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ミステリの祭典

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影の顔

作家 ボアロー&ナルスジャック
出版日1958年01月
平均点6.25点
書評数4人

No.4 6点 クリスティ再読
(2018/10/08 16:35登録)
「悪魔のような女」もそうだけど、ボア&ナルは異常な状況に置かれた人間の疑惑や妄想を膨らまして、短めだが長編を構築するという力技で成り立っているわけで、実際オチなんてどうでもいいんだね。で、本作は中途失明者が、かつて知っていた生活と失明後の視覚以外の感覚を総動員して得られる「失明者の生活の感覚」との齟齬に苦しむ話である。カッコよくいえば「盲者のコギト」かな。この生活空間の再建の中に紛れ込んだ疑惑とその成り行きを楽しむのだから、本当にプロセスだけが大事。プロットを取り出しても仕方がないや。
なので桃のエピソードとか、いいな。けど小切手に署名だけして渡すのはいくら何でも警戒心がなさすぎるね...本作はあまりオチははっきりしたものではないので、オチを期待して読むと絶対肩透かし。miniさん同様、そういう読み方をする作品ではないと思う。

世界は何のつながりもないばらばらの外観だけででき上がっており、まるで足下から崩れおちるくさった手すりのように、一度にどっと崩れてしまうかのようだ...

ここらに「哲学」を感じながら読むと楽しめる。

No.3 5点 蟷螂の斧
(2014/12/27 19:14登録)
ハヤカワ・ミステリの裏書は、本文の3分の2までのあらすじが書かれていて興ざめでした。ここまで書いてあるのだから、かなりのどんでん返しがあるのでは?と期待してしまいます(苦笑)。盲目の心理描写(疑心暗鬼)はうまいと思います。しかし、それによる恐怖感があまり感じられなかったことが残念な点です。ラストはエスプリが効いていました。

No.2 6点 mini
(2009/02/01 10:12登録)
「悪魔のような女」は古本屋でも容易に見つかるし現役本なのかな?
早川書房は「悪魔のような女」を復刊するくらいなら「影の顔」や「死者の中から」こそ絶版状態を解消して欲しいよ

”ミステリー小説=パズルでいい”論を標榜する他の某サイトを見たことがあるが、この手の主義の人にとっては謎のエッセンスと解決編での”発想の飛び”が全てなんだろうが、それなら中盤は一切要らなくなってしまう
恐怖と推理を融合するボア&ナルにとっては、言わば途中経過こそが全てなのであって、結末の締めはオマケである
落語のサゲ同様そりゃ結末には何らかの締め括りは必要だよね、物語を永久に続けるわけにもいかないのだから

No.1 8点
(2009/01/29 20:19登録)
目が見えなくなった人の立場から書かれた話であり、しかもそのことを徹底的に利用したプロットですので、本書の持ち味は映像化不可能だと思うのですが、日本でテレビドラマ化されたことがあります(見てはいませんが)。
このコンビ特有のともかくコクのある文章で、嗅覚や触覚から何か妙なことが起こっていると思われるのに、見えないため確実なところがわからないという息詰まる心理的恐怖を盛り上げていきます。そしてぞっとする結末(意外なということではありません)。あまりのしんどさに途中何回か休憩を入れながら、やっと読み終えた作品です。

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