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ミステリの祭典

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名探偵の証明
名探偵の証明

作家 市川哲也
出版日2013年10月
平均点4.85点
書評数13人

No.13 7点 虫暮部
(2022/05/09 11:48登録)
 事件全体が “名探偵” の存在を前提に構築された広義の “作り物”でラストにひっくり返す。またこのパターンで来たか(マイナス)、ってなもんで驚きは無かった。それはそれとして良く出来ている(プラス)とは思う。
 基本的には好きなタイプ。その上でプラスとマイナスが拮抗。
 殺人犯が “近付くと自殺するぞ” と牽制するのは有効なのか?

No.12 3点 ボナンザ
(2022/02/10 22:47登録)
名探偵というものを扱ったファッション本格ものであり、肝心のミステリ部分はかなりおざなりなのが難点。

No.11 5点 mediocrity
(2020/01/08 06:28登録)
高校時代の蜜柑花子の活躍を描いたシリーズ2冊を先に読んでしまったが、この作品が市川氏のデビュー作とのこと。鮎川哲也賞受賞作。
偶然上の順番で読んだが、時系列的には正しいわけだし、むしろこちらの順番で読んで良かった気がする。

さて本作は、高校時代から名探偵の誉れ高い蜜柑花子と往年の名探偵屋敷啓次郎の対決、かと思いきや、蜜柑が屋敷の大ファンであり協力のような形で話が進んでいく。事件そのものとトリックはそれほど目新しい物でもない。事件4割、名探偵談義6割という感じで、名探偵の悲哀の方がメインテーマに感じられた。
異色作で、その辺が鮎川賞審査員の心を捕らえたのだろうが、正直読んでいる分には今一つ良さがよくわからなかった。ただ、続編は読んでみたいという気にはなった。

No.10 6点 nukkam
(2019/01/29 21:57登録)
(ネタバレなしです) 鮎川哲也に私淑して漢字1字違いのペンネームで登場した市川哲也(1985年生まれ)の2013年発表のデビュー作である本格派推理小説です。往年の名探偵である屋敷啓次郎と今をときめく名探偵である蜜柑花子の謎解き競演を描いています。屋敷は高齢化による探偵能力の喪失をかなり意識していますが、私の読んだ創元推理文庫版の表紙イラストは結構若く見えるぞ(笑)。そして蜜柑花子の描写は思ったよりも控え目です。事件の謎解きが意外と早く終結し、後日談がかなり長いです。もっとも後日談もミステリー要素はあるのでマーサ・グライムズの「『乗ってきた馬』亭の再会」(1996年)の後日談のように無駄に長いとは感じません。ただこの後日談があった方がよかったのかは微妙だと思います。名探偵の生きざま、名探偵を取り巻く人々の名探偵への思い、そして名探偵を意識している犯人と様々な角度で名探偵の存在を描いているのですが、もっと謎の魅力と謎解きの面白さの方に傾注してほしかったと思うのは身勝手な感想でしょうか?

No.9 5点 まさむね
(2018/10/31 23:37登録)
 鮎川哲也賞受賞作。
 「名探偵」の「老い」とか「弱さ」に焦点を当てたメタ的視点は結構面白かったですし、印象に残りそうでもあります。
 一方で、それらの要素が「読み進めたい欲」を増幅させたのかと問われれば、消極的な回答をしてしまうような気もします。中だるみ感も否定できないし、トリック自体も小粒(既視感満載)と言わざるを得ません。若き名探偵「蜜柑花子」の位置づけも、少なくとも本作時点では中途半端な印象(あくまでも本作だけでの印象だけれども)。
 とは言え、続編or短編集もそのうち読んでみようかなぁ…と思ったのも事実なので、まずはこの採点にしておこうかな。

No.8 3点 いいちこ
(2018/07/09 17:08登録)
まず叙述の拙劣さは、これまで私が読んできたミステリ作家の中でも1・2を争う、商業出版としていかがなものかというレベル。
作中で発生する事件と、その推理プロセスは、それが本作の主題ではないことを差し引いても、何ら評価できるものがない。
それでいて、名探偵の存在意義を問う本作のメインテーマからも、印象に残るものが何もない。
当然厳しい評価にならざるを得ない

No.7 5点 メルカトル
(2018/03/03 22:19登録)
ちょっと内容がタイトル負けしている感じですね。ミステリ小説における名探偵の存在理由のようなものを読者に問いかけているのだと思いますが、なんとなく深そうで実は浅い気がします。探偵がいるから事件が起こるのか、事件が起こるところ探偵ありなのか、まあそんなテーマをさも重大事のごとく掘り下げようとしている姿勢自体は買えますが、結局何なのかよく判りません。

密室殺人事件に関して言えば、なんだかありきたりで感心しません。よくあるトリックです。蜜柑は普段は片言なのに、謎解きを始めると途端にシャキッとするという、誠に不思議な女性です。いくら個性付けしたかったと言え、あまりに安易ではないでしょうか。そんな若い女性はいませんよ。
どちらかというと屋敷のほうに感情移入するように仕向けられていますが、名探偵の肩書はやや荷が重かったとしか思えませんでした。

とは言え、いきなり冒頭からある事件の解決編を持ってくる試みはなるほどと思いました。前置きが長いのは時としてイラッとさせられますからね。
しかし、本編の事件解決からラストまでが長く、これが余計だったのではないかと、個人的には思いました。後味も悪く、もう少し気の利いた結末を期待したかったのですが、その意味でも残念な香りがします。二人の探偵の対決としてはそれなりに面白かったですが。

No.6 5点 ねここねこ男爵
(2018/02/04 20:18登録)
なんだかよく分からなかった。
後期クイーン問題を基礎にしたと思われる「名探偵の悲哀」がメインテーマらしい…のだが。

ミステリとして見た場合、トリックや論理展開が好意的に表現すると見慣れたもの、率直に言えば極めて幼稚。作中でも探偵役の口から盛んに「斬新なものではない」的な説明がある(エクスキューズ?)。更に探偵役の推理が推理と言うには余りに独善的で「○○だった犯人が△△するはずがない」という論理の欠片もない苦しいものばかり。かつてキレキレだったが今は衰えている、という設定を言い訳に稚拙な謎を持ってきたように思える。さらに一旦結論づけられた事件をひっくり返す下りがあるのだが、最初の結論が異様にシンプルに数行で終わっていて、ここを最初に掘り下げると破綻するのでサラッと流してる、それがすぐに読者にバレてしまうなど筆力不足が際立っている。後述する通りある程度ミステリ読書経験がないとピンとこないテーマを扱っていながら、経験ある読者にはすぐに看破されるような描写では…

そうすると、コレはミステリ調味料をふりかけた文学作品なのかということになるが、「悲哀」とやらを表現する手法がこれまた極めて稚拙。最初に全盛時を書いて次に落ちぶれた描写をして…とミエミエで、それ以外にも平穏な日常シーンを書いてからの「こんなオレはオレじゃない。オレは現場でしか生きられない」描写…。小説漫画アニメ等で使い古されたどころかすでにゴミ箱行きのやり口で、読者全員が読んだ瞬間のオチを想像したであろう。

戸惑ったのは、これらが作者の狙いなのか筆力不足でスベってるのかワタクシには分からなかったこと。多分スベってるんだとは思いつつ、有名な賞を受賞しているということはワタクシの感受性が低いせいなんだろうかとも思ってしまうというか。

作者の主張する「名探偵の悲哀」とやらは、ある程度ミステリを読み込んであれこれ考察している読者にのみ理解できることで、そうでない人は戸惑うだろうし、より深刻なのは「この作者はその説明を読者の読書経験に委ねていて作中で薄っぺらい説明しかしていないこと」である。それが本作全体の薄っぺらさの本質だろう。

しかし、あまりにも稚拙なのでこれこそ作者の狙いかも…とも思えるので、あれこれ考えてこの点数。何冊か読まないと意図がつかめなさそうです。

No.5 3点 mozart
(2018/01/16 14:34登録)
これは何とも・・・。「ミステリー」としての出来もさることながら、後味の悪い結末に持って行くこじつけのような動機付けとか。自分にはちょっと残念な印象ばかり残りました。

No.4 5点 makomako
(2017/12/30 09:19登録)
 はじめはなかなか面白いのです。
 引退同然に引きこもっている名探偵が蜜柑花子というダサい名前の高校生名探偵と対決。ところが、蜜柑は名探偵屋敷の大ファンだった。
 そしてとんでもない密室殺人が勃発。とても解けそうもないとおもわれた。

以下ちょっとネタバレ。読まれてもトリックなどが開かされているのではありませんので大丈夫と思いますが。

 さんざん考えて屋敷は真相を解き明かすが、実は蜜柑はすぐに解いてしまっていた。屋敷がなかなか解けないのでヒントめいた言葉を出していたことがわかり、引退することとした。
 これで終わりのようだが、なぜか未だ終了までかなりページがある。
 ただ、いろいろな話が続くのですが、まあ最後のほうはあまりぱっとしない。
 密室トリックも絶対無理がありますね。どんなに練習してもこうはいかんよ。

No.3 6点 パンやん
(2016/07/02 09:06登録)
名探偵という虚構の世界の住人の悲哀、アイドル探偵の台頭、ワトスン役の苦悩と、解決の裏側にある心理描写が読み所か。が、全体的にトッチラカッタ軽い文章に慣れるのに、ちょいと時間がかかりトリックも弱いが、珍しい切り口ではあろう。

No.2 6点 名探偵ジャパン
(2014/10/29 10:32登録)
一線を退いたかつての名探偵の悲哀。
これを読んで、藤子不二雄の珍作「劇画オバQ」を思い出した。
誰だって全盛期の勢いを失わずにはいられない。最近の名探偵は年齢固定の「サザエさん時空」に住むものが多いが、かつて明智小五郎、神津恭介とかは、実際に年代とともに加齢していってたなー。
そういった恵まれた晩節を迎えられる探偵ばかりではないということなのか。
新世代探偵が出て来たときは、老いさらばえた爺さん探偵を見下す小生意気な女探偵との、新旧対決となるかと思ったが、そういう(つまらない)展開は避けてくれた。
蜜柑は屋敷を尊敬し、犯罪には毅然とした態度を崩さない、大変心地いいキャラクターだ。普段と推理時とのギャップも萌え要素。
複数の事件が出てくるが、数が多いためか、どれも小粒。メインの密室トリックも、単純な割に説明が込み入るもので、スカッと解決といかなかったのは残念。

~~以下ネタバレです~~

最後の展開だが、主人公殺す必要あった?
今後蜜柑を主人公にして、その後見人的立場として置いてシリーズ化もできたのに。(たまに蜜柑の危機に助けに来たりしてね)キャラが魅力的なだけにもったいない。
最後、明確に死んだという描写はなかったように思うので、奇跡的に一命を取り留めたことにして、上記のような設定でシリーズ化を望む。

No.1 4点 kanamori
(2013/11/06 22:57登録)
そのめざましい活躍から80年代には”新本格ブーム”まで巻き起こした「おれ」こと名探偵・屋敷啓次郎。時は過ぎ、老いて引退を考える名探偵のもとにかつての相棒が訪ねてくる-------。

今年の鮎川哲也賞受賞作品。(先日の授賞式でのスピーチ冒頭が「こんな名前ですみません」だったが”市川哲也”は本名)。で、タイトルのとおり名探偵の存在意義と再生の物語ですが、率直に言うとやや期待外れでした。
紹介文には受賞作品の枕詞の如く”選考委員絶賛の〜”とありますが、巻末の選評を読んでも各氏条件付きの推挙で、とても絶賛とは受け取れないです。
プロローグの事件と謎解きが新本格第一世代の某2大名作を合体したようなパロディ風なのが面白く、続く本編に期待を抱かせるものでしたが、読み進めて明らかになる作品のテーマは新味に欠け、密室などのトリックも工夫がないように思いました。真犯人の動機の点でも説得力に欠けるように思います。

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