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ミステリの祭典

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HORNETさんの登録情報
平均点:6.32点 書評数:1163件

プロフィール| 書評

No.123 4点 名もなき毒
宮部みゆき
(2011/01/16 13:25登録)
 これまでの氏の作品を読んでいて,この厚さを見ると,「何かがあるんだろう」と期待して読んでしまいますが,正直,何ということはない作品でした。作品の質としては可も不可もないですが,この長さということを合わせて考えると,マイナス評価になってしまいました。


No.122 7点 火車
宮部みゆき
(2011/01/16 13:22登録)
 新版「東西ミステりーベスト100」に触発されて再読。
 改めて読んでみるとほとんど内容は覚えておらず、初読のように読めた。失踪した「関根彰子」がいつまでたっても表れず、やきもきしながら、しかし少しずつ真相に近付いていく過程を楽しみながらどんどん読み進めてしまう。些細な手がかりや気付きによって新たな展開が見えてきたときはまさにひざを打つ思いで、本間刑事に共感しながら物語に没頭してしまう面白さがある。
※ネタバレ気味
 ラストは、残りのページ数から見てもこんな感じかなと予想はしていた。ひょっとしたら出てきさえしないのではないかと心配したぐらいだったから、まぁよかった。確かに消化不良な感じもするが、ここまで引っ張ったものを納得させられるような終わり方は難しく、下手なことを書くと返ってこれまでの謎の魅力が半減するとも思う。アイリッシュの某作品を思い出させるような終わり方だが、どちらもこれが賢明だと感じる。


No.121 8点 動機
横山秀夫
(2011/01/16 13:12登録)
 短編集を多く出している著者ですが,その中でもこれは秀逸な一冊です。表題作は,警察手帳が持ち去られ,内部犯の犯行と概ね分かりながらも,その動機が見当たらない,いわばホワイダニット。ラストの「密室の人」は裁判官を主人公にした,法廷の裏側,家族関係を描いた一風換わった作品。私はこのラストが気に入りました。


No.120 7点 陰の季節
横山秀夫
(2011/01/16 13:02登録)
 D県警を舞台としたシリーズ短編。それぞれの話で,共通した人物が違う役割で出てくるので,通して読むと面白いです。どの作品も優れていますが,タレこみの内部調査にかかわる腹の探りあいを描いた「地の声」がよかったです。


No.119 7点 真相
横山秀夫
(2011/01/16 12:54登録)
 警察小説ではない,著者の短編集。息子を殺された男が,事件の真相を知る中で,息子の別の一面,娘の本音を知っていく表題作,過去の事件を隠蔽するために選挙に立候補した男の選挙戦を描く「18番ホール」など,それぞれに秀逸な作品。著者の筆力を改めて感じさせられる一冊でした。


No.118 7点 震度0
横山秀夫
(2011/01/16 12:35登録)
 警察内部(上層部)の腐敗した権力構造,その中で立身出世していくための権力闘争などが描かれていて非常に面白かったです。しかし,フィクションとはいえこうした作品は警察に対するイメージを私たちの中に形作ってしまいます。
 何はともあれ,警察小説第一人者の代表作といえるでしょう。


No.117 7点 本格ミステリー宣言
評論・エッセイ
(2011/01/16 11:24登録)
 この採点に添えられている「楽しめた」という言葉があてはまるかは分かりません・・・むしろ「勉強になった」という感想です。「探偵小説」から「推理小説」,「ミステリ」と,全体枠を指す言葉ですら変遷してきたその歴史をたどりながら,その中で著者が考える「本格」をはっきりと定義づけています。
 ただ,何が本格で何が本格でないか,面白いと感じた作品が本格の範疇に入るかそうでないか,それを見極めることを目的とするのではなく,ミステリについての見識を広めるという意味で,読んでおいて損はない一冊だと思います。


No.116 5点 眼球綺譚
綾辻行人
(2011/01/16 10:07登録)
 綾辻氏のファンの中でもホラー作家としての側面が好きなファンと,本格ミステリ作家としての好きなファンとがいるので,評価は分かれるでしょう。私はどちらかというと後者なのですが,こうしたホラーの雰囲気を描く氏の筆力は,本格物にも少なからずよい味付けをしていると思うので,読んで損した気にはなりませんでした。
 通して描かれている,咲谷由伊という女性がどんな顔なのか,ずっと想像しながら読みました。


No.115 7点 密室殺人ゲーム王手飛車取り
歌野晶午
(2011/01/16 09:54登録)
 タイトルから,密室ものを集めた作品集かと思ったら,その意味の「密室」ではありませんでした。しかし一つ一つのトリックはよく考えられていて(本文中でも認められてるように,過去の有名作品の焼き増し感のするものもありましたが),基本的にこういう短編集は好きです。現実には絶対あってはいけないことですが,まぁそれは殺人を扱うミステリ全てがそうですから。
 続編の「2.0」は未読ですが,本作同様のハンドルネーム,人物が登場するそうですね。そうすると本作の結末はどうなったのでしょうか・・・?そういう意味でも続編も読んでしまいます。


No.114 6点 家守
歌野晶午
(2011/01/16 09:36登録)
 表題作のトリックは,推理は出来ましたが愕然としました。これは現実的に可能なのでしょうか。プロバビリティーの犯罪を題材とした「転居先不明」は,夫婦二人暮らしの家の中で展開される,その様子を思い浮かべながら読んでいるとなんだかぞっとしました。
 ここまでの採点者オール6点に合わせたわけではないですが,同じになりました(笑)。


No.113 6点 そして名探偵は生まれた
歌野晶午
(2011/01/16 09:29登録)
 表題作については賛否両論で,むしろ「否」のほうが勝っていますが,確かにミステリとしては△ですが私は好きでした。探偵が事件の謎を解く,純然たるフーダニットだと思っていたら,途中からの急展開により裏切られ,それが面白かったです。ミステリとしてはやはり,「生存者,一名」でしょう。


No.112 8点 放浪探偵と七つの殺人
歌野晶午
(2011/01/16 09:19登録)
 信濃譲二が活躍する短編集。一つ一つがきちんとした謎解きの体をとっており,純粋に推理を楽しめます。信濃のキャラも光っていて,家シリーズよりむしろよかったくらい。私としては「有罪としての不在」がロジックが優れていて好きでした。
 唯一の難点は,いくつかの作品については,タイトルがあまりにも解くべき謎に直結していて,読んでいくうちに「分かってきてしまう」ことでしょうか。


No.111 5点 白い家の殺人
歌野晶午
(2011/01/16 09:14登録)
 初期の氏の作品を読むと,本格ミステリへの強い熱情が感じられ,本作品もその一つといえます。仕掛けやトリックは,緻密さこそ欠けますが,創意工夫されたものであり,妙に科学的であったり複雑なロジックであったりするものより,分かりやすくてよいと感じるところもあります。
 本格ミステリらしい密閉的な雰囲気は好きです。ただ,密室のからくりについては「結局,そんなことか」。猪狩家の背景にある人間関係が最後に一気に解明されるのもちょっと・・・。
 でしたが,まぁ楽しく読めました。


No.110 7点 警官の紋章
佐々木譲
(2011/01/16 09:04登録)
 道警S第3弾。洞爺湖サミット前,郡司事件で自殺した警官の息子警官が失踪。大臣警護に就いた小池巡査,当時の密輸事件を探る佐伯,警官捜索に就いた津久井,三者それぞれの動きが最後に一つにながっていきます。スピード感もあり,構成のうまさもあり,一気に読み進めてしまう魅力がありました。
 佐々木譲は,「笑う警官」以降の道警Sが一番面白いと思います。


No.109 4点 妃は船を沈める
有栖川有栖
(2011/01/16 09:01登録)
 三松妃沙子という女が通して出てくる二つの中編の連作。トリックとしては一作目のほうが好きです。
 ただ,個人的には,読むほどにこの三松妃沙子という女への嫌悪感が強くなり,なんというか・・・気持ち悪くなります。読後感はあまりよいものではありませんでした。


No.108 5点 ら抜き言葉殺人事件
島田荘司
(2011/01/16 08:56登録)
 作家・因幡沼の「ら抜き言葉」にクレームを付けていた女性笹森が自殺と見られる状況で死に,因幡沼の刺殺体も発見。吉敷竹史が地道な捜査によりその真相を解明するフーダニットミステリです。
 吉敷竹史シリーズは初めて読みましたが,天才肌の御手洗潔とはまた違った泥臭い魅力があっていいですね。


No.107 7点 御手洗潔の挨拶
島田荘司
(2011/01/16 08:52登録)
 一つ一つの短編がよく練られており,御手洗潔シリーズのショートストーリーを楽しむには最適です。「疾走する死者」は「読者への挑戦状」もあり,しかもそれが解けたので楽しめました。隅田川での捕り物を描いた「ギリシャの犬」も暗号解読を主体にしていて面白かったです。


No.106 6点 トーキョー・プリズン
柳広司
(2011/01/16 08:48登録)
 戦後の刑務所を舞台として,探偵が囚人の協力を得て事件の解決に取り組むという作品。
 作者の文章力もあって読み応えがあり,楽しんで読めました。真相に迫るくだりはちょっと偶然もあり,畳み掛ける感もありで,ミステリとしての評価はイマイチかもしれません。
 戦争絡みの話に魅力を感じない人(純然たるミステリを楽しみたい人)には合わないかもしれませんが,展開はテンポよく読みやすいと思います。


No.105 8点 ダブル・ジョーカー
柳広司
(2011/01/16 08:30登録)
 自分の中で評価の高かった「ジョーカー・ゲーム」の続編として,期待を裏切らない面白さでした。
 今回結城中佐はほとんど表には出てきませんが,作品の要所で影をちらつかせています。そういうところが,前作の焼き増しではなく,続編として深みをもたせています。
 裏の裏をかいてくるD機関の緻密な作戦に舌を巻きます。


No.104 7点 ジョーカー・ゲーム
柳広司
(2011/01/16 08:26登録)
 スパイ小説(?)というジャンルがあるのか分かりませんが,こういう類のものは初めて読みました。スパイ養成機関「D機関」のボス・結城中佐の徹底した教育ぶりと,選ばれた者たちの暗躍が,緻密さと凄みをもって描かれており,思わず読み入ってしまいます。冗舌でなく力のある,作者の文体も好きになりました。横山秀夫などが好きな人にはきっと受け入れられるのではと思います。

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