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ミステリの祭典

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予告された殺人の記録

作家 高原伸安
出版日1991年09月
平均点5.33点
書評数3人

No.3 5点 nukkam
(2022/04/20 09:54登録)
(ネタバレなしです) 初めて読んだミステリーがアガサ・クリスティーの「アクロイド殺人事件」(1926年)という高原伸安(1957年生まれ)によってこれを超えることを目論んで1991年に発表されたデビュー作の本格派推理小説です。人並由真さんがご講評で作者による「あとがき」でのネタバレに要注意と警告して下さっていますが、この「あとがき」がないと最終章に当たる33章は一体何なのか悩む読者は私だけではないと思います。私はこの種の仕掛けのもっとシンプルなパターンの先行作品(「あとがき」で紹介されている作品は読んでませんが)でもあまり理解できていなかったのですけど。またこの仕掛けを成立させるためのトリックは早い段階から結構丁寧に紹介されていますが、それでも頭の固い私には実現可能なのか疑問が拭えませんでした。1章のミステリー談話で語られる「読者は定義と一緒で受け入れるしかない」に納得できる読者なら大丈夫でしょうけど。またタイトルがガブリエル・ガルシア=マルケス(1928-2014)の「予告された殺人の記録 」(1981年)(私は未読です)に由来する記述が32章にありますが、殺人予告のない本書のプロットでこのタイトルはぴんと来ませんでした。いずれにしろ相当数のミステリーを読み込んだ読者向けの作品だと思います。

No.2 6点 人並由真
(2019/05/12 17:34登録)
(ネタバレなし)
 「私」こと若手心理学者の平田一郎は、NYの美術館で出会った23歳の娘・間宮由美と惹かれ合う。平田は自宅があるロサンジェルスに由美を連れて帰り、友人たちに彼女を紹介した。だがそれと前後して、平田に何か情報を託しかけた友人の私立探偵J・B・オコーネルが強盗事件に巻き込まれて命を落とし、さらにそのオコーネルの相棒の探偵ロバート・ボウイも何者かに毒殺される。二つの悲劇に衝撃を受ける平田だが、彼の周辺ではさらなる怪死事件が幕を開けようとしていた……。
 
 「『アクロイド』を越えることに挑戦した」と表紙の折り返しで声を掲げ、さらにあとがきでは<海外の某・技巧派長編ミステリに対抗した>と豪語する新本格ミステリ。どんなものが来るかと楽しみにしていたが、良くも悪くも「ああ、その手のパターンか」ではあった。もしかすると作者は、本書以前の先行作のアレもアッチも、読んでいないかもしれない。ただし以前からあるくだんの大ネタに<中略>というアイデアを加えたところは、ひとつの創意とはいえるだろう。まあミステリファンとして、話のタネに読んでおくのはいいと思う。
 なお密室については、もうちょっとうまく面白そうに演出してほしかった。作者にとってはソコが勝負所じゃないという姿勢は見え見えにせよ。

【ネタバレ警告注意報】
・本書の27頁で『薔薇の名前』の大仕掛け? をバラされてしまった。評者はまだ未読なので腹立つ。
・あとがきも先に読まないように。本書のネタを大割りで、ミステリファンの中にはあとがきから読む人もいるという認識が作者にはないらしい。評者はそっちの方は回避できました。

No.1 5点 蟷螂の斧
(2012/04/06 15:50登録)
本格ミステリ・クロニクル300に掲載されており拝読。裏表紙より「ダイイングメッセージは華麗なカトレアの花。ロスの高級住宅街で起こった殺人事件は、密室で自殺した男の犯行なのか。事件に巻きこまれた”私”の推理行は、ありうるべからざる犯人の名前を示す。ミステリー最後の放れ業に挑戦した驚天動地の大異色作。」クリスティの「アクロイド殺人事件」を超える作品を目標としたとのことですが、意欲は買いますが結果は???でした。馬鹿馬鹿しさでは記憶に残るでしょう。この手の作品は、未読ですが2,3冊あるようです。

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