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ミステリの祭典

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蟷螂の斧さんの登録情報
平均点:6.09点 書評数:1660件

プロフィール| 書評

No.580 6点 フェルメールの闇
田中純
(2014/03/27 18:32登録)
イギリスの古城でフェルメールの「自画像」が発見される。鑑定結果は真画と思われた。難病に侵され、フェルメールを模写することだけが生きがいとなっている男がいた。その妻は「模写美術館」を夫のために建設しようとし、発見された「自画像」をその美術館の目玉としたいと考える。真画~模写~贋作~盗難品が絡み合い物語は進行します。フェルメールに関する薀蓄や天才的贋作画家メーヘレンの逸話など楽しめました。他の書評では、後半急いでいる感じでミステリー的には?が多いような気がしますが、私的には楽しめました。


No.579 7点 ブラッド・ブラザー
ジャック・カーリイ
(2014/03/26 09:11登録)
連続殺人鬼の殺害方法が強烈ですね。映像化は無理かも?。連続殺人犯の兄を持つ弟(刑事)の心理がよく伝わってきました。登場人物の因果関係が明らかにされるのですが、この辺の構築はうまいと思います。サスペンスフルでスピード感もあり一気読みできました。メッセージの翻訳で「わたしに必要なのは重大な・・・」より「わたしに必要なのはシリアス・・・」の方がよかったような気がします。


No.578 7点 古い骨
アーロン・エルキンズ
(2014/03/24 13:59登録)
裏表紙より・・・『レジスタンスの英雄だった老富豪が、北フランスの館に親族を呼び寄せた矢先に不慮の死を遂げた。数日後、館の地下室から、第二次大戦中のものと思われる人骨の一部が発見される。フランスを訪問中だった人類学教授ギデオン・オリヴァーは、警察に依頼され人骨を調べ始めるが、今度は親族の一人が毒殺された!骨を手がかりに謎を解く、スケルトン探偵オリヴァーの名推理。アメリカ探偵作家クラブ賞最優秀長篇賞受賞作。』・・・        不慮の水死は地文では、事故にしか思えない。どこに仕掛けがあるのか興味を惹かれます。そして骨から過去の事件を推理することに、最初は登場する警部と同様に疑問であったのですが、読むうちに段々と納得させられてしまいました(笑)。このような物語をよく思いついたものと感心します。モンサンミッシェルは美しい風景しか想像していなかったのですが、結構荒々しいことがわかりました。そしてル・ムートン・ブランでの食事風景を読んで訪れてみたい気分になりましたね。海岸の塩分の多い牧草で育った子羊は、風味豊かな微妙な味わいが評判とあります(笑)。


No.577 7点 寝台特急「はやぶさ」1/60秒の壁
島田荘司
(2014/03/22 18:49登録)
時刻表を見ないで済むトラベル・ミステリー(非常にありがたい・・・笑)。「なぜ被害者は顔の皮を剝がされたのか?」、「なぜ被害者は推定死亡時刻に寝台特急”はやぶさ”で目撃されたのか?」この2つの魅力的な謎で引っ張ってゆきます。双子?別人?・・・そして解決篇での逆転の発想はお見事!!。解説で綾辻行人氏がトラベル・ミステリーとして”格”が違うと評していますが納得です。


No.576 5点 覆面作家
折原一
(2014/03/20 19:12登録)
作中作と現実が徐々に重なっていく様は不思議な気持ちになります。この試み(時間軸)は評価したいと思いますが、真相での「いつものやられた感」はあまりありませんでした。


No.575 8点 帰去来殺人事件
山田風太郎
(2014/03/18 10:26登録)
出版芸術社(1996年版)で拝読。表題作+7短編集。『名探偵篇「十三角関係」』(光文社)は左記+十三角関係ですが、2、3版は表題作が削除されているとのことで、別枠で作品名を追加させていただきました。表題作については、動機、犯人像もさることながら、特にアリバイトリックが秀逸であり、中編ではもったいない気がしました。長編だったら最高点かもという感じです。このトリックで、大昔のテレビドラマ「泣いてたまるか」(渥美清、左幸子主演~雪の降る街に~)を思い出しました。ただし、こちらは感動物語です。


No.574 6点 大はずれ殺人事件
クレイグ・ライス
(2014/03/16 19:29登録)
裏表紙より『ジェークにとって、それはこよなく愉しい夢見心地の宵だった。以前から恋こがれていたヘレンとやっと結婚できたのだから。ところが、そのパーティの席上、シカゴ社交界のナンバー・ワン、モーナ・マクレーンが`「絶対つかまらない方法で人を殺してみせる」と公言したのである。よせばいいのにジェークはその賭けにのった。なにしろ、彼女が失敗したらナイト・クラブがそっくり手に入るのだ! その翌日、群衆の中で一人の男が殺された……。そもそもはたして、これはモーナ・マクレーンの仕組んだ犯罪なのか? 弁護士マローンとジェーク、ヘレンのトリオが織りなす第一級のユーモア本格ミステリ。       アメリカンユーモアはどうもピンときません。解説によると抱腹絶倒しない人は変な人らしい(苦笑)。ただし、時代の変化がユーモアの変化をもたらしているかもとはありますが・・・。内容の方は動機探しで楽しめました。ラストの会話が、題名、続編を暗示しておりセンスがいいと感じました。


No.573 5点 猫柳十一弦の失敗
北山猛邦
(2014/03/15 18:44登録)
裏表紙より~『成人するまでに嫁がねば一族を追放する―山に閉ざされた村にある名家・後鑑家のお嬢様に脅迫状が届いた。差出人は戦国時代の姫!?彼女の20歳の誕生日が迫る中、相談を受けた探偵助手学部の君橋と月々が超サプライズな方法で完全解決…したはずなのに、村に残る伝説を調べていた彼らのゼミ教官である女探偵・猫柳十一弦は惨劇が起きると推理。事件を止めるべく村へと急いだ。』                           金田一の逆バージョンで、シリーズ1作目は新鮮な感じを受けましたが、2作目となると、どうなのかな?といった印象です。ライト風なので、おどろおどろしさはありません。猫柳十一弦の恋心の方が前面に出ているように感じました。1作目のように、もう少し控えめにした方が好みだったのですが・・・。


No.572 7点 アリアドネの弾丸
海堂尊
(2014/03/13 22:38登録)
前半は官僚小説のようです。後半はタイムリミット型エンターテイメント+本格で楽しめました。ロジカルで犯人を追いつめる場面は結構迫力がありました。皮肉で辛辣な会話がテンポよく、ニヤニヤしながら読むことができました。


No.571 7点 名探偵篇「十三角関係」
山田風太郎
(2014/03/11 16:43登録)
十三角関係(廣済堂文庫)~短編集掲載なし~にて。『妓楼「恋ぐるま」の女主人、車戸旗江の死体が発見された。死後首と四肢を切断され、それらが店の看板に磔られた姿で。だが彼女の殺害には二重三重の不可能性が重なっていた。死体発見直前まで何人もの客が訪れ、どの客も彼女を殺害し死体を切断するだけの時間がなかったこと、そして調べれば調べるほど彼女が誰からも慕われ、殺害される動機が見当たらないこと……。』                     意外な真相には驚きました。探偵役・茨木歓喜(酒好きの医者)が魅力的です。ユーモアセンス(「探偵小説はいろいろと約束事があって・・・」と言わしめたり、嘘倶楽部(嘘をつかなければならない規則)へ容疑者・証人を連れてゆき発言させるなど)もあります。多人数の証言がありますが、各人の動向には不自然な点はあるものの、発言内容自体に伏線らしきものがなかったのでは?という点が、少し引っかかりました。


No.570 6点 猫柳十一弦の後悔
北山猛邦
(2014/03/10 13:06登録)
「アリス・ミラー」「アルファベット」は期待はずれでしたが、本作はライト風で楽しめました。クローズド・サークルものが好みなこともありますが・・・。孤島ものでは、探偵役が何もできないうちに、次々と殺人が起こってしまうものがほとんどですが、本作はそれを未然に防ごうとするところに新鮮さを感じました。探偵・猫柳十一弦のキャラクターも一風変わっており魅力的でした。「さっきのって・・・・・助手としての答えですか?」「そうですよ」「そうですか」こういう会話って結構好きなんです(笑)。


No.569 6点 翼とざして
山田正紀
(2014/03/09 09:29登録)
裏表紙より~各国が領有権を主張している南洋の島、海鳥諸島。その中のひとつ、鳥迷島に、右翼青年のグループ『日本青年魁別動隊』が上陸した。しかし、上陸早々、仲間のひとりが断崖から突き落とされた!わたしは、わたしが突き落とすのを見ていた…。グループの人間が次々と惨劇遭う。仕掛けているのは、わたしなのだろうか。わたしも、殺されるのだろうか。~著者のミステリーとの出会いは「僧正殺人事件」「Yの悲劇」「新車の中の女」三冊とのこと。「新車の中の女」のアイデンティティの揺らぎをモチーフにした作品です。60年代後半から70年代にかかる物語で、「東京流れ者」「ベンチャーズ(キャラバン)」「三島由紀夫」「007(ドクター・ノオ)」「太陽がいっぱい(アラン・ドロン)」「夕日が泣いている(スパイダーズ)」など青春時代を思い起こさせる言葉が出てきました。著者とほぼ同年代なので懐かしい(笑)。サスペンス色の強い作品ですが、幻想(揺らぎ)が回収されてゆく様は読みごたえがありました。この点は本格ものを意識していると思いますが、ややご都合主義といわれても仕方ないところもあります。しかし、「揺らぎ」の要因は初物と思われ評価したいと思います。挿入されている寓話「蠍とカワウソ」(蠍はこうするように生まれついている)→(わたしは、誰よりも愛しているのですから・・・)が印象に残ります。


No.568 6点 春から夏、やがて冬
歌野晶午
(2014/03/07 12:39登録)
救いようのない残酷な物語でした。ミステリー要素は薄いが、題名は秀逸。


No.567 7点 鏡は横にひび割れて
アガサ・クリスティー
(2014/03/05 14:27登録)
マープルものの最高傑作との評が多いので拝読。女性心理がうまく描かれたホワイダニットものですね。伏線はかなりあるのですが、その先(真相)までたどり着きませんでした。著者72歳の時の作品とのことで感心しました(老齢の遊び心も描かれています)。


No.566 7点 切り裂きジャックの告白
中山七里
(2014/03/02 20:11登録)
~東京・深川警察署の目の前で、臓器をすべてくり抜かれた若い女性の無残な死体が発見される。戸惑う捜査本部を嘲笑うかのように、「ジャック」と名乗る犯人からテレビ局に声明文が送りつけられた。~             臓器提供の問題を扱った医療ミステリーです。医療倫理観に関し、僧侶と医学教授との討論は考えさせられるところが多かった。といっても「カエル男」と同様なサイコ系ミステリーでエンタメに徹しており楽しめました。


No.565 6点 マスカレード・ホテル
東野圭吾
(2014/03/01 18:30登録)
舞台設定や犯罪構造はユニークであると思います。しかし、読後「しっくり感」がありませんでした。犯罪計画と犯人像が一致しない点か・・・。警察論理とホテル側論理の対立は楽しめましたが、サスペンスの盛り上がり、恋愛感情、刑事の捜査状況がやや希薄(中途半端)なように思えます。


No.564 7点 長靴をはいた犬 神性探偵・佐伯神一郎
山田正紀
(2014/02/28 14:32登録)
著者自薦のうちの1冊。読後のすっきり感(証拠や論理)を求めるミステリーではないと思います。変格ミステリーというのでしょうか?。殺人犯人と思われる者(男)は釈放あるいは死亡してしまうので、明確な証拠が提示されないまま、あやふやな状態となります。そして、聖女と呼ばれている女性を、探偵役は神の声で「あなたが犯人だ」といい、読者は更に?となってしまいます。犬神伝説を絡ませながら、人間の精神(深層)に迫ってゆく独特の雰囲気や舞台設定は楽しめます。聖女が過去に暴行を受け、それを助けようとした夫が殺害されるという事件の真相(動機)も明らかになり、ラストの推理はインパクトがありました。(ただし、有名な前例がありますが)


No.563 6点 恍惚病棟
山田正紀
(2014/02/26 14:44登録)
著者自薦のうちの1冊。認知症の患者を収容する病院での事件を扱った異色ミステリー。事件の真相自体はそれほどでもなかった。しかし、氏がこの手のトリックを使うとは思ってもいなかったので、そちらの方が驚きでした。完全に騙されました。ラストのオチも微笑ましい。


No.562 5点 蜃気楼・13の殺人
山田正紀
(2014/02/25 21:20登録)
村おこしのマラソン大会で、13人が消失。その後、木に釣らされた死体が発見されたり、トラクターが空を飛んできたとしか思えないような事件が発生。これらは150年前の古文書に記載されていることと類似していた。さて、裏にはリゾート開発がからんでいるのか?といった内容。探偵役がいて、いないようなところが狙いであるかのようですが・・・。そのことで、ややピントがぼやけてしまったように思えます。


No.561 9点 女囮捜査官  触姦
山田正紀
(2014/02/24 09:12登録)
著者が自薦するシリーズの第1作目。最終話(シリーズ5味覚)のインパクト(謀略)とは違う本格ミステリー的な衝撃を受けました。犯人像は秀逸です。サイコ系、本格系が融合されて読みごたえは十分。女おとり捜査官の本質的なところがよく描かれていたと思います。ちなみにシリーズのランクは、1.触覚(9)>2.視覚(8)>3.聴覚(7)>5.味覚(7)>4.臭覚(5)でした。バラエティに富んだエンターテイメント系シリーズで楽しめました。氏の作品は本シリーズ以外、2冊のみでした。SFものが専門?とのイメージがあったので敬遠していたのですが、これから徐々に読み続けようと思います。

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