| 虫暮部さんの登録情報 | |
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| 平均点:6.20点 | 書評数:2154件 |
| No.394 | 7点 | 失われた過去と未来の犯罪 小林泰三 |
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(2017/10/17 08:52登録) 全体的にそこまで“犯罪”という要素を前面に出した話ではないので、このタイトルはどうなのか。期待したほどミステリ寄りではない。 双子の姉妹のエピソードは「双生児」(『完全・犯罪』収録)と同じ基盤を別方向に発展させたもの、だよねぇ。面白くはあるがこういう使い回しは感心しないなぁ。 と、引っ掛かる点はあるが、論理の積み重ねがいつの間にか歪でスラップスティックな情景を作り出す手法は粘着質な作者ならでは。“記憶”というテーマは小林泰三SFの特質に合っているのだろう。但し本作はグロ抜き。 |
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| No.393 | 8点 | 少女は夜を綴らない 逸木裕 |
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(2017/10/16 12:58登録) こういう、殺伐とした青少年の心象を描いたミステリは好き。その手の話ではどうしても定番になってしまうネタ、といったものはあるわけで既視感を覚えた部分もあるが、それでも尚、良く出来ていると思う。 イヤな事柄を本当にイヤな感じで書くのが巧み。適度に意外でテンポの良い展開でページを繰らせ、なかなか説得力の有る落とし所に上手く着地している。難を言えば、ボー研の後輩のキャラクターが薄い(ので、後半いきなりしゃしゃり出て来た印象)。 私は読みながら『オーダーメイド殺人クラブ』(辻村深月)を思い出していたが、本書の方をより高く評価する。 |
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| No.392 | 4点 | ダマシ×ダマシ 森博嗣 |
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(2017/10/12 13:17登録) 今に始まったことではないが、思い付きだけで場当たり的に書き進めて、色々綻びが出たけれど書き直すのは面倒なので、ひとの心の曖昧さを免罪符にして辻褄を合わせた、という感じ。本作では、わざわざ殺すほどの必然性が全く無い、という点が致命的。あの人が偶然あの人の顔を知っていてあっさり身元が割れるのも手抜きとしか思えない。他にも合点の行かない記述は多く、森博嗣の近作は不自然ポイントを探す為に読んでいるかのような私である。 |
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| No.391 | 6点 | 完全・犯罪 小林泰三 |
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(2017/09/25 11:07登録) 「双生児」。それまでは強引であっても一応論理の積み重ねで転がして来た話に、最後の最後で唐突に不条理な異物(“終わりではなかったの”)が突っ込まれて終幕、というのはやっぱり話がおかしいと思う。しかし、そのひとが嘉穂であれば事の成り行きをペラペラ話す理由も無いんだよね。というか、“そうだ。一つ方法がある。”ってなんのこと? 「隠れ鬼」「ドッキリチューブ」は前半を読めば後半の見当も付いてしまうが、それでもダレることなく一息に読まずにはいられない文章の気持悪さが素晴らしい。 |
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| No.390 | 6点 | Y駅発深夜バス 青木知己 |
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(2017/09/19 12:44登録) 「九人病」が一番良かったが、最終章の二重三重の仕掛けはいらなかったのでは。 表題作。トリックは面白いが、第三者の行動に依存する側面が強いことと、その時間が数時間に亘る長さであることが難点。彼が途中で何か目立つことをすればアウトであって、私だったらこの計画には乗らないなぁ。 「猫矢来」。加害者の行為の危険度を考えると、警告のしかたが幾らなんでも遠回し過ぎだと思う。 全体として。ミステリに対する誠意は伝わって来るが、だからといって飛距離が物凄く長いわけではない。 |
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| No.389 | 7点 | T島事件 絶海の孤島でなぜ六人は死亡したのか 詠坂雄二 |
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(2017/09/14 11:12登録) 好きなタイプの作品だし前半は面白いのだが、それに比して結末の爆発力に欠けた。がっかりと言う程ではないが、何かもう少し違ったまとめ方があったのではないかという気もする。 本を手に取った時、“表紙のタイトルに難読でもないのにわざわざルビを振っている、あれっ、濁らないんだ?”とチラッと気になったが、それがああいう伏線だったとは。 |
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| No.388 | 4点 | 本陣殺人事件 横溝正史 |
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(2017/09/11 10:55登録) 期待した程おどろおどろしくないし、どうにもギクシャクして感じられる部分が散見され、探偵小説というよりは事件の報告書、もしくは推敲前の未定稿を読んでいるような気分だった。犯人の心情、また両者の主導権の変遷、と言った部分が興味深かったが特に後者はさらりと流されていて残念。ホームズもののネタバレは編集判断でカット出来ないのだろうか(せめてタイトルを伏字に!)。差別用語なんかよりよほど“不適切な表現”だと思うのだが。粗筋紹介の“新郎新婦が惨殺されていた”というのはアンフェアな表記では? 「車井戸はなぜ軋る」と「本陣殺人事件」は、事件の真相の構造がうっすらと共通していないか。被害者ふたりのうち片方が……とはいえそれ自体はよくあるパターンだし、二度ネタだと非難するようなことではない。並べて読むと似ているなぁと思うくらいで。であるからこそ、これを併録したのは戦略ミスだ。「車井戸はなぜ軋る」は、面白いのに結末でがっかり。しかもそのがっかりは作品そのもののせいではない。別の本に収録されていればこうは思わなかった筈だ。私の感動を返して欲しい。 |
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| No.387 | 4点 | 見たのは誰だ 大下宇陀児 |
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(2017/09/05 09:00登録) 第一部の強盗のくだりはそれなりに面白く読めたが、そのあとは場当たり的に展開して無理にまとめたような感じで苦笑することしきり。これが発表時点で探偵作家としてキャリア30年の作者によるものだから困っちゃうなぁ。 この時代は“恋人”のニュアンスで“愛人”と言ってたんですね。 |
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| No.386 | 6点 | ビブリア古書堂の事件手帖7 三上延 |
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(2017/09/04 09:35登録) 単なる思惑の擦れ違いではなく悪意が絡んでいるせいで、一連の出来事が作為的な“大金をかけたゲーム”のようになっている。色々因縁はあるにせよ、なんでそんなのを相手にするの? という感じである。単独で読めば面白いが、シリーズの終幕としてこういうカラーの話を持ってきたのは少々残念。 歯磨きしながら読書は私もするなぁ。 |
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| No.385 | 8点 | 虹を待つ彼女 逸木裕 |
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(2017/09/04 09:34登録) これは面白い。(良い意味で)長沢樹あたりと共通する空気を感じた。 工藤の嫌な奴っぷりや、似て非なる榊原みどりのキャラクターが良い。細かなエピソードや脇役の配置も巧みで、そのおかげで結末の“失恋”にも説得力がある。 ただ晴の内面が(一応の説明は施されたが)ブラックボックスなので、厳しく言うなら“読者受けを狙った不思議ちゃん”のまま終わった点がちょっと残念。生前の彼女はこんなことを考えていたのか!と視界がガラッと変わるような驚愕を期待していた。前半が面白かったので期待値が膨れ上がってしまったわけです。 |
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| No.384 | 7点 | ドローン探偵と世界の終わりの館 早坂吝 |
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(2017/09/01 09:26登録) 種明かしの1ページ前で叙述トリックに気付いてしまった。他には、彼等はみな何かの病気で一定時間ごとに薬(=アレ)を飲まないと命に関わる、なんて案もあったが……余計なことには気付かないほうがより驚けたんじゃないかと思うとちょっと残念。ところでこの真相だと、零が“壺を振り下ろして”ドローンを破壊しようとするのは苦しいのでは。 |
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| No.383 | 4点 | 罪の声 塩田武士 |
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(2017/08/31 07:17登録) 31年前の未解決事件を新聞社と俊也が同じタイミングで調べ始める、という偶然はアリか?今になってここまで辿れた線を、当時何故警察は逃したのか? 実在の事件をネタにしたという以上のプラス・アルファはあまり感じられず、“出落ち”のような印象。この作品自体が広義での“便乗商品”であって、作中のマスコミ・社会批判はそのまま自身に返って来るのである。あまり私の好みではなかった。 |
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| No.382 | 8点 | ここから先は何もない 山田正紀 |
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(2017/08/29 09:10登録) 予備知識無しで粗筋も知らずに読んだので(これが良かった)、ミステリのリアリティの枠内に留まって説明を付けるのか、SFの領域に踏み込むのか、ラスト直前まで判らずページを繰る手が止まらなかった。ここまで話を大きくするかと驚くやら呆れるやら。『謀殺のチェス・ゲーム』と『神狩り』をいいとこ取りして混ぜたよう。作者あとがきによれば『星を継ぐもの』(ジェイムズ・P・ホーガン)への不満を解消する為に書いたとの由。 |
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| No.381 | 6点 | 密偵手嶋眞十郎 幻視ロマネスク 三雲岳斗 |
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(2017/08/21 11:22登録) 第一次世界大戦後の日本軍部と防諜機関の揉め事アレコレをラノベ的マナーに上手く落とし込んだ冒険活劇。意外な展開と言う程ではないし、キャラもさほど立ってはいないし、それなりの筆力を有するひとがそのつもりで書けばこのくらいのものは出来るだろうという気はする。ただ、どこがどうと言うわけではないが、なにがしかのプラス・アルファが含まれているような好感を持ったことは認める。 |
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| No.380 | 6点 | 花嫁のさけび 泡坂妻夫 |
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(2017/08/09 10:19登録) ネタバレ大いにアリで書くけれども。 五章の4。MがI に“もうそろそろ思い当たりやしないか”と告げる内容は、要約すればこう言うことだ。 “これは君の愛するHを騙して慰謝料を払わせる計画だ。その結果君はHと結婚出来るのだから協力しなさい”。 それで協力を得られると思ったのだろうか。手駒にそこまで教える必要はないだろうに。愛のことが判っていない奴だと言えばそれまでだが、この場面が非常に滑稽に見える。それも含めて事件の全体像を見直したとき、どうにも作り物めいた、起こる道筋に無い事件を作者が無理に起こしたような印象だ。 |
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| No.379 | 6点 | 鏡の殺意 山田正紀 |
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(2017/08/02 10:52登録) 事態の進展に伴い足許から世界が崩れて行って、しかし再構築はされず、真相らしきものが一応明らかになったあとも摑みどころの無い場所にポツンと残されていることに気付く……というのはミステリ系に限らず山田正紀作品によく見られる構造。ストーリーが直線的で細かな目配りに欠けるし、“真実の確定”が中心ではないし、厳しく見るなら、曖昧な“雰囲気”を核に据えた舌先三寸とも言える。しかし再読したところ以前よりも面白く感じたのは、私がミステリに求めるものが変わってきたからか。 |
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| No.378 | 3点 | レタス・フライ 森博嗣 |
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(2017/07/31 10:28登録) 殆ど内容が無いような話を文章の個性だけでどこまで引っ張れるか実験した、が概ね失敗した、という感じ。辛うじて「砂の街」は面白いが、この本に収録してしまうと、基本的に同類である他の短編に埋もれて、その良さが際立たない気がする。 |
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| No.377 | 6点 | τになるまで待って 森博嗣 |
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(2017/07/27 11:56登録) ドアの溶接をセメントでカモフラージュした、と言うのは誰に対するカモフラージュなのか?密室状況を作った理由が時間稼ぎならトリックがあとで露見しても問題は無いわけで、そんな作業をしている時間こそが勿体無いのでは。 トリックは肩透かしだしストーリーもたいしたこと無い。しかしどこがどうと言うわけではないが、この時期の森博嗣作品としては比較的面白く感じるほうの一冊。 |
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| No.376 | 8点 | 忍物語 西尾維新 |
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(2017/07/24 10:15登録) まだ続く〈物語〉シリーズ。女子高生が吸血鬼に襲われて木乃伊になる事件を追うのだが、謎のメッセージやミッシング・リンクといったミステリ風展開。ミステリとしてはごく古典的なネタも基盤がファンタジーの論理なのでそれなりに上手くリサイクル出来ている。本筋とは関係ない会話劇の方が面白いのはまぁいつものことだ。 |
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| No.375 | 6点 | どんどん橋、落ちた 綾辻行人 |
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(2017/07/20 15:32登録) 額縁部分の妙にダークな雰囲気があまり有効に機能していないせいで、せっかくの叙述トリックも味わいが損なわれている。この“作者の苦悩”は作品の一部として昇華され切っていないように思う。 |
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