少女は夜を綴らない |
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作家 | 逸木裕 |
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出版日 | 2017年07月 |
平均点 | 6.25点 |
書評数 | 4人 |
No.4 | 6点 | 人並由真 | |
(2018/01/09 11:21登録) 今回も前作に負けない力作だとは思う。サブキャラクター(悪役のオヤジや、特売マニアを自称する下級生の女子ほか)もよく描き込んでいる。 とはいえ本作の場合、ミステリの妙味が青春小説としての側面にもうひとつ拮抗しえなかった印象が残る。いやミステリとしての工夫はしてあるんだけど、そのパーツの座りがいまひとつこなれてない感じというか。 他の作者の他の作品だったら、ミステリとしては薄味でも良い小説、泣ける青春小説だったら高い評価をしたいものはいくらでもあるんだけどな。なんでなんだろ。 |
No.3 | 8点 | 虫暮部 | |
(2017/10/16 12:58登録) こういう、殺伐とした青少年の心象を描いたミステリは好き。その手の話ではどうしても定番になってしまうネタ、といったものはあるわけで既視感を覚えた部分もあるが、それでも尚、良く出来ていると思う。 イヤな事柄を本当にイヤな感じで書くのが巧み。適度に意外でテンポの良い展開でページを繰らせ、なかなか説得力の有る落とし所に上手く着地している。難を言えば、ボー研の後輩のキャラクターが薄い(ので、後半いきなりしゃしゃり出て来た印象)。 私は読みながら『オーダーメイド殺人クラブ』(辻村深月)を思い出していたが、本書の方をより高く評価する。 |
No.2 | 5点 | 小原庄助 | |
(2017/10/10 10:03登録) 身近な人間の殺害計画をノートに書いている中3の理子と、理子の秘密を知る中1の悠人の共犯関係を描いた青春ミステリ。 「恐るべき子供たち」というのは、文学でも映画でも昔からあるテーマだが、悠人の姉の死をきっかけに、理子が誰かを傷つけてしまうのではないかという「加害恐怖」の強迫観念にとらわれているというのが、まず新鮮。 さらにそんな理子を、自分の父親殺しに導く悠人の存在も不穏な様相を濃くして緊迫感を強めている。 特に面白いのは、理子が殺人計画を周到に練る点だろう。悠人に主導権を握られていたのに、いつの間にか逆転して、計画を実行に移そうとするが、予想外のことが起きて物語がねじれていく。 サスペンスとしても厚みがあるけれど、読者の胸を焦がすのは、少年少女の痛々しいまでの自意識、不安、孤独、絶望、罪悪感でしょう。 自分の居場所探しというと、聞こえは安っぽくなるけれど、精いっぱい生きていこうとする理子の切々たる思いが最後に響き渡り、ラストは感動的である。 余分な書き込みもあるし、プロットはいびつであるけれど、注目に値する作品だと思う。 |
No.1 | 6点 | メルカトル | |
(2017/09/28 22:11登録) 主人公は加害恐怖を患う中学3年の少女、理子。他に主要登場人物は、理子の目の前で死なせてしまった幼馴染の加奈子、加奈子の弟で何か良からぬことを企む悠人、その父で借金取りに追われる龍馬、理子の友人でボードゲーム研究会部長のマキ、同じく部員で気の強い後輩の薫、ホームレスのハナコさんら多数。 理子は半ば強引に悠人にある計画の実行を手伝わされるのだが、そのうち彼女のほうがその計画を一から練っていくのに夢中になっていく。その間にも様々な事件が勃発し物語は紆余曲折を経る。一方、周辺ではホームレスの殺害事件が相次ぐ。 横溝正史賞受賞後第一作は、どこか混沌としながら展開する青春ミステリです。期待が大きすぎたせいか、やや食い足りない感じを受けはしましたが、二作目としてはまずまず合格点を上げてよいように思います。もう少しプロットを整理できていたら、もっと読みやすいエンターテインメントに仕上がっていたのではないですかね。 ただ、エピローグは素晴らしいと思います。何がとは言えませんが、さすがにただでは終わらない感じですか。 蛇足ですが、極上の装丁だった前作と同じスタッフで作られた表紙は、これまた称賛に値する見事な情景を表現した一つの「作品」に仕上がっています。 |