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ミステリの祭典

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サンドリーヌ裁判

作家 トマス・H・クック
出版日2015年01月
平均点6.00点
書評数2人

No.2 5点 レッドキング
(2023/04/22 19:49登録)
不治の難病に罹った才色兼備の妻の急死。妻殺し容疑で告発された大学教授の夫。妻との出会いからの重苦しい追想が、数日間の裁判描写に重ねて綴られて行く。ミステリと文学が、ほぼ、fifty-fiftyでリードし合うクックの小説だが、これは、ミステリ興味・・自殺か殺人かWhatダニットと無罪か有罪か評決・・を釣りにした、冷笑主義と自虐的高慢に硬化した男の精神を焙り出す苦渋の小説。言っちまえば、ミステリをダシにした「文学」に過ぎない。
が、最後の一頁の、「驚き」の・・文学にあるまじき・・ミステリ的Happyエンドに点数オマケ。
※「カラマーゾフの兄弟」のゾシマ長老が言ってたな、「地獄とは、人を愛せなくなった心」って。

No.1 7点 猫サーカス
(2017/12/12 19:01登録)
妻殺しで起訴された夫の裁判を通じて、夫婦それぞれの秘められた内面を描き出している。起訴された夫の視点から、裁判の様子が、そして彼自身の回想がつづられる。証人尋問に、弁護士と検事の駆け引き。そんな法廷ものらしい場面も確かにある。しかし、真に物語を支えるのは、ひたすら内側へ向かってゆく主人公の語りでしょう。心情を吐露しながらも、殺人か否かという肝心の点だけ述べずに続く語りは作者の得意技。宙づりにされたまま最後まで引っ張られた感覚が楽しめる。

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