蟷螂の斧さんの登録情報 | |
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平均点:6.10点 | 書評数:1696件 |
No.576 | 5点 | 覆面作家 折原一 |
(2014/03/20 19:12登録) 作中作と現実が徐々に重なっていく様は不思議な気持ちになります。この試み(時間軸)は評価したいと思いますが、真相での「いつものやられた感」はあまりありませんでした。 |
No.575 | 8点 | 帰去来殺人事件 山田風太郎 |
(2014/03/18 10:26登録) 出版芸術社(1996年版)で拝読。表題作+7短編集。『名探偵篇「十三角関係」』(光文社)は左記+十三角関係ですが、2、3版は表題作が削除されているとのことで、別枠で作品名を追加させていただきました。表題作については、動機、犯人像もさることながら、特にアリバイトリックが秀逸であり、中編ではもったいない気がしました。長編だったら最高点かもという感じです。このトリックで、大昔のテレビドラマ「泣いてたまるか」(渥美清、左幸子主演~雪の降る街に~)を思い出しました。ただし、こちらは感動物語です。 |
No.574 | 6点 | 大はずれ殺人事件 クレイグ・ライス |
(2014/03/16 19:29登録) 裏表紙より『ジェークにとって、それはこよなく愉しい夢見心地の宵だった。以前から恋こがれていたヘレンとやっと結婚できたのだから。ところが、そのパーティの席上、シカゴ社交界のナンバー・ワン、モーナ・マクレーンが`「絶対つかまらない方法で人を殺してみせる」と公言したのである。よせばいいのにジェークはその賭けにのった。なにしろ、彼女が失敗したらナイト・クラブがそっくり手に入るのだ! その翌日、群衆の中で一人の男が殺された……。そもそもはたして、これはモーナ・マクレーンの仕組んだ犯罪なのか? 弁護士マローンとジェーク、ヘレンのトリオが織りなす第一級のユーモア本格ミステリ。 アメリカンユーモアはどうもピンときません。解説によると抱腹絶倒しない人は変な人らしい(苦笑)。ただし、時代の変化がユーモアの変化をもたらしているかもとはありますが・・・。内容の方は動機探しで楽しめました。ラストの会話が、題名、続編を暗示しておりセンスがいいと感じました。 |
No.573 | 5点 | 猫柳十一弦の失敗 北山猛邦 |
(2014/03/15 18:44登録) 裏表紙より~『成人するまでに嫁がねば一族を追放する―山に閉ざされた村にある名家・後鑑家のお嬢様に脅迫状が届いた。差出人は戦国時代の姫!?彼女の20歳の誕生日が迫る中、相談を受けた探偵助手学部の君橋と月々が超サプライズな方法で完全解決…したはずなのに、村に残る伝説を調べていた彼らのゼミ教官である女探偵・猫柳十一弦は惨劇が起きると推理。事件を止めるべく村へと急いだ。』 金田一の逆バージョンで、シリーズ1作目は新鮮な感じを受けましたが、2作目となると、どうなのかな?といった印象です。ライト風なので、おどろおどろしさはありません。猫柳十一弦の恋心の方が前面に出ているように感じました。1作目のように、もう少し控えめにした方が好みだったのですが・・・。 |
No.572 | 7点 | アリアドネの弾丸 海堂尊 |
(2014/03/13 22:38登録) 前半は官僚小説のようです。後半はタイムリミット型エンターテイメント+本格で楽しめました。ロジカルで犯人を追いつめる場面は結構迫力がありました。皮肉で辛辣な会話がテンポよく、ニヤニヤしながら読むことができました。 |
No.571 | 7点 | 名探偵篇「十三角関係」 山田風太郎 |
(2014/03/11 16:43登録) 十三角関係(廣済堂文庫)~短編集掲載なし~にて。『妓楼「恋ぐるま」の女主人、車戸旗江の死体が発見された。死後首と四肢を切断され、それらが店の看板に磔られた姿で。だが彼女の殺害には二重三重の不可能性が重なっていた。死体発見直前まで何人もの客が訪れ、どの客も彼女を殺害し死体を切断するだけの時間がなかったこと、そして調べれば調べるほど彼女が誰からも慕われ、殺害される動機が見当たらないこと……。』 意外な真相には驚きました。探偵役・茨木歓喜(酒好きの医者)が魅力的です。ユーモアセンス(「探偵小説はいろいろと約束事があって・・・」と言わしめたり、嘘倶楽部(嘘をつかなければならない規則)へ容疑者・証人を連れてゆき発言させるなど)もあります。多人数の証言がありますが、各人の動向には不自然な点はあるものの、発言内容自体に伏線らしきものがなかったのでは?という点が、少し引っかかりました。 |
No.570 | 6点 | 猫柳十一弦の後悔 北山猛邦 |
(2014/03/10 13:06登録) 「アリス・ミラー」「アルファベット」は期待はずれでしたが、本作はライト風で楽しめました。クローズド・サークルものが好みなこともありますが・・・。孤島ものでは、探偵役が何もできないうちに、次々と殺人が起こってしまうものがほとんどですが、本作はそれを未然に防ごうとするところに新鮮さを感じました。探偵・猫柳十一弦のキャラクターも一風変わっており魅力的でした。「さっきのって・・・・・助手としての答えですか?」「そうですよ」「そうですか」こういう会話って結構好きなんです(笑)。 |
No.569 | 6点 | 翼とざして 山田正紀 |
(2014/03/09 09:29登録) 裏表紙より~各国が領有権を主張している南洋の島、海鳥諸島。その中のひとつ、鳥迷島に、右翼青年のグループ『日本青年魁別動隊』が上陸した。しかし、上陸早々、仲間のひとりが断崖から突き落とされた!わたしは、わたしが突き落とすのを見ていた…。グループの人間が次々と惨劇遭う。仕掛けているのは、わたしなのだろうか。わたしも、殺されるのだろうか。~著者のミステリーとの出会いは「僧正殺人事件」「Yの悲劇」「新車の中の女」三冊とのこと。「新車の中の女」のアイデンティティの揺らぎをモチーフにした作品です。60年代後半から70年代にかかる物語で、「東京流れ者」「ベンチャーズ(キャラバン)」「三島由紀夫」「007(ドクター・ノオ)」「太陽がいっぱい(アラン・ドロン)」「夕日が泣いている(スパイダーズ)」など青春時代を思い起こさせる言葉が出てきました。著者とほぼ同年代なので懐かしい(笑)。サスペンス色の強い作品ですが、幻想(揺らぎ)が回収されてゆく様は読みごたえがありました。この点は本格ものを意識していると思いますが、ややご都合主義といわれても仕方ないところもあります。しかし、「揺らぎ」の要因は初物と思われ評価したいと思います。挿入されている寓話「蠍とカワウソ」(蠍はこうするように生まれついている)→(わたしは、誰よりも愛しているのですから・・・)が印象に残ります。 |
No.568 | 6点 | 春から夏、やがて冬 歌野晶午 |
(2014/03/07 12:39登録) 救いようのない残酷な物語でした。ミステリー要素は薄いが、題名は秀逸。 |
No.567 | 7点 | 鏡は横にひび割れて アガサ・クリスティー |
(2014/03/05 14:27登録) マープルものの最高傑作との評が多いので拝読。女性心理がうまく描かれたホワイダニットものですね。伏線はかなりあるのですが、その先(真相)までたどり着きませんでした。著者72歳の時の作品とのことで感心しました(老齢の遊び心も描かれています)。 |
No.566 | 7点 | 切り裂きジャックの告白 中山七里 |
(2014/03/02 20:11登録) ~東京・深川警察署の目の前で、臓器をすべてくり抜かれた若い女性の無残な死体が発見される。戸惑う捜査本部を嘲笑うかのように、「ジャック」と名乗る犯人からテレビ局に声明文が送りつけられた。~ 臓器提供の問題を扱った医療ミステリーです。医療倫理観に関し、僧侶と医学教授との討論は考えさせられるところが多かった。といっても「カエル男」と同様なサイコ系ミステリーでエンタメに徹しており楽しめました。 |
No.565 | 6点 | マスカレード・ホテル 東野圭吾 |
(2014/03/01 18:30登録) 舞台設定や犯罪構造はユニークであると思います。しかし、読後「しっくり感」がありませんでした。犯罪計画と犯人像が一致しない点か・・・。警察論理とホテル側論理の対立は楽しめましたが、サスペンスの盛り上がり、恋愛感情、刑事の捜査状況がやや希薄(中途半端)なように思えます。 |
No.564 | 7点 | 長靴をはいた犬 神性探偵・佐伯神一郎 山田正紀 |
(2014/02/28 14:32登録) 著者自薦のうちの1冊。読後のすっきり感(証拠や論理)を求めるミステリーではないと思います。変格ミステリーというのでしょうか?。殺人犯人と思われる者(男)は釈放あるいは死亡してしまうので、明確な証拠が提示されないまま、あやふやな状態となります。そして、聖女と呼ばれている女性を、探偵役は神の声で「あなたが犯人だ」といい、読者は更に?となってしまいます。犬神伝説を絡ませながら、人間の精神(深層)に迫ってゆく独特の雰囲気や舞台設定は楽しめます。聖女が過去に暴行を受け、それを助けようとした夫が殺害されるという事件の真相(動機)も明らかになり、ラストの推理はインパクトがありました。(ただし、有名な前例がありますが) |
No.563 | 6点 | 恍惚病棟 山田正紀 |
(2014/02/26 14:44登録) 著者自薦のうちの1冊。認知症の患者を収容する病院での事件を扱った異色ミステリー。事件の真相自体はそれほどでもなかった。しかし、氏がこの手のトリックを使うとは思ってもいなかったので、そちらの方が驚きでした。完全に騙されました。ラストのオチも微笑ましい。 |
No.562 | 5点 | 蜃気楼・13の殺人 山田正紀 |
(2014/02/25 21:20登録) 村おこしのマラソン大会で、13人が消失。その後、木に釣らされた死体が発見されたり、トラクターが空を飛んできたとしか思えないような事件が発生。これらは150年前の古文書に記載されていることと類似していた。さて、裏にはリゾート開発がからんでいるのか?といった内容。探偵役がいて、いないようなところが狙いであるかのようですが・・・。そのことで、ややピントがぼやけてしまったように思えます。 |
No.561 | 9点 | 女囮捜査官 触姦 山田正紀 |
(2014/02/24 09:12登録) 著者が自薦するシリーズの第1作目。最終話(シリーズ5味覚)のインパクト(謀略)とは違う本格ミステリー的な衝撃を受けました。犯人像は秀逸です。サイコ系、本格系が融合されて読みごたえは十分。女おとり捜査官の本質的なところがよく描かれていたと思います。ちなみにシリーズのランクは、1.触覚(9)>2.視覚(8)>3.聴覚(7)>5.味覚(7)>4.臭覚(5)でした。バラエティに富んだエンターテイメント系シリーズで楽しめました。氏の作品は本シリーズ以外、2冊のみでした。SFものが専門?とのイメージがあったので敬遠していたのですが、これから徐々に読み続けようと思います。 |
No.560 | 5点 | 新車の中の女 セバスチアン・ジャプリゾ |
(2014/02/22 22:19登録) 山田正紀氏が影響を受けた1冊ということで拝読。読後は、島荘氏の「高山殺人行」も本作をヒントにしているなあと思いました。主人公ダニー(タイピスト嬢)は社長が留守の間に、社長の車を拝借し旅に出かける。行く先々で昨日見かけたといわれ始める。自分は昨日パリにいたはずなのに・・・。そしてトランクの中に死体を発見する。記憶喪失、二重人格、または誰かの策略か?といった感じの展開で、彼女の心理を中心に描かれています。原文または翻訳のせいかわかりませんが、読みにくい文章でした。 |
No.559 | 5点 | まほろ市の殺人 秋 麻耶雄嵩 |
(2014/02/20 15:39登録) 「神様ゲーム」(ミステリーランド)と同様、著者らしい終わり方なのでしょう。本格部分は、サブメイン事件で若干味わえますが、メイン事件(サイコ系?)の取り扱いが中途半端で、オチだけを狙ったようにしか感じられませんでした。中編という縛りがあるので致し方ないのか?。動機の内容にはあまりこだわらない方ですが、なにも触れられていない点は納得性に欠けると思います。 |
No.558 | 5点 | 殺意は必ず三度ある 東川篤哉 |
(2014/02/19 13:04登録) (ネタバレあり) アリバイトリックのある動作は秀逸です。しかし、好みでない点が1つあり、残念ながらこの評価。ユーモア(ギャグ)については、天藤真氏を読んだ後なので、比較してしまい、ほとんど笑えませんでした。大人?のユーモアと高校生のギャグを比較してはいけませんが・・・(苦笑)。見立て殺人、アリバイトリックは高評価です。 |
No.557 | 7点 | 皆殺しパーティ 天藤真 |
(2014/02/18 08:52登録) あとがきに、「この図太く、あくどく、そして純粋な悪党たちに、ほとんど愛情を感じていたことである。」とあります。読者にもそのことが伝わってきます。描かれていることはドロドロで醜いものですが、ユーモアでオブラートし、爽快感さえ感じさせるところに、著者のセンス(最大の特徴)があると思います。性豪の主人公が語り部になっており、すべて自分の都合のいいように書いているところも面白い。なお主人公の家族からの手紙を載せることで、そのことは相殺させていますが・・・。「アクロイド」を連想させるところ(刑事の推理)もうまいと思いましたし、複雑な家族関係をうまく料理していました。しかし、秘書・早苗の性感覚は?(笑)。 |