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ミステリの祭典

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花嫁のさけび

作家 泡坂妻夫
出版日1980年01月
平均点6.38点
書評数13人

No.13 6点 みりん
(2024/04/04 23:40登録)
また騙されちまった! 泡坂妻夫の騙しの業には今のところ全敗。

【直接的なネタバレはありませんが、未読の方は読まないことを推奨】

序盤はロマンス溢れる雰囲気で悪くはないが、血みどろの惨劇を求める私のような読者にとってはかなり退屈だ。しかし、恩田陸の解説によるとこれらはすべてダフネ・デュ・モーリア作の『レベッカ』という名作小説を下敷きにした壮大なミスリードだったらしい…!私のように古典の教養がないと、こういうオマージュが楽しめなかったりする(笑)
んで、その仕掛け以外の密室トリックですが、ありきたりすぎて驚きはなかったですね(気づけはしませんでしたが)
騙しの姿勢と密室トリックが相殺して6点


恩田陸が解説で、"「あっと驚くトリック」を求めて巷を徘徊する本格ミステリのファンとして読んだ時は衝撃を受けなかったが、同業に手を染めてこの作品の凄さがわかった"的なことを書いているので、玄人好みの作品だと思います。私はまだ前者です笑

結論:古典と触れ合うことは大事!

No.12 6点 じきる
(2021/09/26 03:52登録)
ミスディレクションの誘い込みから、反転への流れは流石の巧さ。隠れた良作でしょう。

No.11 7点
(2020/10/30 16:14登録)
 混血の映画スター・北岡早馬とフランスで念願の結婚式を挙げ、幸せの絶頂に立った松原伊津子。だが日本で彼女を迎える北岡家の人々は今もなお、約一年前に急逝した前妻・鍵島貴緒の追憶に囚われ続けていた。挙式からわずか四日後、そんな伊津子の境遇と重なるような早馬主演の映画〈花嫁の叫び〉がクランクアップする。そして彼らの結婚を祝う撮影所での毒杯ゲームの最中、新たな悲劇が起こり、邸の庭からは別の死体まで発見された・・・
 マジシャンとしても名高い著者が、技巧の限りを尽くした傑作ミステリー、遂に復刊。
 ほぼ一年ごとの発表だった初期三作から二年後の1980年1月、『湖底のまつり』に続いて刊行された、泡坂妻夫の第四長篇。同年12月には第五長篇『迷蝶の島』も上梓されています。
 これ以後も氏の長篇は、1988年のノンシリーズ第十一長篇「斜光」までほぼ年一冊ペース。つまり本作の発表までにはかなりの手間暇を掛けている訳で、連城三紀彦「運命の八分休符」同様、目立たぬ力作と言っていいでしょう。その狙いからか著者のエッセイでも「掘出された童話」やヨギ ガンジーシリーズ二長篇などと異なりほとんど言及されませんが、それらの精緻さにも劣らぬ最高レベルのテクニックが注ぎ込まれています。地味ながら泡坂作品ではひょっとしたらこれが一番かも。
 シチュエーションこそデュ・モーリアの名作「レベッカ」を本歌取りしていますが、読後に両者の冒頭部を比較すればその違いは明らか。ストーリーも似て非なる展開で、〈思い込み〉〈食い違い〉を利用したこのような"ずらし"が、読者を迷宮に誘い込みます。一見派手な「毒杯ゲーム」よりも、物語の影に隠れていた前妻の死の謎がメインになってくるのは、その好例。全体的に玄人好みの作りです。
 ただ全貌が明らかになっても、総合的には初期三作に及ばないかな。「湖底のまつり」とは別方向の〈騙し〉を志向したものですが、情感溢れる前作とは逆に、意図せずして硬質の感触になっているのがちょっと面白いです。

 追記:巻末におけるパラグラフで、全体が手記の体裁とも読めるのに気付きました。映画シナリオと二重写しの筋立てといい、色々とメタ構造を駆使した、企みの多い小説です。

No.10 6点 ことは
(2019/08/31 14:36登録)
再読。「レベッカ」と続けて読んでみた。
以前読んだときは、メインの仕掛けに「すげぇ」って思ったけど、うーん、仕掛け以外の部分がどうにも楽しめない。もうこれは好みとしか言えないのだけど……。やっぱり登場人物の心理描写がないからかなぁ。仕掛けを考えたらしょうがないとはいえ、うん、仕掛けをメインに楽しんでた若い頃とは好みが変わってきたということでしょう!

No.9 7点 E-BANKER
(2018/01/10 22:27登録)
2019年最初の読書となった本作。
最近、過去の名作(?)をどしどし復刊している河出文庫が「三作連続復刊!」と称して発表予定の作者過去作品の第一弾。
もともとは1980年の発表。

~映画界のスター・北岡早馬と再婚し、幸せの絶頂にいた伊津子だったが、北岡家の面々は数ヶ月前に謎の死を遂げた先妻・貴緒のことが忘れられず、屋敷にも彼女の存在がいまだ色濃く残っていた。そんなある夜、伊津子を歓迎する宴の最中に悲劇が起こる。そして新たな死体が・・・。傑作ミステリー遂に復刊!~

う~ん。脂の乗り切った「実に旨い」作品だった。
幕開けから中盤過ぎまでは静かに進行していく展開。まさにイントロダクションなのだが、実はこのイントロダクションに結構な仕掛けが施されていたことが後々判明することになる。
中盤もかなり過ぎてからついに殺人事件が発生し、それ以降は急展開。
読者は急転直下、実は作者の企みに乗せられていたことに気付く。

これはいわゆる「反転」っていうことなのかな?
読者はまるで鏡に映った別の姿を見せられていた・・・っていうこと。(合ってるか?)
貴緒という強烈な印象を与える人物に、実は大いなる欺瞞が仕掛けられていたわけだ。
「蛇」の件にしても、「なんでこんな小道具を?」って考えてたけど、まさかアノためとはねぇ・・・
(でも、この見○ち○いは苦しいのではないか?)

細かいところではいろいろと瑕疵やら突っ込みどころは多そうなんだけど、何よりこの作品世界っていうか雰囲気に最後まで乗せられた感が強い。
巻末解説では「レベッカ」との比較云々に触れられてるけど、未読のためそこはよく分からなかった。
まぁ、読んでみてもいいかな・・・
(第二弾「妖盗S79号」、第三弾「迷蝶の島」も未読のため楽しみ!)

No.8 6点 虫暮部
(2017/08/09 10:19登録)
 ネタバレ大いにアリで書くけれども。
 五章の4。MがI に“もうそろそろ思い当たりやしないか”と告げる内容は、要約すればこう言うことだ。
 “これは君の愛するHを騙して慰謝料を払わせる計画だ。その結果君はHと結婚出来るのだから協力しなさい”。
 それで協力を得られると思ったのだろうか。手駒にそこまで教える必要はないだろうに。愛のことが判っていない奴だと言えばそれまでだが、この場面が非常に滑稽に見える。それも含めて事件の全体像を見直したとき、どうにも作り物めいた、起こる道筋に無い事件を作者が無理に起こしたような印象だ。 

No.7 8点 ボナンザ
(2016/08/25 12:18登録)
流石としか言いようのない傑作。
初期三作やしあわせの書の陰に隠れがちだが、間違いなく泡坂の最高傑作の一つだと思う。

No.6 6点 蟷螂の斧
(2012/02/15 21:28登録)
細かい伏線がちりばめられていたことが、解決編で丁寧に、また見事に説明されています。解説で、フェア・アンフェア(犯人が解らない?)に触れられていますが、まったくアンフェアとは思いません。私にとってアンフェアと感じるのは、犯人がほとんど登場しないような(描写されていない)作品ですね。

No.5 6点 kanamori
(2010/08/15 17:34登録)
泡坂氏のミステリということを前提に読むと、物語の隠された構図はなんとなく分かってしまいますが、客観的な評価だと、よく出来たミステリという印象です。
主要人物の内面描写がほとんどありませんが、「レベッカ」の本歌取りのプロットだとか、周りの人物の行為によって、読者をミスディレクションする手法が採られています。
基本となるアイデアはオリジナリティに欠けますが、小技の技巧がたくさん凝らされた佳作だと思います。

No.4 7点 レイ・ブラッドベリへ
(2009/03/21 02:02登録)
 テレビ・ドラマとして放映されることを知り、当日は早めに夕食を済ませて、テレビの前に座りました。本の方はもう何年も前に読みましたが、その後処分しており、内容もすっかり忘れていたので、新鮮な気持ちで観ることができました(笑)。
 犯人の独白を聞いて「ああ、そうだったのか!これはぜひ、もう一度読まなくては…」とばかり書店に走りましたが、既に絶版のためか、店頭には全く見当たりませんでした。その後も気にはかけていたのですが、先日、たまたま駅前のブック〇フで見つけたので早速購入し、読み直す機会を得ることが出来ました。

 初読の時からずうっと「『レベッカ』の設定を借りているのか」と思っていましたが、再読してみると、なんと、それすらもミス・ディレクションだったことに気づいてビックリ。
それからこの作品を一編の本格推理小説としてみた場合、(あの古典的作品を語るように)確かに「フェア/アンフェア」の議論は成立すると思います。
 でも、それらも含めて、とにかく小説としての構成が素晴らしいと思いました。
この物語をどの視点で描くのか。どのように書き出してどう展開するのか。読者に何を語り何を隠すのか…。
 これらについて本当にすみずみまで計算し尽した、技巧を凝らした作品だと改めて感心したのです。

No.3 8点
(2009/02/12 22:02登録)
2/3ぐらい読んだところで、犯人はこの人物だろうと見当はつけたのですが、見当がつくと同時によくもここまでやるもんだと感嘆して、前の方を何箇所か軽く読み返してしまいました。といっても、毒殺方法等は全くわかりませんでしたが。
『しあわせの書』が顕著な例ですが、この人は長編小説まるごと1冊になんらかの趣向を凝らすことがあり、この作品の徹底ぶりも相当なものです(本書では小説そのものの内部での趣向です)。適当にこの手を試みようとする作家は多いでしょうが、それもほとんどはこの作品発表(1980年)以後でしょうし、この手を不自然に思わせないよう状況設定にこだわり、伏線を張り巡らせた上でとことん極めるのは、まさにこの作者ならではです。
しかし、この作品がテレビ・ドラマ化されたことがあるというのには、疑問を感じてしまいます。『レベッカ』日本版だから映像化しやすいぐらいに思うのかもしれませんが、まあ、あの名作にも戯曲版があるということですし…

No.2 7点 こう
(2008/06/08 20:34登録)
 泡坂妻夫第4長編です。犯人は泡坂作品だからこそ想像しやすく、その犯人がどうやって犯行を実現したかを期待する作品でしょう。犯人は予想できてもその読者へのトリック(犯人、作者共々)はどうしてもわからないと思います。真相がわかれば伏線が至るところに張られていることはわかりますが一つ一つは違和感があっても読み飛ばしてしまいます。
 また犯人がいわゆる証拠品をいつまでも持っていた所などは不自然かな、と思います。
 あとがきにも触れられていますがフェア、アンフェアでゆけば個人的にはアンフェアな作品だと思いますが作品としてはこれでよいかな、と思います。(あとがき通りでフェアに書くとこの作品は成立しないでしょう)

No.1 3点 Tetchy
(2007/11/15 18:44登録)
芸能界を舞台にしたミステリ。
この真相は、例のアレですな。

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