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ミステリの祭典

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青い車さんの登録情報
平均点:6.93点 書評数:483件

プロフィール| 書評

No.443 7点 第三の終章
リチャード・レビンソン&ウィリアム・リンク
(2019/10/05 18:54登録)
 犯人が最初わざと自分に容疑を向けさせるというパターンは覚えている限りではシリーズで唯一の例です。殺し屋を雇うのもミステリーの御法度に近い手法ですが、今回はその殺し屋に架空の動機まででっち上げてすべての罪を着せて殺すという、実に複雑な犯罪計画でした。ただし、その手の込んだ計画がある一点の想定外で崩れてしまい、結果的に犯人の自縄自縛ともいえる事件でもあります。ラストの畳み掛けるようなコロンボの追及には見応えがありました。


No.442 6点 意識の下の映像
リチャード・レビンソン&ウィリアム・リンク
(2019/10/05 18:45登録)
 細かい粗が無いわけではないのですが、当時あまり知られていなかったサブリミナル効果を本格的に取り入れた意欲は素晴らしいと思います。犯人の使用したトリックをそのままやり返すことで逮捕するという収束性も見逃せません。コロンボがケプル博士に鎌をかけ、それをケプルが見抜いてとぼける所は古畑任三郎でも引用された名シーンです。


No.441 7点 野望の果て
リチャード・レビンソン&ウィリアム・リンク
(2019/10/05 18:36登録)
 特殊な趣向に頼らず、犯人が周到な計画殺人を起こし、残されたミスや証拠からコロンボがその犯罪を瓦解していく、正統な『刑事コロンボ』の秀作のひとつです。特に弾道や車の位置に着目してヘイワードに付きまとうコロンボのねちっこさは出色のものです。ラストの名BGMとともに訪れる幕切れも素晴らしく、これが見たくて最初から見返してしまうような魅力があります。


No.440 6点 別れのワイン
リチャード・レビンソン&ウィリアム・リンク
(2019/09/23 09:33登録)
 『別れのワイン』のエイドリアンは果たして同情されるだけの人間でしょうか?決して嫌いなわけではありません。ただ、他の犯人と同等に身勝手なところがあるのに、「いいやつだ」「殺された義弟の方が悪者」とされるような風潮が引っかかるのです。職業意識が高いのはすばらしい個性ですが、人に生き死によりワインの方が大事、というのは人格としてかなり歪んでいるとさえ思えます。さらに、その義弟の母親を侮辱するような発言をしているのも好きになれません。個人的にはむしろラムフォード大佐やトミー・ブラウンの方を同情して見てしまいます。


No.439 8点 カナダ金貨の謎
有栖川有栖
(2019/09/23 09:13登録)
 短編2作+中編3作で構成された火村シリーズ久々の中短編集。それぞれ異なるアプローチの見せ場があり、なかなかのお気に入りです。以下、各話の感想。

①『船長が死んだ夜』 衒いのない直球のフーダニット。燃やされたポスターの手掛かりから、明快なロジックで犯人を突き止める推理が気持ちいい快作です。
②『エア・キャット』 殺人事件が話題に登りますが、それ自体より火村の猫好き特性が見どころのファンサービス的な一編です。
③『カナダ金貨の謎』 犯人の一人称の章に引き付けられます。消えた金貨と他の些細な証拠を繋げ、謎を解く手際も見事です。
④『あるトリックの蹉跌』 以前に少し触れられた、火村とアリスの出会いを詳しく読むことができたのが満足です。作中のアリスの小説はいかにも習作という感じがします。
⑤『トロッコの行方』 有名な思考実験を冒頭にもってきたことが上手いです。トロッコ問題の話題が無ければ、最後の皮肉を含んだ幕切れが活きなかったでしょう。


No.438 5点 二つの顔
リチャード・レビンソン&ウィリアム・リンク
(2019/09/16 18:34登録)
 この回の本来の目論みは、双子のうちどちらが犯人?と思わせることなのですが、慣れた人ならその真相を簡単に見破ってしまうのが惜しい所です。コロンボの追及も今回あまり厳しくなく、デクスターと料理をするところがハイライトのように感じてしまいます。『スタートレック』で変装の達人を演じた人が犯人であると知り、アイデア一本で勝負したことにようやく納得できました。


No.437 8点 断たれた音
リチャード・レビンソン&ウィリアム・リンク
(2019/09/15 21:19登録)
 驚異の記憶力を持ち抜群に頭が切れる一方で、過剰に臆病でナイーヴという痛ましい弱さも抱えている、エメット・クレイトンのキャラが好きです。コロンボは執念深く矛盾と証拠を集め、彼を容赦なく追い詰めていきます。ニンニクの匂い、歯ブラシ、便箋、塩と胡椒、ボールペンのインクと細かい手掛かりをぶつけ続け、さながらチェスの攻防のような応酬です。最後の詰めは証拠としてやや弱いため完璧な作品とは言えないものの、個人的に偏愛してやみません。


No.436 8点 溶ける糸
リチャード・レビンソン&ウィリアム・リンク
(2019/09/15 16:57登録)
 オープニングから切れ味鋭いラストまで極めてスピード感のある傑作。電話に出ながら時計を直していた、モルヒネの瓶に指紋が無かった、といった着目はまずまずのレベルです。しかし、時限装置的な第一の犯行が次の殺人の呼び水になるという意欲的な構成や、事件の全貌をコロンボが解明していく流れるような展開、そしてメイフィールドの冷酷さなど魅力的なポイントが尽きません。ただひとつ、ネタバレ的な邦題だけがちょっと気になります。


No.435 7点 偶像のレクイエム
リチャード・レビンソン&ウィリアム・リンク
(2019/09/15 16:43登録)
 ノーラを演じたアン・バクスターがまさに「映画界が斜陽となりTVドラマで生き延びている人」だったと知り、そのリアリティに当時のアメリカの視聴者は引き付けられただろうと思いました。『パイルD‐3の壁』と同様、視聴者に伏せた秘密がラストまで引っ張られますが、今回はそれがドラマ性を豊かにするために効果を挙げています。コロンボのノーラへの紳士的な振る舞いも印象的でした。


No.434 4点 ロンドンの傘
リチャード・レビンソン&ウィリアム・リンク
(2019/09/15 16:36登録)
 全編海外ロケの特別回という趣向は楽しくて成功しています。ただし、この解決はいかがなものでしょうか。決め手がない犯人から証拠を引き出すためにコロンボは逆トリックを度々用いますが、今回のそれは100パーセント捏造と言っていい代物です。ニコラスとリリアンの夫妻がコロンボと対決はおろか接触すらしない場面が多いのも気になります。お祭り編として雰囲気を味わうべき一作。


No.433 6点 アリバイのダイヤル
リチャード・レビンソン&ウィリアム・リンク
(2019/09/15 11:08登録)
 このエピソードは推理の内容以上に演出が素晴らしく、最後の犯人と二人きりでの対決シーンに魅力が詰まっています。よくよく考えれば今回コロンボが突きつけたのはハンロンのアリバイ崩しに過ぎません。言い逃れは可能なのですが、BGMの緊張感、コロンボの表情、黙って水を飲むハンロンといった見せ方の上手さはシリーズでも上位に登ると思っています。エンドクレジットが、廻っているテープだけを映した画面で流れるところも好きです。


No.432 6点 悪の温室
リチャード・レビンソン&ウィリアム・リンク
(2019/09/15 10:59登録)
 『死者の身代金』とは違ったアプローチの誘拐殺人もの。犯行計画のミスをコロンボが次々と指摘していき、そこまで彼を苦労させた事件ではありませんが、「落とし方」の意外さが面白い所です。アナログ人間なイメージのあるコロンボが、機械を手にして捜査する姿は他では見られません。新キャラクターであるウィルソン刑事もいい味を出しているのですが、次の登場はかなり後のエピソードになります。


No.431 6点 黒のエチュード
リチャード・レビンソン&ウィリアム・リンク
(2019/09/15 10:51登録)
 妻の母親の力で今の地位を得ており、また美しい妻がいながら不倫をしている指揮者のアレックスをジョン・カサヴェテスがダンディに演じています。ろくでもない男ではあるのですが、嫌悪感をそれほど感じないキャラクターに仕上げているのはこの役者によるところが大きいでしょう。ミステリ的には小粒ですが、夫の罪を認めるかどうかを妻のジャニスに委ねるシーン、そして全てを集約する小道具カーネーションには美しさを感じます。


No.430 7点 パイルD-3の壁
リチャード・レビンソン&ウィリアム・リンク
(2019/09/15 10:41登録)
 直接犯行シーンを描かず、視聴者に情報を伏せるという試みを最初にしたエピソードです。心理トリックとして優秀なだけでなく、カーラジオがクラシックチャンネルだったのに、車内のカセットテープはカントリーだけだった、という手掛かりは実にコロンボらしい気付きで印象的です。また本作では、犯人以上に被害者の現在の妻と最初の妻の対比に面白さがあります。


No.429 4点 死の方程式
リチャード・レビンソン&ウィリアム・リンク
(2019/09/15 10:35登録)
 コロンボの推理がほとんど見られず、全体的に大味でミステリマニアには受けないエピソードかと思います。個人的にも残念ながらシリーズ中で下位の出来だと思いますが、ファンが多くいる回でもあり、それは特有のインパクトによるところが大きいでしょう。葉巻に爆弾を仕込むという犯行、ロープウェーでの逆トリック、そしてロディ・マクドウォールによる軽妙な演技と、4点を付けましたが時々観返したくなる魅力があります。


No.428 5点 もうひとつの鍵
リチャード・レビンソン&ウィリアム・リンク
(2019/09/15 10:22登録)
 犯人側のドラマに重点を置いたタイプの回で、対決の充実感は弱めです。電球、芝生、鍵の跡といった物証の揃え方はいつも通り気が利いているだけに、ラストの決め手があまりの弱く、面白味を欠いているのが惜しいです。しかしそれでも、邪魔者だった兄を殺し自由になったのに、恋人をはじめ周りの人々が離れていってしまうベス・チャドウィックの悲壮な姿、そしてラストシーンのムードはこのエピソードならではの美点です。


No.427 6点 二枚のドガの絵
リチャード・レビンソン&ウィリアム・リンク
(2019/09/15 00:12登録)
 一刀両断に証拠を突きつける、切れ味鋭いラストがシリーズとして新鮮で面白い所です。第三者の○○を証拠にするというアイデアは意表を突くもので、その後も様々なミステリ作品で手を替え品を替え使われています。ただし、犯行計画が杜撰という指摘がある作品でもあり、ディテールの作り込みが甘いのも否めません。


No.426 4点 ホリスター将軍のコレクション
リチャード・レビンソン&ウィリアム・リンク
(2019/09/15 00:03登録)
 これは少しイマイチだと思います。目撃者の女性がホルスター将軍の存在感を食ってしまうという目先を変える試みは、結果的に成功しているとはいえません。これまでの4作で濃厚だった「対決の快感」を殺してしまっているのは実に勿体なく、ストレートな1作として書き変えればもっと面白くなったように感じます。


No.425 7点 指輪の爪あと
リチャード・レビンソン&ウィリアム・リンク
(2019/09/14 23:54登録)
 コロンボ警部の十八番である犯人への罠、いわゆる逆トリックが本格的に初めて使われた回。インテリながら短気な側面のあるブリマーを相手にコロンボは着実に証拠を集め、最後は彼の神経を逆なでして見事に罠にはめてしまいます。サブキャラのケニカット氏も偉ぶらず礼儀正しい態度を崩さないのに大物感を表している姿が魅力的です。


No.424 7点 構想の死角
リチャード・レビンソン&ウィリアム・リンク
(2019/09/14 23:40登録)
 よく練られた第一の殺人と対照的に、あまりにお粗末な第二の殺人。そのお粗末さがドラマの中で必然性を持っている、という点に感心しました。そして、犯人が本来不十分な証拠で罪を認める、そのくだりでもう一捻り加えられている嬉しい意外さが楽しめます。スピルバーグによる唯一無二のカメラワークも大きな見どころ。

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