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ミステリの祭典

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意識の下の映像
刑事コロンボ

作家 リチャード・レビンソン&ウィリアム・リンク
出版日1975年01月
平均点4.33点
書評数3人

No.3 1点 クリスティ再読
(2019/10/28 20:38登録)
評者本作ばっかりは撲滅したいとずっと思っていた作品である。酷評するのでそのつもりで。
いわゆる「サブリミナル効果」というものは、事実上ニセ科学なんだよ。1957年のジェームズ・ヴィカリーのコカ・コーラとポップコーンの映像を映画館でかかる映画に投射したら売り上げが..という話は、これはまったくのホラ話で、こういう実験は全く行われていなかったことが、調査の結果明らかになっている。これは80年代くらいには心理学ではもう常識だった。評者も学生時代にこの件を調べたことがあって知っていたんだ。実際、この報告の後で大問題になって、いろいろな心理学者が追試を行ったのだけども、効果がある、という結果はまったくでなかった。でしかも、後にでっちあげをヴィカリーが告白したこともあって、この件は少なくともこのヴィカリーの「古典的」なやり方については、決着している。
しかし2000年代に入って、いくつか「意識できない閾下の刺激で、行動に与える効果があった」という報告がなされたことは事実だ。ただし、その効果もヴィカリーのもののような派手な内容ではないし、かなり限定された状況下での限定的なもので、「まあ影響を与えたと言えなくも...」というようなレベルの印象がある。またどの程度他の研究者で追試されているのか、という面ではまだ検証中というくらいの問題のように思われる。というわけで、この「意識の下の映像」で取り上げられたような、ヴィカリー流の効果はほぼ都市伝説レベルのデマと結論していいし、番組制作時点でもこの件がデマだということは、少し調査すれば判明したであろう。
しかし「シティ・ハンター」での悪乗りから、アンフェアだという指摘を受けて、放送業界がこの件を自粛していることは事実である。まあ、効果があろうとなかろうと、アンフェアなことは間違いはないから、公共の電波を占有して、というあたりでの公共的な責任と、事なかれな体質からこういう自粛をすることになったわけである。しかしだからといって、サブリミナル効果が「ある」わけではない。
この騒ぎの原因は、要するに「メディアが視聴者の心理を操作しているのではないか?」という根の深い疑惑というか、警戒というか、不信感が底にあるわけである。この「サブリミナル」という単語は、この不信感を強烈に刺激してしまったんだよね。だから、これほど「サブリミナルはデマだ」と心理学者が主張しても、一向にこの事実は世間には届かない。信じたいことを皆さん、信じてしまうのだ...
まあ、そういうことに過ぎないなら、そう評者が怒るようなことではないのだが、評者は実験的な映像作品を作ってたことがあってね、作品の中で、速いカットで交代させて..とかやると、こういう一知半解の人々が「サブリミナルだ!」とか非難してくれるわけである...こういう短いカットをつなぐのは、それこそロシア・モンタージュ派からの伝統だし、実験映画だったらそれこそコマ単位のフラッシュだけでできたコンラッドの「フリッカー」だってある(まあ光過敏性てんかんは別問題で)わけだ。この手のヘンに耳年増にメディアに過敏な人々が、訳知り顔でマジメに実験する作品を批判するのに、評者はうんざりしたのだよ。
実のところ、映画のコマに1コマ余分なコマをつなぐのは、見てると結構わかるのだ。編集していて「切りミスってる!」と気が付くもの。逆に気が付かなくするのには、明暗を揃えておくとか考えて繋がないとダメなくらいのものである....人間の視覚は色に敏感だから、そもそもコカ・コーラの赤が目立たない、なんてことはいくら1コマだってありえないわけだよ。
というわけで、評者は「サブリミナル効果」というデマを広めてしまった本作、本当に撲滅したいと思っている。最低点は当然。

No.2 6点 青い車
(2019/10/05 18:45登録)
 細かい粗が無いわけではないのですが、当時あまり知られていなかったサブリミナル効果を本格的に取り入れた意欲は素晴らしいと思います。犯人の使用したトリックをそのままやり返すことで逮捕するという収束性も見逃せません。コロンボがケプル博士に鎌をかけ、それをケプルが見抜いてとぼける所は古畑任三郎でも引用された名シーンです。

No.1 6点
(2016/06/13 10:19登録)
犯人は複数のトリックを組み合わせて殺人を実行している。そのうちのメイントリックはいまでは有名なもの。当時でも研究が進んでいて、話題にもなり、禁止されている分野もある。
ただ個人的にはあまり信用していない。あんなもので刺激できるのだろうか。

とはいえ本書では、犯人がそのトリックを上手に使うとともに、それだけにたよらず、他のいろんな技を使って、完璧に仕上げようとしている。
それに対してコロンボは、犯人のちょっとしたミスから出たほころびを見つけ出そうとする。
コロンボが犯人より一枚上手なのはいつものことだが、この風采の上がらないコロンボ対頭脳明晰な犯人の対決構図はほんとうに面白い。あのしつこさは犯人にとって堪らん。
なぜあんなに早く目をつけられるのかという疑問は感じるが、それも毎度のことで、気にせず読むのが正しい読み方だろう。

コロンボ入門にふさわしい典型的な作品だと思う。
コロンボだけではなく登場人物のほぼ全員の心情が地の文に書かれていて、とにかく読みやすすぎる。ということで、登場人物の心の中を探りたいという高度な読み手にはもちろん不向きな作品だろう(笑)。

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