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ミステリの祭典

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冷蔵庫より愛をこめて

作家 阿刀田高
出版日1978年06月
平均点7.00点
書評数3人

No.3 7点 メルカトル
(2020/01/24 22:51登録)
事業に失敗して精神病院に逃げこんだ男が退院してみると、妻はいきいきと働いていた。巨額の借金も返済したという。そんなとき、あの男とめぐり合った。あの男は妻の不貞を告げ、一緒に新商売をやろうと誘う。あの男の正体がやがてあばかれ……。ブラック・ユーモアで絶妙に味つけされた、才筆の出世作。
Amazon内容紹介より。

名手がその気になればこれだけの素晴らしい短編を書けるという見本のような作品集。全部で十八篇収められているが、一つもハズレがないのが凄いです。奇妙な味と言えばロアルド・ダールというのが鉄板だそうですが、本作はそれに肩を並べるか或いは凌駕するくらいの出来だと私は思います。いずれも残り数行で暗転したり、床が抜けるような感覚を覚えます。最後の最後までオチが想像できない物も多く、世界が反転する様を存分に味わうことが出来ますね。
似たような話がなく、それぞれ違う世界が広がります。ほぼブラックな味わいで、エッジが効いていたり、ホラーテイストであったり、とにかく印象に残る後味であるのは間違いないと思います。

まあデビュー作にして代表作でしょう。流石に短編の名人と呼ばれるだけのことはあります。多くの読者にお薦めできる作品です。

No.2 6点
(2018/06/27 05:38登録)
 ロアルド・ダール系のブラックユーモア短編集。全18編収録。ミステリ寄りの物もいくつかありまして、とくに「幸福(しあわせ)通信」が出色。
 あるサラリーマンの元に次々と「私はコンピューター」と名乗る電話が掛かり、日本シリーズの結果、株価の上下、競馬の予想などを次々的中させてゆく。男は次第にその電話を本気にし始めるが、いったい誰が何の目的で掛けているのか・・・。というお話です。「実は超能力」とかに逃げずにプレコグニション(未来予知)を完全に合理的に成立させてますが、あまりアンソロジーには採られないですね。自分は講談社ブルーバックスの「推理小説を科学する」で知りました。知る人ぞ知る作品。

 次は僅か4P余りの戦慄のショートショート「海藻」。相当な怖さですが、これもアンソロジーには採られません。あとは作者イチオシの「趣味を持つ女」。火葬場から「お骨が知らぬ間に増えている」との通報を受けた刑事が、会葬者を見張る内にある事実に気付いて・・・というヤツです。これが一番ミステリ寄りかな。火力の強い今の釜だと完全犯罪ですね。
 作者には「2番バッター最強論」という持論がありまして、一番出来の良いと思う作品を2番目に置く。次に出来の良い作品を巻頭に(掴みですからね)。そして4番目を最後に置くそうです。これを当て嵌めるとそれぞれ「趣味を持つ女」「冷蔵庫より愛をこめて」「恐怖の研究」となるのですが、表題作がそこまでのものとは思いません。作者目線の3番目がどれか考えるのも一興ではないでしょうか。全体に打率は高めです。

No.1 8点 蟷螂の斧
(2012/04/29 18:55登録)
書評200冊目は著者の処女短編集(18話)です。当時007「ロシアより愛をこめて」をもじった題名に引かれ拝読。その後同著者にハマりかなりの冊数を読みました。今回再読。ブラック・ユーモア(奇妙な味)の世界です。「冷蔵庫より愛をこめて」・・精神病院を退院してみると、妻に愛人がいる様子。彼は貸し冷蔵庫業を思いつく。「趣味を持つ女」・・近所で葬式があるたびに女が現れる。どうも趣味らしい。「あやかしの樹」・・種を育てると女性の形をした樹となるという。そのためにはあることをしなければならない。~この作品がエロティックで一番好みで、オチは思わずニヤリとしてしまいます。印象に残っている1冊です。

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