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ミステリの祭典

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ミステリ・オペラ
オペラ三部作

作家 山田正紀
出版日2001年04月
平均点6.00点
書評数12人

No.12 7点 虫暮部
(2024/07/26 12:25登録)
 え、これSFじゃないの? ミステリである以上投げっ放しには出来ないのであって、必ずプロローグに立ち戻らねばならない宿命がこの長さと相容れるのか。“ミステリ” と掲げられたタイトルだけを命綱に谷底へいざ降下。 

 確かに神の扱いは神シリーズ(SF)よりも『神曲法廷』(ミステリ)に近いだろうか。不穏な戦時下の空気感は呪師霊太郎シリーズや『機神兵団』。平行世界説は『花面祭』『螺旋』。個人的には、目立たない作品だが『宿命の女』を想起した。更にヴァン・ダイン『僧正殺人事件』へのこだわり(笑)。
 山田正紀マナーの集大成みたいな感じで、それ故に既視感も強い。面白くしたいなら得意技を全部投入すりゃいいんだろ! と良くも悪くも開き直ったか。濃度の割に読み易く、しかし読んでも読んでも終わらないので胃もたれ必至。このバランス感覚の欠如こそ山田正紀、ではある。
 “これ” はそもそも何なのか? と言う謎に埋もれて殺人事件が単なる徒花みたいに見える。と言う事実こそがコンセプトの勝利を物語る。

 ただ――ごちゃまぜのスープが黄金の一滴に “化ける” 瞬間が、ついに訪れなかった。これだけやられても、私は “理解” を手放して飛び降りることは出来なかったのである。

No.11 7点 ʖˋ ၊၂ ਡ
(2023/04/07 13:09登録)
化石人骨の甲骨文字を巡る神話の解釈、及びオペラ「魔笛」の解釈という二重の見立てが含まれる。それは直接的に犯罪に関わるものでありつつ、全体としては歴史そのものの壮大な見立てになっている。
そんなことも可能にする見立ての力はなんなのだろう。おかしな言い方になるが、現実や歴史が現にそこにあるという考え方は一種の危険思想ではないだろうか。確かにそこにあるように見えて、それらは実体のない蜃気楼のようなものだ。見立てとはそんな蜃気楼に触れるための、いや蜃気楼を蜃気楼として鮮やかに感じるための装置である。

No.10 9点 クリスティ再読
(2021/03/21 20:39登録)
いや本作、「昭和への挽歌」だから、若い方が読んでも全然ピンとこないだろうね。犯人だってトリックだって、ただの装飾、ただのオマケな作品なんだよ。「メタ・ミステリ」がただの多重解釈モノの別名に堕しているのを、「ミステリって何のためにあるのか?」を追求した、「ミステリという文学自体が『ミステリ(謎)』である」本当の意味の「メタ・ミステリ」を書いてやろうとした野心的な作品が、本作というわけだ。

この世の中には異常なもの、奇形的なものに仮託することでしか、その真実を語ることができない、そんなものがあるのではないか。君などは探偵小説を取るに足りぬ絵空事だと非難するが、まあ、確かに子供っぽいところがあるのは認めざるをえないが、それにしても、この世には探偵小説でしか語れない真実というものがあるのも、また事実なんだぜ

この本が証明しようとするのは、まさにこのテーゼ。いやミステリ読みならば、この心意気に打たれない、かな? 「探偵小説」だからこそ可能な「救済」めいたものが、本作の最後にほのかに現れる。これが感動的である。「(この人たちの)ミステリが好きだった」とすべての死者を記憶する検閲図書館・黙忌一郎が愛を告げる、この瞬間のために文庫1100ページを超えるのを読んできた甲斐もあろうというものだ(ハヤカワ文庫の2005年の初版なんだけど、今回再読していて本が崩壊してきた....厚い本は弱いなあ)

「グリーン家」「僧正」「Yの悲劇」「シャム双生児」「三つの棺」が幾度となく参照されるどころか、小栗虫太郎のアルターエゴである小城魚太郎が作中人物として登場、黒死館での謎の一つ「グブラー麻痺」もネタに、さらに「ズウゥーン」という砲撃音が「ドグラ・マグラ」の固執モチーフのように何度も聞かれ、果ては「虚無への供物」という発言も。さらに「乱歩でもこんな」とか参照されれば、鬼貫みたいな警部も登場...と、この作品では野放図なまでに「探偵小説」が参照され、このような「探偵小説」のテキストの網の目の中で「宿命城殺人事件」が相対化されていく....「ミステリ・オペラ」の作中作でありかつ別題でもある二重の「宿命城殺人事件」の著者は小城魚太郎でもあり、善知鳥良一であり、実のところ昭和を生きた人間ならば誰でも「宿命城殺人事件」というテキストの「著者」たりうる、というあたりにこの作品の「テキスト論」的な仕掛けがあったりする。「宿命城」とは「昭和」という時代そのものの姿なのだ。いや本当に、本作は平成生まれの若い方に、読ませちゃいけないよ。
(ちなみに最後の「おれはただの人殺しだ。安っぽい探偵小説の人殺しなんだ」は「博奕打ち総長賭博」のパラフレーズだよ)

No.9 4点 文生
(2020/07/31 07:36登録)
『神狩り』や『宝石泥棒』といった著者のSF小説が大好きで、しかも、日本推理作家協会賞と本格ミステリ大賞のダブル受賞ということで大いに期待して読んだわけですが、どうにも良さが理解できませんでした。
個々のエピソードはそれなりに読ませるものの、「ミステリーの形を借りて描いた昭和史」というテーマ性がまったくピンとこなくて、最後まで物語に入り込むことができなかったのです。
本格ミステリとしては個々のトリックが凡庸すぎるということもあり、自分にとってはイマイチな作品でした。

No.8 5点 ぷちレコード
(2020/07/30 19:08登録)
メタミステリ的要素を多く含みつつ、メタミステリ批評を試みた作品。分厚い長編の謎解きとしては、一つの大トリックで一挙に解決される方が美しいだろうが、本書は解決が分散型でギクシャクしている気がする。

No.7 4点 いいちこ
(2017/05/17 17:12登録)
綿密な取材に裏付けられた壮大な舞台設定とディテール、冒頭から示される不可能興味に溢れる謎の数々、高い筆力を窺わせる流麗な文章には一目を置く。
しかし、密室状態での銃殺・轢殺、20分間の空中浮遊、消えた車輛等の数々の謎について、その真相とトリックがことごとく、極めて、凡庸かつ陳腐である点で、本格ミステリとしては評価に値しない。
また、そのプロットも、満州国の歴史の真相、主人公の内的パラレル・ワールド、過去と現代における数々の事件、虚構(探偵小説)と現実との関係など、各方面に発散するだけで収斂させられていない。
ミステリ的趣向・衒学・オマージュを手当たり次第にゴッタ煮にしてみたものの、1個の料理にはならなかったという印象で、華麗なる失敗作と言えよう

No.6 6点 nukkam
(2016/07/04 13:19登録)
(ネタバレなしです) 執筆中に生命を落としかねないほどの大病を患いながら書き上げ、2001年に発表した本書はハヤカワ文庫版で上下巻合わせて1100ページを越す大作の本格派推理小説です。導入部がややごちゃごちゃして読みにくいですが、途中からはすらすら読めました。謎も沢山提供され、空中浮遊、暗号、密室殺人、貨車消失、首なし死体など「豪華幕の内弁当」的な楽しさがあります。1つ1つの描写はややあっさりしている感もあり、これがメインの謎と感じるものがないのがちょっと惜しいのですが、細部よりも壮大な絵巻を楽しむべき作品です。平行世界(パラレル・ワールド)に関する記述が私には難解過ぎましたがSFミステリーではありません(ちょっとSF風な場面がありますけど)。なおハヤカワ文庫版の巻末解説はネタバレがあるので事前には目を通さないことを勧めます。

No.5 6点 TON2
(2013/01/03 21:10登録)
早川書房
 構想5年、執筆3年の原稿用紙2000枚の大作。
 前半がSF的、伝奇的で、楽しめました。でも、読後感がすっきりしません。あっと驚くようなトリックやどんでん返しがなかったためだと思います。

No.4 10点 daiki
(2009/06/02 00:31登録)
よく書くなぁ、と感心されられました。いろんなものが積み込まれすぎなくらいに積み込まれていて、凄い、というしかないというか。
ちょっと面白くない解決が提示されたりすることもあるけど、全体の勢いがそれを吹き飛ばしています。

No.3 3点 teddhiri
(2008/08/24 21:24登録)
 本格ミステリのガジェット満載だがトリック解明で大脱力。作者の価値観がモロに出ててしんどかった。

No.2 6点 やん
(2004/05/30 22:49登録)
うーん。広げすぎたなー。でもこの人の場合はトリック云々ではなく「小説」がうまいので引き込まれる、読ませるという感はある。
推理小説でしかかけない事実っていうのは南京虐殺のことなのか?

No.1 5点 ポケット
(2004/04/01 11:37登録)
ひっぱったわりには・・・・・。雰囲気だけはよかったかな。

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