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ミステリの祭典

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赤と白

作家 櫛木理宇
出版日2013年03月
平均点6.00点
書評数2人

No.2 6点 メルカトル
(2020/06/08 22:38登録)
冬はどこまでも白い雪が降り積もり、重い灰白色の雲に覆われる町に暮らす高校生の小柚子と弥子。同級生たちの前では明るく振舞う陰で、二人はそれぞれが周囲には打ち明けられない家庭の事情を抱えていた。そんな折、小学生の頃に転校していった友人の京香が現れ、日常がより一層の閉塞感を帯びていく…。絶望的な日々を過ごす少女たちの心の闇を抉り出す第25回小説すばる新人賞受賞作。
『BOOK』データベースより。

初期の作品ながらこの作者の文章の完成度は見事なものです。小柚子と弥子の二人の主人公は歪んだ母親との関係性を持っています。又、その二人と最も関係の深い京香と苺実も含めて、青春と呼ぶにはあまりにねっとりとした女子高生たちのリアルを描いていると思います。日常的に酒に溺れたり、人に言えないトラウマや悩みを抱えていたりと、爽やかな青春小説とは対極に位置するブラックでダークな青春小説です。

冒頭にある事件の顛末が語られていて、そのホワイとフーに向かって、毎日のように降り続ける雪に閉ざされた閉塞感の中、物語は疾走を続けます。終わってみれば、何という事もない結末ではありますが、そこに救いはありません。
しかし、終章に於いて漸く光が僅かに差し込んでいき、それまでのやりきれないストーリーが少しだけ報われたような感覚に陥ります。これは作者の計算通りでしょう。まあ、一般受けはしないと思いますが、決して中身のない作品ではないですね。でもホラーじゃないと思います。怖いと言えば等身大の女子高生の真の姿が怖いですけど。

No.1 6点 パンやん
(2016/06/02 07:52登録)
冒頭の新聞記事の前振りもそこそこに、新潟の雪国の鬱屈した世界にどっぷり浸る事此の上無い一編。終始、どんよりした閉塞感の中で、各々の母娘の歪みが生み出すリアルな思いの交錯が悲しいが、こんなに重苦しい話をさらっと読ませるうまさがある。

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