home

ミステリの祭典

login
蟷螂の斧さんの登録情報
平均点:6.09点 書評数:1660件

プロフィール| 書評

No.1240 8点 復讐法廷
ヘンリー・デンカー
(2019/09/30 18:50登録)
(再読)1986年版東西ミステリーベスト100の第77位。映画「十二人の怒れる男」の原作が、リーガル・サスペンスの先駆かなと思っていましたが、そちらは脚本だったのですね(3人の方の書評あり)。法廷場面では、抑えるところはきっちり抑えていますので読み応えあります。最初、日本の法律と違う点があり、よくわからなかったのですが、裁判場面できちんと説明がありました。そして主人公の恋など硬軟織り交ぜるところなど憎い演出。陪審員どうしの恋?は余計かなと思っていたらラストで効いてきましたね。


No.1239 6点 ミドル・テンプルの殺人
J・S・フレッチャー
(2019/09/28 23:59登録)
丁度100年前の1919年の作品。新聞社の副編集長(年齢は若い)が死体の発見現場に遭遇し、残された手がかりから捜査を開始するというもの。現代風に言えばフーダニットそして意外な犯人像ということになりますね。読み終えた後、一瞬、ラストが唐突で説明不足とも感じます。しかし、それは現在のミステリーに慣れ親しみ、それと比べてしまっているからだと思いました。この時代に、このプロットの作品を書き上げたことに敬意を表します。


No.1238 8点 ポオ小説全集4
エドガー・アラン・ポー
(2019/09/27 17:20登録)
(再読)各短篇(21篇)を一言に要約すれば「意外な犯人」「ユーモア」「ブラック・ユーモア」「悲劇」「夢落ち」「パロディ」「どんでん返し」「怪奇」「幻想」「復讐」「盲点」「犯人の心理」「暗号」「冒険」などとなった。現在ミステリーの基礎用語でもあり、著者が探偵小説を創造したということで間違いないのであろう。
「黒猫」「黄金虫」は別途評価済み。
「タール博士とフェザー教授の療法」9点 精神病の新治療は失敗したらしい。院長の行動に注目。
「盗まれた手紙」8点 1986版東西ミステリーベスト100の第64位 心理に関する嚆矢的作品。
「ちんば蛙」8点 残酷だが好きな作品。
「ウィサヒコンの朝」8点 ミステリーには該当しないが、何故か心を打たれた。
「お前が犯人だ」8点 探偵小説の原形。死人がしゃべる?。笑えます。
「シェヘラザーデの千二夜の物語」7点 千夜一夜物語はハッピーエンド。では千二夜は?。
「長方形の箱」7点 なぜ彼は箱に自分を縛りつけ海へ飛び込んだのか?。余韻のあるラスト。


No.1237 5点 火蛾
古泉迦十
(2019/09/22 15:48登録)
幻想小説として6点、ミステリー小説としては4点といった感じです。宗教のことは全く分かりません。この小説の肝となる教義が本当に存在するのかが気になりました。まあ、フィクションとは思いつつ・・・。


No.1236 4点 天城一の密室犯罪学教程
天城一
(2019/09/21 16:24登録)
パート1の短篇は、文章を削ぎ落しているというが、それにより話が飛んでしまい意味不明である。非常に読みにくく、文章、構成が巧みとは言えない。江戸川乱歩氏が評した「普通の意味の小説道にははなはだ未熟」が言い得て妙であると思う。作例やテキストのようなものなので致し方ないのかも。パート2はパート1(密室)の解説。パート3が短篇集。高評価の「高天原の犯罪」に期待したが、脱力系であり残念。犯人の脱出方法については、「気配」という概念が欠如している。この手のものなら折原一氏の「不透明な密室」の方が笑える。


No.1235 6点 むかしむかしあるところに、死体がありました。
青柳碧人
(2019/09/19 15:36登録)
「一寸法師の不在証明」 5点 アリバイ崩しだが、あまり感心しない落ち。トリックを成功させるために考え付いた設定といって良いでしょう。

「花咲か死者伝言」 5点 ダイイングメッセージを中心に物語は進むが、コロンボ張りの非常に細かいところから犯人が判明。うーん細かすぎる(笑)。

「つるの倒叙がえし」 6点 「○○メーター」では一番人気。構成が面白いということらしい。題名の倒叙の意味(作者の意図)がよくわからん。倒叙形式になっているとは思えないので「意趣がえし」がベター。そうなると見え見えか?。

「密室龍宮城」 7点 原作・浦島太郎の落ちを有効に使ったトリック。昔話のパロディとしてはNo.1でしょう。

「絶海の鬼ヶ島」 8点 「そして誰も・・・」のパロディ。動機がGood(感心感心)。


No.1234 8点 黒猫
エドガー・アラン・ポー
(2019/09/17 15:58登録)
(新潮文庫版にて再読)「黄金虫」が1986年版「東西ミステリーベスト100」の40位とのことで再読。いやー、まいったなアが最初の言葉。著者の作品では「モルグ街」が初読で、その印象がそれほどでもなかったので、本書などは、当時流し読み、あるいは読書力の欠如(今、あるとも言えない)のため、ほとんど記憶に残っていませんでした。今般の再読で著者の「偉大なる作家」たる所以を垣間見た気がします。

「黒猫」(1843)7点 怪奇小説なので多少の矛盾点には目を瞑りましょう(笑)。 
「アッシャー家の崩壊」(1839)9点 かなり重いものが背景にあることを匂わせる作品。麻耶雄嵩氏の有名作品のラストシーンはこの作品の影響があるのかなあ?。

「ウィリアム・ウィルスン」(1839)9点 この時代にこれを書けるのは素晴らしい。「ジキル博士」は1886年だし・・・。

「メールストロムの旋渦」(1841)8点 想像力に感心する。月の光が巨大な渦巻きに刺し込むシーンは何とも不気味で美しい。

「黄金虫」(1843)6点 暗号は趣味でないが、初の暗号小説ということで+1点。

「ポオ小説全集」1~4が書棚の奥に隠れていた。再読せよということか?・・・


No.1233 6点 ワイルダー一家の失踪
ハーバート・ブリーン
(2019/09/14 18:34登録)
江戸川乱歩氏の「類別トリック集成」で「この小説のトリックは面白い。これは幾つもの人間消失小説で、その内の一二のトリックは、なかなかよく出来ている。奇術趣味ではあるが充分面白い。」とあり拝読。
湖畔の砂浜での消失トリックは風景的には印象深いものがあります。但し、トリックよりも恋愛絡みの古き良き探偵小説を楽しむ方がベターかと思います。伏線も見え見えだし・・・(笑)


No.1232 6点 スイート・マイホーム
神津凛子
(2019/09/12 13:21登録)
キャッチコピーは「イヤミス」ならぬ「オゾミス」。テイストは貴志祐介氏の「黒い家」あたりか。デビュー作ということで、構成や文章のぎこちなさは致し方ないところ。内容的にはよくあるパターン。評価できる点は「ラストの一行」的作品といったところか?。


No.1231 6点 813
モーリス・ルブラン
(2019/09/10 11:03登録)
「新青年」(1937年)のベスト10の第6位 
1. 黄色の部屋 ルルウ
2. トレント最後の事件 ベントリー
3. 赤毛のレドメイン家 フィルポッツ
4. グリーン家殺人事件 ヴァン・ダイン
5. 樽 クロフツ
6. 813 ルブラン
7. バスカービル家の犬 ドイル
8. 僧正殺人事件 ヴァン・ダイン
9. アクロイド殺し クリスティー
10. 男の頭 シムノン
10. 月長石 コリンズ 
回答者(敬称略)は26名で( )内は第一位に選んだ作品 
江戸川乱歩(黄色)、大阪圭吉(樽)、小栗虫太郎(水晶の栓)、甲賀三郎(黄色)、角田喜久雄(男の頭)、横溝正史(813)など 

1985年版「東西ミステリーベスト100」の41位ということで拝読。ラストは現在ではOUTですね(笑)。歴史的評価を込めてこの点数で。                                                          


No.1230 7点 偉大なる夢
江戸川乱歩
(2019/09/07 13:52登録)
「偉大なる夢」東京・ニューヨーク間を5時間で飛ぶ超高速機開発に係わる防諜小説。1944年の作品で、著者としては異色のスパイ小説ですが本格色も強い。犯人にかかわる真相は初出で気に入っています。探偵小説が検閲などにより書けなくなった戦時下の背景がよくわかりました。7点
「断崖」夫婦の会話が主体の短篇。二重落ちがいい。8点
「凶器」凶器はどこへ行ったのか?。某有名格言?。明智小五郎が50を過ぎているのに小林少年がいる(笑)。6点


No.1229 6点 天外消失
アンソロジー(出版社編)
(2019/09/01 21:26登録)
「死刑前夜」ブレット・ハリデイ 8点・・・回想録。犯人はメキシコに逃亡してきた。彼は測量士として働き、私と彼は信頼関係を築いていった。小泉喜美子氏が絶賛したのも頷けます。
「探偵作家は天国へ行ける」C・B・ギルフォード 8点・・・探偵作家が殺され天国へ。しかし犯人がわからない彼は下界へ戻り犯人探しを開始する。ユーモア系でラストも楽しめた。
「女か虎か」フランク・R・ストックトン 8点・・・あえてコメントすることもないほど有名ですね。
「ジャングル探偵ターザン」エドガー・ライズ・バロウズ 4点
「殺し屋」ジョルジュ・シムノン 4点
「エメラルドの空」エリック・アンブラー 5点
「後ろを見るな」フレドリック・ブラウン 6点
「天外消失」クレイトン・ロースン 7点
「この手で人を殺してから」アーサー・ウィリアムズ 6点
「懐郷病のビュイック」ジョン・D・マクドナルド 5点
「ラブデイ氏の短い休暇」イーヴリン・ウォー 7点
「白いカーペットの上のごほうび」アル・ジェイムズ 6点
「火星のダイヤモンド」ポール・アンダースン 4点
「最後で最高の密室」スティーブン・バー 7点


No.1228 7点 悪しき狼
ネレ・ノイハウス
(2019/08/28 22:44登録)
裏表紙より~『川で少女の死体が発見された。長期にわたって虐待された痕があり、死因は溺死だと判明する。不可解なことに、淡水ではなく塩素水で溺れていた。おぞましい犯罪に、刑事オリヴァーとピアたちは捜査を始めるが、二週間たっても少女の身元が判明しない。さらに殺人未遂事件も発生。警察関係者の想像を絶する凶悪犯罪とは。』~

シリーズの第6弾。毎回登場人物が多く容疑者も多いのが特徴。しかし、今回は容疑者は絞られておりわかりやすい。テーマは幼児虐待でかなり重たい。バラバラな事件を終盤に収斂させていくという手腕はお見事。エピローグは次回へ続く的な・・・。


No.1227 8点 愚者の毒
宇佐美まこと
(2019/08/17 20:58登録)
第70回日本推理作家協会賞受賞。裏表紙より~『一九八五年、上野の職安で出会った葉子と希美。互いに後ろ暗い過去を秘めながら、友情を深めてゆく。しかし、希美の紹介で葉子が家政婦として働き出した旧家の主の不審死をきっかけに、過去の因縁が二人に襲いかかる。全ての始まりは一九六五年、筑豊の廃坑集落で仕組まれた、陰惨な殺しだった…。絶望が招いた罪と転落。そして、裁きの形とは?衝撃の傑作!』~

なんと女性心理をうまく書く「男性」作家さんなどと思いながらの読書。読後「女性」作家さんと知り納得(苦笑~大変失礼しました)。他の書評をみると、ある仕掛けはすぐわかるなどの評が多いですね。私はホワイダニットのことばかりが頭の中にあり、まんまと引っかかってしまいました。重い題材だけれど後味は良い。ミステリー的にフェアに書こうとする著者の意志が伝わってくる作品でした。


No.1226 6点 日本傑作推理12選(Ⅱ)
アンソロジー(海外編集者)
(2019/08/15 18:00登録)
「神獣の爪」陳舜臣 8点・・・知人の妻が浮気?。その浮気相手が殺人容疑者に・・・短篇では勿体ないプロット。
「滑走路灯」夏樹静子 7点・・・元カレから殺人のアリバイ工作の話を聞く。彼は彼女に未練があると言うのだが。揺れ動く女性心理。
「殺意のまつり」山村美紗 7点・・・時効後、真犯人が名乗り出た。そのわけは?。オチがいい。
以下採点のみ
「駆ける男」松本清張 6点 
「凍った時間」結城昌治 4点 
「五島・福江行」石沢英太郎 6点 
「柴田巡査の奇妙なアルバイト」西村京太郎 5点 
「酒乱」笹沢左保 5点 
「自負のアリバイ」鮎川哲也 6点 
「尊属殺人事件」和久峻三 5点 
「天分」海渡英祐 5点 
「肉親の証言」佐野洋 6点 
「柴田巡査の奇妙なアルバイト」西村京太郎と「自負のアリバイ」鮎川哲也は真相が共通しており選定ミスか?(苦笑)


No.1225 6点 日本傑作推理12選(Ⅰ)
アンソロジー(海外編集者)
(2019/08/09 17:24登録)
「加えて、消した」土屋隆夫 9点・・・妻が遺書を残し自殺。遺書には妻の妹、佳代さんをよろしくとあった。妹は自分のことを「佳代さん」などと書くはずはないと言い出す。
「奇妙な被告」松本清張 8点・・・高利貸しを殺したとして逮捕された男は犯行状況や凶器について素直に自白した。決定的な証拠はなかったが・・・。裁判では一転して無罪を主張し出した。
「噂を集め過ぎた男」石沢英太郎 7点・・・誰からも相談を受けるような人のいい人物が毒殺された。動機がまったくわからない。
以下採点のみ
「死者の便り」三好徹 4点
「魔少年」森村誠一 6点
「断崖からの声」夏樹静子 6点
「優しい脅迫者」西村京太郎 8点
「証拠なし」佐野洋 6点
「海からの招待状」笹沢左保 6点
「復顔」草野唯雄 4点
「黄色い吸血鬼」戸川昌子 5点
「如菩薩団」筒井康隆 3点
エラリークイーン氏の寸評に「日本ではSF作品が推理小説に混じって発表されるケースが多く、この両者の境界は従来必ずしも明らかでなかったきらいがある。・・・」そうなんですよね。推理小説要素がいくら濃厚でも、SF要素が少しでもあれば、それはやはりSFでしょう?(笑)。


No.1224 8点 エンジェルズ・フライト
マイクル・コナリー
(2019/08/05 16:27登録)
ロサンゼルスの「エンジェルズ・フライト」と呼ばれるケーブルカーが現場です。その付近にある名優アンソニー・クイーン氏(2001年86歳で没)の壁画が何回か登場するのですが、若い刑事はそれが誰だかわからない。トホホ・・・(苦笑)。作中で、主人公ボッシュ刑事の知り合いの元FBI捜査官マッケイレブに関する実話が「わが心臓の痛み」として映画化された。そのポスターを刑事が見て、主演イーストウッドはマッケイレブ本人とは似てはいないなどと「楽屋落ち」的な場面もあります。本主人公はスティーブ・マックイーン氏をイメージして書いたようです。なお、主人公ハリー・ボッシュの本名はヒエロニムス・ボッシュで「快楽の園」で有名な画家と同じです。名前の由来は1作目から読めばわかるのかもしれませんが、本作はシリーズ6作目で?でした。後の楽しみ・・・。評価は、真相が二転三転し読み応え十分なこと、背景も良く描かれているなどで8の上です。


No.1223 5点 リスタデール卿の謎
アガサ・クリスティー
(2019/07/25 18:38登録)
12篇の短篇集。恋愛ものや冒険譚が半数位あります。
ベスト3は
「白鳥の歌」(8点)白鳥は死ぬ前に一番美しい声を出すという伝承があるらしい。「わたくし『トスカ』を歌うことはもう二度とないのよ」のセリフが心に沁みます。「お芝居はこれでおしまい!」とオシャレに短篇集のラストを締めくくっています。

「ナイチンゲール荘」(7点)どこかで読んでいると思ったら江戸川乱歩編「世界短編傑作集3」で「夜鶯荘」として紹介されていました。ブラックユーモア系です。

「リスタデール卿の謎」(7点)謎と真相のギャップが面白く微笑ましい。ハッピーエンド系。


No.1222 9点 わが心臓の痛み
マイクル・コナリー
(2019/07/21 00:12登録)
表紙はクリントイーストウッド氏。読み始めると主人公のイメージとは合わず、ケビンコスナー氏を思い浮かべながらの読書となりました(笑)。登場人物の一人が「砂の器」を読んでおり、日本人読者にとってはうれしいところ。またアガサ・ファンとしては、U・Nオーエン氏の云われと同様な命名の小ネタがあり、ほくそ笑んでしまいました。高評価の要因は、伏線の回収が見事な点、動機良し、単行本上下と長いが飽きさせない点等々。著者の作品はハードボイルド系と長編(上・下)とのことで敬遠気味でしたが、今後読んでいきたいと思います。


No.1221 6点 ブルックリンの少女
ギヨーム・ミュッソ
(2019/07/15 21:30登録)
裏表紙より~『人気小説家のラファエルは、婚約者のアンナと南フランスで休暇を楽しんでいた。なぜか過去をひた隠しにするアンナに彼が詰め寄ると、観念した彼女が差し出したのは衝撃的な光景の写真。そして直後にアンナは失踪。友人の元警部、マルクと共にラファエルが調査を進めると、かつて起きた不審な事件や事故が浮上する。彼女の秘められた半生とはいったい…。フランスの大ベストセラーミステリー。』~
前半はいろいろな謎が提示され緊張感がありました。しかし、後半は視点の転換(失敗?)により、ややダレてしまったかも。ストーリー自体は新鮮味があるとは言えません。まあ、この手の王道を行った感じですかね。けしてつまらないということではないのですが・・・。

1660中の書評を表示しています 421 - 440