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ミステリの祭典

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推定無罪
キンドル郡サーガ

作家 スコット・トゥロー
出版日1988年09月
平均点7.55点
書評数11人

No.11 9点 ◇・・
(2024/02/22 20:39登録)
地方検事を選ぶ選挙戦のさなかに、美人検事補が自宅で全裸の絞殺死体となって発見された。事件を担当したラスティ・サビッチ首席検事補は、彼女に怨みを持つ変質者を洗うが、捜査は遅々として進まない。サビッチは実は彼女と愛人関係にあり、やがて容疑は次第にサビッチに向けられていく。
現職検事補の手による本書は、発表後一躍ベストセラーになった。圧倒的迫力の法廷シーン、意想外の結末に加え、司法制度への批判までも盛り込んだ法廷ものの傑作である。ハリソン・フォード主演で映画化もされている。

No.10 9点 八二一
(2023/07/16 20:25登録)
プロットを実によく練り上げてある。ハイライトの法廷場面に至るまで、検事局内での勢力争いなどを描きながら、サビッチ夫妻や彼を助ける刑事らの心理の綾を浮き彫りにする。
法廷での激しい駆け引きに目を奪われているほど、どんでん返しをくらう。そして先が全く読めないままサプライズエンディング。

No.9 8点 YMY
(2021/12/17 23:34登録)
法廷を舞台にした小説はこれまで、いくらでもあったがこれほどディテールを精密に描いた作品はなかったのではないか。また法曹界の制度の中で絡み合う人間たちの関係を生々しく活写した点でも、やはり先行する作品とは一線を画していただろう。
周到に張られた伏線が生み出す驚愕の、そして皮肉に満ちたどんでん返しには圧倒された。

No.8 8点 zuso
(2021/04/17 22:36登録)
ドキュメンタリーを思わせるリアリティーのあるストーリー。緊迫した法廷での戦い、特に弁護士の芸術的な戦略は必見。

No.7 5点 蟷螂の斧
(2015/02/08 06:36登録)
(東西ベスト29位)辛目の採点で・・・。まず、①主人公に感情移入できなかった。色々噂のある美人に溺れてしまう人物像が理解できなかった。その心理(愛欲)を格調高い文学調で語られても、なんとなく鼻についてしまう。単なる浮気の方がすっきりしていた。②状況証拠だけで逮捕されるのが理解できない。不満点は、凶器・アリバイ・動機についての洞察がないこと。凶器は後半に判明するが、家宅捜査(その他捜査も含め)が杜撰過ぎるなどリアリティに欠ける。③状況証拠のみの裁判なので、被告人が追いつめられるという緊迫感がない。その結果、あっけない、また拍子抜けの幕切れとなってしまった。④一人称なので他の登場人物の心理が伝わってこない。特に主人公の妻の心理。⑤ミスリードする為なのか、選挙にかかるもの、医者とのカウンセリング、Bファイルの存在にかかるものなどやや冗長であった。⑥フーダニット的には簡単すぎるのでは?。よってサプライズは小であった。⑦被告人は嘘をつくものなので真相を聞かないという弁護士の態度に違和感。被告人が犯人としても守秘義務から真相を聞きだすのが当然と思っていたが・・・。以上、非常に期待が高かった反動で、いちゃもん的な書評となってしまい申し訳ありません。やはり、エンタメ系法廷ミステリーの方が肌に合っています。

No.6 9点 itokin
(2015/01/26 08:54登録)
久しぶりに重厚な読みがいのある作品に出合いました。物語の展開、主人公の心理描写、法廷での弁護士、検察官、裁判官の駆け引きなど際立っています。私のように年寄りにはずしりとくる作品でした。続編も読みたいですね。

No.5 8点 mini
(2012/10/01 09:58登録)
先日9月28日に文藝春秋からスコット・トゥロー「無罪 INNOCENT」が刊行された
年末の”このミス”でランキングするような話題作となるのか、それとも何だ今更トゥローかよ、みたいに無視されるのか、予想出来ない
でも「無罪 INNOCENT」に話題性が無いという事は考えられない、何故ならこの新刊はあの名作「推定無罪」の続編だからだ
実は続編っぽいのは既に書かれている、私は未読だが「推定無罪」の次に書かれた「立証責任」だ
しかし「立証責任」は、「推定無罪」の主役サビッチ検事の弁護を担当したスターン弁護士にスポットライトを当てた作らしいので、スピンオフ作みたく厳密な意味で直系と言い難いのかも知れない
「無罪 INNOCENT」では、判事に昇格した20年後のサビッチが再登場するという、正真正銘の続編らしいのだ

「推定無罪」は読んだのはず~っと以前なんだけど、続編の噂を聞いたので書評するタイミングを待ってたんだよね、う~ん我ながら気長な奴
さてトゥローと言うと重厚で陰鬱な作風として知られているが、それが持ち味なのである
その重厚さを楽しむものであって、重厚には重厚ならではの魅力が有る
リーガルサスペンス分野の作家も多いのだから、重厚感が嫌ならばエンタメ路線の、例えばジョン・グリシャムとかスティーヴ・マルティニとか読むべき作家は何人も居る
誤解している人も居るかも知れないが、リーガルサスペンスは決して社会派みたいなジャンルでは無く、法曹界を舞台にしたスリラーであって、スリルとサスペンスが主体である
トゥローのような重苦しい作風はこの分野の中では、どちらかと言えばむしろ例外に近い
ただねえ現状だとさ、トゥローの路線とグリシャムやマルティニの路線とで好みが分かれるというよりも、読む奴は両方とも読むし読まない人はそもそもリーガルサスペンスという分野自体に興味示さないんだろうなぁ、残念ながら

No.4 6点 江守森江
(2011/01/19 10:23登録)
先日親友がハリソン・フォード主演の映画版VHSテープを持って訪ねて来た(DVDに落としながら一緒に視聴した)
社会派なリーガル・サスペンスと本格ミステリな逆転裁判モノが合体した素晴らしい映画だった(テレ東・昼のロードショーでかなり以前に観ていたと思い出した)
ついでに図書館に出向き原作をおさらいしてきた。
文庫上下巻合わせ約700ページだが翻訳が非常に上手いのでスムーズに読める。
その一方、一人称表記と翻訳の上手さ(下手で読みにくいより遥かにマシだが)が逆作用して深い心理描写と褒めるより鬱々とした重苦しさが過剰に伝わり娯楽性を損ねてもいる(鬱々とした重苦しさを楽しめれば全く問題ない)
後は読書に何を求めるか!の問題になる。
読んで損なしとは思うが「読書は娯楽」を第一義にしていてファジーな姿勢を追求している私には吹替で楽チンな映画版を娯楽として楽しむ方が適していた。

No.3 7点 kanamori
(2010/07/24 16:57登録)
読み終えて事件の構図を整理すると、二時間ドラマ風の設定であったことが分かりますが、登場人物それぞれの思惑を錯綜させながら伏線を散りばめた前半部と、法廷テクニックを駆使した後半のスリリングな展開で、真相が見えにくい一級品のミステリに仕上がっていると思います。
美人検事補殺しの捜査を担当するはずの主席検事補サビッチが徐々に重要容疑者になっていく訳ですが、そのサビッチの一人称視点で語られる心情が物語に深みと重みを加えています。

No.2 5点 りんちゃみ先輩
(2009/06/24 20:09登録)
フゥー、やっと読み切りました、そんな感じです。”おもしろい”ミステリーが好きな私にとっては重すぎ、難解な部分も多い。作品自体の”風格”は感じる。ただ私の読書読解レベルが低いだけと思います。評価されている作品なので読んで良かったと思います。(読まなければ意見も言えませんから・・・)

No.1 9点 Tetchy
(2008/11/07 23:34登録)
これは掛け値なしの本物である。
上手く云えないが、登場人物全てに嘘が無い。
要するに、作り物めいた感じがしないのだ。
特に現職検事補であった作者の最大の長所を存分に活かした法廷劇は史上最高の知的ゲームであり、正に圧巻である。

ただ惜しむらくは、ストーリー全体に通底する過度なまでのペシミズム、重厚というより陰鬱である。
私はどうも苦手だった。

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