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ミステリの祭典

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人並由真さんの登録情報
平均点:6.36点 書評数:2327件

プロフィール| 書評

No.267 5点 S&S探偵事務所 最終兵器は女王様
福田和代
(2018/01/09 12:16登録)
 ミステリとしては薄味だが、キャラクターものの連作としてはそこそこ楽しめた。本作の前日譚となる長編は未読だけどね。
 読んでいる間はITの知識が増えたように思える。


No.266 7点 マツリカ・マトリョシカ
相沢沙呼
(2018/01/09 12:11登録)
 以前から気になりながらも全く手つかずだった相沢作品でマツリカ・シリーズだが、初めて読んでみたこの一冊はえらく歯応えがあり、そして面白かった。
 血なまぐささ皆無の日常の謎を契機にした多重推理が連なっていく趣向、そして最後に名探偵が綿々と語るロジックの切れ味と多重感。

 巨×のあたりのロジックなど、それはどうよ、それでもやる人はやるんじゃないの、という思いもしないでもないが、その辺の受け手のツッコミを刺激するのですら、きっとこの作品の芸であろう。まちがいなく2017年の最大の収穫のひとつ。


No.265 6点 痴漢冤罪
新堂冬樹
(2018/01/09 12:00登録)
 それぞれ過去に心に傷を負いながら、悪党として生きることを選択した二人の男の闘い。
 新堂作品はあまり読んでないんだけど、これは良い意味で、一回も視聴をやめられない深夜23時枠のよく出来た連続テレビドラマを観るようで実に面白かった。
 後半の脇役の使い方が一部ストーリーの駒的になっているあたりとか、ラストが少し弱いのはナンだが、それでも十分に読み応えある一冊。


No.264 6点 がらくた少女と人喰い煙突
矢樹純
(2018/01/09 11:54登録)
 がらくた集め少女に比べてもうひとりの主人公のキャラクターはいまいち生かしきれなかった印象だが、死体の首が喪失した真相に関しては、前代未聞の奇想であろう。
(もし前例があったらすみません~笑~)
 
 それにしてもこれは確かに、今風の筆致で綴った横溝作品だよね。横溝ファンの人は「ああ」と通じるものがあるでしょう。


No.263 6点 紅城奇譚
鳥飼否宇
(2018/01/09 11:46登録)
 戦国時代の一つの城郭の隆盛期からその破滅までの挿話を、謎解きミステリ連作の形で綴った外連味ゆたかな一冊。
 なかにはちょっと薄味なものもあるが、奇想かつトリッキィな趣向の連発は最後まで楽しめた。


No.262 7点 カミカゼの邦
神野オキナ
(2018/01/09 11:42登録)
 小説としての熱量は、全盛期の西村寿行を思わせる感じで最強だった。
 沖縄を主題にした作者のルサンチマンは間違いなく受け手を選ぶだろうが、それも良い。きわどさの中にあまり深入りしたくないという弱気な思いを抱かせながらも、こちらの心をしっかりと捉えたそんな一冊。


No.261 5点 陽気な死体は、ぼくの知らない空を見ていた
田中静人
(2018/01/09 11:36登録)
 ヒロインふたりの凄絶な関係は、これがフィクションでありドラマであっても、もう少し何とかなったはずでしょう、という印象です。書き手が登場人物いじめに酔っている感じで、どうもすんなり受け入れられなかった。
 最後のホワイダニットの真相はそれなり以上に鮮烈だけど、一方で幽霊ドラマを並列して綴ったために、物語の焦点がぼけた気もする。

 ただ筆力はある新人作家さんだとは思うので、次作もまた読むかもしれない。


No.260 5点 帝都大捜査網
岡田秀文
(2018/01/09 11:31登録)
 大筋のホワットダニット(何が、どういう事件が起きているのか)の方はまあ面白かったものの、もうひとつの大仕掛けの方は必要だったのか? という印象。はっきり言ってこの長編で、この作品で、この事件でやる必然性は、頗る希薄だよね。
 途中で違和感を覚えながらも、別にことさらそんなヘンなことする意味もないだろと思っていたら、最後に・・・。
 もちろん、この仕掛けで、あまたある現行国産ミステリの中で、とにもかくにも作品の印象を強めたという一点の意味ならば、まさに作者の思惑通りですが。
(まあ、この考えを突き詰めていくと、ミステリ史上、名作と呼ばれているいくつかの作品にも咎が行くんだろうな。そうなったらそうなったで、アレなんだけど。) 


No.259 6点 少女は夜を綴らない
逸木裕
(2018/01/09 11:21登録)
 今回も前作に負けない力作だとは思う。サブキャラクター(悪役のオヤジや、特売マニアを自称する下級生の女子ほか)もよく描き込んでいる。
 とはいえ本作の場合、ミステリの妙味が青春小説としての側面にもうひとつ拮抗しえなかった印象が残る。いやミステリとしての工夫はしてあるんだけど、そのパーツの座りがいまひとつこなれてない感じというか。
 他の作者の他の作品だったら、ミステリとしては薄味でも良い小説、泣ける青春小説だったら高い評価をしたいものはいくらでもあるんだけどな。なんでなんだろ。


No.258 5点 鉄道探偵団 まぼろしの踊り子号
倉阪鬼一郎
(2018/01/09 11:15登録)
 連作中編集。倉阪作品はそんなに読んでいないのだけど、新シリーズらしい。
 一部、ミステリとしては成立していないんじゃないの?(謎解きをかなり専門的な分野での知識に負うという意味で)といった感触の話などもあった。
 が、未知のジャンル(筆者にとって)で楽しそうにトリヴィアを興ずるキャラクターたちの語らいは悪くない。
 個人的には最後の一編が、ホワイダニットの謎としても市井の人間ドラマとしても印象に残る。


No.257 6点 人形は指をさす
ダニエル・コール
(2018/01/09 11:08登録)
 刊行前から海外35ヶ国での出版が決まったという鳴り物入りの作品だけあって、読んでいるうちは確かに面白かった。後半で物語の大きなポイントが明らかになる時点ではああ、×××にこういう立場を背負わせるのかというある種の昏い感慨も覚えた。

 とはいえ最後まで読むとAmazonでの某氏のレビュー通り、本作品の最大級に重要な謎といえる部分が放って置かれたまま終わり、その意味でう~ん、ではある。
 あと書きたいこともあるけれど、ネタバレになるので今回はストップ。


No.256 6点 虚ろなる十月の夜に
ロジャー・ゼラズニイ
(2018/01/09 10:58登録)
 クトゥール・ネタ+オールスターもののダーク(ただしまったく暗くない)ファンタジー。「名探偵」としてホームズも登場しているので、このサイトに感想を記しておく。
 クトゥールの邪神か旧支配者の復活の儀式があり、その前で有名キャラクター(切り裂きジャックやドラキュラ伯爵、ヴィクトール・フランケンシュタインほか、または、ああこれは虚実の有名なキャラクターが原典だなとすぐに思えるオリジナルキャラ)が二陣営に分かれて、その復活と阻止を巡って一定のルールの下に争う物語。
 壮絶に異常な出来事を、ジャックの愛犬(使い魔)であるスナッフの視点を通して淡々と書いていく(こんな特異なバトルが日常の人間界とどういう接点を持つのか、を含めて)ゼラズニイの筆致が実に快く、魔人たちの使い魔同士の交流劇も楽しめる。
 ゼラズニイ作品は何冊か読んでそれぞれそれなり以上に面白かったけど、体系的に読んでいるわけじゃないので、本書が作者の著作のなかでどの辺のポジションを占めるかはよく分からないんだけど。


No.255 5点 殺しのディナーにご招待
E・C・R・ロラック
(2018/01/09 10:44登録)
 承認欲求の高い、あるいは高そうな一流半~二流の物書き連中が、謎の何者かの意志のもとに招集される。作者がそんな一同のキャラクターを少しずつ書き分けていくのと並行して、その陰で殺人事件が起きる(起きていた)という導入部は良かった。
 しかし、その後のもたつきぶりはややげんなりで、せっかくの複数キャラによる多重解決の思索ももう少し整理して書けばいいのに、ああもったいない、という感じである。

 ロラックは、面白そう、期待できる、という感じで読み出し、部分的には良いところもありながら、全体としては今ひとつ。読んだ作品はそんなのばっかりである。


No.254 5点 紙片は告発する
D・M・ディヴァイン
(2018/01/09 10:39登録)
 多様な登場人物の描き分けが完了しないうちから、読者の目線を無視して作者が物語を進めていく印象で中盤までは読むのがかなりきつかった。
 やがて主人公(ヒロイン)格のメロドラマと地方政治の内紛あれこれに焦点が定まってからはそこそこ読めるようになってくる。
 解決は、う~ん、確かに伏線や手がかりは張ってあったけど、これで謎解きパズラ-として作者は面白いと思ってるの? という感じ。ミステリに最低限必要なトキメキが無い。
 ラストのストーリー上の決着は、まあ良かった。


No.253 6点 <サーカス・クイーン号>事件
クリフォード・ナイト
(2018/01/09 10:33登録)
 クリフォード・ナイトは初めてだけれど(稀覯本のアレも持ってはいるが読んでない~汗~)、結構、楽しめた。サーカスの動物による死亡が一種の事故か、それとも誰かの意思に起因する殺人か? という「ホームズのライヴァル」時代の某短編を想起させる謎もなかなか気を惹くし。
 大学教授なれども幼少からサーカスが大好きで、休暇を利用して芸人(ピエロ役)を演じる名探偵ロジャーズのキャラクターも良い。
 軽妙かつ飽きさせない職人芸の旧作パズラ-として好ましい出来でした。他の作品ももっと紹介してください。


No.252 6点 黒い睡蓮
ミシェル・ビュッシ
(2018/01/09 10:24登録)
 日本でも話題になった秀作『彼女のいない飛行機』のあとに紹介された作品(原書での刊行はこちらが先らしいが)だけに期待した
 結果は、まあおおむねソツなく全編面白く読めた(&ミステリとしてのポイントが明確だった)『彼女』に比べ、こちらは悪くないがもうちょっと・・・という感じ。

 とはいえ大きな仕掛けが早々に何となく見えてしまいながら、あるミスディレクションを用意してそんな読者の疑念を封じにかかる辺りは好感が持てる。それでもそのミスディレクションそのものの意味にも気づく人もいるかもしれないが。
 画家モネについてのトリヴィアの提供と、多数の登場人物を書き分けていく流麗な筆致という意味で、小説としては面白かった。


No.251 6点 誰が死んでも同じこと
円居挽
(2017/11/28 20:01登録)
(ネタバレなし)
国内最高クラスの巨大コンツェルン・河帝(かみかど)商事。それは齢80歳を超える財界の怪物的存在・河帝銀蔵会長が創業して育て上げた一大帝国だった。その河帝一族の新世代の若者たちが、相次いで怪異な鎧武者と遭遇。次々と惨殺される連続殺人事件が発生した。よく口の回る警察庁の若きキャリア捜査官・十常寺迅は、河帝内の事情を知る有能で強気な美人秘書・灰原円(まどか)に強引に協力を要請。謎の鎧武者の怪人「バークブルーダー」を追うが。

 一本一本の事件ごとに謎解きミステリとしての趣向が設けられた全4話の連作短編が、最後にまとまりを見せて長編を構成するタイプのミステリ。山田風太郎の『明治断頭台』とか湊かなえの『贖罪』とかミスターX(ホック)の『狐火殺人事件』とかのパターンですな。謎解きの方向は一応はフーダニットが基本。ただし各話の登場人物が少ないので読者は毎回大方の犯人の予想がつく。作者はそれに応えてホワイダニットの方にむしろ重点を置いた作りを採っている・

 ラノベなみに読み易い文体でリーダビリティは格別。各話の真相のなかにはなかなかハッとさせられるものもあって、独自の創意をいくつか盛り込んだ腹応えはそれなりにある。たぶん作者が本書でやろうとしたことは、<21世紀の時代向けに翻案した『獄門島』『犬神家』的な横溝風・封建世界を主題にした血と絆のミステリ>だろうね。その意味でなかなか面白く読めました。

 主人公コンビは相応に存在感があるんだけど、この設定(特に円が河帝の社員であること)が枷になって、ふたり揃っての再登場は難しいだろうな。なんかうまい設定が見込めるならシリーズ化してほしいものですが。


No.250 5点 緑の窓口~樹木トラブル解決します~
下村敦史
(2017/11/26 10:06登録)
(ネタバレなし)
「僕」こと24歳の天野優樹は、区役所の生活課に所属。生活保護関連の業務をしているが、ある日、公園の樹木相手に奇行を披露する同世代の愛らしい女性を見かけた。そんな折、天野は、イケメンでさばけた性格の岩浪先輩とともに、環境対策課に新設された「緑の窓口」への転属を命じられる。そこは市民が抱える植物全般とその周辺の問題を解決する部署だった。そしてその業務のなかで天野は、先の女性=樹木医の柊紅葉(ひいらぎくれは)と再会するが。

 専門職の知識や素養がバラエティに富んだ市井の事件やトラブルを解決していく、いわゆる<ブラック・ジャックもの>の連作。新世代・社会派の作者がなんでまたいきなりこんなもん、という感じだが、ご当人や担当編集者的には作風の幅を広げようなどの考えがあるのだろう。
 マジメで愛らしく人間臭いがどっかズレてる紅葉のキャラはこの手の作品としてはスタンダードで、よくいえば安心して読める、悪く言えばあちこちによくある「日常の謎」+専門分野ものの連作のひとつ。
 全6本が収録され、途中から伏線を張られていた紅葉の葛藤にも最終話で決着がつくが、その着地点についておおむねの予想が早々とついてしまうのはなんとも。
 ただ第五話の<植物テーマの連作の一つにそのネタをかぶせるか>という作りなどは、いかにもこの作者らしい手応えだった。

 クラス会に行って帰る電車の中で読んだが、道中のお供にはちょうど良い一冊であった。


No.249 7点 消人屋敷の殺人
深木章子
(2017/11/25 11:34登録)
(ネタバレなし)
 Q半島の軽磐(かるいわ)岬にある旧家の武家屋敷・日影荘。そこは江戸時代、邸内から空に飛び出す人間が目撃されたり、明治初期に十数人の人間が邸内から忽然と消えたりと複数の不思議な伝説を遺す邸宅だった。現在その屋敷は中小出版社・流星社の編集者兼経営参加者の平井の所有物になっている。かたや「わたし」こと女子大生の幸田真由里は、連絡のつかない兄・淳也が、その流星社が抱える大人気の新人合作作家「黒崎冬華」の片方ではないかと推察した。そんな真由里のもとに、その冬華の名で、日影荘にいるので来てほしいとの連絡が届く。真由里は、合作作家・黒崎冬華のもう一方の片割れと思われる文学青年・新城篤史の兄=フリーライターの誠とともに、日影荘に向かうが…。

 今まで読んできた深木作品以上のリーダビリティでスラスラ楽しめる。深夜の寝る前と、明け方の早朝の数時間で早々と読了。もちろんこちらもアレコレ思いを抱きながら読むが…。
 まあとにかく、人間消失の謎をふくめてあんまり語らない方がいいタイプの作品ね。ある程度の予想はつくものの真相の全貌は見破れず、最後まで楽しませていただきました。評点は、最後の一行が妙にエロいので、それも踏まえてこの点数(笑)。


No.248 5点 僕が殺された未来
春畑行成
(2017/11/25 11:07登録)
(ネタバレなし)
「僕」こと21歳の大学生・高木は、同じ大学のミス・キャンパスである美少女・小田美沙希に片思いしていたが、ある日、その彼女が謎の失踪を遂げる。誘拐の可能性もふくめて事件性が高まるなか、高木の前に現れたのは60年後の未来から来たと称する15歳の愛らしい少女・大塚ハナだった。未来人の存在を疑う高木に対して、ハナは翌日の出来事を言い当てて自分の真性を証明。そんなハナは、現在の高木が小田美沙希の誘拐事件に巻き込まれて、彼女ともども近々に死ぬ運命にあると告げた。未来の史実でも殺人誘拐事件の犯人は迷宮入りであり、高木は自分と小田美沙希の命を守ろうと決意。真犯人と事件の真実を探って、ハナとともに奔走するが。

 ほとんどラノベ風にさらりと読めるタイムトラベルSF風の青春ミステリ。正直、ミステリとしてはきわめて曲のない作りで、そっちの意味では思っていた以上に楽しみ所がない。(ちなみに169頁になってようやっと主人公のフルネームが明かされ、その叙述がその後に続く展開は何だかなあ、って感じ。いや最初から明かしていたら読者に気づかれるのはわかるけど、今回の場合、正にその程度のネタだよ。)
 21世紀の現在形青年の高木がごく自然に『101回目のプロポーズ』ネタを口にしたり(こういうのって「いつか再放送で観た」とか入れるべきだよな)、随所の時代感覚も若者向けの作品としてはどうも古い。高木を相手にする同じ対話者の呼び方が特に意味も無く「高木さん」「高木くん」と入り混じるとかのあたりも、作者本人なり編集者なりが最後まで推敲すべきだったんじゃないかと。
 ただまあ主人公の高木とハナ、それからヒロインのキャラクターはそれなりに好感が持てる。タイムパラドックスについてのロジックも特に新しいものはないけれど、丁寧に作中で言及され、その辺も悪くない。昭和の佳作の小品という印象の一冊。

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