home

ミステリの祭典

login
襲名犯

作家 竹吉優輔
出版日2013年08月
平均点4.80点
書評数5人

No.5 5点 YMY
(2019/08/31 20:21登録)
茨城県栄馬市で、7人が次々と殺害された。ブージャムと呼ばれた犯人は逮捕されたのち、美しいその風貌により多くの熱狂的信奉者を生んだ。そして14年後に男の死刑が執行されてから、ブージャムを名乗る犯人による同様の殺人が起こった。
物語は、市立図書館に勤務する南條仁を中心に展開する。仁は、かつての事件における最後の被害者・南條信の双子の弟だった。仁は図書館利用者からの依頼に応えて資料集めや情報調査をするレファレンスサービスの仕事をしているせいで、あらためて事件に深く関わることとなった。
衝撃的な猟奇殺人の真相と新たな犯人捜しの妙もさることながら、主人公の日常、交友関係、過去と現在などが細やかに描かれており、その展開を追うだけでスリリングな面白さが味わえる。

No.4 6点 名探偵ジャパン
(2019/01/16 13:56登録)
地の文の文体や性格描写、過去の体験などから、主人公は相当なハードボイルド系探偵をイメージしましたが、実際は図書館司書で、迷子になった幼い子供に絵本の読み聞かせまでしてあげるという、このギャップに萌えました(笑)
サスペンス的に盛り上がるストーリー展開でしたが、犯人の犯行動機は取って付けた感ありありで意味不明。「それをやることで誰がどう得をするのか」と問い詰めたいこところですが、「だってサイコパスなんだもん」と返されて終わりでしょう。ミステリでなくサスペンスなので、こういう逃げも許されるので別にいいのですが。
読者にはほぼ推理不可能ですが、一応、意外な犯人や叙述トリックのミステリ的要素もあります。
もっと短くまとめられれば、疾走感のある傑作たり得たかもしれません。惜しいです。

No.3 5点 蟷螂の斧
(2014/06/07 22:41登録)
第59回江戸川乱歩賞受賞作。「デス・コレクターズ」「二流小説家」で連続殺人者の信奉者が描かれており、日本ではこの手の作品は難しいのでは?と思っていたら本作がありました(笑)。
                           
「BOOK」データベースより『十四年前、ある地方都市で起きた連続猟奇殺人事件。逮捕後、その美貌と語り口から、男には熱狂的な信奉者も生まれたが、やがて死刑が執行される。彼の「死」は始まりにすぎななかった。そしていま、第二の事件が起きる―。』                                

著者の意気込みが感じられる作品で、ストーリーは面白いと思います。しかし、冗長な部分があること、回想が読みにくいところが難点でした。動機の異常性を読者に納得させる描き方や叙述テクニックを磨けばという感じがしました。

No.2 5点 虫暮部
(2014/05/07 10:59登録)
前半は面白かったが、着地点があまりピンと来なかった。
 あと、「信」と「仁」という双子の名前。日本語の感覚だと「シン」が主で「ジン」が従、というイメージにならないだろうか(私の個人的な言語感覚?)。双子にそういう対等ではない名付けをする親、というのが納得出来なかった。というかふたりの出生にまで遡る何らかの伏線かと深読みしてしまった。
 図書館の内幕をサイド・ストーリーにするのはズルい(褒め言葉)。読書家なら食い付かずにはいられないだろ。

No.1 3点 mic
(2013/09/08 13:29登録)
 現実味に欠けるというのが読後の印象。欠けても小説として面白ければ文句はないのだが、そうではなかった。犯人の動機にいかんせん説得力がないし、大量殺人もしらけ気味。その方法も読んでいて至極後味が悪くグロテスク。作者が司書だけあって図書館の描写は堂に入っていたが、こちらも職業説明書を読むつもりではないので、いささか過剰に感じた。底の浅い青春感傷物語といったところか。    

5レコード表示中です 書評