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ミステリの祭典

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陽気な死体は、ぼくの知らない空を見ていた

作家 田中静人
出版日2017年08月
平均点6.00点
書評数2人

No.2 5点 人並由真
(2018/01/09 11:36登録)
 ヒロインふたりの凄絶な関係は、これがフィクションでありドラマであっても、もう少し何とかなったはずでしょう、という印象です。書き手が登場人物いじめに酔っている感じで、どうもすんなり受け入れられなかった。
 最後のホワイダニットの真相はそれなり以上に鮮烈だけど、一方で幽霊ドラマを並列して綴ったために、物語の焦点がぼけた気もする。

 ただ筆力はある新人作家さんだとは思うので、次作もまた読むかもしれない。

No.1 7点 メルカトル
(2017/10/30 22:24登録)
「明日雨が降ったら、お父さんを殺す」。これがすべての始まりだった。
小学五年生の大地は幼馴染でクラスメイトの少女、空からそう告げられた。なぜという問いに「お父さんは、人間じゃなくなったから」という回答が。あくる日は雨で、空のお父さんが死体となって発見された。さらには別の雨の日、空の兄である悟が殺された。果たして本当に空が犯人なのか?そんな中、悟が「死体」として大地の前に現れる。悟は見える人にしか見えないことや、壁を通り抜けられることを利用して、なぜ自分が殺されたのかを探り始める。一方、クラスの美少女光の下着が盗まれたり、チャボが猫に襲われたりの事件が起きる。

途中までは大地、空、光の歪な三角関係を中心にした、ややダークな青春ミステリくらいにしか思いませんでした。物語半ばで誰が陰で糸を引いているのかが明確になります。ということは、残る謎は悟が殺された理由だけかな、などとのほほんと読んでいましたが、後半それまでの風景が一変します。そこにはあまりに痛々しい青春ミステリと呼ぶには残酷すぎる現実が待っています。呑気に読んでいた自分を叱りたくなりました。
すべての登場人物にちゃんとした役割が割り振られ、余計なエピソードなどは限りなくカットされているにも拘らず、しっかりとした人物造形がなされています。特に大地、空、悟の心理描写は細部に至るまで描かれており、その場その時々の心理状態が手に取るようにわかります。
正直あまり期待していませんでしたが、かなりの拾い物、いや秀作と言っても過言ではないと思います。

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