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ミステリの祭典

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空白の殺意
「高校野球殺人事件」改題

作家 中町信
出版日1980年12月
平均点5.82点
書評数11人

No.11 6点 三枝
(2023/11/14 21:59登録)
※ややネタバレ

プロローグの仕掛けは読み返してもやや違和感が強く、綺麗に決まっているとは言い難い気がします。件の人物が得た情報とリアクションを考えると、手に持った時点で気づくと思うのですが…。
他方、日記の仕掛けは感心させられました。小粒ながらうまいとおもいます。

シナリオはいかにも2時間ドラマ風味でやたらと性的にだらしない人が登場したり、浮気が物語のキーになったりで昭和を感じました。

No.10 7点 斎藤警部
(2017/08/19 08:43登録)
薄さが旨い、霞のような後味...と思えば拈(ひね)りの内出血で〆。 夏の純米酒なら、最後のワンセンテンスは無いが良いが、本作は酒ではなく長篇ミステリ小説であるから、これくらい僅かなエグ味を残されるのも悪くない。 ゴールでもラストパスでもなく憎いスルーで決めてくれた感触。うむ、こりゃ作者会心の笑みも納得の綺麗な立ち去り姿。 おっと、結末だけでなく、微かにイヤミスの薫り漂う序盤から、趣きあるアリバイトリックに翻弄色濃厚な人間関係を廻って興味津々の中盤~終盤へと、ちょいとトボケた顔して、読者牽引の連投持続は抜群なモノがあるのでございます。 

折りしも高校野球の絡む物語ですが、今やってる夏のじゃなく春のセンバツ(しかも秋の地区大会)。野球シーンはテレビ映像でチョコっとしか出て来ません。(生前の作者は大のジャイアンツファンとのこと)

ところで、英題’THE HOLLOW FUGUE(空虚なるフーガ)’は穿ち過ぎ。そんな嫌らしさで本作は勝負してませんよね。

No.9 7点 りゅうぐうのつかい
(2016/12/12 17:38登録)
作者あとがきで、「『皇帝のかぎ煙草入れ』のような作品」と書かれていたので、共通項を探しながら読んだが、心理的なトリックが用いられていることを指しているのだろうか。「皇帝のかぎ煙草入れ」で使われている、あのトリックが形を変えて使われているのかと思ったが、そうでもなく、騙し方としては叙述系と感じた。トリックよりも、第9章で百世が気付いたことの方が類似性があるように思った。
推理の鍵となる重要な事実が後の方で明らかとなるため、読者が推理する余地は少ないが、犯人のアリバイトリックの手法、冒頭部分の記述における錯誤、絵里子の遺書と日記帳に関する真相、伏線の忍ばせ方など、数々のアイデアが盛り込まれていて、ミステリーとして、充実した内容を持っていると感じた。ただし、真相の衝撃度は少なく、あっさりとしているので、あまり騙された感じはしない。
選手や監督の不祥事ならいざ知らず、後援会の会長の不祥事ぐらいで謹慎処分になったりするだろうかと疑問に思った。

(ネタバレ)
「皇帝のかぎ煙草入れ」との類似点として、犯人が本来知らないはずのこと(日記帳の赤いカバーのこと)を証言し、発覚したことが挙げられると思う。

No.8 5点 nukkam
(2016/07/07 13:23登録)
(ネタバレなしです) 1980年に「高校野球殺人事件」というライト・ミステリーみたいなタイトルで出版された著者5作目の作品です。ジョン・ディクスン・カーの「皇帝のかぎ煙草入れ」(1942年)に触発されて書いた本格派推理小説で、トリックの大胆さでは「模倣の殺意」(1971年)の方に軍配が上がりますが技巧にわざとらしさを感じない分、本書の方を支持する読者もいるでしょう(作者自身、本書を1番高く評価していました)。これといった主人公がいないまま物語が進行するプロットですがそれでも読みやすい作品です。

No.7 5点 E-BANKER
(2016/04/29 14:03登録)
1980年に「高校野球殺人事件」のタイトルで刊行されていたものを改題して出された本作。
「模倣の殺意」に始まる「~殺意」シリーズの一冊として読了。
(単なる復刊のはずが・・・うまいこと嵌りましたなぁー)

~高崎市内の川土手で私立高校にかよう女子高生の扼殺死体が発見される。その二日後、今度は同校の女性教師が謎めいた遺書を残して自殺する。そして行方不明だった野球部監督の毒殺死体が発見されるに及んで、俄然事件の背後に甲子園行を目指して熾烈な争いを繰り広げている学校同士の醜い争いがあぶり出されてくる・・・~

うーん。
いわゆる「~殺意」シリーズの中では落ちるかなという印象にはなる。
作者あとがきでも、本作がカーの「皇帝のかぎ煙草入れ」に触発されて書かれたことに触れているけど、全くピンとこなかったというのが本音。

確かに作者らしい凝ったプロットにはなっている。
事件の進展とともに徐々に混迷してくる連続殺人事件が、真の探偵役となる被害者の妹のちょっとした体験から、ドミノ倒しのようにガラガラと崩れていくカタルシス。
「裏側から舞台を見ると、事件の真の構図はこうだった!」っていう奴だ。
アリバイトリックについては後出し感があるけど、よく読んでみると細かく伏線が張られていたのが分かる。
その辺りはさすがということだろう。
(プロット倒れになる危険性もあったと思うが・・・)

動機はなぁー
正直、それでそこまでやるか? という気がしないでもない。
でもそれが親心ということだろう。
シリーズ他作品との比較で評点はこんなもの。
(作者って野球のことはあまり知らなかったんじゃないかな?)

No.6 8点 蟷螂の斧
(2014/05/28 09:46登録)
~大げさではなく、小粒ながら、心理的なだましのトリックをメインに据え、読者を最後の一ページまで引っぱて行く『皇帝のかぎ煙草入れ』のような作品を、私はおこがましくも、無性に書いてみたくなったのである。たまに読者から「自作の中で出来が良く、気に入っている作品は?」と問われることがあるが、私はためらわずに、本作を筆頭に挙げている。~裏表紙より。              心理的トリックがあると書かれていても見事に引っかかりました(笑)。復活版の本サイト評価は「模倣の殺意(新人賞殺人事件)」5.69点(13人)「天啓の殺意(散歩する死者)」7点(9人)本作「空白の殺意(高校野球殺人事件)」5.2点(5人)ですが、私としては筆者の言う通り、本作が一番の出来(プロットも良し、アリバイトリックも良し)と思いました。解説は叙述の折原一氏で、氏が学生(ワセダミステリクラブ)だった1974年、日本にも「この手のミステリ」を書く作家が現れたのかという驚きをもったと記しています。

No.5 5点 ボナンザ
(2014/04/08 01:21登録)
前二作に比べるとインパクトは小さい。

No.4 5点 まさむね
(2013/11/30 22:59登録)
 犯人も何となく想像できますし,展開も地味なのですが,本筋のラインは良く練られていると思います。
 しかし,よくよく考えてみると,様々な登場人物にとって何とも可哀相な話ですなぁ。

No.3 5点 いけお
(2012/11/05 13:03登録)
完成度は高いが、予想はついてしまう。
インパクトが薄い分、予想ではなく推理する余地があればもっとよかった。

No.2 4点 3880403
(2011/04/11 19:00登録)
展開が想像出来てしまう。
猫についても思っていたとおりだった。

No.1 7点 ぷねうま
(2008/01/28 12:04登録)
まさに日本版『皇帝のかぎ煙草いれ』。
本家に勝るとも劣らないギミックとトリック、アリバイ崩しに奮闘する主人公など地味ながら読み応えはすごい。
犯人は比較的早い段階で想像がついてしまうが、そこから飽きさせずに読ませる演出は素晴らしい。

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