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ミステリの祭典

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真実の問題

作家 ハーバート・ブリーン
出版日1958年01月
平均点7.50点
書評数2人

No.2 9点 人並由真
(2025/04/30 08:43登録)
(ネタバレなし)
 その年の11月。マンハッタンで63歳の老女セルマ・コナースが、何者かの強盗殺人? によって命を奪われた。定年退職間近の53歳のエドマンド・アロイシャス・ジャブロンスキー(ジャビイ)三級刑事は、相棒で28歳の青年刑事補(見習い刑事)オニール(ニール)・ライアンとともに、容疑者の前科者ハリイ・ダービイを追い詰める。だがダービイに隙を突かれ、証拠となりうる、とある物件を始末されてしまう。窮したジャビイは、ダービイが真犯人に間違いないとの確信のもと、証拠の捏造を謀った。だがその行為に、ライアンの正義は揺さぶられる。

 1956年のアメリカ作品。
 序盤のあらすじ(設定)とこの題名だけで、作品がどういう方向に行くのかたぶん誰にでもすぐわかる、骨太&コテコテの1950年代ヒューマンドラマ・ミステリ(普通に読めば、まずその前に警察小説だけど)。

 ミステリマガジン2013年11月号で、その時点でのポケミスオールタイムベスト3を斯界のミステリマニアや業界人から募った際、日下三蔵センセイがベスト3の筆頭に挙げていたのがコレ。
 で、日下ベストのあとの2つがガーヴの『死と空と』とモンティエの『悪魔の舗道』であり、前者は確かに優秀作だが、後者は個人的には大ファールのスカタン作品であった(評者の両作の感想は、本サイトのそれぞれのレビューをご参照ください・笑)。

 つーわけで日下氏のポケミスベストの選球眼は、自分的にはあまりシンクロできんな、と考えてもいいのだが、それでもなぜかこの本作(『真実の問題』)に関しては、氏の高い評価を信頼できそうな予感があった。

 で、実際に三時間でイッキ読み。中身は期待通りのエリンの『第八の地獄』にすら匹敵する人間ドラマ派ミステリ作品の傑作で、さらに最後の3分の1で、ちゃんと意外性とロジック、伏線の回収の醍醐味を伴う<ミステリとしての本来の面白さ>も味合わせてくれる。
 マッギヴァーンの上位作のヒューマンドラマのときめきに、さらにミステリとしての工夫を組み込むと、見事、こーゆー優秀作になるんじゃないかという、そんな感触だ。

 一方で、ブリーンのほかの一流半路線のパズラー諸作(レイノルド・フレイムものほか)と並べると、コレが作者にとっての異色作枠になってしまうのは、まあ仕方がない。
 が、ポケミスの解説でツヅキが語る通り、作者の本来の作家的資質はこういう方向にこそ向いていたんじゃなかったかと思う。ジョセフィン・テイもそーだけど、ブリーンももうちょっと著作を多く遺してほしかった。
 
 もちろん今まで読んだブリーン作品のなかで、文句なしのダントツベストワン(まあ長編が全7冊しかないなかで、その内これで4つ読んだだけだけど)。
 いや、読んでる間は、本気で数年ぶりに10点つけようかと迷ったほどだった。ポケミスP196下段のヒロインの台詞には、泣いたよ。
(まあ最終的には、なんか逆にあまりにもよく出来過ぎてる完成度の高い傑作なのが小癪に思えて、9点に留めますが。)

 エピローグの決着も思う所いろいろあるんだけど、いや、確かにこのクロージングだからこそいいんだよね。
 ジジイの今になって初めて読んでも全然オッケーだったけど、二十代~三十代のうちに本作に初めて出会っていて、心の財産のひとつにしながら年を重ねる人生を送っていたら、それはまたきっと、かなりステキなマイ・ミステリライフだったろうな、とも思う(笑)。

No.1 6点 蟷螂の斧
(2019/11/30 22:00登録)
警察小説に関する座談会で、逢坂剛氏がこだわている一冊と言っていたものです。
~退職まじかのベテランと新人の二人の刑事は殺人強盗犯を逮捕した。その時、犯人は証拠の100ドル札を燃やしてしまう。ベテラン刑事は別の証拠を捏造することを思いつき実行した。犯人は死刑判決を受けるも、その後に新たな事実が判明し、若手刑事は苦悩することになる。~
新聞記者と付き合いのあるダンサーと若手刑事の恋や、犯人の弟妹が絡んだりと、筋は面白い。ただ、感情移入が出来なかったのが残念な点です。

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