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ミステリの祭典

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誰が死んでも同じこと

作家 円居挽
出版日2017年10月
平均点6.00点
書評数1人

No.1 6点 人並由真
(2017/11/28 20:01登録)
(ネタバレなし)
国内最高クラスの巨大コンツェルン・河帝(かみかど)商事。それは齢80歳を超える財界の怪物的存在・河帝銀蔵会長が創業して育て上げた一大帝国だった。その河帝一族の新世代の若者たちが、相次いで怪異な鎧武者と遭遇。次々と惨殺される連続殺人事件が発生した。よく口の回る警察庁の若きキャリア捜査官・十常寺迅は、河帝内の事情を知る有能で強気な美人秘書・灰原円(まどか)に強引に協力を要請。謎の鎧武者の怪人「バークブルーダー」を追うが。

 一本一本の事件ごとに謎解きミステリとしての趣向が設けられた全4話の連作短編が、最後にまとまりを見せて長編を構成するタイプのミステリ。山田風太郎の『明治断頭台』とか湊かなえの『贖罪』とかミスターX(ホック)の『狐火殺人事件』とかのパターンですな。謎解きの方向は一応はフーダニットが基本。ただし各話の登場人物が少ないので読者は毎回大方の犯人の予想がつく。作者はそれに応えてホワイダニットの方にむしろ重点を置いた作りを採っている・

 ラノベなみに読み易い文体でリーダビリティは格別。各話の真相のなかにはなかなかハッとさせられるものもあって、独自の創意をいくつか盛り込んだ腹応えはそれなりにある。たぶん作者が本書でやろうとしたことは、<21世紀の時代向けに翻案した『獄門島』『犬神家』的な横溝風・封建世界を主題にした血と絆のミステリ>だろうね。その意味でなかなか面白く読めました。

 主人公コンビは相応に存在感があるんだけど、この設定(特に円が河帝の社員であること)が枷になって、ふたり揃っての再登場は難しいだろうな。なんかうまい設定が見込めるならシリーズ化してほしいものですが。

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