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ミステリの祭典

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パンやんさんの登録情報
平均点:6.49点 書評数:95件

プロフィール| 書評

No.55 6点 完全なる首長竜の日
乾緑郎
(2016/07/16 10:23登録)
昏睡状態の弟との交信から、現実と意識空間が交錯し、これは現実か思考か読み解く楽しみに溢れ、姉の孤独感や日常をリアルに描く事により盛り上げる手腕はお見事。予想通りと思わせてからの、強烈な卓袱台返しは痛々しく、別物とはいえ映画化は完全なる失敗作であった。


No.54 6点 ミネルヴァの報復
深木章子
(2016/07/12 07:50登録)
小説としての文章の練達さに舌を巻く。横手弁護士を軸に読者視線としてストーリーを転ばし、所々睦木弁護士を挟み、謎にヒントを塗して修正させるという展開がうまく、聡明な犯人の更に上を読む推理は神憑ってはいるが、訴訟の矛盾やトリビアも飛出して、何かとお得な一編。


No.53 7点 人間の尊厳と八〇〇メートル
深水黎一郎
(2016/07/09 11:33登録)
洗練されていて、知的好奇心が擽られるような、インテリジェンス溢れる短編集。いずれもバラエティに富んでいて、表題作が抜群に面白いが、ミステリー?な『蜜月旅行』の味わいも楽しい。嫌ミス、馬鹿ミス、恐怖ミス、人体破壊ミス等のお口直しに上質な作品集ですなぁ。


No.52 6点 七人のおば
パット・マガー
(2016/07/05 08:00登録)
ひねりの効いた変化球型ミステリーで、翻訳も気にならない評判にたがわぬ面白さ。キャラの描き分け、その心情、感情の揺さぶりは素晴らしく、ミステリーの部分はどうでもよくなってきて、いつしか女の恐さに戦く事になる。独身男子に読ませてはいけない、『怖るべき娘達』。


No.51 6点 名探偵の証明
市川哲也
(2016/07/02 09:06登録)
名探偵という虚構の世界の住人の悲哀、アイドル探偵の台頭、ワトスン役の苦悩と、解決の裏側にある心理描写が読み所か。が、全体的にトッチラカッタ軽い文章に慣れるのに、ちょいと時間がかかりトリックも弱いが、珍しい切り口ではあろう。


No.50 8点 ミステリ十二か月
事典・ガイド
(2016/06/29 07:26登録)
現役作家の書いたとても丁寧なミステリーガイドで、古典ミステリーの読み方の案内書でもあり、本格ミステリー好きの為のエッセイ集でもある。読んだ本はどんどん処理する小生にとって、長〜く手元にある愛読書にて、全ての本好きにオススメしたいカワイイ本でもある。


No.49 7点 ロートレック荘事件
筒井康隆
(2016/06/22 09:48登録)
SF作家の重鎮、筒井御大の作家力に改めて驚愕する、初出1990年の快編。叙述トリックの二度読みの楽しみに溢れ、見取り図をよ〜く見直すと、いかに緻密な工夫なのか、日本語の持つ言葉の技巧を駆使してあるか(浜口 重樹ですぞ!まだ、解らぬか?)。小生も納得!フェアだね(笑)


No.48 7点 生還者
下村敦史
(2016/06/15 08:14登録)
登山など全く縁の無い小生には、その技術用語の連続には多少トッチラかるも、其なりにかわしても断然嬉しくなる山岳ものであった。ミステリーとしてより、人間ドラマとしての内面を幾重にも厚く描き、含蓄に富む言葉にも溢れ、その読み応え、読後感の爽快さといったら無い。


No.47 6点 公開処刑人 森のくまさん
堀内公太郎
(2016/06/09 08:36登録)
つかみは抜群、テンポよく、どんどん読ませてくれるものの、少しずつトッチラかってきて、エンディングに驚きは無い。ミステリーとしての旨みは薄いが、テーマは重く、文章は軽いという、この泥臭さが魅力でもある。エピローグの余韻もそこそこに、続編へ?


No.46 6点 探偵映画
我孫子武丸
(2016/06/08 07:46登録)
してやったり感溢れるトリックよりも、助監督を取り巻く映画制作の舞台ウラの、ドタバタ青春ストーリーとしての面白さに尽きる。又、ちょくちょく挟まれる映画作品のトリビアが楽しく、映画好きには堪らない、色褪せていないミステリーであった。


No.45 6点 彼女は存在しない
浦賀和宏
(2016/06/08 07:12登録)
サクサク読めて中盤からは一気読みで、筆力は認めるものの、ちょいと混乱しやすく、なんともスッキリしない。又、必要とは思えないグロ描写もあり、後味も良くないが、独特の味わいのある語り口ではあるので、他作品も読もうと思った次第。


No.44 6点 赤と白
櫛木理宇
(2016/06/02 07:52登録)
冒頭の新聞記事の前振りもそこそこに、新潟の雪国の鬱屈した世界にどっぷり浸る事此の上無い一編。終始、どんよりした閉塞感の中で、各々の母娘の歪みが生み出すリアルな思いの交錯が悲しいが、こんなに重苦しい話をさらっと読ませるうまさがある。


No.43 6点 この闇と光
服部まゆみ
(2016/05/13 05:46登録)
中世を舞台にしたゴシック調ロマンと思いきや、所々の違和感のなか、盲目のレイア姫の日常が綴られていくが、このレイア(一)がネックであった。ここに魅了されるならば、あとは仰天のお楽しみが待っているという仕組み。たまにはこんなのも、いいのかなと思った次第。


No.42 5点 リターン
五十嵐貴久
(2016/05/10 06:22登録)
「リカ」同様、グイグイ力強く読ませる面白さはあるので、サクッと読めるがパワーダウンは否めない。メールでの駆け引きの綾は楽しめるものの、リカの謎が未消化のままはどうなのか、女対決もちょいと肩透かし。とはいえ、後引くエピローグの怖さは好み。


No.41 8点 絶叫
葉真中顕
(2016/05/08 06:17登録)
降りかかる不幸を自然現象と捉え堕ちていく女の顛末を、二人称、二つの時間軸、証言の数々で立体的に描く手法がお見事。緻密な社会派ミステリーの体から、ピカレスクロマンの様相を呈するうまさもある。このボリューム一気読みの後、第2部◇14に戻りたくなりますぞ…。


No.40 6点 凍える島
近藤史恵
(2016/05/05 06:29登録)
奇妙なカタカナ表記と特異な文体によって構築された世界が、とても不思議な味わいとなり、ヒロインの卓越した心理に翻弄される面白さに溢れている。が、論理的な追及によるミステリーの醍醐味もあるが、どうにもスッキリしないモヤモヤ感も残り、しばし小生も凍える事となる。


No.39 6点 凍花
斉木香津
(2016/05/04 16:05登録)
繊細な心理描写で心の葛藤を綴る家族小説風ミステリー。本当の自分を晒すことが出来ず壊れていく長女、少しずつ真相に迫る三女に、感情移入出来るかどうかで評価は分かれるが、デリカシーの無い次女の扱いが一番可哀想であった。


No.38 7点 女王はかえらない
降田天
(2016/05/03 13:56登録)
スクールカーストやいじめといった新鮮味の無いテーマに、使われ尽くしたトリックを用いて、筆力の良さで押し切った快作。何より第一部が抜群で、キャラ立ち最高の子供たちの魅力にどんどん嵌り、真相に対する描写不足は感じるも、タイトルに帰結する読後感に溺れる事必至!


No.37 5点 十字屋敷のピエロ
東野圭吾
(2016/05/03 10:08登録)
多作でも佳作、秀作の多い東野作品で、これも相当読み易いが面白さは中の下。読ませる割には思いの程、感情移入出来ない。故にトリックも真相も深く迫って来ず、ピエロ、人形師はいいとして肝心のヒロインがイマイチなのも残念。


No.36 6点 むかし僕が死んだ家
東野圭吾
(2016/05/03 09:40登録)
さすがのリーダビリティー感で、伏線の張り方やその回収もソツ無くうまいが、ミステリーとしての驚きは少ない。大胆な発想の割りにかわいい小品となったが、妙な怖さがあり、開放感からかもしれないが、ヒロインへのエールを感じる幕切れがうれしい。

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