home

ミステリの祭典

login
風桜青紫さんの登録情報
平均点:5.62点 書評数:290件

プロフィール| 書評

No.170 6点 ウェディング・ドレス
黒田研二
(2016/01/25 05:57登録)
チープなノリの文章と、みみっちいエロ描写がたまらない。ドレスが引き裂かれて下半身が丸出し、野蛮な男がゲヒヒと笑い、犯されたビデオを送りつけられ、そんでもって「私を食べて」とくる。しかも主人公はアラサー。これはもうワクワクするしかないでしょう。叙述トリックのほうはあんまり上手くないのですぐにわかってしまうんだけども、本領は終盤で明かされる機械トリック。爆笑。うーん、こういうこと考える人いいわ。まあ、上手い作品ではないけども、作者の意気込みが伝わってくる爽やかな一品。「ご都合主義のストーリー、甘ったるい会話、安っぽいエピソード、ヘタクソな文章」という陳腐で低レベルな感想もあるけども、そんなものは森博嗣を始めとして大体のメフィスト賞作品に言えることなんだから、いちいち気にとめたってしゃあない。


No.169 3点 六とん2
蘇部健一
(2016/01/25 05:41登録)
こいつはひでぇ……。前作は古藤のキャラクター性でなんとこ読めたけども、今回は一話目で彼を消し去るというわけのわからない暴挙に走っている。靴の話とか意味わからないし、そぶけんは何を目指してるんだろう。「サイトスィーン」のくだりなんかはあまりに理解不能だったので、鼻からポカリスエットが出てきた。「作者名とタイトルで名を落としている」などという意見があるようが、こんなものそぶけんが作者じゃなければ到底世間に出せないだろう。これが……メフィストクオリティ。


No.168 5点 六枚のとんかつ
蘇部健一
(2016/01/25 05:34登録)
第2話(パンの話)がマジで酷くてビビりました。あんなダイイングメッセージ残すやつがいるかという突っ込みはおいとくにしても、起承転結がまともになってないし、文章もかなり稚拙です。もっぱら高校の文芸部の会誌に載るかも怪しいです。笠井潔がえらそーに「ゴミである」とか言ってましたけど、本当にゴミだと思います。ただ「桂男爵の舞踏会」あたりで、これはつまらなさを楽しむ作品なんだな、と気づいてからはなんだか楽しめました。表題作と「しおかぜ〜」と「丸の内〜」はそこそこ読めるし、ネタ本としてはなかなかなんで、5点ぐらいは進呈しておきます。


No.167 3点 秘密室ボン
清涼院流水
(2016/01/25 05:22登録)
・「メフィスト翔が閉じ込められる話」
「ヒミッシツ」とか言い出したあたりで、こりゃあひでえ……と思ったが、冷静に考えてみれば、流水はいつもこんな感じだった。オチがしょうもないことは読む前から知っているので、どんなしょうもないオチか期待しながら読んでいたら、本当にしょうもないオチだったので、ふざけるなと思った。それともこの思考もまた密室内なのですか。

・「メフィスト作家クイズの話」
「ラブコメの匠」で爆笑した。

・「講談社ノベルスを意気揚々と買ってくる話」
「ガチガチの本格なんてきもいぜ!」などと書いているが、そもそも流水は単に本格ミステリを書く能力がないのでは……。ちなみに京極や森のバカミスと、流水の大説トリックは根本からなにかが違います。


言うまでもなく駄作だが、しかしまあ、流水ファンブックとしてはそこそこ楽しめる。自分大好き人間っぽい流水だけども、それと同じぐらいにメフィスト賞と自分の同僚のことが好きなんだろう。袋とじからはメフィスト賞への熱い想いが伝わってくる。「森博嗣先生の後釜として自分がくじけるわけにはいかない!」と1000枚書いてしまうくだりなんかは不覚にも感動してしまった(それでできあがったの『ジョーカー』だけどww)。流水大説って、自分の友だちが書いてきた素人小説を読むような、ホンワカした感覚があるのよね。そういうわけで流水蘇部霧舎秋月にはこれからも頑張ってほしいです。


No.166 2点 秘密屋文庫 知ってる怪
清涼院流水
(2016/01/25 04:56登録)
・「赤」
ただ都市伝説を並べただけ。小説仕立てにする必要性がない。それ以上にストーリーが面白くないし、本気で獣人読みしようかと思ってしまった。一応謎らしきものは出されるが、オチは安定の流水。蘇部健一『音の気がかり』の劣化。

・「白」
鴉城蒼司の「オッサンヨロシク」が舞城によるパロディだったと気づく。

・「黒」
投げやりなストーリー展開と流Pの本名に笑った。

小説は正直つまんなかったので安定の2点だけども、袋とじのあとがきがなかなか興味深い。太田氏が「あきらめてください流水さん!」言うあたりの妙な熱さときたら。流水って本当にファンのために命かけてるのなあ。大言壮語の腹立つ奴って思われがちだろうけど、中身は結構ピュアハートっぽくて好感が持てる。これで作品が面白ければ素晴らしい作家なんだけど。っていうか、JDCや木村彰一よりも流水を主人公にしたほうが面白い小説になるんじゃ……。


No.165 3点 億千万の人間CMスキャンダル
清涼院流水
(2016/01/18 03:59登録)
うーん、イミフ!
意外性だとか新しいことを求めようとしたであろう結果、話がなんとも支離滅裂なことになっている。結局何がやりたかったんだと問いたくなるが、恐らくは「ムラムラ!」とかいう実にしょうもないギャグがやりたかっただけだろう。清々しく1点をつけたくなる作品だけれども、解説の流水伝説がくだらなすぎて結構笑えたので、3点。この流水魅力的すぎるww。自分のキャラクターに自分のよいしょをさせてしまうとは……さすがは流水、と言っておこう。


No.164 4点 狩人は都を駆ける
我孫子武丸
(2016/01/18 03:44登録)
本格ミステリとしては薄味だが、だからといって私立探偵ものとして面白いかと問われたら微妙。『セント・メリーのリボン』はおろか『犬はどこだ』の水準に届いているかも怪しい。作者は傲慢ちきななんちゃって大御所なのに作品はなんだかスイーツになってしまっているのが悲しいところである。「野良猫嫌い」はその点でまだ楽しむことができたが、表題作や「失踪」はどうにも甘ったるくて「これでいいの?」という感じだし、「狙われたヴィスコンティ」に関してはあまりに投げやりな終わりに哀しみすら感じてしまった。「我孫子武丸はこんなものではないはずだ!」と思いながら読んでいたが、冷静に考えれば我孫子から奇抜なアイデア力をとってしまえばこんなものなのかもしれない。しかしもっと頑張ってほしかったなあ……。


No.163 8点 超・殺人事件―推理作家の苦悩
東野圭吾
(2016/01/18 03:19登録)
さすが売れない時代が長続きした東野圭吾だけあって、愚痴を言わせれば一流。しかしまあ、『名探偵の掟』のときに比べてユーモア感覚にはさらに研きがかかっており、どの作品も笑いながら読ませてもらった。『超税金対策殺人事件』の強引な結末がとにかく酷いwww。しかしまあ、東野圭吾は元売れない人(いまは売れる人)だけあって作品の本質を見てくれない読者にも批判の目を向ける。『超理系殺人事件』は、『すべてがFになる』のごとき荒唐無稽な話を読んで「頭が良くなった気がする」などとのたまうトンチキな読者たちをよく示しているし、『超長編殺人事件』は、『模倣犯』や『レディ・ジョーカー』やどこかの弁当箱のような、物語に不要な描写をだらだら繋げた作品を大作だと言ってありがたがる読者を痛烈に皮肉っている。結局そんな批判の行き着く先は『超読書機械殺人事件』で、東野圭吾からすれば、もはや読者たちが何をやりたいのかわからなくなってくるわけだ。推理小説の世界には、ジャンプの打ちきり漫画より売れてないくせして人様の作品を偉そうに「ゴミである」といい放つような「大御所作家」もいるわけだが、それに比べれば、こんな風に文章でうっぷんを晴らしながらもそれをエンタメ小説として昇華させている東野圭吾は実に書くことに真摯な作家だといえるだろう。


No.162 6点 名探偵の掟
東野圭吾
(2016/01/18 02:46登録)
発想は文句なしの面白さで、『花のOL湯けむり温泉殺人事件』と『トリックの正体』には笑わせてもらった。しかしまあ、ところどころ登場人物の文句が風刺や皮肉というより、単なる文句になってしまっているのが残念なところ。『ある閉ざされた雪の山荘』でも思ったが、登場人物に作者の言葉を安直に言わせてしまっては、必死さが伝わってきて読む側がひいてしまう。それにしても、売れない作家の叫びのような作品で注目を集めた作者が、いまや売り上げナンバーワンのミステリ作家になってしまおうとは誰が予測しただろう(笑)。


No.161 6点 真夏の方程式
東野圭吾
(2016/01/18 02:35登録)
映画版『砂の器』を意識したであろう、なんともお涙頂戴な物語。しかし『砂の器』の「オラそんな人知らねええええっ!」が作中人物の魂の叫びであったことに対して、作中の「このような方は知りません……」は単なる模倣の域を出ていないのが興ざめで残念なところ。そもそも不義の子どもを作った話に感動もクソもあるかというところだが……。しかしまあ、ガリレオと少年のなんだか心温まる交流によってこの作品は十分楽しめるものになっている。海洋開発に妙な理解を見せたり、大人の余裕というか、なんか今回の彼はかっこいい。これまで謎解き装置の一部な感じがしていた湯川だけども、今回はそのキャラクター性を存分に発揮してくれたといえるだろう。


No.160 6点 聖女の救済
東野圭吾
(2016/01/18 02:22登録)
単純ながら強烈なインパクトを残すトリックはさすが東野圭吾というべきか。人間描写を作品の面白味にする一方で、そこから意外性をもたらす結末に着地させてくれる。「この人がこんなことを!?」という驚きは、トリックの骨格があるだけは演出できまい。綾音のいかにもな計算高さに終始ワクワク。東野作品って犯人サイドも頑張りが伝わってくるので、なんとなく応援したくなってしまう。草薙、胸を熱くさせんなよwww。


No.159 5点 予知夢
東野圭吾
(2016/01/18 01:31登録)
テニスの王子様的な面白トリックを連発していた前作に比べて、今回は話の作りがミステリ寄りになった。「夢想る」や「霊視る」などは謎の不可解ぶりがなかなかいいんだが、その代わり真相はやや地味なところに着地してしまった感がある。「絞殺る」も「予知る」も絵的になんだか地味である。話の質は良くなったけども、前作のハッスルしたノリが好きだっただけに寂しい。その点、「騒霊ぐ」は終始ドドスコしていて気にいった。


No.158 5点 探偵ガリレオ
東野圭吾
(2016/01/18 01:20登録)
初っぱなから「燃える」の真相に笑わせてもらった。想像するとものすごい光景だが、東野圭吾もこのように気にくわない不良を焼きつくしたい気分だったんだろうか。「爆ぜる」の「突然の死!」とでも言うべきとんでもない死に様も同様。科学トリックの面白味というのは、なんかバトル漫画の必殺技に通じるものを感じる。湯川も草薙も(この時点では)あくの強いキャラクターではないし、ライトな面白トリック短編集としてさくさく読めた。


No.157 7点 容疑者Xの献身
東野圭吾
(2016/01/18 01:05登録)
パーツひとつひとつは古典的なものでも、演出によっては傑作足りうる好例。他人の命をゴミのように扱っておいて愛もクソもあるかという話だが、そのような「いい子ちゃん」の思考の裏をかいて、ポンとトリックを仕掛けていくところに東野圭吾の嗅覚の鋭さがうかがえる。これを読んでて手放しに「感動した!」だの「純愛!」なんて言う人間はちょっとどうかと思うけども、ミステリ小説としては確かに切れ味のよい一品だ。どっかの人工美が好きなハゲも、「本ミス1位としてふさわしくない〜」なんて騒いでる暇があったら、こういう作品に挑戦してはいかがだろうか(仮にも手塚治虫のファンなんだから、プロットでインパクトを与える術を学ぶべきである)。


No.156 7点 白夜行
東野圭吾
(2016/01/18 00:54登録)
『砂の器』と『白昼の死角』を足し合わせたような作品だが、完成度はこの二作品を上回っているのではないかと感じた。桐原と雪穂の関係を当人たちの口から語らせないことで、むしろその結び付きが強固になっている。簡単に口で表せるものじゃないからこそ品位があるのよね。桐原も雪穂も作品が進むにつれどんどんグゥの音もでないような悪党になっていくんだけど、二人の成長を幼少期から見れている分、「なんて悪いやつなんだ!」ってな腹立しさより、「どうしてあなたは変わってしまったの……」というような物悲しさが生まれてくる。理想的な悪党小説の形を東野圭吾は絶妙なアイデア力で成し遂げたといえるでしょう。不感症(?)の桐原が死体に出しちゃってるあたり、桐原→雪穂は間違いないのだろうけど、逆はどうなんだろうか(笑)。


No.155 6点 NECK
舞城王太郎
(2016/01/18 00:40登録)
「a story」のモモちゃんがなんかかわいい。探偵目指したがるのはともかく、綾辻行人と笠井潔にあこがれるんかい。普通にぶん殴られてるしwww。あとノジャノジャがきれいなやつすぎて笑えてくる。ジャワなんとか神はどうしたんだお前。ああ、てか、マリック生きてる。いいなあ、この嫌な刑事ぶり。なんか心が暖かくなった。トリックはどこかで見たことがあるあれがさらに大袈裟になった感じ。この部分などはもうおはなしのパーツのひとつということで(笑)。「the original」のドタバタぶりにも笑わせてもらった。この親近感と理不尽さからくるエグさこそ舞城だなあ。映像トリックもなんじゃこりゃという感じだが、うまくオチがついていてよかった。というか舞城は普通(?)の筋道の話を作る能力もあるのね。当然っちゃ当然だけど。


No.154 6点 乱鴉の島
有栖川有栖
(2016/01/17 23:11登録)
孤島上陸からハッシー登場すでのワクワク感はなかなかのもの。このどことなく流れる館の気味の悪さがね……。とはいっても、話の決着は有栖川有栖らしいホワイダニットに落ち着く。着眼点は鋭いし、面白いアイデアだけども、館なんていかにもなお膳立てがあるにしてはなんていうかしょぼい。これが島荘綾辻麻耶あたりなら、トンでもなオチを用意してくれるところだろうけれども、有栖川作品はそういう作風じゃないからなあ……。とはいえ、島の秘密については作家アリスらしい決着がついて楽しかったです。なんとも物悲しいロマンチックぶり。やはり作家アリスには好感をもたざるを得ないな……。


No.153 6点 妃は船を沈める
有栖川有栖
(2016/01/17 22:59登録)
妃沙子のキャラがなんともたまらんです。しっかり男の子たちと肉体関係を結んでるあたりとかなんとも趣味が悪い……ww。第一部は平均的な有栖川短編。けれども「猿の手」の話やら、妃沙子のキャラクター性で楽しく読めます。第二部は偶然に焦点を当てたなかなか良くできた犯人当て。作家アリスのこういう妙にロマンチックなところがなんともいい。作家アリスシリーズ、回を重ねるごとに面白くなっている気が……。


No.152 8点 ディスコ探偵水曜日
舞城王太郎
(2016/01/17 22:14登録)
森や流水がルーツになっているゆえか、メフィスト系の作家は話を大袈裟にするのが好きらしく、ときには設定が行きすぎて白けてしまうことも少なくない。しかしまあ、ここまで大袈裟にすることに全力投球してしまえば傑作。舞城作品の主役の総出演や、あまりにもスケールが大きい舞台背景もそうだが、ここまで惜しみなくアイデアを乱れうちしてくるとは。これを超える舞城作品は果たしてでるのかな……(笑)。


No.151 8点 スクールアタック・シンドローム
舞城王太郎
(2016/01/17 21:59登録)
「ソマリア、サッチ・ア・スウィートハート」は舞城の短編でも屈指のインパクト。「人間の根っこはどれも欲望やで!」なんてなんとも月並な言葉だけども、この作品において主人公たちを動かしてるのはまさしくそれだからなあ……。出だしからソマリアを流れで殺しちゃうし、智春となんか合体ひまくってるし、淳一をぼこぼこにしたところでやりきれないわけです。ああ、感想がむつかしい。表題作もトトロも面白かったし、舞城の短編集では一番充実しているかと思います(支離滅裂)。

290中の書評を表示しています 121 - 140