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ミステリの祭典

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鏡の殺意

作家 山田正紀
出版日1987年08月
平均点5.67点
書評数3人

No.3 5点 人並由真
(2020/10/14 03:09登録)
(ネタバレなし)
 昭和59年6月23日。芝浦の一角で、広告代理店の社員、29歳の関谷実が刺殺される。加害者は24歳の無職の青年、小島正己。捜査の結果、彼女と別れるなど生活が荒んでいた小島は、正常な精神の平衡を喪失して面識のない関谷を殺害したものと思われ、罪を問われないことになった。そんななか、小島の捜査に関わった青年刑事・水島則男は小島事件の結果とは別の部分で、警察組織の歯車となっている自分を痛感。実業家の令嬢、尚美と結ばれて警察を辞め、義父の経営する会社に就職した。そしてそれから3年近い歳月が経過。ある日、関谷の遺された妻・礼子は、関谷を殺した小島は心神喪失ではない、計画的な犯行だったのだという、ワープロ打ちの匿名の手紙を受け取る。礼子は、事件のなかで知り合った元刑事の水島に、この事実を訴えるが……。

 数年前に閉店直前のブックオフで10円で購入した、在庫処分の一冊(1987年の元版のフタバノベルズ)。
 水島や礼子、小島、さらにもうひとりの主要人物の視座に読者をシンクロさせ、事件と人間模様の迷宮のなかに読み手を引き込もうとする、フランスミステリっぽい作品。

 とはいえもともと、そんなに深いものを用意してなかった大枠のなかで、年季を積んだベテラン作家が書きなれた手癖だけでそれっぽくまとめた印象で、あまり感入るものはない。

 またこういうつくりの作品だからある程度は了解するが、作中の人間関係の一部が作者サイドのためばかりに都合よく、目隠しされている思いなどもある。
 特に後半に出てくる某中年キャラなどの扱いというか叙述は、話を膨らまそうとして、かえって作品世界を薄くしてしまったように思えるのだが。
 
 山田正紀レベルの作家(才能、実績いろんな意味で)なら、自然にタイプキーを叩くテクニックだけでもこれくらいのものは苦も無くひねり出せるだろうなあ、という感じの一冊。
 ミステリや小説は全部が全部、書き手が多かれ少なかれ、心に創作のための汗を書きながら綴るものでもないかもしれないけれど、それにしてもこれはちょっとなあ、という作品であった。
(万が一、作者が難産の末に額に脂汗をにじませてこれを書いた、というのなら、お詫びを申し上げる。とはいえその場合はその場合で、別の意味で困ってしまうんだけれど~汗~。)

No.2 6点 虫暮部
(2017/08/02 10:52登録)
 事態の進展に伴い足許から世界が崩れて行って、しかし再構築はされず、真相らしきものが一応明らかになったあとも摑みどころの無い場所にポツンと残されていることに気付く……というのはミステリ系に限らず山田正紀作品によく見られる構造。ストーリーが直線的で細かな目配りに欠けるし、“真実の確定”が中心ではないし、厳しく見るなら、曖昧な“雰囲気”を核に据えた舌先三寸とも言える。しかし再読したところ以前よりも面白く感じたのは、私がミステリに求めるものが変わってきたからか。

No.1 6点 由良小三郎
(2002/03/18 20:42登録)
これも比較的平凡な読後感でした。
無意味よりも破滅を求めるというのがキーワードだそうです。正常な感覚の人間が異常に踏み込む感じに飛躍があって、ちょっとついていけませんでした。

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