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ミステリの祭典

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キドリントンから消えた娘
モース主任警部シリーズ

作家 コリン・デクスター
出版日1977年12月
平均点6.19点
書評数16人

No.16 6点 斎藤警部
(2021/12/29 19:30登録)
とにかくユーモア良し。それに尽きる。

ダミー解決の花と散ったいくつかの推理(推測?)案件も悪くなかったけど、特に手紙の筆跡に纏わる件なんて厚みと意外性があってオッと思ったけど、、最終盤で通知表がどうとか、ラストスパートちょっとだけ期待したんだが、カックンだったなーー〜、全体的に推理ないし推測スクラップ&ビルドのスリルは薄かった。SOWがあるでもなし。(●気の手掛かりは苦笑..)事件そのものも熱くないやね。。モースが本腰入んないのも分かる。むしろエロ案件のほうに引っ張られちゃって。。 言うてもまぁ、読んでる間は楽しかったですよ。

或る家族のその後というか事件後に想いを巡らすと、そこんとこなかなか感慨深いとは言える。ミステリより文学の味わいだけど、意外とそこが一番のミソかも?

ミステリ本筋4.8点。ユーモアに救われ5.7点。

No.15 5点 レッドキング
(2021/10/16 17:52登録)
デクスター第二作。引続き主人公にはモース警部。平凡な探偵にして密かに不可能犯罪に心躍らせる独身のワーグナーマニア。「女が生きてちゃつまらない・・私は、不自然な死体を前にした方が力が発揮できるんだ」・・なんとナイスな不謹慎セリフ。ある女学生の失踪から二年、娘から両親に無事の手紙が届き、モースに調査の命が下る。パズル断片として、いかにもな怪しさで描写される容疑者・・校長夫妻、独身教頭、教師夫妻、娘両親、男友達・・たち。刺殺と娼婦、恐喝と梅毒、失踪と入代り、ロジックと妄想・・不器用に繰り返されるパズルのはめ直し。「~から二度消えた娘」事件は見事解明するが、殺人事件の方は多重解決風にぼやかして終わる。※多重解決よいが、あの「書類とホコリ」のロジックはもっとキチンと「多重」に記述してほしかった、「陰獣」みたいに。

No.14 6点 クリスティ再読
(2021/05/30 08:07登録)
表層、裏、裏の裏、裏の裏の裏...と推理をしていけばいくほど迷宮にハマる、というのは誰しも体験することである。名探偵はだから、迷探偵と紙一重、ということにもなるわけだ。仮説を立てては崩れ、立てては崩れの本作のようなタイプの作品の場合には、読者の鼻面をつかんで引き回す探偵の価値、というのもなかなか両義的である。
ヴァーグナーの楽劇に心酔する一方で、ストリップショーの役得に涎をながすモースというキャラは、それこそ詩人警部とドーヴァー警部を兼ね備えている。いやだからこそモースこそがエヴリマン、という普遍性なのかもしれないが、個性があるようで実は曖昧?
カチッとしたパズラーが好きな読者には全然、向かない作品。どこで真相に着地させるかは本当に作者のさじ加減しだい。力技が目立ちすぎるのも、やや読んでいて疲れる部分もある....なのでこのくらいの評価にしたい。意外にディキンスンを一般向けにしたような作品なのかも。

ややネタバレ
性病、ってこと?だとするとなかなかオゲレツな。

No.13 4点 文生
(2020/08/07 19:19登録)
二転三転四転五転する多重解決ものでコリン・デクスターの代表作と目されている作品ですが、個人的にはイマイチでした。
まず、二転三転といっても一つ一つの仮説にさほどの根拠がなく、また、緻密なロジックによって導かれたものでもないので、それをひっくりかえされても特に驚きや衝撃を感じられなかったのが、楽しめなかった大きな理由として挙げられます。
それに、肝心の真相がぱっとしないうえに、すべての発端である手紙の送り主が不明のまま終わったのも大きなマイナス点です。
全体的な完成度はデビュー作である『ウッドストック行最終バス』のほうが遥かに上のような気がします。

No.12 9点
(2020/01/08 11:35登録)
 同僚リチャード・エインリーの事故死により、ストレンジ警視正からロジャー・ベイコン中等総合学校の女生徒、バレリー・テイラー失踪事件を担当するよう言い渡されたモース主任警部。彼女は二年三カ月と二日前、昼食後の再登校時に姿を消していた。エインリーの死の翌日、両親に送られてきたバレリーの手紙を突きつけるストレンジに対し、モースはだしぬけに言う。「彼女は死んでいます」
 それが彼を最後まで混乱させ続けた命題だった――果たしてバレリーは生きているのか、それとも既に死んでいるのか?
 「ウッドストック行最終バス」に続くモース主任警部シリーズ第2作。1976年発表。おお、ひさびさのメジャー級作品だ!
 とはいえ一応纏まりのあった前作以上に尖った構成。2/3を過ぎた部分まではブリリアントながら仮説がひとつ提示されるだけですが、それ以降はエピローグ間際までスクラップビルドの嵐。主任警部もへとへとで、最後はもう「手を引く」と部下のルイス部長刑事に明言するほどです。
 夢の中でも仮面を付けたバレリーがモースを幻惑。いったい彼女は生きているのか、いないのか? 終始この映像を脳裏にちらつかせながら読者を最後まで惑わせ、ラストまで引っ張ってゆく異色ぶり。家出に加え殺人一件というしょぼい謎を、この上もなく魅力的な事件に仕立てるマジック。読者を選ぶとはいえ、その分コアなファンの支持を勝ち取る所はやはり類例の無いものと言えるでしょう。簡単にエピゴーネンを許すような作風でもありませんし。
 「ウッドストック~」の方が優れていると思いますが、それでも〈デクスターの代表作〉となればこちらを選ばざるを得ません。「結局、最初の手紙は誰が書いたの?」という疑問はありますが(ベインズがあのタイミングで投函する理由がほぼ皆無なので、個人的にはバレリーだと思います)、それよりも手紙と関係ありそうなエインリーの死が、途中から全くほっぽらかされてるのがアレかな。思わせぶりで明言しない叙述も多いですが、それもまた謎作りに貢献しています。本シリーズの手法を極限まで進めた問題作です。

No.11 4点 ねここねこ男爵
(2017/11/04 12:25登録)
人によってはとんでもない名作になるんだろうなぁと。
どんでん返しより緻密さ、トリックよりロジックな自分もこれは合いませんでした。

推理の構築と破壊の繰り返しはこの作者の作風で、それはいいんですが一つ一つにあんまり緻密さや感動が無いように思え、結論も「いくつか正解の候補を考えてとりあえずコレにしましたわ」な感じが…。

大分昔に「ウッドストック行き〜」と二冊買いして読み切りましたがウッドストックも同印象。

No.10 4点 蟷螂の斧
(2014/12/16 13:36登録)
(東西ベスト80位)「毒入りチョコレート(1929)」と同様、仮説ばかりで面白味を感じることはできませんでした。根拠のある仮説なら、まだ納得はできるのですが・・・。まあ、好みの問題でこの評価としました。

No.9 7点 ボナンザ
(2014/09/02 00:03登録)
前作ウッドストックを上回る傑作。論理の構築と謎の提示はまるでクイーンやクリスティのようで、黄金期の傑作群に劣らない。

No.8 7点 E-BANKER
(2014/03/30 18:56登録)
1976年発表。「ウッドストック行き最終バス」に続くモース警部シリーズの長編二作目。
モースとルイス部長刑事のコンビが織り成す「論理の迷路」(!?)が楽しい作品。

~二年前に失踪して以来、行方の知れなかった娘バレリーから両親に無事を知らせる手紙が届いた。彼女は生きているのか、生きているとしたらどこでどうしているのか。だが捜査を引き継いだモース主任警部は、ある直感を抱いていた。「バレリーは死んでいる・・・」。幾重にも張り巡らされた論理の罠をかいくぐり、試行錯誤の末にモースがたどり着いた結論とは? アクロバティックな推理が未曾有の興奮を巻き起こす現代本格の最高峰~

これは評判どおりの“怪作”だ。
(人によっては“快作”かもしれないが・・・)
中盤以降、モースの「解決した」という言葉に何度騙されたことか(!)
モースの推理をあざ笑うかのように、解決を確信した彼の前に現れる新たな壁、壁、壁・・・
最終的に示された真相に対しては、もはや「へぇー」という感想しか湧いてこなかった。

一人の探偵役がこれほどトライ&エラーを繰り返している作品というのは、やはり初めてお目にかかった。
バークリーの「毒入りチョコレート事件」でも感じたことだが、要はミステリーにおける「真相」なんて作者の匙加減ひとつだし、あまりにもロジックに拘りすぎると、どうも無味乾燥なストーリーになりやすい・・・ということなのだろう。

最終的な真相について納得したかと問われると、正直なところ「うーん」ということになるのだが、こういう風に振り回されること自体は嫌いではないし、なかなか楽しい読書にはなった。
これまで読んできた作者の作品のなかではベストという評価。
(こんな失踪事件程度を主任警部が担当するというのはどうなんだろう・・・)

No.7 4点 あびびび
(2011/06/09 14:13登録)
女学生の行方が分からなくなり、2年経過してから、その娘から「大丈夫」という手紙が来る。再捜査を任されたモース警部は事件の核心をついたかに見えたが、いずれの仮説もすぐに崩れ、またしぶとく捜査、推理するといった流れは現実的ではある。しかし、最後は曖昧で、スカッとしない。

モース警部の性格そのまま、人間味は感じるが、うやむやに物語が終わったようで、これはストレスがたまるわ…。

No.6 7点
(2011/04/13 21:43登録)
失踪した娘はそもそも生きているのか、死んだのか? その前提のところからして何度も意見を変えながら、その度に砂上の楼閣論理を組み上げては判明した事実に叩き潰され、また組み直していくモース警部。ルイス部長刑事の目撃者への疑念を基にした推理にモース警部の想像を加えた発想など顕著な例ですが、それぞれの仮説はクリスティーの短編とかをも思わせます。しかし、それらのアイディアもここまで繰り返されては、そのうちどうでもよくなってくるほどです。
これはバークリーの『毒入りチョコレート事件』における最終推理が最も鮮やかな推理と言うわけでもなかったのを上回る収束感のなさです。第1作『ウッドストック行最終バス』では感じられた結末の意外性はほとんど無視して、ひたすら仮説の森をさまよう楽しみに徹した作品になっています。
しかしそれにしては、ロビンさんが指摘されている発端の手紙の真相が結局不明な点はやはり気になりましたし、警察が再調査に乗り出した時期に殺す動機のあいまいさ、それに犯人の最終確定を犯人自身の独白で行っているのも、なんだかもやもや感が残ります。

No.5 5点 りゅう
(2011/04/10 11:32登録)
 女子学生失踪事件を引き継いだモース警部は、自分に任された限りは殺人事件に違いないとの勝手な思い込みのもとに、捜査に乗り出していきます。モース警部が自分の推理に確信を抱き、捜査が終了間近と思った直後に、その推理を根底から覆す事実が明らかとなって失意に打ちのめされるというパターンが繰り返されます。モース警部の推理は、仮説に基づいて組み立てられたもので、根拠に乏しいのですが、意外性に富んでいて、楽しめました。ロジックで推理するには手掛かりが不足していて、作品中でクロスワードパズルになぞらえているように、この推理には想像力の補完が必要です。最後に、モース警部はバレリーの通知簿を見て真相に気付くのですが、ラストのひねりが弱い気がします。また、曖昧さを残したまま終了しているのは、個人的には大きなマイナスポイントです。


(以下、ネタバレをしています。注意!)
 モースの最終章での説明どおり、ベインズが手紙を書いたのだとしたら、その理由が(作中で問題となっていたにも拘らず)示されずに終わっているのはいかがなものかと私も感じました。ベインズが手紙を書く理由を考えてみましたが、思い浮かびません。私見ですが、モースはやっぱり最後まで誤っていて、手紙を書いたのはベインズではなく、バレリーだったのではないかと思います。

No.4 8点 kanamori
(2010/07/19 21:06登録)
モース主任警部シリーズの第2作。
2年前の女学生失踪事件に関して、モースの結論が四転五転するところが最大の読みどころで非常にスリリングで面白かった。
ただ、よりプロットを錯綜させているものの、基本的に前作「ウッドストック行最終バス」の焼き直しと思えるのも事実。
本格ミステリといっても、直感型の探偵役のため、ロジカルなパズラーとは一線を画する作風といえます。
なお、原題の”Last Seen Wearing"は、ヒラリー・ウオーの名作と同じですね。

No.3 5点 測量ボ-イ
(2009/05/30 17:51登録)
いろんな仮説が繰り返されるというややこしい話しが、翻訳
もの独特の難しい言い回しで延々と続き、いやほんと、読み
きるのが大変でした。この手のミステリは僕には合わないの
かも。
採点6点と言いたいところですが、読みづらい文章なのでマ
イナス1点です(作者ではなく、翻訳者のせい?)。
もう一度読むとまた微妙に評価が変わるかも知れませんが、
再読なんてとてもできません(笑)。

No.2 9点 ロビン
(2008/11/25 22:19登録)
いやあ、転がる転がる転がる!いったい何度返せば気が済むのやら笑
しつこいくらいに繰り返される論理の構築に、『ウッドストック』を読んだときは頭が混乱し、それ以来敬遠してきたデクスター。今なら、と心を引き締めて本書を読んでみました。
終盤に入ると怒涛の勢いでいくつもの真相が繰り広げられる。
結果的に、ロスマク風の悲劇だったなという印象。
十分満足なんだけど、気がかりなのは、結局「手紙を書いたのは誰か?」ということ。ベインズ?バレリー?後者なら、モースの素晴らしいロジックに素直に驚嘆するとこだが、最終的にモース自ら「バレリーではない」と断言している。だったらなんでベインズは手紙を書いたの?何度も自問していたじゃない。「なぜ、ベインズは手紙を書いたのか?なぜ?なぜ?なぜ?」って。そこの答えを教えてよ~!10点ものの勢いだったのに、最も大切なとこが明らかにされていないので減点。(もしかして自分が見過ごしていただけ?それとも、本当はバレリー?)

No.1 9点 こう
(2008/04/24 00:41登録)
 いわゆる失踪物の最高峰の小説と思います。とにかく推理が繰り返され提示されるスタイルはこれを読んだ時は初めてで感動しました。書評で単なる夢想で推理が意味がないというコメントを読んだときがありますが飽きさせず読めました。ウッドストック行最終バス共々お薦めです。

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