※間にフィッシャーもの2作、ブラウン神父もの3作。

⑻The Asylum of Adventure (MacLean’s 1924-11-1): 評価8点
いい話だな〜。心が洗われます。最高の締めくくり。初出はカナダの雑誌。英米誌には掲載記録がないみたい。何故だろう。
(2019-8-14記載)

※この間にブラウン神父もの、連作『法螺吹き友の会』、長篇The Return of Don Quixote。

⑺The Purple Jewel (The Story-teller 1929-3): 評価5点
作者的には5年前に一度幕を降ろしてるので、熱気が薄い感じです。でも穏やかな幸福感が良いですね。(単行本にするは枚数が足りないと言われたのかなぁ。)
p224 アプサント(absinthe): 飲みたいと言ったらレストランの主人にやめておけ、と言われました。味が酷いらしいです。ここでも「酔い心地がまことに異常」と言われてます…
p252 二千五百ポンド: 英国消費者物価指数基準(1929/2019)で63倍、現在価値2024万円。
(2019-8-14記載)

⑷The Crime of Gabriel Gale (The Story-teller 1929-9): 評価4点
その気持ちわかる、と言いたくなりますが… 解決後の長い説明がブラウン神父みたい。作者も咀嚼不十分なのでしょう。蛇足のエピソードがとても不気味です。(『アークトゥールスへの旅』のアレを連想しました…) ところで「詩人」ゲイルが詩を吟ずるのはこれが最初で最後ですね。
p120 雨男と言われている: that cloudless day having so rapidly overclouded, with the coming of the one man whose name was already associated with itがそのあたりの原文。「雨男」と言う概念は無い?
p132 小さな水滴が/小さな砂粒が/魂をよろめかせ/星々をも立っていられなくなる(Little drops of water,/Little grains of sand,/Make the soul to stagger/Till the stars can hardly stand.): "Little Things" is a 19th-century poem by Julia Abigail Fletcher Carney, written in Boston, Massachusetts. 原詩はLittle drops of water,/Little grains of sand,/Make the mighty ocean/And the pleasant land. ここではチェスタトン流に3-4行を変更。
(2019-8-14記載)

読み終わりましたので、短い概論。
「狂気」という言葉を軽々しく扱うのは甚だ危険なのですが、理性の枠からどうしてもはみ出してしまう人間性、とでも言いかえたら良いでしょうか。理性と人間性のバランスがミステリの本質なのだ、と(たまには)大げさに宣言しておきます。

459中の書評を表示しています 281 - 300