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ミステリの祭典

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レッドキングさんの登録情報
平均点:5.28点 書評数:943件

プロフィール| 書評

No.683 5点 狂人の部屋
ポール・アルテ
(2023/03/22 20:17登録)
原題"La Chambre du fou"、仏語le fou(狂った)は英語the fool(愚か者)とは違うのね。「ふー」でなく鼻にかけた仏音韻「んふ」風カー。カー風に、オカルト・どたばたロマンス・不思議事件と出てくるが、カー描く英国男女は、もっと劇画チックでエキセントリックで、ミステリ臭くて・・。アリバイトリックは、もうひと工夫で「密室」してた、惜しい。※

※あの後、窓の三日月錠(か何か)をロックし、部屋の扉に外から鍵かけて、複数人で扉を破って侵入し女が失神騒ぎ起こしている間に、室内の何処かか地面の死体の服に鍵入れておけば、密室からの死体消失完成! 誰かこのアイデア使ってもいいよ。「 既出すぎダろ! てめぇ密室ナメてんのか!」って怒られても知らないけどね (^^)


No.682 6点 方舟
夕木春央
(2023/03/17 21:22登録)
第三作目、これも面白かった。麻耶雄嵩以降にも、この手の「捻くれ者」出て来て実に嬉しい、今後も愉しみ!(^^)!
    素晴らしき舞台設定に、3点。
    探偵役の犯人限定ロジックに、1点。(残念だがロジックに「穴」がある)
    驚愕のトンデモどんでん返しオチに、2点。・・計 6点。
※連続性のロジックに成ってない・・とか、それ以前に、人殺しになるより、「皆で協力して一人二人水中脱出させて、救援呼んで来させる」て風に意思働かないか?普通・・てな野暮は言わんとこ、面白かったし。


No.681 6点 沼地の記憶
トマス・H・クック
(2023/03/13 20:56登録)
南部の朽ち果てた屋敷に一人暮らす名家の孤独な老人。半世紀前の、若き高校教師として「悪について」をテーマにしたゼミでの追想記述に、謎の裁判描写をカット挿入しながら、「何起きたの?」で読者を釣り、師と弟子・父と子・米国階級・スクールカーストロマン・血の宿命・「様々なる悪」・・のドラマが綴られて行く。
カズオ・イシグロがSF的に描いた英国同様に、自由でありながら、どうしようもなく非平等な階級社会米国を生きる若者たちの宿命の切なさが胸を打つ。※ミステリとしては3点、ブンガクとしては8点。で、間とってオマケ付けて。


No.680 6点 化石少女と七つの冒険
麻耶雄嵩
(2023/03/11 19:36登録)
相当な名探偵の陽キャラ天然女子高生と、やまれぬ事情から探偵の推理結果を打ち消しにかかるワトソン役の後輩男子の学園ミステリ続編。タイトル通り7件の殺人事件・・何と1~2ヶ月おきに普通に殺人事件が起きる名門学園・・を巡る小ネタロジック短編の集積。(麻耶、もう纏まった長編ミステリ拵える意欲も力も失せちゃったのか?) 
前編の「半汚れ」超えた「ブラック」展開と、ブラック効果に効いた叙述トリックに2~3点オマケあげちゃう。


No.679 4点 恩讐の鎮魂曲
中山七里
(2023/03/07 09:20登録)
老人施設で起きた撲殺事件。加害者は車椅子の入居老人で、被害者は屈強な介護士。己への裁きを要求する被告老人の自白に反し、実際に起こったことは何だったのか、のWhyWhatミステリ。思わず一気読み誘う程に面白く、かつ感動的だが、シリーズ前二作にあったアクの強い捻りが足りない・・(ミステリマニアは人が悪いからねえ)
※それは別として、作者の「良心」に水差してワリいが、暴力クズ父(夫)、野獣レベル囚人、手負獣の如き患者・・24時間中こんな類と付き合わざるを得ない家族や職業に・・同情しちゃうなア。


No.678 7点 死が招く
ポール・アルテ
(2023/03/05 22:23登録)
しょぼいトリックが売りのアルテらしからぬ、なかなかにナカナカの密室トリック。ダミー造形も、だみぃでなく


No.677 7点 第四の扉
ポール・アルテ
(2023/03/03 08:44登録)
フレンチ・カーでぃあん、アルテ処女(?)作。「密室」三つ・・施錠・封印・雪足跡・・に、オカルトドタバタ・・・
カーおまーじゅ、標準近いレベルでクリアし、新本格風どんでん返し見事で、点数おまけ加点。


No.676 6点 奇跡島の不思議
二階堂黎人
(2023/02/27 22:53登録)
水乃サトル不思議シリーズ第一弾。孤島・奇館(何とプチガウディ!)・学生サークル・「そして誰も」連続殺人・見立て・足跡物・密室、ナンという超本格定番! 二つの密室は「密室の帝王」にしてはチト凡庸で、青春物としては、「リラ荘」・綾辻「館物」・有栖川「学生物」より面白い。が、女神崇拝に絡めたアートネタでは麻耶「夏冬奏鳴曲」に遠く及ばない。
見立てのWhyは、ちょっと斬新。


No.675 5点 追憶の夜想曲
中山七里
(2023/02/20 18:14登録)
平凡な中年女の起こしたカッターナイフ刺殺事件の法廷サスペンス劇。被告はキャラ・容姿共に冴えない主婦で、被害者は失業引きこもりのDV夫。客観も自供も明白な事件をリングに、トンデモ過去・・誰が見てもアノ事件が元ネタ・・持ちのスーパー弁護士と、テク・情熱・モラル兼備の凄腕検事が、スーパーヘビー級の丁丁発止カードを展開し、ミステリとしては事件の真相Whatに、被告女の「秘密」と「弁護士、何故この女に拘る?」Whyがキモになる。
でもさあ、働きもせず部屋に引きこもり、妻や娘に暴力を振るう、肥大した自尊心だけのDVクズ男を殺したからって、「同情の余地なき悪女」とまでは叩かれんだろう。むしろ「夫の方に問題ある」って情状酌量空気になるんじゃね?世間。あと、主人公の「Why」、「偽善」とまでは言わんけど、ちと眉に唾つけたくなるな、この手の「君たちはどう生きるか」。むしろ、抑えることの不可能な「過去からの呪縛」としてほしかった。


No.674 6点 ある殺意
P・D・ジェイムズ
(2023/02/18 00:41登録)
精神病院の地下室で起きた女事務長刺殺事件。病院地下室は、外部者の犯行ではあり得ない「密室」状態だった。「密室」言っても、医師達に看護婦達、療法士にカウンセラー、事務員用務員達・・実に十数人もの容疑者達がひしめき、時間アリバイロジックらしき骨格も、明確な・チト素直すぎな・伏線も、Whoドンデン返し決着もあるが、容疑者達のキャラ描写と人間関係・・主に男女関係・・描写の方がミステリ展開を引っ張って行く。


No.673 3点 東尋坊マジック
二階堂黎人
(2023/02/13 18:49登録)
水乃サトル・マジックシリーズ第五弾。4年周期に繰り返される残虐な女性殺人事件と、銃による交換殺人事件の強引な連結。捻り付きの贅沢までは望まないが、せめて二つのネタには、偶然ではない物語的統合性がほしく。
銃殺アリバイトリックに2点、猟奇殺人鬼「冥妖星」のプロファイリング風ネタに1点プラス。


No.672 7点 緋色の迷宮
トマス・H・クック
(2023/02/10 21:19登録)
小さな写真店を経営し、短大講師の妻と友一人いない「理想的でない」息子を家族に持ち、それなりの、決して敗け組と言えない人生を送る中年男。そして、男が生まれ育ち、脆くも崩れ落ちた過去の家庭・・病死した妹・事故死した母・残された狷介な父と「人生敗残者」の兄。少女行方不明事件の容疑が、ベビーシッターをしていた息子にかかり、男の堅固なはずの家庭を腐食し始めて、過去の家庭の追憶にも地獄絵図が追塗装されて行く。絶望的な結末を暗示する追想記述が、現在・過去二つの家庭悲劇文学を陰影深くリードして行くが、少女事件のミステリどんでん返し決着に併せて、鮮やかに、しかし、苦く収束する。
※親が愛するのが「理想の子」であって、自分でない事を知る子供の苦しみ。現前の子供の実像を愛することのできない親の地獄。取り繕われた紙細工の家庭・・米国男って、難儀そうだなア、家庭経営・・(どこも同じか)


No.671 5点 女の顔を覆え
P・D・ジェイムズ
(2023/02/07 18:50登録)
P・D・ジェイムズ処女作。薬物飲まされ扼殺されたシングルマザーのメイド。富裕ではない・・にしては二人も住込み女中抱えてるが・・旧家の家族に、使用人・近隣・縁者達容疑者揃えた古典的Whoダニット。伏線追って詳細に読み込めば結構ロジカルなんだろが、キモは被害者のユニークなキャラに絡めたWhy ”何で殺されちゃったの?”。なんていうか、クリスティーより一回りアク強く「こんなんだろなあ、英国の女」感が描写されてて、よく。(点数オマケ)


No.670 4点 連続殺人鬼カエル男ふたたび
中山七里
(2023/02/04 12:15登録)
「カエル男」続編。「ABC~」で「ホッグ連続~」で「意外な犯人」で予想通りの「オチ」で・・最初から最後まで「ありふれた」ミステリで、面白くないことはなく、前作のクドーい劇画風乱闘格闘シーンないので減点なし。また、音楽を「神聖化」してない事と、刑法ネタ出しても人権派vsアンチ人権派の双方を平等に冷眼視するバランス感覚は、なかなかに良く。


No.669 3点 連続殺人鬼 カエル男
中山七里
(2023/01/30 23:48登録)
屍体を吊るし・潰し・解体し・燃やし、オマケに「見立て作文」まで残す連続猟奇殺人鬼。被害者は殺され順に「あ」「い」「う」・で始まる苗字だった・・。嫌いじゃないぞ、この手のやつ。倒叙で露骨な「ダミー」出して、如何にもな操りネタを派手に二段落ちさせて、最後にもう一ヒネリ付けて。それは良いが、精神医療や音楽ネタの「解説文」を、青く生硬なまま小説にぶち込んだり、それ以上に格闘描写の、まあ、クドいことクドいこと・・おおきくマイナス。


No.668 4点 贖罪の奏鳴曲
中山七里
(2023/01/28 21:39登録)
医療機器による保険金殺人裁判。病院で急死した町工場経営者の妻を被告に、法廷サスペンス劇が展開して、主役は、あざとい迄にトンデモな過去持ち設定のハードボイルド風味弁護士。彼自身の過去描写と併せて、事件の真相解明ドンデン返し劇が収束するが、再ドンデン返し・・これまた、あざとくどぎついネタで・・が待っていた。


No.667 3点 生首に聞いてみろ
法月綸太郎
(2023/01/27 20:56登録)
「石膏像はなぜ首切られる」のWhyミステリ。「入代りの入代り」ってナカナカに斬新ネタ。あと、「義弟」ミスリードのオマケ付きで、つい「彼」の方を白い眼で見ちまった・・そっちの方が面白かったが・・


No.666 6点 蜘蛛の巣のなかへ
トマス・H・クック
(2023/01/24 22:43登録)
愛せなかった故郷を離れ、遠い地で暮らす齢四十前の孤独な教師。余命僅かな父親を看取るために一時的に帰郷した貧しい山間の故郷。誰からも愛されず誰も愛せず己自身も愛せない生涯を送った父親と、その男から愛されることのなかった母親と二人の息子。二十年を経た再会の後も互いに嫌悪憎悪しか抱くことのない老父と息子。二十年前に己に別離を告げた少女。帰郷後、偶然に疑問を抱く様になる二十年前に弟の起こした殺人事件を再調査するうちに、父親の固執と弟の事件と少女との別離が、別の絵画へと目まぐるしく変容収束し、暗く苦く辛い物語に、最後の最後に至って救いの光が差し込む。


No.665 4点 船から消えた男
F・W・クロフツ
(2023/01/20 21:39登録)
クロフツ第十九作。航行中の船から消失した男が、溺死体で発見され、莫大な財産に繋がる発明に絡んだ殺人事件裁判へと展開する。十八番アリバイトリックいつも通りで、何ら「不思議不可能」無しもいつも通り。見どころは法廷冤罪サスペンス・・でも、犯人や否やどころか、殺人か否かさえ曖昧な、あんな「状況証拠」での死刑判決なんて、ありか?


No.664 6点 ハルビン・カフェ
打海文三
(2023/01/14 09:26登録)
近未来またはパラレル世界設定のSF風警察ノワール。諸外国マフィアが割拠支配する福井県の架空都市を舞台に、警察内派閥・・官房系vs公安系vs警官テログループ・・の血まみれ暗闘劇が、キャリア女監察官・五十代刑事・元街娼児童の女・謎の多重混血男・殺された警官遺児達・外国マフィアボスを駒に展開し、二十年に及ぶ事件史の真相が、謎の男の正体と併せて明らかにされて行く。
「水位が高まると若者は何かの決断をしたがる。決断の中身は空虚そのものなのに・・・」

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