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ミステリの祭典

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蟷螂の斧さんの登録情報
平均点:6.10点 書評数:1693件

プロフィール| 書評

No.713 5点 眠りの牢獄
浦賀和宏
(2015/02/11 07:18登録)
①突き落とし事件・フーダニットとその動機➁首切りの理由③外部での出来事との関連④地下室に閉じ込められた真の理由は?と盛りだくさんの謎の提示があり、プロットも凝っており高評価です。しかし以下の理由(特に①)で大幅減点。①見せ方が駄目(数例あり)、ほかの表現方法があるのに・・・。まったく面白くない。大きな、かつ有効な伏線を3か所も設定してあったのに非常にもったいない結果。②その動機事体の前例あるも、首切りはお初。ただし、その状況にいたる水道の止まった理由が不明(読み落としか?)③これは見え見えでしたね。④物語を構成する上で欠かせないのですが、やや動機が弱かった(強い動機にすることは可能なのに、これも勿体ない・・・)。ラストはブラックユーモア的で好みでした。


No.712 6点 闇匣
黒田研二
(2015/02/10 07:55登録)
裏表紙より~『すべてが不自然だ。すべてがフィクションに思えてならない。すべてが作り物めいている。しかし・・・。男は、真の闇で満たされた部屋の中、体を縛られ身動きひとつできずにいた。男を尋問するのは、これまで蔑み続けてきた友の声。妹の死、元恋人の死…。真相は誰の胸の中に? 闇が、心の闇を解き明かす!』~

プロット、真相は好みで高評価!。しかし、中編でサラッとしており、深みを感じられなかったことが残念な点です。短編をほとんど読まない理由と同じですね。岡嶋二人氏「そして扉が閉ざされた」有栖川有栖氏「月光ゲーム」をミックスしたような内容ですが、真相(動機)は一捻りあります。クリスティ氏の作品にありそうな気がしていますが、まだ出会えていません(笑)。後発では石持浅海氏の作品にありましたが・・・。ジャンルはサスペンスに入れましたが、本格色も強いと思います。監禁ものの作品は、「そして扉・・・」「黙の部屋」「ミザリー」「ソフィー」「体験のあと」「その女アレックス」「本作」ときましたので、次は浦賀和宏氏の「眠りの牢獄」です。


No.711 5点 推定無罪
スコット・トゥロー
(2015/02/08 06:36登録)
(東西ベスト29位)辛目の採点で・・・。まず、①主人公に感情移入できなかった。色々噂のある美人に溺れてしまう人物像が理解できなかった。その心理(愛欲)を格調高い文学調で語られても、なんとなく鼻についてしまう。単なる浮気の方がすっきりしていた。②状況証拠だけで逮捕されるのが理解できない。不満点は、凶器・アリバイ・動機についての洞察がないこと。凶器は後半に判明するが、家宅捜査(その他捜査も含め)が杜撰過ぎるなどリアリティに欠ける。③状況証拠のみの裁判なので、被告人が追いつめられるという緊迫感がない。その結果、あっけない、また拍子抜けの幕切れとなってしまった。④一人称なので他の登場人物の心理が伝わってこない。特に主人公の妻の心理。⑤ミスリードする為なのか、選挙にかかるもの、医者とのカウンセリング、Bファイルの存在にかかるものなどやや冗長であった。⑥フーダニット的には簡単すぎるのでは?。よってサプライズは小であった。⑦被告人は嘘をつくものなので真相を聞かないという弁護士の態度に違和感。被告人が犯人としても守秘義務から真相を聞きだすのが当然と思っていたが・・・。以上、非常に期待が高かった反動で、いちゃもん的な書評となってしまい申し訳ありません。やはり、エンタメ系法廷ミステリーの方が肌に合っています。


No.710 8点 邪悪の貌
ウィリアム・ディール
(2015/02/05 12:39登録)
「真実の行方」の続編(上下巻)。~前作から10年後、事件関係者が惨殺された。手口から模倣犯か?。前作では弁護士であったヴェイルは今や検察官となっており事件の解明に乗り出す。~ 法廷・リーガルものとジャンルを登録しましたが、サイコパスの登場でサスペンス色が濃く、後半は活劇風の色合いが強い作品です。前作に続き楽しめました。3部作のようですが3作目は翻訳されていないのが残念です。


No.709 5点 クロイドン発12時30分
F・W・クロフツ
(2015/02/01 11:04登録)
犯罪者の心理ものとすれば、追いつめられていくサスペンス感がやや物足りなかった。裁判での争点・毒購入者が本人かどうかについては、完全犯罪計画の点から甘かったのかも?。現在であれば、証拠の点からは有罪は難しいのでは?と思いますが、1930年代であれば致し方ないのかな・・・。また解決の経緯もあっさりし過ぎていること(当時の小説<名探偵>として当然?)や、飛行機に乗る人は稀なのでその様子を詳しく描写するなど、時代を感じさせてくれました。


No.708 6点 倒錯の舞踏
ローレンス・ブロック
(2015/01/28 11:24登録)
苦手ですが、高評価のハードボイルドに挑戦(笑)。ハードボイルドについて調べてみると「ハードボイルド・ミステリの底流には、英国が生んだパズラー的なミステリへの反発があった。ホームズに代表される超人的な探偵や複雑で現実離れしたトリックは、特権階級的であるとしてアメリカ人の心性に馴染まなかった」とあります。なるほどとうなずいてしまいました。苦手な原因はやはり、パズルやトリックが好きということですね。ハードボイルド系にはそれが薄いということで、心情的には英国派となりますか・・・。解説に「社会が定める法という秩序では正せない犯罪を手掛ける」(日本の必殺シリーズと同じ?(笑))とありますが、警察小説や法廷ミステリーでそこを崩していく作品の方が興味を感じます。本評価については、サイコパスの登場は好みで良かったのですが、犯人特定にかかる過程(○○○の○○)がちょっと拍子抜けの感じを受けましたのでこの評価です。


No.707 8点 真実の行方
ウィリアム・ディール
(2015/01/26 19:04登録)
法廷もののイメージは、お堅い社会派、法廷場面ばかり?でしたので、あまり手にしませんでしたが、最近、フィリップ・マーゴリン氏の作品(法廷もの)を読み始め、このジャンルに興味を持ち始めました。本作品は、サイコ系サスペンスであり、イメージとは全く別のものでした。登場人物の造形が丁寧で素晴らしい。特に容疑者の天使のような青年、無罪を勝ち取るためには手段を択ばない弁護士などなど・・・。長編ですが一気読みできました。ラストは完全に逆手を取られたという感覚です。映画化(主演・リチャード・ギア)されているので、DVDを借りて、原作と比較してみようと思います。


No.706 6点 殺意の迷宮
パトリシア・ハイスミス
(2015/01/22 16:04登録)
「BOOK」データベースより~『太陽がいっぱい』や『見知らぬ乗客』で有名なパトリシア・ハイスミスが、1964年度の英国推理作家協会賞を受賞した著者の代表作である。アメリカから追っ手を逃れて冬のギリシアにやってきた詐欺師と、暗い影を背負う青年とがアテネの街角で出会い、悲劇が始まる。尋問にきた地元の刑事を殺し、クレタ島に逃れた三人を待ち受けていたのは…。~
あえて分類するならば「心理サスペンス」になるのでしょうか。どこか屈折した3人の織りなす愛憎ドラマです。なんとなく「太陽がいっぱい」の主人公を彷彿させます。ミステリー度より心理描写を楽しむ作品であると思います。


No.705 8点 その女アレックス
ピエール・ルメートル
(2015/01/19 10:02登録)
読者の予想を覆す展開(どんでん返しではないが・・・)が新鮮でした。映画化されるようですが、グロテスクなシーンはどのように映像化するのか、それだけが心配です(苦笑)。一般読者には、あまり好まれない題材だと思っていましたが、6冠(日本4、フランス1、イギリス1)を制したということは、読者(日本)が変化したのかなあ?。それとも警部にまつわる話が良かったのか?・・・。まあ、「101ページ以降の展開は誰にも話さないでください。」とありますので、あまり書くことはできません(笑)。採点は、印象に残る作品となりうるか?という私的採点基準で+1、8点としました。


No.704 5点 女神の天秤
フィリップ・マーゴリン
(2015/01/17 09:59登録)
裏表紙より~『製薬会社に対する訴訟を担当することになった弁護士ダニエル・エイムズ。調査を開始すると、彼の周囲でさまざまな事件が起こる。調査への妨害にはじまり、法律事務所からの解雇通告、そして、ついには殺人まで…。アメリカで「十割打者」の異名を持つ人気作家マーゴリンが放つ、リーガル・スリラーの快作。』~
物語の進行上、医療訴訟に関する裁判の駆け引きを期待したのですが、その後の殺人事件がメインになっていました。物語自体は面白いのですが、ある調査の話が挿入され(長過ぎ)、話が飛んでしまっている印象がしました。殺人事件の犯人像がいまいち想像と一致しない(しっくりこない)点も減点対象でした。


No.703 6点 葬儀屋の未亡人
フィリップ・マーゴリン
(2015/01/12 07:58登録)
著者の他の作品と比べると、ややスピード感(ノンストップが売り?)に欠けます。女性上院議員(元警官)が夫を殺した強盗を殺害。しかし、血痕の飛び方からその話は嘘として逮捕される。女性議員が主人公か?と思いきや、それを裁く判事の身の回りに起こる不可解な事件に話が移ります。物語の構成上、やむを得ないのですが、なんとなくまどろこしい。どんでん返しはあるものの、衝撃度は今一。と言っても水準以上ではあると思います。他作品を読んでいるための贅沢な要求(笑)。エピローグはフランス流?の洒落たものですが・・・。


No.702 6点 笑う警官
マイ・シューヴァル&ペール・ヴァールー
(2015/01/09 13:15登録)
(東西ベスト30位~1985版・2012版とも)警察小説なので、致し方ないところなのか?。意外とオーソドックスな展開でした。


No.701 7点 野性の正義
フィリップ・マーゴリン
(2015/01/06 19:11登録)
裏表紙より~『人里離れた山小屋で発見された恐怖の手術室。周辺の山林からは、さらにおびただしい数の死体が掘り出される。犯人は犠牲者を拷問して殺し、さらには彼らの臓器を闇のルートで密売していたのだ。逮捕された医師カルドーニは、すぐに腕利き弁護士のフランクに弁護を依頼してくる。フランクの娘で新米弁護士のアマンダは、父の助手として事件の調査にあたるが、依頼人カルドーニに対する不快感を抑え切れなかった。動かぬ証拠を前に、誰もがカルドーニの有罪を信じて疑わなかったが、公判は思わぬ展開に…そして、アマンダは恐るべき事件の渦中に巻き込まれていった!』~
著者は弁護士出身なのですが、本作の場合、特に法廷場面は少なかったです。あえて、そのようにして物語の展開の方に重点を置いているようです。ノンストップ、ジェットコースター的な展開はスリリングでした。真相は判り易いと思いますが、逆にサスペンス感を盛り上げているように感じました(訳者と同様の感想<笑>)


No.700 8点 炎の裁き
フィリップ・マーゴリン
(2015/01/03 17:42登録)
「BOOK」データベースより~『裁判でミスをしたピーターは、大物弁護士の父により勘当同然に片田舎の町へと追いやられ、細々と公選弁護人をつとめていた。そんなある日、地元の女子大生が惨殺され、障害のある青年ゲイリーが殺人容疑で起訴される。世間注視のこの裁判で勝利すれば、檜舞台に復帰できる…不純な動機からゲイリーの弁護を引き受けたピーターだったが、検察側の態勢はまさに磐石。はたしてピーターは圧倒的に不利な状況を覆せるのか。』~
読後は映画「摩天楼はバラ色に」(マイケルJ・フォックス主演)アメリカ的な立身出世物語(コメディ)を思い起こしました。いかにもアメリカ的でオーソドックスな展開ですが、リーダビリティがあり、なにしろエンタメに徹しています。久しぶりにほろりとする場面に出会ったり、読後は爽快感を味わうことができました。日本ではまだ認知度は低いようですが、アメリカではベストセラー作家の地位を確立しているようです。著者の作品は4冊目となりましたが、お気に入りの作家の1人になりそうです。


No.699 6点 リッジウェイ家の女
リチャード・ニーリィ
(2014/12/30 21:08登録)
(タイトル女31冊目)ニーリィらしさがないと言えばないのですが、後半は作風に反して活劇的な展開となり、ファンとしては逆な意味で楽しめました。解説は自称ニーリィ中毒の折原一氏。私の場合は折原一氏中毒?からリチャード・ニーリィ氏ファンへとなりました(笑)。


No.698 5点 影の顔
ボアロー&ナルスジャック
(2014/12/27 19:14登録)
ハヤカワ・ミステリの裏書は、本文の3分の2までのあらすじが書かれていて興ざめでした。ここまで書いてあるのだから、かなりのどんでん返しがあるのでは?と期待してしまいます(苦笑)。盲目の心理描写(疑心暗鬼)はうまいと思います。しかし、それによる恐怖感があまり感じられなかったことが残念な点です。ラストはエスプリが効いていました。


No.697 4点 犠牲者たち
ボアロー&ナルスジャック
(2014/12/26 09:46登録)
結末は一瞬面白いと思いましたが、考えると不自然ではないか?。全編主人公の独白(恋愛感情が主体)でサスペンス感がなかった。


No.696 7点 氷の男
フィリップ・マーゴリン
(2014/12/23 20:35登録)
(タイトル男14)裏表紙より~『つねに沈着冷静で、どんな犯罪者も無罪にすることから“氷の男”の異名をとる辣腕弁護士のナッシュ。だが心の底で彼は、依頼人たちが実は有罪なのではないかという思いに苛まれていた。そんな矢先、同僚の弁護士が婦人警官殺しの容疑で逮捕された。同僚の冤罪を晴らすべく法延に立ったナッシュを、思いもよらぬ罠が待ち受けていた!どんでん返しの連続でぐいぐい読ませる、『黒い薔薇』の著者の第二作。』~                                   弁護士の苦悩(依頼人は有罪ではないか?、依頼人の妻を愛してしまったことによる裁判への影響、犯人の殺人の告白は守秘義務によりどうすることもできない等)がうまく描かれていていました。どんでん返しは、予想範囲内なのですが、弁護士が精神的に追いつめられてゆく後半は読みごたえがありました。プロットがいいです。


No.695 7点 笑わない数学者
森博嗣
(2014/12/20 13:28登録)
「逆トリック」(謎が読者には解かるが、登場人物には解からない)に魅かれ拝読。それ自体は非常に簡単な問題でしたが、本命はやはり「題名」に係る謎ですね。これも少し考えれば明らかになるはず?(不定ではない(笑))。当初、博士が姿を見せないので「四季」なのか?などと思いながら読んでしまいました(苦笑)。人間関係がやや複雑なので、数学的なスッキリ感がなかったのは残念です。しかし逆説的に考えれば、不条理な世界を描いた作品であるので致し方ないのかもしれません。つまり、結果的に人間の弱さ(逃避)が原因で、犯罪を犯さなくてもよかった人間を犯罪に導いてしまったということでしょうか。


No.694 4点 キドリントンから消えた娘
コリン・デクスター
(2014/12/16 13:36登録)
(東西ベスト80位)「毒入りチョコレート(1929)」と同様、仮説ばかりで面白味を感じることはできませんでした。根拠のある仮説なら、まだ納得はできるのですが・・・。まあ、好みの問題でこの評価としました。

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