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ミステリの祭典

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虹を待つ彼女

作家 逸木裕
出版日2016年09月
平均点6.67点
書評数3人

No.3 5点 yoshi
(2018/02/10 15:01登録)
前半は面白かったのだが後半失速した。いくら何でも晴のAI制作だけで最後まで持たせるのはプロット的に無理がある。冒頭の派手な自殺から、ものすごいドラマを期待するのだが、明らかになる晴の人格は意外と普通。最後、晴のAIが工藤ではなく雨を選ぶわけだが、晴がレズビアンであることがわかった以上、工藤にはこの選択はどうすることもできないわけで、やはりそこにはドラマ性が欠けている。従ってラストの工藤の喪失感にも共感できない。

No.2 8点 虫暮部
(2017/09/04 09:34登録)
 これは面白い。(良い意味で)長沢樹あたりと共通する空気を感じた。
 工藤の嫌な奴っぷりや、似て非なる榊原みどりのキャラクターが良い。細かなエピソードや脇役の配置も巧みで、そのおかげで結末の“失恋”にも説得力がある。
 ただ晴の内面が(一応の説明は施されたが)ブラックボックスなので、厳しく言うなら“読者受けを狙った不思議ちゃん”のまま終わった点がちょっと残念。生前の彼女はこんなことを考えていたのか!と視界がガラッと変わるような驚愕を期待していた。前半が面白かったので期待値が膨れ上がってしまったわけです。

No.1 7点 メルカトル
(2017/02/03 22:18登録)
第36回横溝正史ミステリ大賞受賞作。
渋谷スクランブル交差点を見下ろすビルの屋上で、ドローンによる劇場型自殺事件を起こした晴。晴と同棲していたという謎の人物、雨。晴の過去を探るうちに次第に彼女に惹かれていく人工知能の研究者で主人公の工藤。工藤が開発した人工知能スーパーパンダとの囲碁対決に賭ける棋士目黒。これらの人物が混然一体となって織りなすファンタジックな佳作。
SF、ミステリ、ファンタジー、ハードボイルド、恋愛小説の要素を混ぜ合わせたような作品です。しかも新人とは思えない確かな筆力と構成力。大変面白く読ませていただきました。
2020年という近未来の東京が舞台だが、現在とさほど変わりはなく違和感はありません。突き詰めれば恋愛小説なのでしょうが、ラノベを愛する読者にも受け入れられそうな作風です。この人はどの方向に向かうのか未知数ではありますが、何を書かせても難なくこなせそうな気がします。まだまだ上を目指して活躍できる人材だと思います。

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