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ミステリの祭典

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τになるまで待って
Gシリーズ

作家 森博嗣
出版日2005年09月
平均点4.62点
書評数8人

No.8 5点 E-BANKER
(2024/04/29 13:25登録)
Gシリーズの三作目。記号は「τ」・・・なんて読むのか初めて知りました。
「Φ(ファイ)」「θ(シータ)」ときて、今回は「τ(タウ)」・・・。やっぱり、何か深~い意図があるんだろうね・・・
そう思わざるを得ない。2005年の発表。

~森の中に建つ洋館は、「超能力者」神居静哉の別荘で「伽羅離館(からりかん)」と呼ばれていた。この屋敷に探偵の赤柳初朗、山吹、加部谷、海月ら七人が訪れる。突然とどろく雷鳴、そして豪雨。豪華な晩餐のあと、密室で館の主が殺害された。死ぬ直前に聴いていたラジオドラマは「τになるまで待って」・・・。大きな謎を孕むGシリーズの第三作~

ここまで来ると、もう、普通の本格ミステリーではない(のではと感じる)。
もちろん表向きや体裁は本格ミステリーそのもの。鉄格子付きの窓と頑丈な棒鍵で施錠された扉、という超堅牢な密室だったり、不穏な登場人物、不穏な「館」、そして、なぜか「館」の玄関はある瞬間から施錠され出ることができない・・・
もう、物凄い道具立てで、ミステリー好きの心をくすぐる要素は満載。
ただし、その解法は今まで以上に読者を突き放してくる。なにせ、探偵役の犀川なんて、ものの数分現場を見ただけで、トリックを見破ってしまう。
そして、肝心の密室トリック。これが想像以上に「物理的」なのだ。「物理的」というのは決して「超絶トリック」という意味ではない。どこにでもあるような簡単な道具を使ってできる仕掛けを、人間の手で行った・・・という意味での「物理的」なのである。
あまりにも単純というか、あっさりしすぎていて拍子抜け感は半端ない。むしろ、神居のマジック(加賀谷をアナザーワールドへ連れて行ったやつ)の仕掛けのほうが面白いくらいだ。

さらにスゴイ(?)ことに、本作は真犯人が指摘されないまま終了となってしまう!!
名前がほのめかされてもないところがなかなかスゴイ。こんなのアリ?
もう、なんていうか、作者としてもここまで量産してくると変化球というか、「力をこめたストレートなんて投げていられるか!」とでも言わんばかりである。
ただ・・・その分、本作は実に「意味深」である。本作自体がシリーズの伏線となっていることが十分に予想できる。この「伽羅離館」の存在も、赤柳探偵も、萌絵の叔母の意味深な発言も・・・
まあそういう意味では旨い「仕掛け」ではある。
またもや作者の手のひらで転がされてしまう、哀れな読者となってしまうのだろう・・・ね。

No.7 5点 Tetchy
(2021/08/26 23:13登録)
Gシリーズ3作目は嵐の山荘物。岐阜県と愛知県の県境の山奥に位置する≪伽羅離館≫という屋敷で密室状態の中、超能力者と呼ばれている館の主、神居静哉が何者かによって殺害される。そして外部は雷雨降りしきる嵐でなぜか外部に通じる扉が鍵も掛かっていないのに開かない状態になる。その事件に出くわすのが加部谷恵美ら3人と探偵赤柳初郎ら一行と神居静哉を取材に来た新聞記者富沢とカメラマンの鈴本、そして彼らを伽羅離館へ案内する不動産会社の登田達一行だ。

本書では密室殺人以外にもう1つ謎がある。それは超能力者神居静哉が加部谷恵美をアナザ・ワールド、異界へと連れて行った謎だ。それは同じ部屋にいながら互いの姿が見えない、いわば異なった次元もしくは位相に連れていくというマジックだ。

犀川の推理によって解かれるのだが、正直おかしな話だ。
まず雷に見えたのが溶接火花だったとすると、それは神居が登田にお願いしたこととなる。しかし扉を溶接するのは神居の信者山下と平井も知らなかったことでなぜ神居が外部扉を溶接させたのか解らない。
犀川の推理では犯人は神居殺害後に外部への連絡をとれなくするため、誰かが外に出るのを防ぐために溶接したのだと述べるが、雷に見せかけたのは神居ではなかったのか?なぜ彼が扉を溶接させたのかがよく解らない。
あとセメントで扉を固定したのもよく解らない。溶接だけで十分ではないか。なぜセメントでシールをするのか?そしてそれを誰がやったのか?犯人?

メインの事件である神居の密室殺人は外部の人間が窓の鉄格子の一部を切断して、部屋に入って神居を殺害した後、再び鉄格子を復旧したというのものだ。
密室にしたのは少しでも遠くに逃げおおせるためだと犀川は推理する。そして本書では驚くべきことに殺人事件の犯人が明かされないまま物語は閉じるのである。
いやはや全く以て人を食った、いやミステリ読者を食ったシリーズである。

密室殺人事件のトリックを解き明かした犀川創平に対し、警察は犯人は誰かと問うが、犀川は知りません、それを探すのが警察の仕事でしょうと一蹴する―この件はかなり笑った―。現実世界では当たり前すぎるが、この当たり前なことを本格ミステリでするところに森氏の強かさを感じる。

本書は真賀田四季の計画という大きな謎を断片的に語っているエピソードであり、加部谷達が出くわす事件はその過程における些事に過ぎないと作者が位置付けているように思えるのだ。
神居静哉を殺した犯人。そしてその最有力容疑者と見なされる不動産業者の登田昭一は失踪したまま。
更にエピローグでは萌絵の叔母佐々木睦子の前に現れた赤柳初郎の髭を見て彼女は「年季は入っているようだが私の目は誤魔化せない」と述べ、微笑んで去っていく。つまり真賀田四季を追う赤柳初郎もまた怪しい人物であると示唆して物語は閉じられる。

Gシリーズの読み方が3作目にしてようやく解ってきた。
謎めいたタイトルについてはとにかくそれぞれの作品の中ではほとんど意味を成していないと理解しよう。
そして事件は十全に解決されないと腹を括ろう。
また真賀田四季の影が常に背景に隠れていると意識しよう。
赤柳初郎にはもっと注意を配ろう。
これら4箇条を念頭に置いて次作に当たろう。そうすればもっと楽しめるだろうと期待しよう。

No.6 5点 まさむね
(2017/11/12 18:37登録)
 「手品」のトリックは判りやすかったですねぇ。これ、その場にいたら絶対に気付くと思うのですよねぇ。でも、これを捨てネタにして、「事件」の真相に一捻り加えるお考えなのね…と期待していたら、あらら、犀川センセ登場であっさり解決しちゃいましたねぇ。うーん、そうなのね。
 とはいえ、読みやすかったこと、さらに、もう暫くこのシリーズを読み進めたくなったことも事実なので、この採点にします。

No.5 6点 虫暮部
(2017/07/27 11:56登録)
 ドアの溶接をセメントでカモフラージュした、と言うのは誰に対するカモフラージュなのか?密室状況を作った理由が時間稼ぎならトリックがあとで露見しても問題は無いわけで、そんな作業をしている時間こそが勿体無いのでは。
 トリックは肩透かしだしストーリーもたいしたこと無い。しかしどこがどうと言うわけではないが、この時期の森博嗣作品としては比較的面白く感じるほうの一冊。

No.4 5点 シレン
(2011/09/16 18:31登録)
このシリーズにしてはS&Mの出番多し。
それに「あの人」の名前もついに登場。
でもそれだけ。
淡々と進んで、ラストにささっと謎解きしておしまい。
すごく薄味でした。

No.3 2点 ムラ
(2011/08/30 18:04登録)
基本、この作者の文章やキャラが好きなので楽しめたが、純粋にトリックを評価するならこんなものかな。
やってることは、S&Mの笑わない数学者のスケール小さくしただけだし。
モブのキャラもイマイチ薄かったし。でも短編だとこんなものなのかな。
とりあえず萌絵と犀川が夫婦っぽく見えてホッこり出来た。

No.2 4点 yoneppi
(2010/09/17 21:02登録)
今後このシリーズを読むかどうか迷う作品。赤柳の正体が気になる他は特に…。

No.1 5点 VOLKS
(2007/12/24 12:06登録)
作中人物達の会話中心で殆どが埋め尽くされ、解決は一瞬で終わってしまい「ハテ?」という疑問符が残った。
今後、赤柳初朗の動向が気になる。

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