殺意の迷宮 |
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作家 | パトリシア・ハイスミス |
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出版日 | 1988年07月 |
平均点 | 7.00点 |
書評数 | 2人 |
No.2 | 8点 | mini | |
(2015/12/11 09:57登録) 先日に河出文庫からパトリシア・ハイスミス「キャロル」が刊行された、これ映画化されており来年2月に日本公開となる、キャスティングなど映画ファンの間でも話題になってるようだ 作者唯一の未訳長編だったのだが、先行して翻訳刊行された河出文庫の方もハイスミスのファンに好評らしい 原題はそのまま”carol”だが、実は改題する以前は”The Price of Salt”という題名だった ところが新旧どちらの題名でも例の森事典では著作リストに載っておらず不思議に思っていたが、内容的にミステリーではなくレスビアン恋愛小説らしいので除外されたのだろうか 以上は新作映画『キャロル』の情報だが、さて大幅に情報が遅れたが、もう1つハイスミス原作の映画が『ギリシャに消えた嘘』の邦題名で今年の4月に公開されていて、その原作が「殺意の迷宮」である 孤高の天才ハイスミスは案外とミステリーの受賞歴は少なく作品的には2作位しか無い しかも本国アメリカよりも欧州で高評価された作者らしくMWA賞の受賞歴は無く、「リプリー(太陽がいっぱい)」の受賞はフランスの賞だし、もう1冊、この「「殺意の迷宮」もMWAではなくCWA賞なんだよね、それも本賞じゃなくて外国作品部門扱い 原題を直訳すれば『1月の2つの顔』 そう、1月は2つの顔を持っているんですよ その昔に『ヤヌスの鏡』というTVドラマが有ったが、そもそも1月の英語の月名”January”の語源はローマ神話で2つの顔を持つヤヌス神が由来である 1月は1年の終わりと始まりであり二面性を持つ事から名付けられた ローマ神話の神々はそれに相当するギリシャ神話の神が大抵は居るのだが、ヤヌスには相当するギリシャの神が存在せずローマ神話オリジナルの神らしい 二面性と言うのが、したたかな古代ローマ人の性格には合うが潔い古代ギリシャ人の性格には合わなかったんだろうかね(笑) 1年でも特に前半の月名はローマ神話の神の名に由来するものが多く、例えば3月の”March”は火星の呼び名でもある軍神マルスからきているし、6月の”June”は木星の呼び名ユピテル(ジュピター)神の妻である結婚の女神ユノ(ジュノー)からきていてジューンブライドの由来でもある ところがローマ神話から採った名称は前半だけで、1年の中間地点7月と8月はまた別、7月の"July"はユリウス暦を制定したユリウス・カエサル(ジュリアス・シーザー)が自身の名前を付けたもので、8月の”august”の由来はローマ皇帝アウグストゥスである カエサルちゃん、ちゃっかりしてやんの(笑)、と思ったら実は歴代ローマ皇帝は各月に自分の名前を付けたくて一旦は月名を改名したんだとさ、でも各皇帝の死後は元の名称に戻されたんだってさ 流石はカエサル、自身が制定したユリウス暦だけに、7月は改定前の名前って無いからJulyでそのまま残ったってわけなのか 一方で1年の後半はまたパターンが変わる、9月~12月は全部語尾が”-er”で終わってるでしょ、何で統一されてるのかと言うと一種の番号なんだよね 9月の”September”は”第7番目、英語のSeventhの元だね 10月の”October”は8番目、足が8本の蛸は英語でオクトパスだよね 11月の”November”は9番目、つまりNinthの元だね 12月の”December”は10番目、デシリットルやデシベルの”デシ”とか、10年一区切りのディケイドとか、10が絡む言葉の接頭辞に”Dec”が付くでしょ ちょっと待て、9月以降の各月と順番の数が合ってねえぞ、という小峠流の突っ込みが出てくる方も居られるかも これには理由が有って、ユリウス暦は1年の始まりを3月からとしているので、9月は第9番目なのではなく7番目なんだよね ちなみに3月から始まるという事は1年の終わりは2月だよね 4年に1度は閏年を設けて時間の調整をするのは天体の運行上は仕方ないのだけれど、調整する月が12月とかじゃなくて中途半端に感じる2月に行うのは、2月で1年が終わるというユリウス暦の名残なんだそうだ こういう話の方が暇潰しにミステリー小説なんか読むより面白くないですか?(苦笑) 「殺意の迷宮」ってミステリー的に読むと、一番覚えているのがパスポート偽造の話ばかり、これを除いたら殆どホモ話になっちゃうし(笑) いやハイスミスだからこれでいいんですよ(苦笑) |
No.1 | 6点 | 蟷螂の斧 | |
(2015/01/22 16:04登録) 「BOOK」データベースより~『太陽がいっぱい』や『見知らぬ乗客』で有名なパトリシア・ハイスミスが、1964年度の英国推理作家協会賞を受賞した著者の代表作である。アメリカから追っ手を逃れて冬のギリシアにやってきた詐欺師と、暗い影を背負う青年とがアテネの街角で出会い、悲劇が始まる。尋問にきた地元の刑事を殺し、クレタ島に逃れた三人を待ち受けていたのは…。~ あえて分類するならば「心理サスペンス」になるのでしょうか。どこか屈折した3人の織りなす愛憎ドラマです。なんとなく「太陽がいっぱい」の主人公を彷彿させます。ミステリー度より心理描写を楽しむ作品であると思います。 |