わが母なるロージー カミーユ・ヴェルーヴェン警部 |
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作家 | ピエール・ルメートル |
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出版日 | 2019年09月 |
平均点 | 5.33点 |
書評数 | 3人 |
No.3 | 5点 | びーじぇー | |
(2023/11/06 21:16登録) パリの街中で爆破事件が起き、多くの負傷者が出た。爆発したのはなんと第一次大戦中の砲弾だった。その直後、ジャン・ガルニエと名乗る青年が警察に出頭し、残り六つの砲弾を一日に一つずつ爆破させると告げる。要求は大金と自らの無罪放免だったが、やがてジャンの母親ロージーが殺人罪で拘留中であることが判明する。一体、この親子の間に何があったのか。ヴェールヴェンはジャンの取り調べを担当し、彼の真意を暴こうとする。 本書でメインに据えられている趣向はタイムリミット。ジャンはテロ対策班の厳しい取り調べを受けても、砲弾を仕掛けた場所を白状しない。しかも、第一次大戦中の古い砲弾だけに、ジャンの意図通りに爆発するかどうか、彼自身にすら計算できないという不確定な要素もあるので、捜査方針はますます混迷を余儀なくされる。 短い分量ながら、各探偵と犯人の知略の対決をたっぷり味わうことが出来る。ジャンの母親であるロージーの出番が少なく、彼女のキャラクターの掘り下げが物足りないという不満もないわけではないが、起承転結がくっきりした展開の中でサスペンスを盛り上げ、インパクトの強い結末に着地させる手腕は見事 |
No.2 | 5点 | 蟷螂の斧 | |
(2019/12/04 17:55登録) 爆発犯ジャンの心理描写がないので心の内がよくわからない。よって、ラストシーンもモヤモヤ感が漂ってしまう。これがフランス風と言えばそうなのかもしれないが・・・。今までのシリーズと風味は変わっており、ちょっぴりガッカリ。決してつまらないというわけではないのですが。 |
No.1 | 6点 | 人並由真 | |
(2019/10/23 13:03登録) (ネタバレなし) その日の17時。パリのジョゼフ・メルラン通りで爆破事件が発生。負傷者は多数出たが、幸いに死者はいなかった。目撃者の克明な証言から容疑者は高い精度で絞り込まれるが、はたして自分から警察に出頭してきた27歳の電気機械技師の青年ジャン(ジョン)・ガルニエは、大戦中に使われた不発弾を確保し、さらにあと6個各地に仕掛けたと供述。爆弾は時限装置で一日にひとつずつ決まった時間に爆発するので、その場所を教えて欲しければと自分の法務上の自由と多額の金、そして……を要求した。難事件をいくつも解決してきたカミーユ・ヴェルーヴェン警部はジャンと対決。一方で市民の安全を図るが。 あれ? みなさん、読まないんですか?(笑) 2013年のフランス作品。『傷だらけのカミーユ』でカミーユ三部作に一区切りをつけた作者が、ほぼ4年ぶりに真っ当なミステリを書きたい欲求が湧き、そうしたらカミーユの方から自分を出せ、と言ってきたそうである(巻頭の作者前説に、大体そんな事が書いてある)。 作品の時系列としては第二作『アレックス』と第三作『カミーユ』の間に入る、本書の刊行時点まで語られなかった事件という形式。200頁ちょっと、文庫の級数も大きめと短い作品であり、作者自身も「一冊ではなく半冊」と語るストーリーだが、良い意味で読者を振り回す内容はそれなりに楽しめる。 事件の構造は、人によっては割と早々と察しがつくかも知れないが、評者の場合は小説上のテクニックが一種のミスディレクションとして機能して、正直、最後まで意識しなかった。終盤で、ああ、これはそういう物語だったのだな、と軽くため息をつく。 これまで読んだルメートル作品(これで5冊目)の中ではもっとも、シムノンのメグレものから受けつがれた、フランス警察小説(刑事の視点から覗く人間ドラマ)のDNAを感じた。冒頭の「これが(中略)なのか?」と思わせる、たぶん作者の確信的な妙にユーモラスな叙述も愉快。 それで巻末の解説によると、ルメートルはもうカミーユものは書かないよ、と言ってるらしいけど、いつかまた気が変って欲しいなあ。『カミーユ』の後の作中ポジションのカミーユだからこそ語れる物語って、きっとあると思うので。 |