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ミステリの祭典

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TON2さんの登録情報
平均点:5.65点 書評数:330件

プロフィール| 書評

No.250 4点 霊名イザヤ
愛川晶
(2013/01/03 21:23登録)
角川文庫
 途中でキリスト教の異端カタリ派の話が出てきたときは、オカルトホラーとして大好きな分野だけにわくわくしましたが、最後は人間の異常性により説明がついてしまい、拍子抜けしました。
 新マニ教、カタリ派、グノーシス主義と出したのなら、もっともっと展開を奇抜にすれば面白くなっただろうに……。読後感は残念の一言。


No.249 8点 イン・ザ・プール
奥田英朗
(2013/01/03 21:19登録)
文春文庫
 松尾スズキ主演の映画を先に見ました。いかれた精神科医のもとを訪れる患者が、とんちんかんな医者の行動に振り回されているうちに癒されてしまうという話です。
 40歳すぎのマザコンで人格破綻していて注射フェチのドクター伊良部がめちゃくちゃ面白いです。
 


No.248 7点 QED 諏訪の神霊
高田崇史
(2013/01/03 21:14登録)
講談社NOVELS
 このシリーズは新作が出ると必ず読みますが、近ごろは消化不良で読後感がすっきりしないものが多かったのですが、今回は諏訪大社の謎ということで面白かったです。
 殺人事件はいつも通りつけたしですが、諏訪の血にまみれた歴史が興味深いものでした。


No.247 6点 ミステリ・オペラ
山田正紀
(2013/01/03 21:10登録)
早川書房
 構想5年、執筆3年の原稿用紙2000枚の大作。
 前半がSF的、伝奇的で、楽しめました。でも、読後感がすっきりしません。あっと驚くようなトリックやどんでん返しがなかったためだと思います。


No.246 4点 捩れ屋敷の利鈍
森博嗣
(2013/01/03 21:05登録)
講談社NOVELS
 瀬在丸紅子と西之園萌絵がコラボします。
 密室殺人というのは、実は密室でないという状況をいかにうまく設定するかということですが、この作品のトリックは感心できません。特に捩れ屋敷の鍵の構造については、複雑で理解できませんでした。


No.245 7点 ハサミ男
殊能将之
(2013/01/03 20:57登録)
講談社NOVELS
 トヨエツが出た映画を先に見た上での読書です。
 異常殺人鬼(シリアル・キラー)の内面の動機を探ろうとしても何もそこにはないが、一般大衆は安心するために理由を欲するという話は、ほかの作品でもよくある話です。
 題名もひっかけになっています。


No.244 5点 樒/榁
殊能将之
(2013/01/03 20:52登録)
講談社NOVELS
 樒(しきみ)と榁(むろ)と名づけられた短編2編から成っています。
 「樒」は名探偵水城優臣が、「榁」は迷探偵石動戯作が謎解きを行います。二つの事件の時代は16年違うものの、舞台は四国の温泉旅館で、密室の謎は同じようであり、相似形をなしています。
密室の謎はちゃちなものですが、その他の仕掛けによって面白く読むことができました。


No.243 6点 東亰異聞
小野不由美
(2013/01/03 20:45登録)
新潮文庫
(ネタバレ)
 江戸のまちならいざ知らず、文明開化の帝都で火炎摩人や闇御前と名づけられた妖怪とも物の怪とも思えるものたちの跳梁は、実は高貴な公家の相続争いのために人間によって仕組まれたものであったというのが一応のストーリーです。
 しかし、明治29年に明治大帝が崩御するというラストによって、この物語はパラレルワールドを舞台としたものであったことが分かり、東京ではなく「とうけい」であったことが腑に落ちます。
 伝奇ミステリーといて楽しめました。


No.242 7点 狼花 新宿鮫IX
大沢在昌
(2012/12/28 18:46登録)
光文社
 鮫島の宿敵ともいえるロベルト村上こと仙田と鮫島の同期のキャリア香田警視正が登場します。
 鮫島はアウトローですが、普通アウトローは性格や行動の特異性ゆえに組織からはじき出されるのですが、彼は正常すぎるぐらいの警官意識の持ち主ゆえに危険視され異端視されています。
 新宿鮫という作品は、新宿というなんでも欲望を飲み込んでしまう街を舞台に、警察内部の腐敗などを取り上げていますが、作品が重なるにつれ、内容が定型化し、当初感じた鮫島の破天荒なパワーが感じられなくなってきたように思います。


No.241 9点 後巷説百物語
京極夏彦
(2012/12/28 18:37登録)
角川文庫
 第130回直木賞受賞作。
 「赤えいの魚」「天火」「手負蛇」「山男」「五位の光」「風の神」の6編。
 明治に入り、警視庁巡査を中心とする4人の若者が、不可思議な事件の真相を老人に尋ねる。この老人一白翁こそ山岡百助です。
 老人によって、不可思議な出来事は妖しのものの仕業ではないかと説明されますが、実は世に不思議なしで、それらは百助の昔の仲間御行の又市らのしかけにかかわっていました。
 妖怪小説の新しい形での集大成で、文句なく面白かったです。


No.240 6点 黒祠の島
小野不由美
(2012/12/28 18:31登録)
NONNOVEL
(ネタバレ)
 明治の国家神道から外れた神を祀る黒祠の島で起こる殺人事件です。島に祀られている神は、悪人に罰をもたらすという言い伝えがあります。
 幼いころの悲惨な記憶から、幼なじみが入れ替わったというトリックは、なかなか面白いと思いました。


No.239 6点 空飛ぶ馬
北村薫
(2012/12/28 18:26登録)
創元推理文庫
 日本文学専攻の本好きかつ落語好きの女子大生と落語家円紫師匠のコンビで、日常の謎解きを行います。
 一般人の心にひそむ様々な思いが明らかになっていきます。
 作者の手練はたいしたものだと思いますが、ストーリーに緊張がないため、自分的には今ひとつという感じです。登場人物が、心根やさしく正しいものの考え方をする常識人であることに好感を覚えました。
 


No.238 4点 赤緑黒白
森博嗣
(2012/12/28 18:21登録)
講談社NOVELS
 登場人物のキャラが大好きなシリーズの第10作目で最終話ですが、いつもの明るい感じよりも色恋感情が先走った感じで、楽しめませんでした。
 天才は人に理解されず孤独である。それゆえに誤った感情に陥ると、自分は人を殺しても許される存在だということになる話ですが、この感覚が気持悪い。


No.237 9点 ガダラの豚
中島らも
(2012/12/28 18:17登録)
集英社文庫
 第一部はエセ超能力者・エセ新興宗教対マジシャンによるトリックあばき、第二部はアフリカ・ケニアでの祈祷師による超常現象、第三部は東京で殺人につぐ殺人のスプラッターと、盛りだくさんの内容です。
 作者は薬物中毒かつアルコール依存症でしたが、この作品はそうした自らの体験も土台にしているようで、大変面白かったです。特に、主人公たちが基本的に善人で、ユーモアがあり、頭のよい人間ばかりであることが心地よい作品です。
 主人公の大学教授が何度も繰り返す「学者は嘘はつかない。ただときどき間違えるだけだ。」という科白がたまらなくおかしい。


No.236 6点 犯人に告ぐ
雫井脩介
(2012/12/25 20:46登録)
双葉社
 近年増えている劇場型犯罪に対抗して、警察の捜査官がテレビのニュースショーに出て、その捜査過程を明らかにするとともに犯人に直接話しかけるという「劇場型捜査」を行います。
 確かに面白いですが、現実味は不足しています。民放1社だけに役所である警察が関与するのかと疑問に思います。
 また、県警本部長の傲慢さ、刑事総務課長の幼稚さなど、登場人物のキャラがステレオタイプであり薄っぺらです。


No.235 4点 サタンの僧院
柄刀一
(2012/12/25 20:41登録)
原書房
 修道院で学ぶ学生が謎の事件に挑む。時代は現代のようです。現代科学社会の下での信仰とは何なのか、主人公に迷いがあります。
 テーマ的には大好きなものですが、信仰に関する会話が生硬で難しすぎます。神学生が語るのでやむを得ないのでしょうが、一般人が彼と対等に神学論争を繰り広げるという設定は無理があると思います。
 少々オカルトっぽい味付けのミステリーですが、謎解きがご都合主義で、あまりできはよくありません。


No.234 3点 城崎殺人事件
内田康夫
(2012/12/25 20:36登録)
徳間文庫
 シリーズで数多くの作品が生み出されていますが、この作品のようにいくら兄が警察庁のキャリアだからといって、捜査にああまで口出ししてもいいものでしょうか。また、ミステリーとしては、犯人は誰か、動機は何かという謎解きはありますが、殺人トリックに関してはほったらかしです。警察も見破れなかった自殺に見せかけた殺人、その方法は?最初に謎を提示しておきながら、全く説明がありません。
 読者は、主人公を取り巻くキャラにひたりたいというだけでしょうか。


No.233 4点 業火
パトリシア・コーンウェル
(2012/12/25 19:31登録)
講談社文庫
 シリーズ9作目。
 宿敵ゴールトの相棒キャリーが脱獄し、スカーペッタとベントン・ウェズリーに復讐を企てます。
 男社会の中で、法医学者として一流のキャリアをつみ、高級住宅地に大きな家を構え裕福な暮らしをしているスカーペッタが鼻につきます。彼女にとって重要なのは自由であって、恋愛感情を覚える男にも、その自由の中には足を踏み入れさせない。相当に嫌な女です。むしろ下品で粗野な警官のマリーノのほうに人間的温かみを感じます。
 シリーズが進むごとに登場人物がスーパマン化し、捜査対象の殺人事件もパワーアップしています。このため現実味が薄れています。


No.232 6点 切り裂きジャック・百年の孤独
島田荘司
(2012/12/25 19:21登録)
文春文庫
 1888年にロンドンを恐怖に陥れた切り裂きジャック事件とうり二つの事件が1988年の西ベルリンで起きます。この事件を通して、切り裂きジャック事件の真犯人像に迫ります。


No.231 9点 国境
黒川博行
(2012/12/19 21:13登録)
講談社文庫
 建設コンサルタントの二宮と暴力団幹部・桑原の「疫病神」コンビが、詐欺師を追って北朝鮮に潜入します。
 ヤクザの世界は嫌いですが、この作品は北朝鮮の表と裏、平壌と地方、党幹部と一般庶民の様子がよく描かれていて非常に面白かったです。
 桑原が北朝鮮の指導者を「パーマでぶ」と呼ぶところで笑えました。桑原は絵に描いたような極道ですが、その話しっぷりや行動を見ていると、相当に頭のよい人間だということが分かります。二宮へのイヤミを見ると、ユーモアセンスが抜群だと分かります。

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