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ミステリの祭典

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斎藤警部さんの登録情報
平均点:6.70点 書評数:1303件

プロフィール| 書評

No.1123 7点 風に立つライオン
さだまさし
(2022/01/28 18:19登録)
「現代ミステリを意識して書いたかなあ」と思わすに足る、トリッキーでサスペンスと感動を呼ぶ構成。主人公について、周囲のキーマンとなる人々による独白、回顧、述懐、またはメール文面のパッチワークのみで進行する、ケニアと長崎、更には◯◯を主舞台とする、医術と有事と冒険と勇気の物語。過去ばかり語られる「主人公」の現在については大いに謎めき、気を揉ませながらストーリーは快走。 ところが、後半も半ばに差し掛かろうとするあたりから、もう一人の主人公のような人物が登場。いや本当は更にもう一人いるのだが。。。 元々は同名のさださんシングル曲(’87)というのが存在し、それは’60年代の実話をベースに、よりドラマチックにホットに膨らませたもの。東日本大震災を経た2013年発表の本作はその歌を更に具体的に、サスペンスたっぷりに、目を引く構成にも気を使って、更には別箇の実話エピソードまで織り込み、仕立て直した内容。 インスパイア元となった当初の実話から「歌」発表までに四半世紀を経、それから更にもう四半世紀、都合実に半世紀を経てやっともたらされた、ユーモアとパッションと涙に溢れた長篇です(元の実話からかなりかけ離れちゃってますが..)。なおリーダビリティすこぶる高し。最後の最後だけは、ミステリ的なヴァイブレーションとは縁を切って終わってしまいますが、、致し方ありません。(徹底的に保った秘密を感動的に明かして終結、というやり方も無くはないと思いますけどね) ところで本作にはロビー・ロバートソンなる重要人物(創作名の筈)が登場するのですが、これはちょっとしたスッとぼけジョークなのかな。「ラスト・ワルツ」がどうとか、そっちの話題も少しだけ振られました。


No.1122 7点 雪の断章
佐々木丸美
(2022/01/24 19:24登録)
“私たちは沈黙した。意外な物語が展開され登場しない主人公は今こうして青くなっている。”

こりゃ危ない! なんたる、雪上に涙溢れんばかりの真っ白な不安定の断続。 雪とは切っても切れない札幌を舞台に、十余年の歳月が流れる物語。 その途上で殺人事件が起こる。 ヒロインは孤児。 被害者は彼女の”斜め上の”敵。

“きらきらと光っては消え、集中する熱心さと素早い洞察力で結晶する瞳に打たれた。にごりのない白紙の心構えを思った。これだ、と直感した。私のくぼんだ部分に、この清涼なかたまりは当てはまるだろう。”

まず序盤、胸糞イヤミスからご都合イイミスへの転換が急カーブ過ぎて、時折のアーリー違和感と共にそこんとこ何やら疑惑を唆った。 しつこく”さん付け”。 バカだなぁ、、、こいつ。詮ない話ャけどな。 あいつ品行方正キャラの癖に、やたら酒飲むんだよな。。

「おやじさん、朝から気分爽快なことを言ってくれる、今夜は熱カンで一杯やろう」

ヒロインには男女共に複数の味方も付く。思春期を経るにつれ、その一部とは関係が微妙にあるいは決定的に変わる。そのへん描写の筆力はシュアー。 だが時折、独特フレイヴァの語法が火の玉ダンスをいつまでもやめないのを見守るしかない。 擬人化の沼へとずぶずぶ。。 だがいつの間にか味読させられているのも良し。 おっと、ごく序盤風情から早くも予想を蹴散らす激震の躍動。これは凄いぞ!

“人を信じてはならないと、こんな方法で教えられるのか。無心に信じてきた代償がこれなのか。虚像だ、蜃気楼だ、白日夢だ。なんだ、バカらしい。驚かなくたっていいじゃないか、今、初めて裏切りを経験したわけではなし。”

少年とは断絶を画す清冽な少女趣味で目の前のガラスの壁を塗りたくり。 箴言集のような友情の交歓、敵対者との対話、導き出される内省のタペストリー。 前述の“対話”は時にまるでディベート合戦の様に遠慮会釈を抹殺し堂々と驀進。なんなんだこの、甘い夢想(時にヨコシマなdaydream)との奇妙なアンバランスは。。

「友情なんてこんなものだと結論づけるのはもう少し先にのばしなさい。それにいい機会だから、離れてみてやっと気がつくお互いの長所短所を味わっておくことだ」

何故か決して卑怯に思えず、意味合いの満ちる後出しエピソード群、これもまた結末に向けてのムズムズした疑惑を誘う。 中盤もまさかのど真ん中で激震追及展開、危ない。。。。。。

“おおいかぶさっていた雲が晴れ、この半年間の悩みは消えた。あれはもう秘密ではない。羅針盤なのだ。私だって立派に貫いてみせる。諸々の敵に立ちむかえるのだ。反逆できる分子なのだ。”

物憂く、含みの多い省略技法。 なんというか、ほとんど純文学。 その濃い空気の中でこそ絶妙に密かに増幅する違和感。 終盤に向け圧縮を増すソレに耐えるのはまるで、処女雪の前で◯ョンベンを我慢するがごとし。。 温厚王の私も流石に鼻につきだすグダグタ心理の披瀝渦巻きを経て、終結部には少しばかり唐突な鼻薬も嗅がされるが、衝撃ある最終展開と、バッサリ優しく余韻残すエンドは、心をつかみます。

真犯人◯◯と真犯人◯◯までの間が異様に長いというのも、本篇の妙なる特徴。 (この趣向?のおかげで、小説の道端をトボトボしてたよなミステリ度合いが、一気に上がった!)


※これ言うと厳密にはネタバレかと思いますが、、  本篇で諸々積み残した違和感やら謎やらはいわゆる「孤児シリーズ」後続作で徐々に解かれる運命にあるとかで..


No.1121 6点 愛さずにはいられない
生島治郎
(2022/01/19 01:29登録)
血が足りない/ブルー・ムーン/最後の賭け/夜も昼も/夜の腐臭/夜の証言/氷の城/愛さずにはいられない (旺文社文庫)

感触はだいたい湿潤ハードボイルド。 最初の三篇、物語自体もさることながら、人間描写的な部分に、割り切らないゴテッとした余りやら、隠してあからさまにしない要素を残して終わる質感が、後を引く。愚連隊にヤクザ者、ちょいと心が動く不如意の人生ドラマ。特に一作目の’こども’はなあ。。。  続く「夜シリーズ」?三連打は、ヒネリ淡く結末直行の悲劇や、気色悪いチャンチャン話など続くが、どの作もミステリ性あるいは人情ドラマのどちらかにもう少し力を籠めればグッと来そうな所、惜しい。 ラス前「氷の城」は大麻商売の話。軽薄な発端からは予想も付かない重く怖い(ちょぃとポゥを思わせる)結末にやられた。 最後の表題作はやや異色。ヒロインは売り出し中の作詞家。もっともミステリ色濃くサスペンスフルに進行するが、真相がちょっと、現在の感覚だと(不謹慎かも知れないが)トンデモ方面に流れたか。「イリ◯◯◯」って何だよ。。 でもまあ、総じて愉しい、ごたまぜ通俗短篇集でしたよ。


No.1120 8点 検死審問 インクエスト
パーシヴァル・ワイルド
(2022/01/17 18:14登録)
読み始めから8点以上確定信号が早くも点滅。ニューイングランド式の癖強ユーモア、創意ある構成、分厚い逆説の三者連合が手に手を取って最後にもたらす大反転のダイナミクス。。。■■羅列の機微にはやられた。。あれ、真犯人ってあの人だっけ.. と一瞬うっかり混乱しそうになる感じも素敵(こんだけくっきりした真犯人造形なのに!)。 突然加速して突き上げたものを冷静に鎮めて終わる、まさかのエンディングも凄い! ハッピーエンドとは何か? 社会を幸せにするとは。。!? 異業種作家が書いた特殊ミステリ、などと気負わず読んでみてくださいな。じゅうぶんに、いい意味で普通のミステリです。但し面白さ、味わい深さは尋常じゃありません。


No.1119 7点 黒の回廊
松本清張
(2022/01/12 18:27登録)
隠し球は、どこに隠す。。。? このエンディングには、突かれた! ある意味「○○ック・○○ー○」が最後の最後、傍若無人に急襲して来たようでもあり、全体構造をここで一気にひっくり返すとまでは言わないが、中央寄りに折り目付けて大きく折り返してやったくらいのインパクトはある。(ひょーっとしたら、後付けなのかも知らんが..)

旅行会社の企画した、女性ばかり大所帯の欧州歴訪ツアー。道中微妙なインシデントがチョコチョコ続く中、スコットランドはフォース湾北岸、ファイフの風光明媚な湖の畔にて、とうとう、警察の介入を拒むことの出来ない大事件が発生! 大所帯の旅ゆえに容疑者やたら多い(?)のも良し。大事な伏線が大っぴらに股を広げ過ぎな傾向はあるけれど、それで物語興味が落ちはしない(流石の清張匙加減)。 犯罪動機の、大枠で捉えればシンプルだが、バラして局地的に見ると実に細やかに嫌らしく錯綜した沙汰っぷりも良い。読んでて最初の方、いっけん旅情トゥーマッチなおとぼけイヤミスかとも映ったが、ま確かにそういう面も、良い意味で在るけど、イエイエ決してそればっかじゃありません。 トリックの説明で、ある事の「心理的抵抗が無かった」理由はそれとは違うんじゃ、、と違和感の箇所が一つあったな。。 まあでも、最後の『一同集めて真相暴露』シーンが奇蹟的にごく自然な成り行きで成立する中を匍匐前進する、ジリジリ這い上がって来るスリルの尊さったら、無え! 何気に後期なんとか問題めいたものを掠ってる(?)要素も有り、そこんトコ興味津々。 ただタイトルだけは、ちょっと何言ってんだか(笑)。

執筆背景にいわくありの本作。初出は清張全集(第一期)、三年強の長きに渡った月報連載(結末だけ単行本に書き下ろし)。 いつか再読するなら、それ行ってみたいね。(かなり直したそうだけど)


No.1118 9点 写楽殺人事件
高橋克彦
(2022/01/07 06:35登録)
“…は泣き出しそうに顔をゆがめながら、オレを殴った――自分でも分かったのだ。”

誰か/何かを操ろうとするなら、支点をどこに置くかが肝要だ。

「必らずそのうちに完全な証拠がでてきます。浮世絵をやめるなんて言わんで、これからも研究を続けてって下さいよ」 

大きく分けて二種の謎にまたがる二人の探偵役、プラスアルファ。 片方の謎の多重解決?披瀝もさることながら、結局はそれすら軽く跳び越える、もう片方、奥深い犯罪の謎にキリキリ舞いス。

”君は何ヵ月も前から、●●グループにマークされていたのだ。”

過去の謎と現在の謎、もう少し巧みにカットバック進行させたらよいのに、、過去案件から現在案件に戻るまでのブランクが長過ぎて、現在側の人物たちがアイデンティティ・クライシスだよー、などとも思ったんスがね。。そいった構成の所為もあり、途中、もしやコレはちょいとアレな作品なのかな.. と疑いもしましたが、終わってみれば、あれーー、過去の謎(写楽の正体)と現在の謎(浮世絵界連続殺人?+αβγ)を、ここまで有機的に、更には巨大な欺瞞をこっそりと抱えながら、結合させていたとはな!!

<オレ達は浮世絵から見れば、通りすがりの人間でしかないんですよ――放っておいても、浮世絵は自分だけの力で遺り続けていったのに・・・・・・>

古美術●●のトリックと、それを暴露に掛かるロジック(どちらも快く複雑系!)のぶつかり合いは、憶測を遥かに超えて熱かった。。。心理の動きを安直なコマにし過ぎのきらいはあるものの、そんなんもうええよ。。 また特筆すべきは、予想外に独特な主人公の立ち位置!! (セーーーフ ってが。。 泣笑) 物語前半では思いも寄らなかった、事件の地層の迫り来る分厚さ。叙述トリックとさえ呼べそうな、ある事案の巧みな隠匿。腹にずいずい来る、めくるめく真相深掘り、時としてふわりと飛翔、この容赦ない連打のスリリングなこと!! やべー、もう鼻血出るじゃよーー……

”研究者として、どちらが正しい立場なのか、オレには分からなくなってしまった。 (中略) だが、これは世の中に問うべき問題なのだ。このまま闇から闇へ葬り去ってしまうには、あまりにも大きな魅力を (中略)  もはや、これは◯◯◯◯の構想を超えて一人立ちしている。”

犯罪動機発生の機微。利用する側、される側の鮮やかな逆転悲劇。いやいや、現在だけでなく過去謎のほうも相当にやばい。で、あの現在事件の真相がどうなのか、最後にひっくり返されたらどうしよう。。。。 いっやー、あらためて、この人間心理を大胆に操作した大トリックは相当な凄み。そこへ補完の中小トリックも含め、とーーにかくビッチリ詰まってますよ、参ったスよ。 そう言ゃア細かい物理トリックにも予想外の細やかな伏線があったな。。 とにかくこの最終章の熱さったらない! 連城のハマった短篇を読んでる如し。

<死んでしまえば、もう責任はないって言うんですか。それでいいって言うんですか――>

しかし、専門からほんの少し?ズレるだけで、いくら舞い上がっているとは言え、そんな事にも気付かないものか。。と違和感無くはない箇所があるが、、 そこはやっぱ瑕疵かな。。 愚かな工夫が命取りの案件、ここはガツンと来ますね。

”オレさえ黙っていればこれは世界にも通用する。すべてはオレにかかっているのだ。”

最後の最後に明かされた”罠”の置き場所も凄げえや。 □□□に爆弾を仕掛けるなんて蛮行は断じて許され得ないが、本作の場合の比喩的なそれは。。。。 そして見る間に爽やかな総締めへと、されど熱く繋げるエピローグまで文句無し!


No.1117 6点 キドリントンから消えた娘
コリン・デクスター
(2021/12/29 19:30登録)
とにかくユーモア良し。それに尽きる。

ダミー解決の花と散ったいくつかの推理(推測?)案件も悪くなかったけど、特に手紙の筆跡に纏わる件なんて厚みと意外性があってオッと思ったけど、、最終盤で通知表がどうとか、ラストスパートちょっとだけ期待したんだが、カックンだったなーー〜、全体的に推理ないし推測スクラップ&ビルドのスリルは薄かった。SOWがあるでもなし。(●気の手掛かりは苦笑..)事件そのものも熱くないやね。。モースが本腰入んないのも分かる。むしろエロ案件のほうに引っ張られちゃって。。 言うてもまぁ、読んでる間は楽しかったですよ。

或る家族のその後というか事件後に想いを巡らすと、そこんとこなかなか感慨深いとは言える。ミステリより文学の味わいだけど、意外とそこが一番のミソかも?

ミステリ本筋4.8点。ユーモアに救われ5.7点。


No.1116 7点 偽りの殺意
中町信
(2021/12/24 15:45登録)
初期中篇三つ。小味な良さが光る二つと、ちょっと凄いの一つ。
「殺意」シリーズブレイクを受けての、光文社文庫オリジナル編集版。

偽りの群像 6.2点
安心のスリルをぬくぬくと味わうアリバイ好篇。仄かな旅情なくはなし。偽装が崩れる最初の齟齬案件が、小さなコトながら秀逸。駅の荷物トリックも同様。そこは謎じゃないのかよ、って斜め肩透かし?のポイントもあったが、こんだけ適度に知的好奇心揺さぶってくれたらそれで結構。まだ謎が膨らむかと思わせぶり上手の末、終わってみれば意外とシンプルな真相、こりゃつまり物語の偽装が巧いんだね。呆気ないラストは残酷! 英訳の場合は、まして仏訳はどうすんだろ、あの部分、、と一瞬だけ大いなる勘違いしたりなんかしたね。

急行しろやま 6.4点
こりゃ新幹線で読みたい。逆に、読んでると新幹線に乗ってる気分が味わえる(急行の話なのに)というこの倒錯読者ぶり(笑)。 人は、いかなる場合に心理が一変するのか。。? 容疑者がやたら次々わいてくる圧力の妙。新聞記事の手掛かりはちょっと見え透いてましたが(◯ゃ◯か..)、更にその先でバレるアレの手掛かりの唄?は滑稽でわらいました。アリバイ偽装トリックに於ける二種の数字絡み案件は、どちらも流石にリスキー過ぎる上にミステリ的に陳腐とは感じただども、二つ一緒くたになると、そこに絶妙な煙幕が張られちまうんだな。。音でバレたアレの件は、不運だったのか、それともハナっから気にしていなかったのか。。(どうやら後者くさい?) ま、全体通して、前の「偽りの殺意」にほど近い安定の良さがありますな。 そして皮肉を最高度に効かせたラスト、たまらんですなあ。

愛と死の映像 8.3点 
ちょっとやそっとじゃ底を見せない、深い深いアリバイ偽装トリック。ダミートリックさえ有機的、物語の中枢で華麗に舞った。アリバイのみならず殺意の構造(!)までが鮮烈に錯綜。何気にちょいセコい手掛かりと、そこから導き出される奥深い真相との、快いギャップ(笑)。やはり、大の警察相手にリスキー過ぎる感はあるが、勢いと熱に押し切られる。チンピラだかキンピラだかカピパラだか。。メモが妙に◯◯なってるの、におったんだよなあ、、案の定よ。。あと、時刻表のぱっと見違和感とか、いいよね。 急転直下に残酷過ぎる結末は、言い方は合わないがちょっとした「考え落ち」抱え込んだ、ぐっと来るオープンエンディング(特に或る人物について)。。最後の一文も強烈。。

巻末の「編者解説」(山前譲)、中町氏作家デビュー前後の熱い意気込みが自然と伝わって来て良いですな。
かの代表作については、「新人賞殺人事件」より「模倣の殺意」のほうが題名として先に付いていたんですね。。(更にも一つ前のオリジナルタイトルがあるのだが)

しかしこの表紙絵、ちょっと凄い。本の中身とは微妙に?ズレますがミステリの雰囲気満点です。私の実家の階段にそっくりです。嘘だけど。


No.1115 6点 メグレ警視
ジョルジュ・シムノン
(2021/12/20 22:50登録)
はじめに短い短篇四つ、それから長い短篇三つ。

■□月曜日の男□■ タイトルは、品の良い老乞食に子供たちが付けたアダ名。更に馬●と気●いが登場し、ミスディレクションも整う前にバタバタ収まってしまう物語。エクレアに仕込まれた毒(と呼ぶのか?)の効用は相当におぞましく、ちょっとほのぼのした話をミステリの怖さで直立させている。
■□街中の男□■ 数日に渉るちょっとユーモラスなパリ食べ歩き尾行劇の末、或る種厳然たる風格のドラマティックな終結へ。変則ホワット&ホワイ(&フー)ダニット人情譚。最後のほう、メグレの一旦身を引く心がグッと来る。
■□首吊り船□■ 水運と居酒屋を舞台に、夜の抒情が滲み出る。高級推理クイズめいたバランスを、或る登場人物が打破、そこで更に高まる抒情。解決篇の緊迫感。バッサリした終わりも良い。
■□蠟のしずく□■ “現場の見取図と報告書だけで解決できた珍しい事件”ですと。メグレが本格風のヤマを担当すると(実は推理クイズ風であるに関わらず)こんなにも味わい深い結末を導き出すのか。。片田舎の老嬢姉妹と、そのご近所と。。
■□メグレと溺死人の宿□■ 男女二人の乗っている車が、ホテル前の危険なカーブで、川に落ちた。トランクからは第三の男の屍体が発見された。残酷な風が吹く反転劇。
■□ホテル<<北極星>>□■ メグレが定年退職直前に巻き込まれた事件。小娘と、賢いようで馬●な男を取り巻く物語。意外な犯人をわざと意外に見せないような、コイネス光る筆致。どこかしらモゾモゾした情緒が、くすぐったいかも。
■□メグレとグラン・カフェの常連□■ 定年退職後、計画通り夫人と田舎町に移ったメグレ。小娘と、ハナっから馬●な男を取り巻く物語。時の流れの重み、有り難さが沁みるストーリー。程よく旨そうなメシがいろいろ登場。夫人の存在感が押している話でもあります。

「そればかりか、事件を知らされる以前に、予言することだってできたかもしれない・・・・・・ところが、知っていても、話せなかったんだ。礼節だったんだ。それは死に対する礼節の問題だったんだよ」

巻末に「解説―メグレの世界」「鑑賞―不思議な魅力」と二篇あって、どちらも良いが、後者で「男の●」の犯●ネタバ●を白昼堂々と晒してあるので未●の方は御注意。


No.1114 8点 最悪
奥田英朗
(2021/12/17 08:18登録)
こりゃあ寝食忘れるわなぁ。時空歪むわなぁ。。。主人公はハナッから問題まみれの三人(濃淡は大いにある)。互いに距離のある三つ巴で漏斗の斜面を転がり落ち続け、、やがて「●」近くで●●する様な物語。いっやー、巻き込むこと巻き込まれること!ちょっと見ゲーム風の様で、その実リアリティ噴出されまくり。リアルな感触強すぎて「スカッと爽快イヤミス!」と割り切った高みの見物が出来ない程の凄まじさ。一度愉しんだら二度と読み返したくないキッツイ本だが、学べるポイントは多々ある。

「いやなことがあるというのは、人生の真っただなかにいる証拠だ」

さて怖るべきリーダビリティで激走に激走を重ねた挙句、これで万が一、終結がアンビリーバボな大逆転お花畑、四方丸くのハッピーエンディングだったら世紀のバカクライム奇書罪で焚書に処す所だが。。 ん、最後の集団ドコスコ逃走劇だけ、少なからずタレたか。。ただ、そこも登場人物の関係性や何やらに工夫はあって面白い。でもやっぱ急にお気楽ムゥドになったよな。。人間、疲れ切ると緩くなるってことか。 と、そこへ。。。。。。!!

最後、小さな◯◯をむしろ安定させる重しの様に、大きなしこりは残ったが、そのしこりさえ眩しく輝いていた。
そうそう、町工場仕事の描写が(いい時も悪い時も)良かったです。
てか、とにかく全体的にデッラ面白い。


No.1113 6点 麒麟の翼
東野圭吾
(2021/12/15 06:42登録)
妙に微妙に早すぎるタイミングでネタバラシ、またはそれがとんだダミーであることのほのめかし。 靴下の伏線も瞬殺で潰されるし。。 だが折り鶴の色が毎回変わった理由、シンプル且つミステリ的には浅いのに、どこかハッとした。。。。 人間ドラマとしても社会派としてもさほど踏み込んでないのはわざとで、てことは、さぞかしミステリとして、こう見えて腰抜かすようなゴン攻め真相が蠢いているのかと少し期待しなくもなかったっすが。。 この真犯人提示含め、ううーーむ。 序盤~中盤~終盤までかなーり面白かったが、暴露される結末の意外性が、東野基準にしてはちょっと、うねってないやね。 それでも余裕の6点ですよ。


No.1112 8点 幼年期の終わり
アーサー・C・クラーク
(2021/12/13 15:15登録)
第一部が終わって早速、いつまでも深呼吸していたくなったのには参った。
第二部には愉しい冒険要素もあり、これが物語全体のアドヴェンチャー・リリーフになっているという構造の峻烈さは興味深い。
第三部には、三度にわたるエンディング。 うち二度はオーヴァーセンチメンタルにして急襲型。言葉に詰まる。

この物語展開の前半分くらい望んでいる人間さんも結構いらっしゃるんじゃないかと推察。
やさしい/やさしくないの座標軸が全く意味を失う臨界へと、雪崩れ込むのを見守るしかない物語。
作者による第一部改訂への強烈な使命感には感じ入った。
何より、テーマがシンプルなようで重層的、複雑な位相群をワイドヴューに投射しているのがいい。 ◯◯でさえ物語の主軸じゃないんだから。。

“あの子は玩具を残していったーー”

二度読みが怖い。


No.1111 8点 夏と冬の奏鳴曲
麻耶雄嵩
(2021/12/06 10:50登録)
読了前の特権で、とりあえず、あらぬ憶測は大いに振って臨みましたが。。 二つの大きな謎がお互いの隠れ蓑になって、お互いをダミーだと言い合っているような。。 手の込んだ■■譚なのか?? .. 展開されようとしている? あの時? そのもの?? みんな、隠し事が多過ぎるよ。。。。 アリバイ観察者の存在。 すべてがそのものとして見える地点。。。

何しろ、冒頭から序盤から気持ちの良い惑いと揺らぎ。 だいたい、表題にただならぬ過去の内臓が絡み付いている事を、序盤からこれ見よがしたに叩き付け過ぎ。 大小違和感のタイルが次々と積み上げられるのに魅惑され過ぎ。 何気に人物書き分けが良い。 しかしな、「アレ」の書き分け伏線がシラっと晒されてたのは、気付かなかったな!!

独特過ぎる形状の屋上、めちゃ魅力あります。 そこからは海も山も見えます。 

“烏有は泣きたくなった。悲しみのためではなく、底の無い虚しさからだった。”

割り切れなかった謎を反芻、挑戦したくなる程には読了後に物語の魅力が持続しないのが大いなる難点(個人的な事だが、凄く残念!)。 しかしながら読中はそりゃあもうエキサイティングで、その勢いだけでも、異例とは言わずとも破格の高得点付けるしかないですね。 ※続篇に諸々解決の糸口があるとも聞いた。愉しみにしておこう。

(キュビズムの目眩ましはあるにしても)十二音技法を押しておきながら、「和音」だもんね。。 ともあれ、「青年」の名前が明記されない所に、何らかの大きな謎が??


No.1110 8点 エンプティー・チェア
ジェフリー・ディーヴァー
(2021/11/29 21:10登録)
事件の構造は、悪夢の様にベーーァッドだ。。。。なのに、なんでこんな明るい結末なんだ!! 
最先端技術による脊椎手術を受けに赴いた、南部はノースカロライナにて、出張捜査に引っ張り出されるリンカンとアメリア。 あろう事かこの二人がディープな対決状態にまで陥る趣向はスピードある不安感を本当に焚き付けてくれます。

“その口調は不安げで、アメリア・サックスは、自らの歴史を書き換えるのは、気の遠くなるような遠い道のりなのだろうと想像した。”
「そのことを忘れないで」
「わかった」

今回は真犯人というか、真●●●が実に見えづらかった。。キーワードとして何度も刺さった 「●●●」 ってのが大ヒントだったのか。。。だってさあ、アレとかアレとか、続々とひっくり返るんだぜ。。挙句、長過ぎるショートショートの如きまさかの大オチ!! いや、最もスパンの長い伏線が、そこだったのか。。。。 やはりシリーズ作としての責任は果たしてもらわないとな(冷汗)。

ここまで病んだ真相を以てしても、本作を社会派と呼ぶ事は許されないだろう。それくらい強力なサスペンスと色鮮やかな活劇に転がされ尽したジェットコースター・アミューズメント大作。 
やはりご都合が激し過ぎるきらいはあるが、その到達点に見えたまるでダムのような 「結末の大きさ、深さ」 にはもう感服しかござらん。 そうそう、諸事件の第一容疑者たる昆虫少年は、いい話をいっぱい聞かせてくれました。


No.1109 6点 時鐘館の殺人
今邑彩
(2021/11/22 22:51登録)
■□ 生ける屍の殺人::机上のトリック、机上の展開に机上の大反転もここまでやってくれりゃ文句なし。思い切った不可能興味で完走。企画で勝負あり。無理のあるダイイング・メッセージの必然性は。。 最後の駄目押しは、ジョークって事で。
■□ 黒白の反転::妙にあからさまなヒント連発、イコール絶対何かの隠れ蓑と疑っていたのですが。。。。思いっきり虚を突かれました。。そこは将棋でも囲碁でもなく、オセロなんですよね。。 てかこの小説、本筋の事件がダミーになっちゃってません?
■□ 隣の殺人::ほとんど数学的な、きれいにまとまり過ぎた反転からの反転返し。しかしこの終結は気分が悪い。妙な所でバッドエンドに振り切っていない所為か?(◯◯◯◯が出落ちネタバレのような気もします。。)
■□ あの子はだあれ::胸に迫る、美しきファンタジー。だがラストに現実世界の億劫さが託されているような。だからこその独特な味わい。 その盲点は、本当に盲点でしたね。。
■□ 恋人よ::サスペンス横溢だが、終わってみれば”どうってことない”感がどうにも強い。が、この終わり方、部屋が無人であるという点に、何かがTOO LATEになるかも知れない可能性を込めてあるのか、ないのか。。
■□ 時鐘館の殺人::企画勝負に圧勝の一篇。この稚気ある構成はシビレます。そのくせ小粒感がダダ漏れ(笑)。でもやっぱこの純トリッキーな物語構成と、見事にそれと両立した完成度との均衡は見逃せない。ワンポイントで”人間を描けなく”なってるのは、わざとだな。。 無邪気な楽屋落ちも、文壇入り出来た著者の嬉しさ発露のようで良し。「原雅也」には笑った。

ノベルス裏表紙「著者のことば」より
“短篇集でありながら、じつは、この中に長篇が二篇入っています。そりゃ、どういうことかって? 読めば分かります。”

裏表紙著者画像の影響もあり、平成初期ノスタルジーに胸が締め付けられる一冊でした。
遅ればせながら、平成なかばに若くして世を去った今邑彩さんのご冥福を、お祈り申し上げます。


No.1108 7点 おれたちはブルースしか歌わない
西村京太郎
(2021/11/19 18:24登録)
“おれには、それを許せそうもない。  おれたちには、やっぱり、ブルースが似合うんだな。”

「シンデレラの罠」盗作事件!(←歌の題名です) 更には私立探偵が殺されたり、犬が消えたり現れたり、恋する青年がアダな年増女に翻弄されたり、呑気に構えているとアッと言う間に連続殺人が、、、意外とジェットコースター、コロンボ(刑事)まで怪しく見えて来る堂々の展開!! 妙に身体的特徴の光る人物が二人もいるのは。。 真犯人、真相ともども隠匿の技はな~かなかに熱い! 京太郎さん、軽いタッチで油断させといて、本気で書きやがったな!(笑) 思いも寄らない人物の、物語内での化けっぷりにも、このヤング文体に紛らせといてしっかりと伏線が! いやー、真相巻き返しの術、凄かった、ナメて掛かった甲斐があった(笑)。   

著者初期(鉄に行く前)のおどけた青春ミステリ。若き日の十津川さんが出て来てギター弾きながらおどけるわけではないです。
主人公たちがブルースバンドって感じがまるでしないのと、何にしろ音楽がまったく聴こえて来ないのは、、まあミステリの面白さで許せますよ。


No.1107 6点 カックー線事件
アンドリュウ・ガーヴ
(2021/11/17 11:20登録)
バカ証拠(笑)、バカ解決(笑)。 主人公(ではないね、その父親)はダブルの事件に巻き込まれたくせして妙にのんびり、やたら緩やかなコージーサスペンスのようでいて、どうも何やら腹に一物あるような、、って期待した。。そこんとこ作者にミスディレクションの気はあったのだろうか。(私には◯◯◯の◯が終始どうにもニオった!) ちょっと接ぎ木したように現れる本格ミステリ展開は、ロジックのポイントが所々枝葉末節に見えて退屈気味だが、水運系の描写が愉しくて救われる。忙しなく爽やかなエンディングにも救いがあるが、やっぱどっか全体の構築に貫禄が無いというか。でも可愛げあって憎めない作品。 題名からして一応鉄道ミステリでもあるので、読み鉄の方は余裕あったらチェックしといていいかも。


No.1106 8点 弔鐘はるかなり
北方謙三
(2021/11/12 05:54登録)
“この男は俺と同じことをしようとしている。◯◯を◯◯◯出すということだけではない。なにか別のものだ。言葉にはならなかった。”

真の「復讐対象」が誰/何なのか、極限まで煮詰めんとする男の物語。 万感迫るラストシークエンスで急転回して、沈着の中に衝撃宿るサドゥンエンド、そこに唐突感が漂わないのは、猛烈な小説家魂が最後まで読者を抑え込むから。 驚くほど純ハードボイルド文体で描かれた登場人物群の鮮やかで立体的なこと! 微妙な翳りが際どい危うさを発する「或る脇役」が実は、、一連の事象と直接の何の関係も無いというポイントは、クリスティ流人間関係トリックに通じる大きなミスディレクションとして機能していよう。 人間関係といえば、最後に明かされる、主人公にとり、そして本小説にとり巨大な真相暴露となるさり気ない台詞と、それを受け止めたその後の会話と、、、このへんはもう本当に最高のハードボイルド記念碑、伸された。 北方謙三ミステリ作家としてのデビュー作にして仰ぎ見る完成度と魅力の坩堝だが、今度こそ売れるためのクソ努力がこれだけプレシャスな果実をアウトプットしただなんて、どこまで素敵な話なんだろう。 私が北川景子を割と好きなのは、北方謙三を無意識に思い出させる語呂の近さに負っている部分もある、という深層心理にも気付かせてくれた。

キーホルダーに付いた鈴の鳴る ’サラン’ という音、何度も登場しますが、癒されますね 。。。  「いい音だ。時々振ってみるのはあんたの癖だね」 ← この台詞。。。。
表題の意味、かなり深い所まで考えさせられます。 「はるか」なのは、何と何の間の距離なのか。 一つには、◯◯を越えた或る距離の意味合いも含まれているのかな。。

“人間にはそういう河があるものだ。ただ渡るためだけに必要な河が。”

最後に、これはネタバレに通じそうですが、、、、 或る重要人物が、実は一度も登場しない!! 。。。。 何から何まで想像させて、泣かせてくれます。


No.1105 7点 或る家の秘密
スティーヴ・ロビンソン
(2021/11/10 04:57登録)
アトランティック・クロッシング。。本作の終盤に差し掛かった頃、ロッド・スチュアートの同名アルバムがFMから流れて来た偶然には感動した。それも一枚丸ごとの大盤振る舞い!

主人公はやり手の「家系調査士」JTことジェファーソン・テイト。全米一を自認するが、ここへ来て若手ライヴァルの追い上げが激しい。今回の顧客はイングランド系アメリカ人の富豪。本人直系の先祖は難なく割れたが、その兄と妹で独立戦争末期にアメリカからイングランドへ渡った一族とその後裔にあまりにも不審な黒い霧を発見したJTは強烈な職業興味に押され、苦手な飛行機で英国に渡り、調査の周辺で起こる連続不審死に遭遇し、自分の命まで狙われ始める。。

重みのある渋い作品を想像していたら意外と軽くてヤングフィーリングなお話でしたが、終始エキサイティングで文句無く面白かったです。活劇シーンも、謎ガジェットの存在感も充実。魅力的キャラクターズも色鮮やかに書き分けられました。過去の大きな謎と現在の中くらいの謎がカットバックで並走するスリルはなかなかのもの。過去の真相の或る意外性の部分、所謂人間関係トリックのシラッとバッサリ応用篇みたいな所は、最後まで堂々騙され一片の悔い無し!

現在の真犯人は確かに意外ですが、その立ち位置であまり驚けない、意外性のコスパは確かに低い、でもこのストーリーのパースペクティヴでは充分満足。大きな分岐点でもある、或るシーンで主人公、主人公の仕事のライバル共々そこまで軽々しく騙されるわけないだろう、って唐突にリアリティがグシャグシャッとなっちゃう所、読者目線であまりに不審過ぎて、ひょっとしてハイパーどんでん返しの巨大伏線かと疑っちまいましたよ。そこんとこの悪い違和感を除けば相当に優秀なエンタメ作でしたね。。でも更に敢えて言えば、過去の犯人というか悪人の人間ドラマがページ数的にあっさり通過され過ぎの感はある。もっとじっくりじっとり掘り下げてくれてもエンタメの速度が落ちはしないと思うが。。とは言えその部分を含んだ⚫️⚫️の悲劇という大テーマ的な部分はやはり熱く、派手めなエンタテインメントたる本作に深いインパクトの加勢を与えてはいる。 プロローグの本当の哀しみは、過去の真相が分かってこそ、考え落ち的にずっしり来るわけだ。。

第一級の家系調査士である主人公が自らの血縁両親を捜しているという設定も旨い。シリーズ後続作でいつかその謎が解かれるのだろうか。 ノンケ男女同士の熱い友情と軽い恋愛が並列で描かれるのも良いですね。恋愛の方は友情に較べるとかなりどうでもいい扱いですが、こちらも後続作での発展があるのか、寅さんみたいに一作毎の淡い行きずりが続くのか、、まどっちでもいい。 そうそう主人公がそこそこおデブちゃんの筈なんだが、殆どそういう感じ出てない。キャラクター上の必然性も特に無い気がするんだが。 飛行機恐怖症の方は、アトランティック・クロッシングの味付けに丁度良かったかも知れない。


No.1104 6点 往復書簡
湊かなえ
(2021/11/03 03:40登録)
手紙の交換が進むにつれ、過去が深堀りされ、謎解きや葛藤を経、何某かの結論に至る三つの連作短篇(文庫版は+α)。 手紙のきっかけは学生時分の影深いインシデント。 『第一話』の真相は予想外だけど、驚くわけじゃない。これはこれで「どダークな真相」という捉え方もありそうだが、個人的にはかなりのギャフン作ですね。ここで長篇の第一部終わり、ってんなら期待するけど。(実際そう勘違いして、続きにすっげ期待しちゃったんスけどねww)仕切り直して『第二話』は、随分深くまで掘った暗黒真相の果てに。。なんじゃこのさわやかエンディングはw こんなんじゃもっと人間ドラマに寄せた普通文学+ミステリ風味チョイの方がいいんじゃないか、と思ったが。。『第三話』にはミステリ魂埋まってました!三作中もっともさり気ない導入から犯罪領域に急カーヴするタイミングのスリルは強力。「時●」ってやつの使い方も絶妙。「●る」という言葉のダブルミーニング的なとこ、ヤられた。奥の深い真相暴露は横溝の某短篇を彷彿とさせたかも(?)。 文庫で追加になったという『エピローグ』、色々●●って(?)愉しいですが、考えオチ過ぎて(?)もやもやエンドだった『第三話』に泣ける落とし前を付けた、って解釈でいいのかな?

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