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ミステリの祭典

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がらくた少女と人喰い煙突
桜木静流シリーズ

作家 矢樹純
出版日2017年09月
平均点6.67点
書評数3人

No.3 7点 虫暮部
(2018/05/07 10:08登録)
 骨格は古典的なクローズド・サークルであり、それにしては動機重視の解決編はあまりロジカルではないが、色々と味付けが巧みで、作者は良い意味で読ませ方を心得ていると思う。
 実は私は、拾ったジャズのCDを愛聴したり、拾った週刊スピリッツをきっかけに星里もちるにハマったり、拾った独和辞典を使いもしないのに積読していたり、拾ったヴァイオリンをいつか使う日も来るだろうと保管していたりして、陶子の気持が判らなくもないので気を付けたい。あ、でも坂口安吾の文庫本は拾って読んだが好みではないのでちゃんと処分した。よし大丈夫。
 よく判らないところがあった。恵三郎が陶子に対して“仁菜に似てきて気味が悪い”と発言したが、それは自身の妻とも共通する特徴である筈だ。どういう気持なのか?そう言えばその妻(=仁菜の母)の現況が語られていないね(私の見落とし?)。

No.2 6点 人並由真
(2018/01/09 11:54登録)
 がらくた集め少女に比べてもうひとりの主人公のキャラクターはいまいち生かしきれなかった印象だが、死体の首が喪失した真相に関しては、前代未聞の奇想であろう。
(もし前例があったらすみません~笑~)
 
 それにしてもこれは確かに、今風の筆致で綴った横溝作品だよね。横溝ファンの人は「ああ」と通じるものがあるでしょう。

No.1 7点 メルカトル
(2017/11/06 22:17登録)
がらくた集めが生きがいの中学三年生の少女、陶子。その前に現れた心理カウンセラーを名乗る桜木静流。彼は陶子の病名を強迫性貯蔵症と診断するが、実は彼も人に言えぬ神経性の疾患を抱えていた。
二人は治療と称して狗島という孤島に渡るが、到着したその日に陶子の伯父が首なし死体となって発見される。さらに彼らの前に四肢を切断された死体が・・・。

どことなく横溝正史ワールドを彷彿とさせる本作は、人を食ったようなタイトルとは裏腹に骨格のしっかりした本格ミステリです。それにしてもこのタイトルはミステリ読みの心をくすぐるかなりの吸引力を持ってはいませんか?
勿論、がらくた集めが事件の解決に有機的に結びつています。というのは大げさかもしれませんが、それなりの役割を果たしているのは確かです。また、桜木の相当風変わりな異常嗜好も大いに事件に関わってきます。そのため、余計な誤解を招いて混乱を引き起こす引き金にもなっていますが。
首なし死体の謎(なぜ切断されたのか)は、現実的に可能かどうかは別として、新たな切り口と言っても良いと思います。斬新かどうかは分かりませんが、少なくとも私のつたない読書経験上では初めてです。
二人目の死体の四肢切断の理由については、あまり期待を寄せないほうが賢明です。探偵である桜木自身もあまりそのことを重視していない雰囲気は感じましたので、まあそうだろうなと。

この作者の本業は漫画の原作らしいですが、そんなことしている場合じゃないでしょうよ。もっとミステリを書かなきゃダメでしょう。ちなみに本作がミステリは二作目のようです。

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