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ミステリの祭典

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蟷螂の斧さんの登録情報
平均点:6.09点 書評数:1660件

プロフィール| 書評

No.680 6点 象牙の塔の殺人
アイザック・アシモフ
(2014/11/12 17:07登録)
解説より~『編中にジャック・ドヒーニという刑事が登場する。いつも部下を連れずに一人で来ては、主人公にシツコクからみ、オダテたりしながらいろいろな事実を聞きだす。サエない風貌だが、何を考えているのかよくわからない。そのくせちゃんと真相を掴んでいて、心理トリックを使って真犯人を引っかける。この妙な刑事、やる事といい雰囲気といい、どうも似てやしまいか。あのコロンボ刑事に。・・・(後略)・・・』~同感でした。しかし、あくまでも主役は助教授のブレイドです。そしてコロンボ並みの推理で・・・。SFでない本格物ということで拝読、楽しめました。


No.679 6点 とむらい機関車
大阪圭吉
(2014/11/10 17:28登録)
「とむらい機関車」は動機が秀逸。「奇妙な味」がありました。これが一番かな。「あやつり裁判」はオチがすぐわかってしまいました。女将が「つぼ半」でアカラサマすぎませんか?(笑)。「抗鬼」はストーリー的には面白いのですが、妻が○を間違えてしまうのか?「う~ん」という感じです。全体を通して、戦前・探偵小説の始まりを感じることはできました。


No.678 6点 心憑かれて
マーガレット・ミラー
(2014/11/06 20:22登録)
裏表紙より~『八月も終わりに近づくと、夏の自由に飽いた子どもたちが、また小学校の運動場に戻ってくる。すり傷だらけの手足をかかえ、汗を飛ばして逝く夏を謳歌する彼らの姿を、三十二歳のチャーリーは密かに見守りつづけた。こんなところにいてはいけない。それはわかっていた。精神科医の、そしてあの保護監察官の言葉が脳裏をよぎる。だが、もうしたがうことはできない。ひとりの少女に、どうしようもなく心とらわれていたからだ…!夏のカリフォルニアに精神異常の烙印を押された男が巻き起こす、緊迫の物語。読む者を震撼させる結末の逆転劇は、まさに名手の真骨頂。比類なきサスペンス。』~
事件は3分の2が過ぎるまで起こらないのですが、飽きることはありませんでした。登場人物の誰もが事件を引き起こしてもおかしくないような雰囲気で読ませます。このあたりがサスペンスの醍醐味かもしれません。裏表紙にあるような震撼するような結末ではないのですが、急展開は著者らしさを感じることはできました。


No.677 8点 シンデレラの罠
セバスチアン・ジャプリゾ
(2014/11/02 17:35登録)
(東西ベスト41位)サスペンスのお手本のような作品。裏表紙にある一人四役はいわゆる本格物ではないのであまり意味をなさないのでは?、だだの煽りか?(笑)。本作のオマージュ、あるいは挑戦として書かれた作品も多いらしい。綾辻行人・鯨統一郎(未読)山田正紀(既読)の各氏の名が挙がっているので、読んでみたいと思う。サスペンスの傑作と位置づけてよいと思います。


No.676 8点 終りなき夜に生れつく
アガサ・クリスティー
(2014/10/25 16:14登録)
(自薦ベスト10)裏表紙より~『誰が言いだしたのか、その土地は呪われた「ジプシーが丘」と呼ばれていた。だが、僕は魅了された。なんとしてでもここに住みたい。そしてその場所で、僕はひとりの女性と出会った。彼女と僕は恋に落ち、やがて…』~
著者の過去の作品のエッセンスを組み合わせ、恋愛小説風サスペンスに仕上げたという印象です。恋愛小説から後半事件に発展する瞬間は衝撃を受けましたね。映画化したら面白いと思ったら、既に映画化されていました(苦笑)。著者が自薦ベストにあげている理由は、「ファン(他の作品の読者)の裏の裏を斯いたのですよ」と言っているような気がします。このような大胆な発想がクリスティ氏らしいのかもしれません。


No.675 5点 檻の中の少女
一田和樹
(2014/10/24 16:26登録)
第3回ばらの町福山ミステリー文学新人賞~<サイバーセキュリティ・コンサルタント君島のもとへ、「息子は自殺支援サイト『ミトラス』に殺された」と老夫婦が訪れる。 ミトラスは自殺志願者とその幇助者をネットを介在して結び付け、志願者が希望通り自殺出来た際に手数料が振り込まれるというシステムで、ミトラス自身はその仲介で多額の手数料をとるのだという。>~
選評・島田荘司氏によればハードボイルド小説になるらしい。一番は読みやすいことですね。真相の解明の段でやや駆け足になってしまった感じがします。その後、かなり長いエピローグで題名の意味や動機に触れているのですが、もっと簡単でも読者は分かるのでは?。


No.674 8点 殺す風
マーガレット・ミラー
(2014/10/21 21:51登録)
裏表紙より~『ロンの妻が最後に彼を見たのは、四月のある晩のことだった。前妻の件で諍いをした彼は、友達の待つ別荘へと向かい―それきり、いっさいの消息を絶った。あとに残された友人たちは、浮かれ騒ぎと悲哀をこもごも味わいながら、ロンの行方を探そうとするが…。自然な物語の奥に巧妙きわまりない手際で埋めこまれた心の謎とは何か?他に類を見ない高みに達した鬼才の最高傑作。』~                  
行方不明となっているロンと不倫をしたセルマ、その夫はロンの友人である。残されたロンの妻は・・・。ドロドロとした人間描写が凄まじい。おもわず引き込まれてしまい一気読み。各人それぞれの新しい道を歩み始める予感で、サスペンス小説であることを忘れてしまうほどでした(笑)。さて、ミラー風のラストのオチはどうなるのだろうか?と・・・。期待以上のものでした。著者の既読分では今のところ一番の好みの作品です。評判の「鉄の門」は手に入らず、残念ながら未読。


No.673 6点 潜伏者
折原一
(2014/10/20 19:04登録)
「BOOKデータベース」より~『ノンフィクション作家の笹尾は、容疑者の視点で生々しく綴られた小説『堀田守男氏の手2』をきっかけに、北関東で起きた少女連続失踪事件を追いかけることに。被害者家族との接触を続ける中、冤罪の疑いが晴れぬまま服役を終えた容疑者が出所し、事件は大きく動き出す。小説家は誰なのか?容疑者は無実なのか?そして、真犯人は誰なのか。』~      相変わらずの折原ワールド(叙述)ですが、やや趣が今回は変わっているとの印象。犯人は誰?がメインに打ち出されています。ただ、その点だけを見ると犯人は目星がつきやすいかも?。サスペンスものなので、ファンとしてはその点は許す?(笑)。もし、殺人事件が絡まなかったら、テーマ(冤罪・DV)がテーマだけに、かなり良い作品になったような気がしてなりません。長いけれど一気読みはできました。


No.672 8点 カリブ諸島の手がかり
T・S・ストリブリング
(2014/10/18 08:08登録)
裏表紙より~『殺人容疑を受けた亡命中の元独裁者、ヴードゥー教司祭の呪術、ヒンドゥー寺院の死体…多様な異文化が交錯するカリブ諸島を舞台に、アメリカ人心理学者ポジオリ教授が怪事件の数々に遭遇する、皮肉とユーモアに満ちた探偵譚。“クィーンの定員”にも選ばれた、ミステリ史上前代未聞の衝撃的名作。』~                                バラエティに富んだ連作短編集です。やはり「ベナリスへの道」が秀逸。同じようなモチーフで既読のものは、島田荘司氏、乾くるみ氏の作品がありましたが、どちらも衝撃を受けました。本作は1929年で先駆的な役割を果たしており、高く評価したいと思います。


No.671 6点 骨と髪
レオ・ブルース
(2014/10/12 19:50登録)
裏表紙より~『「従妹のアンが行方不明になった。財産狙いで夫が殺して逃げたにちがいない」。依頼を受けたキャロラス・ディーンが調査を進めてるうち、次第に不可解な事実が明らかになってきた。かつて夫婦が住んでいた場所でもアンは失踪し、やはり夫が殺して逃げたという噂が流れていた。しかしその「アン」はキャロラスが探しているアンとは別人としか思えない。背格好も性格も違いすぎるのだ。しかし本当に別人なのか?軽妙で洒落たストーリーテリング、巧みで切れのある仕掛けで読者に挑む本格推理。』~                                ミステリーの王道を外したユニークな作品ですね。真相(伏線はしっかりしています)はおもわず笑ってしまいました。


No.670 4点 ジェゼベルの死
クリスチアナ・ブランド
(2014/10/11 10:29登録)
(東西ベスト100の24位)読み込み不足か、理解力不足で今一ピンときませんでした。「緑は危険」同様、著者との相性は良くないですね(苦笑)。まず、見取り図(バルコニーの階段、部屋の状況)がないので殺害現場の状況が理解できなかったことです(情けない・・・)。そして登場人物の特に3人ぐらいの人物像が伝わってこないので、前記と合わせ、何がどうなっているのかよくわからないままの読書で、相当時間がかかりました。また、ある人物の妻が突然登場するのですが、その意味も分からないし・・・。トリックもかなり無理があるような気がしますのでこの評価としました。


No.669 6点 編集室の床に落ちた顔
キャメロン・マケイブ
(2014/10/03 19:55登録)
裏表紙より~『映画会社に勤めるキャメロン・マケイブは、完成間近の新作からある新人女優の登場シーンを全てカットするようにとの命令を受けた。その翌日、編集室で当の女優が手首を切って死んでいるのが発見される。自殺か他殺か。真相は、編集者のロバートソンが編集室に仕掛けた自動カメラが捉えていたはずなのだが、肝心のフィルムが消えている。捜査の難航をあざ笑うかのように、第二の事件が発生し……。“どんな探偵小説でも無限の終わり方が可能”と主張する作者が仕掛けた、二度と使えぬトリックとは? 「全ての探偵小説を葬り去る」と評された問題作。』~
題名は映画用語で「映画が完成したあと、何らかの理由で本編からカットされた俳優や女優をいう」とのことです。1937年(著者20歳)の作品で黄金期本格ミステリー最大の問題作とされているようです。今でいうアンチミステリーやメタミステリーに該当するのでしょう。この時代に書かれたことに敬意を表したいと思います。ストーリーは面白いし、主人公と警部のやり取りも楽しめます。読後は「犯人がどうしてこんなドジを踏んでしまうのか」と思いましたが、解説で詳しく説明されています。解説が必要な作品ですね(笑)。


No.668 6点 眼の壁
マーガレット・ミラー
(2014/10/02 09:01登録)
裏表紙より~『交通事故で視力を失い、ボーイフレンドとの婚約を自ら一方的に解消しながら、なぜか屋敷から彼を離さない富豪の娘ケルジー。眼の壁は彼女の心の傷が生み出した幻覚か?それとも本当に誰かが彼女の命を狙っているのか?バラバラな家族の絆が彼女のモルヒネ服用事件でにわかに、見えない緊張の糸でからめ取られ始めた。そしてついに不可解な死が…。』~
著者の作品に魅かれるのは、心理描写とトリッキーな結末がある点です。本作は初期(1943~20代)の作品なので、まだ心理描写が作品全体(特に後半)に生かされていないような気がしました。前半は、盲目の女性心理と、その家族の関係(軋轢)が描かれますが、著者の文学的表現?(例えば比喩など)やアメリカ的ユーモア(皮肉)が翻訳のせいなのかよく判りませんけれど、やや読みにくい。後半はがらりと展開が変わってしまいフーダニットものになります。トリッキーな結末は控えていますが・・・。本筋がいいので、組立次第でという感じがします。非常にもったいない作品ですね。


No.667 7点 能面殺人事件
高木彬光
(2014/09/27 10:53登録)
(再読~ネタバレがあります)かなり評価の分かれている作品ですね。第一点は作中での海外作品のネタバレ、第二点は殺害方法。ネタバレは若気の至りだったのでしょうか?(苦笑)。殺害方法は発表当時(1949)、検死でわからないはずはないというものだったようです。しかし、現在では殺害方法自体に?。「点と線」を今読むのと同様、時代の変遷を感じます。複数の海外有名作品(アクロイド、Yの悲劇)を彷彿させる内容ですが、構成(二重三重の罠)はよくできていると思います。機械的な密室はおまけとしてよいと思います(わかりにくいし・・・)。著者は次のように述べています。「描きたかったのは法律と正義の相克であった」「最初の題名は千鶴井家の悲劇」・・・その点は重厚な雰囲気で良く伝わってきました。


No.666 7点 赤い右手
ジョエル・タウンズリー・ロジャーズ
(2014/09/26 09:07登録)
裏表紙より~『結婚式を挙げに行く途中のカップルが拾ったヒッチハイカーは、赤い眼に裂けた耳、犬のように尖った歯をしていた…。やがてコネティカット州山中の脇道で繰り広げられる恐怖の連続殺人劇。狂気の殺人鬼の魔手にかかり、次々に血祭りに上げられていく人々―悪夢のような夜に果して終りは来るのか?熱に憑かれたような文体で不可能を可能にした、探偵小説におけるコペルニクス的転回ともいうべきカルト的名作』~           ミスリードのオンパレードで強引に騙されてしまったという印象です(笑)。色々問題点はあるのですが、その点は解説で非常に詳しく説明されています(これも珍しい~怪作だからか?)。解説では指摘されていない部分ですが、同一人物を「細くて肌の白い腕」→「顔も手と同様に日に焼け・・・」「体は堅固そのもので筋肉も隆々」と表現しています。これは語り部の表現なので、果たしてこの語り部は信用できるのか?という疑問を持ってしまいます。これは著者の作戦の一部であったのか?・・・。あと、題名のことには触れていませんでしたが、右手切断の意味もうまく収まっていると思います。不思議な気持ちにさせられる作品でした。


No.665 7点 硝子細工のマトリョーシカ
黒田研二
(2014/09/25 09:37登録)
裏表紙より~『生放送のテレビドラマ本番中に、スタジオ内で次々と勃発する事故。毒は本物にすり替えられ、脅迫電話は真実の声音となり、脚本に秘められた真実は、慟哭と贖罪の扉を開く。「完全なる虚構」と「不完全な虚構」という二つの世界が交錯する、入れ子トリックの博覧会。この物語は、著者自らが奏でる鎮魂歌でもある。』~                                                        よく練られたメタ・ミステリーです。作中作でありますが、TVドラマという設定なので判り易い。といっても混乱させられますが・・・(苦笑)。TVドラマ中に毒を盛られるという事件が起きるのですが、その点はやや複雑すぎるきらいがありました。自殺と処理された事件が実は・・・という方がインパクトがありました(前例のない密室?)。題名の「マトリョーシカ(入れ子構造のロシア民芸品)」の扱いがうまく、恋愛小説としても読めると思います。レオ(オタクなフリター)がいい味をでしていました。


No.664 5点 阿弥陀ヶ滝の雪密室
黒田研二
(2014/09/23 13:59登録)
読みやすいし展開も早いので楽しめました。しかし、評価としては、リアリティ(主に動機面)を考慮するとこの点数になってしまいますね。奇しくもエピローグで「・・・だなんて、リアリティーなさすぎるよね?・・・」と言っています。作者もわかって書いているのかも?(笑)。


No.663 8点 明治断頭台
山田風太郎
(2014/09/20 09:21登録)
著者の東西ミステリーベスト100のランクイン作品は、妖異金瓶梅(30位)、太陽黒点(48位)、本書(90位)とありますが、本書が一番インパクトがありました。裏表紙に「驚天動地のラストが待ち受ける異色作」とありますが、納得。惜しくは、川路(探偵役)が真相解明にもっと絡んでくれればと思う次第です。


No.662 7点 河原町ルヴォワール
円居挽
(2014/09/15 08:52登録)
シリーズ4の最終章。少なくとも第1作目を読んでいないと背景がわからない。落花の死というシリーズを読んでいる人にとってはショッキングな場面からスタート。撫子(主人公)は元恋人と兄を敵に回し、私的裁判で孤軍奮闘する。裁判での違和感、落花の死の真相はラストで判明する。伏線の妙であった。アンフェアと思われる点もありますが、完全に騙されました(苦笑)。


No.661 7点 ボディ・メッセージ
安萬純一
(2014/09/12 13:35登録)
真相への伏線は、サービス過剰と思えるほど提示されていましたがたどり着けませんでした(笑)。惜しいところは、犯人の手掛かり(伏線)がほとんどないと言ってよい点でしょうか。もう少し絡んでほしかった気がします。しかし、大胆な発想で楽しめました。

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