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ミステリの祭典

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犠牲者たち

作家 ボアロー&ナルスジャック
出版日1967年01月
平均点5.20点
書評数5人

No.5 7点 斎藤警部
(2022/03/25 11:40登録)
<<けっしておのれをあらわさずに存在する権利を持っているのは、神だけだよ>>

創元推理文庫旧版、カバーと本体で「登場人物表」の人数が違う! 本体の方が一名多く、その人物だけ説明が無い!  これは、わざとだよね。。。。

奇妙な内省に満ちた◯◯◯(??)四角関係と、異国でのダム工事、その顛末。 巧妙に隠匿された●●の暴露に強い意外性が宿っているのは、作者の文章感覚在ればこそでしょう。 ほぼ観念的恋愛小説。 人に依っては読むに堪えないであろう、当てのない堂々巡りの面倒さで九割方できているような、短い長篇。 
人並由真さんコメントの 「かなりシンプルかつ大技の着想があり、それは、ヘタに書くと、たぶん本当にとてもつまらなくなってしまいそうなもの」 ← フムフムですね。。 人を騙すにはどうするか、の大ヒントを曝した一冊でもあるかも知れません。

“ぼくは本を書こう、きみのために。ぼくらの愛がふたたび始まるのだ。”

No.4 6点 人並由真
(2020/07/24 13:46登録)
(ネタバレなし)
「ぼく」こと出版社の編集者で独身のピエール・ブリュランは、著作の原稿を投稿の形で持ち込んできた美貌の若妻マヌーことエマニュエルと知り合った。マヌーの対応をする中でやがて彼女の不倫相手となったピエールは、加速度的に彼女への思慕を募らせていく。だがそのマヌーが、高名なダム建設の専門家である夫ルネ・ジャリュとともに長期アフガニスタンに行くことになった。マヌーと離れがたいピエールは半年の長期休暇を半ば強引にとると、ジャリュの秘書としての役職まで獲得して2人とともに現地に向かうことにする。やがて出立の日程の関係でジャリュとともに先に異国に着いたピエールは、多忙なジャリュにかわって後から来ることになったマヌーを迎えにいくが……!?

 1964年のフランス作品。
 かねてより本サイトでのレビューをうかがうと(作品の現物を未読の時点では、しっかりは拝読させていただかないが)、総じてあまり評価は高くないようである。だが一方で、手元の創元文庫版(1995年の第四版)では服部まゆみからわざわざ新原稿をいただく形で、同人の激賞を授かっている。この温度差は何ぞや? という興味も踏まえて読んでみる。
 
 読了したらなんとなく状況がわかったような気がする。本作にはかなりシンプルかつ大技の着想があり、それは、ヘタに書くと、たぶん本当にとてもつまらなくなってしまいそうなもの。だから意外にこれまでのミステリでもあまり使われたことのない? 実例という印象だが(これが評者の不見識だったらスミマセン)、それがここではなかなか、筋立ての上で効果的に使われている。
 ただそんな反面、作者コンビによる一人称でのキャラクター描写に独特のクセがあり(本作はそこが味なのだが)、そこにある種の微妙さも覚えたりする。特に中盤、主人公ピエールが「そこ」まで考えたなら、なんであと一歩、思索しないのかとイライラさせられる読者は多いのでは?(当然、評者もそうなんだけど。)

 だから服部まゆみのように食いつきの良かった部分でホメる人はかなりホメるし、減点部分というか気に障る部分が気に障る方の評価はあまり高くないのだろう。もしかしたらそんなところかな、と愚考してみたりする。
 ちなみに評者の評点はそんなもろもろのところを踏まえたつもりで、こんなところ。傑作とは言わないし、一方で長打の打球が惜しくもファールに終わった作品だとも思わない。
 まあ翻訳ミステリファンとしての長い人生のなかで、一回くらいは読んでおいた方がいい? 佳作~秀作であります。

No.3 5点 クリスティ再読
(2018/05/25 22:55登録)
作品的にはそう悪くないのだけど、本作は「死者の中から」のアイデアを別視点でアレンジしたような作品なんだよね....「別人なのに似てる」vs「同じ人なのに別人」、「別人なのに同じ人と主人公は思い込んで恋する」vs「主人公は別人が嫌になって引く」と、同じネタを逆にしたようなアイデアで書かれている、と言っても過言じゃない。まあそこらへんをどう考えるか、だろう。ひょっとして「死者の中から」のボツ案みたいなものかな。
読み比べると分かるんだけど、本作は「死者の中から」と比較しても動きが少なくて、フランス的な恋愛小説、って感じの読後感になる。もちろんボア&ナルだから、ミステリとしての仕掛けはちゃんとあるんだけどね。しかし本作の本当に面白い部分は、マヌーに対して主人公がとった態度が、そのままクレールが主人公に対してとった態度になる、というあたりの皮肉な部分で、これはミステリとは全然関係のない要素である。そう見ると、何かバランスの悪い作品ということになってしまうなあ。
あとそうだね、本作の背景にダムがある、のが心理的な象徴みたいなもの。夫が「コンクリの薄いダム」の権威、というのが意味深。最近ダム萌えというかダムマニアって流行ってるみたいだね。

No.2 4点 蟷螂の斧
(2014/12/26 09:46登録)
結末は一瞬面白いと思いましたが、考えると不自然ではないか?。全編主人公の独白(恋愛感情が主体)でサスペンス感がなかった。

No.1 4点
(2010/10/27 11:50登録)
本書はいかにもフランス産の恋愛小説風サイコサスペンス・ミステリという感じで、なかなか味わい深いものがあります。
二転三転と展開してゆくストーリーと、最後に明かされる大トリックはもちろん面白いのですが、それよりも、中途で主人公の微妙な心理状態を文章で追いながら、状況変化がいつ起きるのかと待ち構えているときのドキドキ感がたまりません。これこそが心理モノの醍醐味です。
ただこの種の翻訳サスペンスは、心理状態を表情や態度でしか表現できない映像モノのほうが、さらに深みを出せるようにも思います。

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