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ミステリの祭典

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二流小説家

作家 デイヴィッド・ゴードン
出版日2011年03月
平均点6.88点
書評数8人

No.8 7点 蟷螂の斧
(2014/05/22 11:06登録)
連続殺人犯の信者がいるという点では、「デス・コレクターズ」と背景が似ています。アメリカ的と言えるのかもしれません。日本ではこの手の作品は難しいかも?。エログロ描写もかなりありますが、主人公ハリーの人間的魅力?で全体の雰囲気を和らげています。サイコサスペンスですが、ミステリー要素(フーダニット、サプライズ)もあり、エンタメ系作品として楽しめました。

No.7 7点 mini
(2013/06/05 09:56登録)
本日5日に早川書房ポケミスにてデイヴィッド・ゴードン「ミステリガール」が刊行される、言うまでも無く一昨年のこのミス1位「二流小説家」に続く作者の第2作である
ただなぁ、「二流小説家」の文庫化のスピード考えると、「ミステリガール」もこのミス順位と売行きによってはこれも1年を待たずに文庫化の可能性も有るんだよなぁ、いつ買うか?今でしょ!とは必ずしも言えないよね、文庫化待ちも有るでしょ!

「二流小説家」はたしかにデビュー作としては達者な小説で、もうこの時点で一流小説家の仲間入りしている
一方で不満点も2つほど有るので言及したい
1つ目だが、まずそもそもこの小説がジャンルミックスなのかどうかという点から
実は話の本筋自体はそれほどジャンルがごちゃ混ぜってわけじゃなくて、”本格風サスペンス”というジャンルで割とはっきりしていると思う
ジャンルミックス型と言われがちな所以は話の本筋よりも、主人公が複数のペンネームを持つゴーストライター風なので、様々なジャンルの作中作が挿入されている点にあると思う
さて問題はこの作中作なのだが、それ自体もまた面白いんだけど、期待したほど話の本筋とは関わってこないんだよなぁ、悪く言えば単なる参考資料でしかない
2つ目は、終盤にちょっとしたサプライズが用意されているんだけど、これが唐突感有るんだよねえ、特にいくら○○だからってそこまでやるか的な不自然さをどうしても感じてしまう

と言う訳で不満点も無くは無いが、将来性も強く感じさせるので2作目以降にも期待したい作家だ
ところで「二流小説家」は、主演は上川隆也、あの死刑囚役は武田真治で、世界に先駆けて日本で初映画化され今月にも公開予定だ

No.6 7点
(2013/05/31 10:49登録)
たまにはタイムリーなネタを、と思って手にとってみた。われながら出来すぎなタイミングかと思ったが、ちょっと早かったかな。

デビュー作が傑作という典型例で、魅力はたっぷりとあります。
まずは軽妙な一人称文体。そして、それを通じての登場人物の描写。主人公のハリー・ブロックのたよりなさと、しっかり者の少女のクレアとの組み合わせも面白く、二人のやりとりは楽しめます。主人公の設定の仕方も好みに合っています。
事件が起こるのが中盤あたりとやや遅く、それまでが冗長という感があるも、その中盤までに、背景や人物を適格に描写して適度に惹きつけてくれています。その技量はなかなかのものです。
残虐で猟奇的な殺人描写や過激な風俗描写には抵抗のある読者もいるかもしれませんが、文章、文体についてはむしろ親しみが感じられ、国内受け、万人受けしそうに思います。

連載物作家のハリーは、収監中の殺人鬼ダリアンから告白記執筆の依頼を受け、その取材中に殺人現場に出くわし、嫌疑をかけられることとなる・・・
この巻き込まれ方は理想的で、その後の展開を大いに期待してしまいます。中盤以降はサスペンスフルで見どころ満載です。ただ、最後の謎解きと背景の開示はミステリー的に締まりがないというか、スマートさに欠けていました。

中途は十分すぎるほど楽しめたがラストはもう一押しで余韻はほどほど、といった感想ですね。まあ、今後が楽しみなミステリー作家ということにはちがいないでしょう。

No.5 8点 あびびび
(2013/05/11 01:22登録)
ハリー・ブロックは二流小説家。ゆえにほとんど偽名を使い、ポルノ、ヴァンパイヤ小説などのマニアに提供してきたが、収監されている殺人鬼が読者の一人で、真実を明かすから告白記を書いて欲しいと手紙が来る…。

その殺人鬼には多数の女性ファンからファンレターが来ており、告白する条件として、その女性たちを訪ねて欲しいと言う。ここから一気にサスペンスとなるわけだが、この二流小説家がいい味を出して、意外な犯人?驚きはしなかったが補足的などんでん返しもある。

No.4 7点 HORNET
(2012/10/10 13:19登録)
 連続殺人鬼ダリアン・クレイの塀の中からの依頼を受け、自伝的小説を書くことになった主人公。ダリアンのもとにファンレターを送ってくる幾名かの女性を取材して回るが、彼女たちが猟奇的な殺され方で殺される。その事件及び、過去のダリアンが犯したとされる連続殺人の真相解明に主人公とその仲間たちが乗り出す。
 前半は主人公ハリー・ブロックの遍歴や現在の状況が描かれ、やや冗長気味。だが、SFやホラーまで様々なジャンルを書き分けるハリーの作品が断片的に挿入され、退屈はしない。取材に行ったダリアンファンの女性が殺害された所から物語は急展開。ラストはミステリ要素十分のスリリングで意外な謎解きが行われる。
 多様なジャンルに渡るハリーの作品、ハリーを取り囲む人々の人間模様、猟奇的で過激な描写と、楽しむ要素が満載で、ミステリとしてもクオリティーの高いものに仕上がっていると思う。

No.3 5点 nukkam
(2012/03/02 21:13登録)
(ネタバレなしです) 米国のデイヴィド・ゴードンはコピーライター、スクリーンライター、ゴーストライター(!!)など執筆に関わる様々な職業を経験しています。ミステリー作家としては2010年発表の本書でデビューしますが、複雑なプロットながら文章はさすがに手慣れた感があります。ジャンル・ミックス型のミステリーで、この種の作品は大概が2種類かせいぜい3種類のミックスですけど本書は作中作として織り込まれている小説断片も含めれば本格派推理小説、SF小説、ホラー小説、冒険小説、サイコサスペンス、ハードボイルドなど実に様々な要素が楽しめます(案外とSF小説の部分が面白い)。エログロあり、ユーモアあり、悲劇調ありと実に多彩、それでいて詰め込み感はなく意外と読みやすいですし、文章が洗練されているのでエログロが過激でも後味は悪くありません。もっとも特定ジャンルにしばられないことは一方でとらえどころのない作品という印象も残しており、私のように本格派推理小説ばかり選ぶようにしている偏愛型読者だと「読者への挑戦状」的メッセージがあって主人公による推理場面があっても(謎解き以外の要素が非常に多いため)謎解きをたっぷり堪能できたという読後感がありませんでした。

No.2 7点 touko
(2012/01/12 22:21登録)
ポルノ仕立てのスペースオペラ、耽美なバンパイア小説、お約束満載のハードボイルド等のバラエティに富んだ作中作のあえてのB級っぷり、メタ設定、ジャンル文学愛好論、文学青年の成れの果ての冴えない中年ゴーストライターの愚痴、スーパーお嬢様でロリ生意気な女子高生、エログロ猟奇な殺人犯の告白等、日本で書かれていたら、よくある、ちょっとひねった青臭い文学臭のするライトノベルもどきにしかならないようなオタク臭い内容なのに、不思議とごく普通のエンタメとして読めてしまいます。

一応、読者への挑戦やどんでん返しもありますが、トリック部分はたいしたことありません。

デビュー作だけあって、詰め込みすぎな感はあるものの、バランスのいい、万人向けのエンタメサイコサスペンスなんじゃないかな。
(終盤に出てくる猟奇部分はかなりグロく、人を選ぶかもしれませんが、そこは飛ばして読んでも差し支えなさそうなので)。

No.1 7点 kanamori
(2011/05/04 15:50登録)
冴えない中年作家の「ぼく」ことハリー・ブロックは、死刑囚として収監中の連続殺人鬼ダリアンから告白本の執筆依頼を受けるが、ダリアンの提示したある条件を履行するための取材中に、過去の連続殺人と同じ手口の惨殺死体に遭遇する----。

このように粗筋を書くと通常のサイコ・サスペンスのようですが、本書は、真の殺人鬼の正体は誰かという謎解き以外にも読みどころが多く、むしろ軽妙な文体で語られるプラスアルファのエピソード部分が楽しめる。
なによりも主人公ハリーを始め登場人物の造形が秀逸。複数のペンネームを使って、ハードボイルド、SF、ホラーからポルノ小説までのジャンル小説を書いて食いつなぐハリーの悲哀や、副業の家庭教師の生徒だった女子高生がいつのまにかハリーのビジネスパートナーになり尻を叩く役回りになる展開など、読んでいて思わず笑ってしまう。

ミステリの骨格としては弱いところもありますが、”ポケミスの新時代を担う技巧派作家”という紹介文に偽りなし。久しぶりに次作を期待したい新人作家の登場だ。

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