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ミステリの祭典

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虫暮部さんの登録情報
平均点:6.20点 書評数:2209件

プロフィール| 書評

No.349 9点 女王国の城
有栖川有栖
(2017/02/20 10:06登録)
 江神の台詞にもあるように、〈ペリハ〉にはあまり効き目がない。“捜査を混乱させるためのフェイクの手掛かり”をあまり自由に解禁すると、犯人は(というか作者は)ホワイダニットをぶっちぎって幾らでも奇天烈な事件現場を無意味に作り出してしまうではないか。蛇足だと言う気もするが、しょーもないダイイング・メッセージを持ち出してしまうのはそれこそクイーンの血を継ぐ悪癖か。
 読書の楽しさにじっくり浸れるこの長さはありがたい。やはりこのひとは文章がさりげなく上手い。 


No.348 8点 十二人の死にたい子どもたち
冲方丁
(2017/02/06 10:46登録)
 面白い。基本設定が判ったあたりで“こうだったらつまらないな~”と危惧していた通りの展開ではあったのだが、相応の説得力があり納得出来る結末だった。ただ、登場人物の移動に関する議論はチマチマし過ぎ。


No.347 8点 結物語
西尾維新
(2017/02/01 11:56登録)
 〈物語〉シリーズ自体は、ジャンルでいうなら青春オカルト・ファンタジーといったものに該当するのだろうが、本書の第一~三話はミステリ要素を含んでいる。特に第二話はファンタジー要素無しでも成立しそうな話。いずれもミステリ的には小品だが、主要キャラクターを総ざらいしつつ新キャラを巧みに絡ませて上手く膨らませている。いや逆か? キャラクターの将来の話に味付けとしてミステリを絡ませてる? 際限なく広がって行くこのシリーズは水増しと言えば水増しなのだろうが、その水こそがとても美味で私は好き。


No.346 5点 遠い唇
北村薫
(2017/01/24 09:11登録)
 「しりとり」の鮮やかな解は印象的。
 しかし短編集全体としては期待したほどではない。北村薫の場合、心の機微を繊細に描く類のものは、文章が巧みなだけに綺麗になり過ぎで却ってフックに欠ける。犯罪絡みのミステリのほうが好き。
 「パトラッシュ」で、ミドを平たく発音するというのは不自然。“ミ↑ド↓”だから寧ろカッコウに近いでしょう。
 「付記」の“うっかり犯人が当たってしまったらつまらない、驚かせてほしい”には大いに共感。私も推理はしない派。


No.345 6点 深泥丘奇談・続々
綾辻行人
(2017/01/16 10:46登録)
 作者の頭がちょっと特殊な状態で、世界がこういう風に見えるようになっていて、本人はあくまで実話のつもりでコレを書いている……んだったら、にゃあ、面白い。

 「減らない謎」に出て来る“肥満に悩んでいる人よりも、飢餓で苦しんでいる人のほうが遥かに多い”というのは、言葉の定義にもよるだろうけど、実際は逆なようです。


No.344 5点 θは遊んでくれたよ
森博嗣
(2017/01/11 14:22登録)
 こんな時間、こんな場所に、二人だけで立ったとき、相手が自分を殺そうとしてるか、それとも、そんな気持ちはこれっぽっちもないか、それくらい、わかるんじゃないか?
 というラヴちゃんの意見は、あまり論理的ではないが、非常に説得力を感じた。しかし(あくまで仮説とはいえ)事件の真相でほぼその通りのことが行われているんだよなぁ。なにそれ。
 思わせ振りなだけで回収する気のない伏線の存在感が大き過ぎて、相対的に事件の核がしょぼく見える。


No.343 4点 Φは壊れたね
森博嗣
(2017/01/04 11:04登録)
 この密室トリックは意味が無い。室内にもうひとりいるなら、そいつが刺せば良かったじゃないか。犯人は何がしたかったのか、この行為が何故それをしたことになるのか。作者は“人間の内面は読めない”という言い訳に頼り過ぎである。


No.342 6点 月と太陽の盤
宮内悠介
(2017/01/03 11:16登録)
 『盤上の夜』応用編のような、但しSF要素は皆無の連作。表題作で殺人事件を扱ってミステリ度が上がったのにそのあと人情話みたいな2編で幕、と煮え切らない。というか作者のミステリに対するこだわりはあまり感じられず、囲碁の周囲の人の営みを描くのにミステリの枠組みを利用した感じ(悪いことではない)。文章は巧みだし味わいはあるが、同じ作者のSF作品ほど凄くはない。


No.341 7点 潮騒のアニマ
川瀬七緒
(2016/12/27 09:18登録)
 保険契約についての説明に疑問が残る。
 トシゾーのキャラがナイス。やはり動物には勝てないか。
 果歩が自殺者の最後の一人なら、犯人は遺体をそのまま海に捨てればいいのでは?馬鹿正直に洞窟に運ぶ必然的な理由が欲しかった。
 あとラストがバタバタッと進み過ぎで、死者達が惹かれていたカルトなイメージが掘り下げられていないのが残念。


No.340 7点 四季
森博嗣
(2016/12/09 16:01登録)
 厳密を期すなら、原理的に作家は自らより賢い登場人物を創造することは出来ないはずである。しかしだからといって天才キャラは不可、としてしまってはつまらないわけで、真賀田四季の天才っぷりもそういう“設定”ということでまぁ良い。
 ただあまりに突き抜けた設定にし過ぎたせいで、四季を記述する言葉が的確である担保が失われてしまった感がある。例えばイエスと言った場合にそれが同時にノーも意味しておりしかもそれがどちらであっても特に変わりはない、みたいな(作中にも“天才の思考に存在する一般化されていない概念には対応する言葉がないかもしれない”といった台詞がある)。小説を読んでいてこういう感覚になることはなかなか無いことで、それは確かにこのトゥー・マッチなキャラクターの価値として充分なものだと思う。


No.339 7点 裁く眼
我孫子武丸
(2016/11/30 19:24登録)
 問題の絵の“特性”は、個人的には(リアリティの有無は別として)許容範囲内。審議される案件があからさまに現実の事件を下敷きにしているのは不満だが、本作の本筋は裁判の中身ではないわけで、もしや作者は話のポイントが分散しないよう意図的にオリジナリティの無い事件を選んだのだろうか?
 因みに“腐った斧”とは“爛柯”。厳密には囲碁そのものではなく、“囲碁にふけって時を忘れる”の意。どのみちこの漢字は(現在は)名前には使えない。


No.338 6点 カムパネルラ
山田正紀
(2016/11/28 10:57登録)
 呪師霊太郎シリーズでも題材とした宮沢賢治にSF側からアプローチした作品。SF設定の中で殺人が発生、中盤までその謎解きで進むものの、ミステリ的決着が中途半端なままSF的カタストロフで押し流してしまった。こういう結末なら全体のSF度がもっと高くて良いと思う。


No.337 6点 掟上今日子の旅行記
西尾維新
(2016/11/21 12:24登録)
 取材旅行がしたくて立てた企画じゃないのか、と思われることも込みでネタに仕立てたような。切り口やストーリーは面白かったが落とし所はちょっと物足りないかも。


No.336 7点 屍人の時代
山田正紀
(2016/11/21 12:21登録)
 ミステリの形を借りて時間の無常を描いた風情は好き。
 しかし、第二話の“毒ガスの用心のため口だけで息をする”と、第四話の“貨車を燃やして石灰粉を消してしまわないと、農場に搬送できない”の理屈が判らない。苦労して辻褄を合わせたという印象が残る。このひとのミステリは多少破綻しててもアリなんだけど……。


No.335 8点 人ノ町
詠坂雄二
(2016/11/14 11:34登録)
 『女王の百年密室』(森博嗣)や『叫びと祈り』(梓崎優)を想起した。或る種の静謐さに満ちた謎めく物語。実は後半、ネタが割れてしまえばありがちな設定ではあるが、アプローチが上手ければ充分魅力的な世界を構築出来るのだ。外来語を排した文体も乾いた無国籍旅情に的確に寄与している。面白かった。


No.334 7点 カオスコープ
山田正紀
(2016/11/11 11:28登録)
 認識論、存在論、脳地図といった“山田正紀用語”は“確立された個性”か“ネタの使い回し”か微妙なところだが、一応の整合性を維持してミステリに着地しているのは立派。複数の殺人事件が些細な枝葉に思える遠近感の狂ったヴィジョンに呑み込まれる快感。
 でも正直に言えば、冒頭の「大鴉」談義が一番面白かった。


No.333 9点 煙の殺意
泡坂妻夫
(2016/11/08 10:08登録)
 敢て文句をつけるなら「椛山訪雪図」。その絵のイメージが私の心の中に、浮かび上がっては来なかった。あーそういう設定なんですね、としか思えず、犯人が見間違えたと言われても“架空の薬物の特殊な作用を利用したトリック”を読んだような気分。まぁ私の読み方が下手ってことで。 
 「歯と胴」の最後の行にはクラッと来た。収録順だが、コミカル度の高い「開橋式次第」は最後ではないほうが良い。読み返すときはシャッフルしよう。


No.332 6点 火神を盗め
山田正紀
(2016/10/31 10:53登録)
 ところどころにさぁ感動的に盛り上がれと促すような文章があるが、それに乗っかるにはキャラクターの掘り下げが甘い気がした。工藤はなんであんなに強気なの。フツーの会社員があんな風に会社を脅すなんて、フィクションとしてのリアリティに欠ける。かつて過激派だったとかの過去がなくちゃ。


No.331 6点 虹果て村の秘密
有栖川有栖
(2016/10/31 10:51登録)
 有栖川有栖らしい、そしてジュヴナイルらしい、丁寧で好感の持てる作品。綺麗なロジックが披露されている。
 ただ、足跡の件はやむにやまれず発生した状況であるのに対して、喧嘩の件は余計なアリバイ工作を試みてそこから足が付いてしまった形なわけで、“綺麗に解いて見せるために作者が付け加えたネタ”というわざとらしさが否めない。犯人が殺害現場で望遠鏡を(午後9時過ぎに!)覗いた理由にもう少し必然性が欲しかった。


No.330 8点 パノラマ島美談
西尾維新
(2016/10/24 10:15登録)
 文体や世界設定のせいもあってミステリとしては薄味なシリーズだが、本作は5つの謎を用意した物量作戦で満腹感高め。

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