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ミステリの祭典

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蟷螂の斧さんの登録情報
平均点:6.10点 書評数:1696件

プロフィール| 書評

No.196 8点 龍神池の小さな死体
梶龍雄
(2012/04/19 12:40登録)
前半は弟の死亡事故の調査でのんびりしたムードで話は進みますが、後半からまったく別の事件が絡んで急転回してきます。な~んだ建設業界の裏を描いた社会派小説かい?と思わせるがどっこい、弟の死亡事故がきっちりと絡んできて、しっかりと本格しておりました。そして思いもよらないラストが提示されます。1979年と古い作品でありながら、いわゆる新本格派っぽい構成となっていることには感心しました。


No.195 5点 毒入りチョコレート事件
アントニイ・バークリー
(2012/04/19 12:17登録)
読んでいてワクワク感がなかった。納得できる推論が、次々と崩されれば面白いと感じたかもしれませんが、納得できない推論が崩されても・・・と思ってしまいました。この手のもの、「プリズム」もそうでたったのですが、どうも肌に合いません。推論で印象に残っているのは「世界の終り、あるいは始まり」あたりです。


(追加)多重解決ものに拒否反応が出てしまった作品(苦笑)。この原作である短篇「偶然の審判」(世界短編傑作集3)は9点なんですけど。


No.194 8点 野獣死すべし
ニコラス・ブレイク
(2012/04/14 22:35登録)
前半の手記部分で、犯人を確定(推定)してしまうのに心証だけでいいのか?と疑問だらけになり、くじけそうになったのですが、後半でその意味がわかり評価が上がりました。この時代に、このような心理トリックを描いたことに敬意を表します。本作が「頼子のために」のモチーフになっていることが理解できました。


No.193 10点 冤罪者
折原一
(2012/04/13 11:48登録)
長編ですが一気に読み終えました。よく練られたプロットに驚嘆、エピローグでは久しぶりに鳥肌がたってしまいました。倒錯シリーズ3冊と追悼者を読んできましたが、本作が今のところ最高です。高評価のものは後でがかりすることが多いのですが、本作は評価が6点台だったので、よい拾いものをした気分です。


No.192 7点 倒錯の帰結
折原一
(2012/04/11 17:41登録)
「首吊り島」の密室トリックは斬新で拍手(思いもよりませんでした)。「監禁者」は「倒錯の死角」の舞台に戻ったようで楽しめました。この作品は二つではなく一つの物語であるので、どちらがどうこうということはなく、通してこの評価にします。また、作者の本音~叙述に関する悩みや密室が好きである等~もわかり好感が持てました。


No.191 4点 東亰異聞
小野不由美
(2012/04/10 14:15登録)
ミステリーとして、家督相続に関する動機は楽しめましたが、それ以外(伝奇)は全く肌に合いませんでした。


No.190 6点 仮面の祝祭2/3
笠原卓
(2012/04/08 17:38登録)
鮎川哲也と十三の謎の一冊。三人のうち二人はアリバイがあるが、そのうちの誰だかは特定できないという面白い設定です。警察によるアリバイ崩しが地道に展開されるのですが、警視庁と神奈川県警が絡むので、やや冗長に感じられました。トリックには驚きはありませんが、アリバイ崩しのための仮説、そして挫折、この繰り返しで面白く読むことはできました。


No.189 5点 予告された殺人の記録
高原伸安
(2012/04/06 15:50登録)
本格ミステリ・クロニクル300に掲載されており拝読。裏表紙より「ダイイングメッセージは華麗なカトレアの花。ロスの高級住宅街で起こった殺人事件は、密室で自殺した男の犯行なのか。事件に巻きこまれた”私”の推理行は、ありうるべからざる犯人の名前を示す。ミステリー最後の放れ業に挑戦した驚天動地の大異色作。」クリスティの「アクロイド殺人事件」を超える作品を目標としたとのことですが、意欲は買いますが結果は???でした。馬鹿馬鹿しさでは記憶に残るでしょう。この手の作品は、未読ですが2,3冊あるようです。


No.188 8点 皇帝のかぎ煙草入れ
ジョン・ディクスン・カー
(2012/04/04 22:17登録)
裏表紙「このトリックには、さすがのわたしも脱帽する」とアガサ・クリスティを驚嘆せしめた・・・とのとおり、ビックリ仰天、見事に騙されました。お恥ずかしい話ですが、「かぎ煙草入れ」がどういうものか知らず、ネットで調べやっと理解できました。「嗅ぎ煙草」だったんですね。首飾りの宝石も出てきているので、題名の煙草入れがどういう役割なのか気にしながら読んだのですが、最後に大きなポイントとなっていました。感心しました。


No.187 5点 どんなに上手に隠れても
岡嶋二人
(2012/04/03 09:44登録)
構成は良かったし、スピード感もあると思いましたが、読後、感慨深いものを感じることはできませんでした。それは犯人逮捕が意外にあっさりしていたからかもしれませんし、主役がぼやけていたせいもあるかもしれません。犯人の行動でよく解らないものは、警察への通報、ヘリコプターの利用で、必然性を感じませんでした。ヘリコプターは謎のひとつであったのにも拘わらず釈然としないまま終わってしまいました。


No.186 6点 密室・殺人
小林泰三
(2012/04/02 12:16登録)
密室が出来上がっており、死体は外で発見される。自殺とも他殺とも判断できないという謎。そして事件解決に登場する名探偵に関する謎。ユーモラスな部分があると思えば、主人公のトラウマがおどろおどろしているという不思議な雰囲気の小説でした。


No.185 6点 聖遺の天使
三雲岳斗
(2012/03/30 11:17登録)
レオナルド・ダ・ヴィンチが探偵役として登場。城の主が磔となり殺害される。それは聖遺物(香炉・・・聖母子像が現れる)に関係しているらしい。一夜にして傭兵軍団を滅ぼしたという伝説の城、天使の出現など幻想的な雰囲気で描かれてゆく。「白テンを抱く貴婦人の肖像」のモデルの少女が、弟子として登場、師匠とのやり取りが面白い。謎も大胆で気に入りました。(但し、似たようなトリックはあるらしい)


No.184 6点 容疑者Xの献身
東野圭吾
(2012/03/28 16:12登録)
①死体の身元確認(レンタルルームに残った髪と指紋だけで確認してしまうの?「名探偵の掟」で警察が杜撰であることを批判しているのに・・・)②アリバイ工作について、前半部分で当事者が疑問に思っていることに触れていないのは不自然、または伏線なしはアンフェア?③石神が仕掛けたトリック自体を湯川が解明したのはよいが、富樫が殺害されている事実(読者はわかっている)は想像に過ぎず論理的根拠の提示や解明がなれないのが気になりました。偏狂的な愛情(純愛などとは言えない)を注いだにも拘わらず、理解されない男の哀れな物語と思います。救いは美里がよき理解者であったことです。

<2016.6評価7→6に変更、①のトリックは古典的でよく使われているもので、評価は無関係、②のトリックは著者の創作?(本人がどこかで書いていたような気がします)ということで高評価としました。しかし、江戸川乱歩氏の作品に②のトリックがあり、先駆者に敬意を払う意味で変更しました。>


No.183 4点 名探偵の掟
東野圭吾
(2012/03/27 21:37登録)
本格を謳いながら、実はつまらない作品が多いとの批判なのでしょう。だからといって著者に本格志向があるとも思えませんでした。ただ面白いミステリーを書きたいとの意思は感じることができましたが・・・。共感できたのは、二重人格ものは読者の叱責を受けるという点でした。


No.182 7点 天使のナイフ
薬丸岳
(2012/03/26 10:10登録)
同じような境遇の人物登場に関しては、作者の物語構成の意図(よく練られていて面白い)であり評価します。ミステリーというより、小・中学生の学校の先生や親に読んでもらいたい作品と思います。いじめ問題、少年法、死刑制度等を考えさせられますが、江戸時代の仇討制度や「目には目を」の精神が希薄な現行の法制度では、問題が起こらないように教育に期待するしかないのでしょうか。


No.181 8点 太陽黒点
山田風太郎
(2012/03/25 11:30登録)
ミステリーとして読むなら、ネタばれがあるので裏表紙および解説を先に読んではならない小説です。逆考えればメッセージ小説になるのでしょうか。「誰カガ罰セラレネバナラヌ」・・・「天下泰平、家庭の幸福それがあるだけで無上の幸福ではないか。他人に比べ少しくらい不幸だったとしても、ぜいたく至極な不幸だ。がまんのならないほど、ぜいたくな不幸だ。」戦争経験者の言葉なので、身に沁みました。


No.180 5点 誰もわたしを倒せない
伯方雪日
(2012/03/23 19:28登録)
プロレスとミステリーの融合。解説(17ページと長い)が昔のプロレスファンには興味深い。”鉄人”ルー・テーズがディクスン・カー、”神様”カール・ゴッチはエラリー・クイーン、アントニオ・猪木は横溝正史、ジャイアント・馬場は都筑道夫、タイガーマスクは島田荘司、前田日明は綾辻行人云々と比される。主題である「最強」とは何かは、高田VSヒクソン戦にあり、その結果、総合格闘技が最強となっているらしい。が、顔を殴ってよい(なんでもありルール)は、鍛えようがない顔を殴る点で全くナンセンス(ボクシングはOK)であり、その後この世界に興味がなくなってしまった。ああ、力道山やアントニオ猪木が懐かしい。


No.179 5点 黒猫遁走曲
服部まゆみ
(2012/03/22 17:30登録)
題名からして軽い読み物を連想しましたが、狂気の世界でした。定年退職した女性編集者の愛猫への偏狂的な行動と、妻を殺害した若手劇団員の狂気が交互に描かれ、そしてラストへ・・・。ブラック・ユーモアの世界と思われるので短編でもよかったのでは?


No.178 6点 罪深き緑の夏
服部まゆみ
(2012/03/22 08:32登録)
幻想的・耽美的な世界。主人公が愛してしまった兄の婚約者を壁画に描く姿には心を打たれるものがあります。絵心のある人にはお薦めかもしれません。小説としてはかなり印象に残る作品(高評価)ですが、ミステリー的な評価では、謎がそのままで終わってしまうところがあり、高評価とはなりませんでした。


No.177 5点 レオナルドのユダ
服部まゆみ
(2012/03/21 09:07登録)
ミステリーというより、レオナルド・ダ・ヴィンチに対する二人の弟子(ジャンとフランチェスコ)の偏狂的な愛を描いた作品と思います。謎としては、モナ・リザのモデルは誰、表題のユダは誰、レオナルドと美青年サライの関係は、そしてサライの死は?などありますが、ページのほとんどは前記に割かれ、ミステリー部分は最後の数ページだけです。レオナルド・ダ・ヴィンチに興味のある方にはという作品だと思います。

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