home

ミステリの祭典

login
フレンチ警部と毒蛇の謎
フレンチシリーズ

作家 F・W・クロフツ
出版日2010年03月
平均点5.00点
書評数4人

No.4 5点 レッドキング
(2023/05/06 20:04登録)
クロフツ第二十二作。機械毒蛇トリックともかく、アリバイ構成の方がなあ。共犯にして倒叙主役を、クロフツにしては珍しや心象掘り下げして、ちょびっと「罪と罰」させてて、点数オマケ。 ※にしても、あれで死刑てのは・・・

No.3 5点 nukkam
(2016/06/29 20:41登録)
(ネタバレなしです) 1938年発表のフレンチシリーズ第18作の本書は倒叙本格派推理小説です。但し創元推理文庫版の巻末解説でも紹介されているように主人公の役割が他の倒叙推理小説と異なるところに本書の工夫があり、殺人場面の直接描写もありません。それでも犯人の正体はみえみえなのですが、ハウダニットに関しては読者に対して最後まで謎として残るようにしています。もっともこのトリックは読者が推理で見破るのは至難の業と思いますけど(フレンチだって証拠確認のために警察力に頼っているし)。

No.2 5点 E-BANKER
(2016/04/19 21:27登録)
クロフツ最後の未訳作品として話題となった本作。
1938年発表で作者として二十二番目の長編となる作品。
原題は“Antidote to Venom”ということで日本語訳すれば『解毒剤』ということかな?

~サリッジは英国第二の動物園で園長を務めている。申し分ない地位に就いてはいるが、博打で首は回らず、夫婦仲は崩壊寸前、ふと愛人に走る始末で老い先短い叔母の財産に起死回生の望みを託す。その叔母がいよいよ他界し、遺言状の検認がすめば晴れて遺産が手に入ると思いきや・・・。目算の狂ったサリッジは、悪事に加担する道を選ぶ。良心の呵責を別にすれば事はうまく運んでいた。フレンチという主席警部が横槍を入れるまでは・・・~

作品中の殆どが動物園長を務めるサリッジの視点で書かれており、フレンチ視点の章は数えるほど。
要は倒叙形式のミステリーということなのだが・・・
中盤までは彼が犯罪に手を染めるまでの過程が順に語られるとともに、伏線めいた材料がいろいろと撒かれていく。
彼と彼を犯罪に巻き込んだ共犯者の目論見が見事にはまり、検死審問で事故死という結論が出るが、フレンチ警部が登場するや否や、あっという間に形勢逆転。ふたりの夢は泡のように消えてしまう・・・

粗筋を短くまとめるとこんな感じ。
計画がうまくいき、まとまった金が手に入ったことで、幸せをつかむはずだったはずのサリッジが、被害者となった老学者の影と罪の意識に悩まされ、徐々に追い込まれていくさま。
この辺りが本作の読みどころとなるのだろうが、印象的なラストと相俟って、作者の宗教観みたいなものが表れている。
倒叙形式というと、犯罪者たる主人公の心といかにシンクロできるかが面白さの鍵となるのだろうけど、作者はさすがにその辺りのツボは心得ている。

ただ「クロイドン」と比べると、やっぱり弱いかな。
他の方も書かれているとおり、本作の場合、主人公=実行犯ではないため、探偵役(=フレンチ)に自らが考え抜いたトリックを崩されるというカタルシスを味わえないことで、そこがどうしても弱くなっているのだと思う。
毒蛇をトリックと絡めてうまい具合に使っているのは感心したんだけど、犯罪計画を崩していく過程もちょっと安直かなと思うし、その辺のプロットがもう少し練られていたら、もう一段面白い作品になったのだろうと感じる。
評価としては可もなく不可もなくというところ。
(こういう男の心情ってイギリス人も日本人も一緒なんだなぁ・・・憐れ!)

No.1 5点 kanamori
(2010/04/11 18:13登録)
クロフツ最後の未訳長編ということで、期待と不安感を持って読みました。
動物園園長の視点で語られる倒叙形式のミステリですが、実行犯(主犯)は別にいて、園長はある手助けをする人物な訳で、殺人行為自体にタッチしていない。そのため、倒叙なのにハウダニットというユニークな構成になっています。この園長が犯罪に関与しなければならなくなった経緯が物語の3分の2を占めていねいに描写されていますが、この部分を楽しめるかどうかで、読者のこの作品に対する評価が別れると思います。
ようやくフレンチ警部が登場し、いつものスタイルになる訳ですが、むしろ一貫して園長の視点で語られていたほうが、クライム・ミステリとして完成度の高いものになっていたような気がしました。

4レコード表示中です 書評